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2月だ。
夜明けの時刻が早くなり、日没の時刻が遅くなっているのを
日々感じている。
ここ帯広も春に向かって少しずつ歩みを進めている。
しかし寒さは1月よりも厳しさを増し、
この一週間ほどがピークかもしれない。
だから今が「おびひろ氷まつり」をやるに最も相応しい時なのだ。
2016020401 
十勝以外の方にはあまり知られていないだろうが、
「おびひろ氷まつり」はなかなかのものだ。
街のど真ん中に巨大テントを設置して飲み会会場にしたり、
巨大すべり台があったり、花火大会があったりと結構なスケールだ。
私も飲みに出かけようかと思っている。
そして帰宅してからも飲むだろう。
そんな時、面白い小説があると、結構いいつまみになるのです。

というわけで、今回はブックレヴューです。

                       ◆

■柚月裕子「孤狼の血」(2015年)
   2016020402
広島県の暴力団抗争と、
その裏側で暗躍する暴力団対策担当の刑事の話。
豪胆で荒々しく、勤務時間はほぼフリー。
暴力団に対しても睨みをきかせ、上前をはねているという噂もある。
警察内部にも、暴力団の間でも彼を疎ましく感じている者は少なくない。
しかし事件を解決する手腕に長けており、
警察幹部も彼に厳しく対処できずにいる。

話の設定は昭和63年。
パソコンや携帯電話が普及するずっと以前なので、
連絡方法や待ち合わせなど時代を感じさせる記述が随所にあるが、
それを殊更に強調するわけではなく、
むしろ同僚との付き合い方や、暴力団の有り様など、
物質面に偏らずに時代を表現しているのが好感。

主人公の刑事は、新人刑事とコンビを組むことになったり、
行きつけの小料理屋(美人女将がひとりで経営)があったり、
高校時代からの悪友が某組の組長だったりと、
ちょっとありきたりなテレビドラマ的設定が多いのが気になるが、
内容も文書表現も重厚で浮き足だったところはなく、
女性が書いたとは思えない男性目線での描写も的確だ。

すぐに話に引き込んで、キープさせる筆力というのか、
派手さはないが、話の進め方や言葉の選び方がうまいので、
リーダーズ・ハイのような状態にさせてくれる。
柚月さんの作品はハズレがない。

後半、「あれ?そうなったら話が終わっちゃうんじゃないの」という
予想外の展開をする。
ところがそこからもうひと展開がある。
最後まで緊張感が揺らぐことはない。
内容も文章力も楽しめる佳作。

■朝井リョウ「何者」(2012年)
   2016020403
就職活動をする大学生男女5人の話。
彼らはそれぞれが熱心にツイッターをやっている。
普段も結構会っている5人なのに、
各自の日々の動きや考えていることはツイッターで知るという、
つながっているような、つながっていないような妙な関係。

ツイッター上でつぶやいていることは虚飾っぽい。
理想の自分を想像させるかのような
「表向きのキャラクター」としてつぶやく。
ツイッターの中でも、みんなで会っている時でも本音で向き合わない。
表面的なかっこいい付き合いを楽しむ。
本音は、本人とは特定されない秘密の別のツイッターでつぶやく。
それを仲間内で暴いていくような展開もある。
ただの傍観者が上から目線で評論することへのアンチテーゼを感じた。

仲間意識があり結束力もあるようで、実は互いに牽制し合う不気味さ。
若者の面倒くさい付き合いや
いけ好かない関係性に上手く切り込んでいる。
読んでいて共感はしないし、むしろイライラする場面が多い。
しかし、今時の大学生群像として読む価値はあるし、
構成がしっかりしており、よくまとめたなあと思う。

ツイッターをする理由はなんなのだろうか。
自分をアピールしたいのか、誰かにかまってほしいのか、
それとも単にこぼしたいだけか。
仮にリアクションが一切なくても続けるのか。
そのあたりがうまく理解できない。
そんな私が言うのも失礼ではあるが、この作品を読んでいると、
「とりあえずツイッターやめれば」としか思わなくなる。

■馳星周「雪炎」(2015年)

