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7月も半ばになったのに、まだ掛け布団で眠っている。
ぎらつくような、あるいはムシムシとした暑さを迎える準備は
できているのに、音沙汰がない。

私が寒がりなせいでもあるが、夏場は乗り物や店内の冷房に苦しむ。
いや、夏だけではない。
乗り物と店内は年中寒い。
夏場は冷房を抑えてくれと思い、冬場は暖房を強くしてくれと思う。

チェーン店のレストランや居酒屋は特に冷房がきつい。
店員の方は半袖、こちらは半袖+長袖2枚。
もう少しお客さん寄りの温度設定に考慮していただきたいが。

ライブスペースも季節に関係なくどこも寒い。
ステージ上のプレイヤーが、「いやぁ暑いですね」と言う場面が時々あるが、
私はいつも心の中で、
「あなたは暑いでしょうが私は全然暑くないっす。同意を求められても…」
とつぶやいている。

さて、今回はブック・レヴュー。
よろしくどうぞ。

吉田修一「橋を渡る」(2016年)
     
20160714_橋を渡る
2015年の東京。
ビール会社の営業課長には不倫相手がいて、
家庭では高校生の甥っ子を下宿させている。
都議会議員の夫は賄賂をもらったのではないかと疑念をいだいている妻は
週刊誌の政治ネタか大好きで、ボランティア活動を趣味にしている。
大学教授の先進的な研究を熱心に取材するTVテレビディレクター。
その婚約者は不倫をしている。

特別じゃない、どこにもいる、いわゆる普通の大人達の日常に生じた
ズレや違和感や痛み。事態は次第に悪くなっていく。
そんな彼らは70年後(2085年)に結びつく。
70年後なので、彼らは既に他界しており、
その子孫などを登場させて、2015年とのつながりが語られる。

あの出来事が70年後にこういう作用をもたらしたのかと
面白く読めるのだが、
登場人物が多く、展開の幅が大きく唐突なため、
場面が変わると、その状況を理解するのに時間がかかり、
さくさくと読み進められなかったのが残念。

■米澤穂信「王とサーカス」(2015年)
      20160714_王とサーカス
フリーライターの20代の女性。
取材のために訪れたネパールの首都カトマンズで、
王族の大量殺害事件が勃発。
その真相を探るべく情報を集めていると、
現地で知り合った軍人の死体を発見する。

貧富の差が激しく、雑然として、ぎらぎらしていて、息苦しい。
そんなカトマンズの情勢や風俗が温度感をもって伝わってくる。
スクープを狙い、苦悩し、葛藤し、
ジャーナリストとして成長していく女性の心情もよく拾っており、
全体として丁寧で、よく整理されている。
読書を楽しめる良質な作品。

反面、濃密ではないためドキドキ感は薄い印象。
文章の滑らかさで楽しめるものの、
もう少しエンターテイメント性が欲しいかなと。

阿部和重・伊坂幸太郎「キャプテンサンダーボルト」(2014年)
     
20160714_キャプテンサンダーボルト
山形県と宮城県の県境にある「五色沼」の水にまつわる秘密をめぐり、
仙台在住、二十代後半のパッとしない男二人が、
なんだかよくわからないうちに厄介ごとに巻き込まれ、
怪しい外国人組織から追われる話。

小学校時代に好きだった特撮ヒーロー、憧れた車、高校時代の後悔。
そうした過去の夢と希望と挫折が、現在の行き詰まった生活と絡み合い、
危険を承知で一攫千金を狙う、壊れかけた男二人の
起死回生の物語でもある。

伊坂氏らしい切れ味のあるスタイリッシュな文体で、
テンポ良く展開する箇所は楽しめるのだが、
全体的に私の想像の範囲よりも少し上のところで話が進んでいくため、
自分の手の中になかなかストーリーを収められなかった。

井上荒野「つやのよる」(2010年)
     
20160714_つやのよる
「艶(つや)」という女性に関わった男達と、
その男達の周辺の者をめぐる物語。
彼女は男好きで気分屋で無愛想。
感情のままに好き勝手に生きてきた。
現在は病に伏し、余命はいくばくか。

艶の現在の夫は、彼女の男性遍歴を把握しており、
彼女が過去に関係した男達に、艶が余命わずかであることを伝える。
連絡をもらった男やその家族は疑心暗鬼になる。
水の底に沈んだはずの過去が浮上してきて波が立つ。
そうした心の揺れやざわめきを、ちょっとした仕草やセリフで
見事に表現している。うまいなあ、と素直に感心する。

内容云々ではなく、筆致の巧みさを楽しめる。
的確な言葉を引き出し、自在に操っている感じが気持ち良い。
「手練れ」の意味を教えてくれるような作品だ。
数年ぶりに手にした井上荒野さんの作品は当たりだった。

                                         

自宅でウイスキーをちびちび飲みながら読書をするのが楽しい。
飲酒読書だ。
なぜか集中力が増し、文字をつかむように追える感覚になり、
ページもアルコールも進む。

そして気づいたときには眠っている。
楽しいことをしていて知らぬ間に眠っている。
至福のときだ。
最高の展開だ。

目を覚ますと、テーブルの上のグラスには、
氷が溶けて薄くなったウイスキーが、なみなみに入っている。
もう飲めないのに、まだ飲めると思い込んで景気よくグラスに注ぎ、
そのままスリープしたのだ。
ちょっぴり後悔、けれども、ほんのり贅沢。
幸せ加減はこんな感じが丁度いいのかもしれない。
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