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北海道を代表する十勝の菓子メーカー「柳月(りゅうげつ)」。
その看板商品が「三方六(さんぽうろく)」。
バームクーヘンをミルクチョコレートとホワイトチョコレートで
コーティングした、洗練された甘みと親しみを感じさせる銘菓だ。

三方六は大きな筒状で製造され、切り分けて商品とされる。
その際、筒の切れ端部分はカットされ商品とはならない。
しかし、切り落とし部分のみを集めて販売されている。
柳月サイドは三方六の「お買い得品」と名付けているが、
一般的には「切れ端」の俗称で通っている。

ただ、これを手に入れるのは容易ではない。
売られているのは、
音更町にある「柳月スイートピア・ガーデン」の一店舗のみ。
201603柳月01
周辺に民家はない。
完全にイン・ザ・十勝平野なロケーション。
帯広市街地からは車で20分程度を要する場所だ。

「切れ端」は開店と同時に売り出されるのだが、
これを求めて開店前から店の外に結構な行列ができる。
開店30分前に「整理券」と呼ばれる番号札が配布され、
これを手にした人だけが購入できるというシステムだ。

売り出される「切れ端」の数は日によって異なる。
なので整理券の数も日によって異なる。
開店前に並んだものの、整理券をゲットできない人も少なくないらしい。
そこに情けはない。
どんなに遠くから来たとしても、
家族の反対を振り切って行ったとしても、
ステイタスや政治力がある人であっても、
並んだ順番が全てだ。
それが平等というものだ。
平等に情けは不要だ。

このように不確定要素の多い買い物はそれなりのリスクを伴う。
無駄になる時間と浪費することになるガソリン。
整理券をもらえない虚しさ。
切れ端に翻弄された悔しさ。
敗北感、屈辱感、自己否定。
こうした様々なマイナス現象が我が身にふりかかるかもしれない、
いわばギャンブルだ。
それなら定価で三方六を買った方がいい。

ドラマ性やスリルが乏しくなるだけで美味しさは確約されており、
十分にサティスファクションを得られるのだから。

ただ、私は帯広に住んでいる。
切れ端にトライするのに大きなアドバンテージと優位性がある。
アタックするチャンスだ。
谷原章介氏にそう言われ、背中を押されたい。

そういうわけで、三方六の切れ端ゲットは、
私の「帯広に住んでいる間にやるべきことリスト」において、
2014年はトップ10圏外だったが、
2015年にトップ10入りし、
2016年になってからはトップ3入りを果たしていた。

冬場の平日が狙い目だ。
ハードルはあるものの、帯広にいることで低く抑えられる。
悔しい思いはしたくない。
ならば相応の努力をし、犠牲を払うことだ。
というわけで3月上旬の某日、
一切の予定やしがらみのない日をセレクトして冬休みを取得。
「柳月スイートピア・ガーデン」を目指して日産車を走らせた。

冬場の開店時刻は9時30分。
9時から整理券が配られるらしい。
確実に整理券をゲットできる時刻に関して知識、経験とも不足している私は
9時の時点で行列の一部に組み込まれていなければならないと思った。

ところが店に到着したのは9時05分。
通勤の時間帯であることを甘く見てしまい、
移動所要時間の読みを誤った。

くじけている暇はない。
行列に加わる。
201603柳月02
何番目なのか数えてみた。
38番だった。
白糠町にあるラーメン店と同じだ。
行列を成しているのは60歳超の方が7割くらいだったように思う。

9時08分頃、整理券の配布が始まった。
店員の女性が行列の中をこちらに向かって歩いてくる。
私のところまで番号札は残されているか。
不安だ。

残っていた。
ゲッツできた。
この瞬間、「柳月」は「柳ゲッツ」に変わった。

切れ端は、正式商品と同様に、「プレーン」、「抹茶」、「メイプル」の
三種類がある。
整理券(プラスチック製)は種類によって色が異なる。
購入できるのは一人一個と決められている。

メイプルの整理券は私の前の人が最後だった。
私の時点では、プレーン10枚弱、抹茶10枚強が残っていた。
ビギナーの私は、抹茶という冒険はせず「プレーン」を選択。
渡されたプレーンの整理券のナンバーは「18」。
201603柳月03 201603柳月04
私は全体で38番、残りの整理券は約20枚ということは、
この日用意されたのは三種類合わせて60個弱だったということだ。
私の後ろにできた行列の中でゲットできなかった人もいた。
9時20分頃がゲットできる、できないの分かれ目になったと思われる。