   2016020404
日高地方にある「道南市」の市長選挙を巡る話。
選挙の争点は原子力発電所の再稼働。
札幌で弁護士をしている男が、地元である道南市長選挙に
原発反対の立場から出馬すべく準備を始める。
原発推進でまとまり、しばらく無風だった地域が穏やかではなくなる。
原発利権を得ている建設業者、反社会勢力、政治家などが
躍起になって反対派候補をつぶしにかかる。

物語の舞台は、地理的には「むかわ町」を想定したものと思われる。
苫小牧の東側にある町だ。
それでいて「道南市」というのはどうなのか。
道南は、北海道民からすれば、渡島・檜山エリア限定だろう。
苫小牧市は道央エリアだろう。
そうなると日高地域はエリアづけが難しいが、
少なくとも道南ではないなと。
筆者である馳さんは浦河町出身だが、違和感はなかったのだろうか。
なお、道南市以外は実在する地名が使われており大変親しみを持てた。

福島原発は、反社会勢力の関わりが深く、
利権も複雑であると幾つかの文献で目にした。
本作もそういう設定で描かれている。
原発反対派に対してそこまで嫌がらせや脅しをするのか。
目に見えなかったり、噂を聞かないだけで泊原発もそうなのだろうか。
だとしたら怖いし、悲しい。

主人公は原発反対派候補者の同級生で元公安警察官の男。
彼の人物像がいまひとつ掴めなかった。
刑事感覚に優れ行動も判断も迅速、的確だが、
無愛想で憮然としている場面が多い。
また、鬱屈気味で意固地。
かと思いきや、社交的で女性好きでお酒好きな面も見せる。

小説的な妙味よりは、2時間ドラマ的な展開重視な色が濃いが、
どんどんページをめくらせるスリリング感を楽しめる。
また、苫小牧から静内あたりを知っている方は情景が目に浮かぶと思う。
と同時に、北海道の冬の厳しい寒さが伝わってくる。

■筒井康隆「旅のラゴス」(1986年)
   2016020405
ただひたすら旅を続ける男「ラゴス」の物語。
赤道近くまで南下し、その後は人が住んでないところまで北上する。
移動は基本的に馬か徒歩。
電気がない時代という設定。
でありながら、随所に時代や場所を越えたワイド感やワープ感を
盛り込んでおり、矛盾を感じる箇所も多くある。
例えばコーヒー栽培を始めたのも、
電気を発明したのもラゴスなのだから。
それでいて、なにがしかの統一性と連続性があり、
矛盾などどうでもよくなり受け入れてしまう。
実に不思議な作品だ。

波瀾万丈の人生なのに、数々のエピソードを深掘りせず、
全体的に拙速に話が進んでいく独特のリズム感。
なので、長いあらすじを読んでいるような感覚にもなる。
いきなり結論に至ったり、突然数年間が経過していたりと、
展開の切れ込みの鋭さと速さに驚くとともに違和感をおぼえる。
最初はそのリズムにのれないのだが、かみ合うと不思議とクセなる。

読者をひきつける最大の魅力はやはりラゴスの人間性だろう。
基本的にはスケールが大きく慕われる人柄なのだが、
どんな場所でもどんな人とでもうまくやれるなど
順応性に優れているかと思えば、
研究に熱中し始めると何年間も他者の訪問を拒んだり、
悪党に捕らえられて奴隷にされると従順だったり、
二人の女性が大事だからと悩みや迷いもなく重婚したり、
その妻を残して突然旅に出かけ、そのまま戻らなかったり。
気まぐれで自由で、真面目で芯が強く、優しいのに勝手。
とにかくぶっ飛んでいる。
そのぶっ飛びぶりを、平然と淡々と綴っていることがまた凄い。

内容の面白さもあるが、とにかく世界観やラゴスの人生観が魅力。
一気に読みたくなる。
時間が経つとまた読みたくなる。
これは常備本にしていいだろう。

                   ◆

新聞やテレビのニュースを見ていると、
清原和博氏に対して、著名人、一般人を問わず、
温情主義的なコメントをする人が圧倒的な気がする。
「まさか」ばかりで、「やっぱりね」はほとんどない。
そういう人をチョイスして報道しているのだろうか。

この騒動を見ていて、
ヤンキーテイストやワルなキャラクターを支持する日本人は、
平成28年の今も多いのかなあと、ぼんやりと思った。

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