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北海道の人は皆、冬になると居間の温度を高くして、
Tシャツで過ごしたり、アイスを食べる、
という話をメディアで耳にすることがあるが、
そんな人に会ったことがない。

というか、私が寒がりなせいもあるが、
冬に「ちょっと暑すぎないか」という場所にいた記憶がない。
特に冬の飲食店はどこも寒いし、常に寒い。
飲食店では、コートやダウンジャケットの腕の部分を腰に巻き、
エプロンのような状態で過ごすことも珍しくない。

これに似た状況として、
北海道の人は皆、シメパフェを食べる、というのがある。
私が一緒に飲む相手の業界や年齢が限られているせいもあるが、
シメパフェに行く、あるいは行ったことがある、
という人に会ったことがない。

事実、パフェの店は増えているらしい。
自然発生的ではなく、作為的な匂いがするムーブメント
ではあるが、これによって飲食業界が活性化するならば、
それはそれで結構なことだ。

ただ考えてしまうのは、シメパフェ愛好者は純増したのか、
それとも、別のもので締めていた人がパフェに移行したのかだ。
つまり、ごく一部の人達によるシメパフェの盛り上がりによって、
客足が減ったジャンルがあるのではないかということだ。
それは気になる。

しかし、もっと気になるのは、
「北海道の人は皆、シメパフェを食べる」という、
ケンミンショー的な情報操作により大括りにされた道民の中に、
私も含まれていることだ。
納得できるはずがない。
言いたかったことはそれだけだ。

今回はブックレヴュー。

                     ◆


■原田マハ「本日は、お日柄もよく」(2010年)
  
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 幼なじみの結婚披露宴で聞いたスピーチに感動したことを
 きっかけに、スピーチライターという職業を知り、
 やがてスピーチライターに転職した女性の話。
 最終的には衆議院議員選挙に立候補した人の選挙演説まで
 書き上げてしまう。

 スピーチ原稿を作る苦労や、報酬や仕事依頼の継続など、
 職業としてやっていくことの大変さがあまり書かれておらず、
 順調に進みすぎている印象はあるものの、
 ちょっとしたスピーチのコツが書かれている点は面白かった。

 例えば、司会者がスピーチをする人を紹介した直後に、
 「ただ今ご紹介にあずかりました〇〇です」で話し始めるだけで
 テンションが下がる、というくだり。
 感謝とお願いを繰り返してばかりの挨拶はダメ、という指摘。
 全くそのとおりだぜ、と素直に同感できた。

 なお、この作品の宣伝文句として、
 「言葉の持つ力に感動!」、「スピーチの度に泣けました」等、
 読者の賞賛の声が数多あるが、その点では私に響かなかった。
 ちょっとくどいスピーチが多かったかなと。
 ただ、読み物としては十分に楽しめる。

■横田増生「ユニクロ潜入一年」(2017年)
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 ユニクロの労働実態を暴くべく、
 都内のユニクロ3店にアルバイト勤務をしたライターの潜入記。
 
 人件費抑制のため、お客さんが少ない日は
 予定の勤務時間より早く帰させられること。
 一方、忙しい日だと当日に残業を求められるが、
 その際に、「今日のびれる?」や「ストレッチできる?」との
 ユニクロ用語で聞かれること。
 トップダウン色が濃すぎて、
 悪い意味で宗教的な雰囲気があること等々、
 潜入しなければ知り得ない面白い情報が随所にある。

 ブラック企業ぶりはあまり感じなかった。
 世の中的にサービス残業は別に珍しくないし、
 突然の残業だって当たり前にある。
 下の意見が全く取り入れられないことや、
 理不尽さや閉塞感も、どんな業界にだって大なり小なりある。
 むしろユニクロは、飲み会がほとんどないことや、
 企業としての社外行事が全くないなんて
 めちゃくちゃいいじゃないかとさえ感じた。
 
 そして何より、50歳過ぎの筆者が
 アルバイトにトライしたことに感心する。 
 ブラックぶりを暴こうと潜入したが、
 商品を段ボールから取り出す作業から始まって、
 陳列、レジうちなど、少しずつ仕事を覚えていくのが
 楽しかった、と書かれている場面は、
 なぜか私も嬉しくなったから不思議。

 これを読んだら、レイアウト、陳列状態、店員の階級、
 店員の意識はどこに向かっているかなどが気になり、
 なんとなくユニクロに行きたくなると思う。

■今村夏子「星の子」(2017年)
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 新興宗教にのめり込んだ両親を持つ少女の、
 小学生から中学生にかけての物語。

 両親の奇行を恥ずかしく思いながらも否定はしない彼女。
 一方、クラスメイトからは距離を置かれ、
 教師も悪い意味で特別な目で見ている。
 親戚も宗教から引き離そうと説得する。
 彼女の心にも多少の波は立つ。
 しかし、そういうものだと思って平然と過ごしている。

 全体的に心理描写がぽわーんとしており、
 肯定なのか否定なのかぼんやりしているところが多いが、
 それが逆に等身大テイストを醸し出し、現実感があった。

 宗教にのめり込んでいる親を持つ子も、そうでない子も、
 思春期を迎え、恋をしたり、友達との付き合いに
 苦しんだりする。
 宗教という壁がありながらも、そうした姿を
 ある種平等に描いているのは清々しくもあった。

 後半、教師からのイジメともとれる対応に関して、
 彼女と距離を置いていたクラスメイト達が、
 彼女を励ますような場面がある。
 さらっと通り過ぎるように描いているが、
 最も心に残った場面だ。

■滝口悠生「高架線」(2017年)
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 西武池袋線の東長崎駅から徒歩5分の距離にある
 家賃3万円の古い4戸建てアパート。
 その一室に住んだ人達を巡る16年間の物語。

 その部屋は、次に住む者を退去する者が決めるというルール、
 風呂はないが、シャワーと和式トイレが同じスペースにあること、
 家賃滞納のまま行方不明になった者の家賃を
 行方不明者の親ではなく同級生が払っていること、等々
 エキセントリックな設定や展開が多い。
 
 それでいて実にひょうひょうと語られている。
 ドラマチックさを意図的に消すような淡々とした筆致だ。
 なので、何を描きたいの?と感じるところはある。
 ただ、市井の何気ない等身大の日常をうまく切り取っている。 

 例えば、夕食がてら軽くお酒でも飲もうかと駅前に行ったが、
 なんとなくスーパーでお総菜とビールを買い、
 アパートに戻ってそれを食べて飲む場面がある。
 それがちょっと寂しそうで、でも幸せそうで、温かみを感じた。

 後半、映画「蒲田行進曲」を引き合いにしての展開は、
 ちょっと引っ張りすぎて間延びし、
 純度が下がったのが非常に残念。
 
 しかし、序盤の文通の話は最高に面白かったし、
 終盤のアパートを取り壊すシーンでの関係者の佇まいも、
 変に感情の盛り上がりをせき立てず、あっさりとしており、
 逆に親しみと切なさを覚えた。

                      ◆

やっと週末になった。
歳をとるにつれ、好みが変わるし、求めるものも変わっていく。
しかし40年以上、ずっと変わらぬ思い。
それは週末にたどり着くことをモチベーションに
平日を過ごしていることだ。

やりたいことができる自由だけではない。
やらなくていい自由を手にできることは大きい。
むしろ後者の方が休日ディザイアのメインかもしれない。

いっそ完全にフリーになれたら、とも思うが、
フリーになった方が不安が増大するのも目に見えている。
つながれていなければ生きていけないのか。
そうかもしれない。
それは悲しいことじゃない。
 
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