整理券を確保できただけで高揚した。
早い時間に来たら手に入れられるという公正で平等で
シンプルなシステムなのにもかかわらず、
わけもなく勝ったような気持ちになった。
当たりくじを引いたような感覚にもなった。
そうこれは一種のゲームなのだ。

9時30分の販売開始を前に、
店員の方が、行列客を前に、おすすめ商品のピーアールをする。
はきはきと誠実な姿勢でプレゼンをする。
この雰囲気もなかなか良い。
こうなるともうイベントだ。

9時30分ちょうどに、バックヤードから、
多数の切れ端をのせた台車(ワゴン)が登場。
201603柳月05
拍手したい気分になった。
2014年4月にゼップサッポロのステージ袖から
ボブ・ディランが現れたときと遜色のない感動があった。

整理券と引換に商品が渡される。
支払いは別のレジでするので回転が早い。
そして無事ゲット。
201603柳月06
結構重たい。
4つも入っているではないか。
このボリュームで500円とは。
まさにお買い得品だ。
というか、お買い得という言葉以上にお買い得感がある。
「切れ端」と呼ぶのはおこがましい。

お買い得品だけを買ってそのまま帰るのは申し訳ないような
気持ちになったし、

店内で待っている間に、あの商品を食べて見たい、
これはどんな味なのだろうなど、興味が高まっていた。
実際、お買い得品を手にした方のほとんどは、
一般の商品もそれなりに購入しており、店内は大賑わい。
音更の閑散とした場所にある平日午前9時台の菓子店とは
信じられないほどの盛況ぶりだ。

店を出て、自宅へ戻る車中は、お祭り帰りのような感覚だった。
ホスピタリティの充実ぶりも素晴らしかった。
「ありがとう、柳月さん」と敬称つきで独り言を言いそうになった。
まさに柳月ワンダーランドと言える世界だった。
世界は広く、そして身近だ。

帰宅し、お買い得品のひとつを取り出してオン・ザ・ディッシュ。
201603柳月07
よぉーこそ、我が家へ。
直径は15.5cm。
結構大きいし、重たい。
ひっくり返してみよう。
201603柳月08
端を切り落としたことがよくわかる。
まさにバームクーヘンたる見事な層だ。

そして食べる。
三方六はやはり美味しい。
雑味なし。
この安定感と安心感。

優しくすっきりとした甘さ。
なのにしっかり余韻を楽しめる。
これで500円は安すぎる。
これまでの人生で一番のコストパフォーマンスの高さだ。
201603柳月09
ただチョコレートがコーティングされていない面積が広いので、
三方六よりもあっさりしており、
北海道的表現で言うと、三方六より食べらさる。

つまりこれは三方六でありながら三方六ではない。
三方六から派生した別の商品だ。
いわば三方六のスピンオフ作品。
それでいて本物に勝るとも劣らない美味しさ。
これを「切れ端」だとか「お買い得品」だとか言うのは失礼だ。

アウトレットではない。
そもそもが失敗作ではないのだ。
成功した作品の一部である。
アウトレットというよりは、むしろアウトサイダーであり、
三方六のソウルを持った別物なのだ。
ならば独立した商品名を付与したくなる。
例えば「四方六」だとか「三方ROCK」だとか、
三方六のアイデンティティを感じさせる商品名がいい。

美味しさと楽しさに酔い、その酔いの気持ち良さが忘れられず、
別の日にまた買いに行ってしまった。
この時も平日。8時55分に店に到着し、行列は30番目。
配布されたプレーンの整理券はまたしても18番。
ただメイプルの整理券も3、4枚あった。

この日ゲットしたお買い得品は、
コーティングされたチョコ面積が広かった。
しかしミルクチョコレートがないタイプだった。
201603柳月10 201603柳月11
また買いに行きたい。
これはお土産にもいい。
賞味期限は5日間。
冷凍保存をしても変わらぬ美味しさ。
ほんとに素晴らしい作品だ。
次はメイプルだな。

連日お買い得品を食べていたら、本来の三方六も食べたくなった。
三方六の魔力というか奥深さというか、不思議なものだ。
完全に三方六の虜になってしまった。

インデアンカレー西21条店に行き、
カツカレーにトッピングでカツをオーダーするようなものだ。

お買い得品によって、三方六の価値が高まった。
柳月メソッドに感服だ。
柳月さん、ありがとう。

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