ADMIN TITLE LIST
今回は、クグエ@スカイウォーカーの選ぶ「2007 ブック・オブ・ザ・イア」。
私が2007年に読んだ小説、文学の中で良かった作品、オススメしたい作品を
厳選して発表するものである。
古い作品も含まれている。
ただ、極力2006年秋以降に出版された作品とすることを意識して選んだ。

2007年も素晴らしい作品に出会った。
ただ、毎年そうだが、心に“ずしん”と来るものがなかったり、
自分のリズム感と合わない作品の方が多いのは事実。
本に関しても、音楽やラーメンなどと同様に好みや相性は様々である。
それでも、ここに発表する作品は、
極度のマニアックな嗜好の持ち主の方を除けば、
とても読みやすい作品ばかりであり、かつ、何がしかの感動を抱けると思う。

また、読みたいが、金銭的、時間的事情から
読めていない作品がある(米澤穂信「インシテミル」など)。
特に、新刊本で上・下巻がある作品(宮部みゆき「楽園」など)は、
購入する上で、非常にネックになることから、手を出しにくい。

昨年の春まで3年間住んだ留萌市の図書館は良かった。
借りる人の絶対数が少ないせいか、
宮部みゆきや東野圭吾の新刊本でも、
予約してから1か月も待たずに読むことができた。
また、職場のすぐ近くにあったため、昼休みに行けた。

その点、札幌市の図書館は難しい。
予約してから待つ月日が長すぎるし、駐車場に車を置くだけで面倒臭く、
結果、足が遠のいてしまう。
そうなると、買わざるを得ない。

新刊本の価格は、概ね1,600円から1,800円。
それをどう捉えるかは、人それぞれだが、
ここに紹介する作品は、感動した新作映画を1本観た以上の価値があると思う。
それぐらい、自身を持ってオススメする。
ということで、クグエ@スカイウォーカーの選ぶ
「2007 ブック・オブ・ザ・イア」受賞作品は、次のとおり。

【大賞】

○ 桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
  赤朽葉家の伝説

  この作品は面白かった。2回読んでも面白かった。
  読み出したら止まらず、また、終わりが近づくにつれて、
  読み終えるのが寂しくなってしまったほどである。

  「赤朽葉」は、「あかくちば」と読む。
  鳥取県のある村の富豪の家である。
  この家における、戦後から現在まで約60年にわたる出来事を、
  祖母、母、自分(女)という3部構成で書いた作品である。
  
  祖母(1943年生まれ)は未来を透視する能力がある。
  母(1966年生まれ)は、暴走族のレディースの頭として君臨し、
  引退後は漫画家として大成功。
  自分(1989年生まれ)は、祖母が死に際に言った言葉から、
  赤朽葉家に潜む謎を解明しようとする。
  こうした奇天烈な親子3代、約60年間のことが、
  戦後の経済や社会、生活の変化とともに綴られている。

  この60年間に起こるエピソードが、どれも強烈である。
  それがテンポ良く、切り口も良く書かれているため、
  一気に最後まで引っ張られる。
  
  そして、話を面白くしているのが、
  この桜庭一樹という人の文章表現というか、文章センスである。
  あまりに独特で、最初のうちは、ちょっと違和感をおぼえるが、
  気づくと、全く普通に感じ、桜庭ワールドに完全に引き込まれていた。
  
  例えば、祖母が生んだ4人の子供の名前は、
  泪(なみだ)、毛鞠(けまり)、鞄(かばん)、孤独(こどく)である。
  いったい何なの?と思うだろう。
  しかし、読んでいくうちに、この奇妙な名前に違和感がなくなり、
  むしろ、随所でいい役割をするのである。

  作品中、人が結構死ぬ。
  にもかかわらず、非常にあっけらかんと書かれている。
  その反面、心の描写を、しっかりと捉え、
  時代や人のつながりを見事に描き、いい感じでオチがある。
  そうした伏線も、深く、巧みに構成されている。
  そして、全体的な印象として、ぞっとするのに、すごく瑞々しい。
  読後感も非常に良い。桜庭一樹に感服。傑作である。
  
【入賞】

○ 吉田修一「悪人」
  悪人

  昨年、一昨年なら大賞をとっていたであろう作品。
  「赤朽葉家の伝説」が良すぎた。
  事実上、今年の第2位の作品である。
  
  出会い系サイトに関係して起こった殺人事件をめぐる話であるが、
  現代社会に潜む人間ドラマといった作品に思えた。
  誰がほんとの悪人か?という考えは除いて読んだ方が楽しめる。
  とにかく、人の描き方、心の描き方が実に丹念で絶妙。
  それを感じるだけでも読む価値がある。
  
  また、「ここで、そういうセリフ言うか?」とか、
  「こういう人は普通、そんな行動できないって」など、
  リアル感に乏しく、冷めてしまう作品がよくあるなか、
  この作品のリアル感は秀逸である。
  物語の中に自分も入り込んでしまい、
  むかついたり、ドキドキしたり、そして切なくなり、
  最後は、何とも言えないため息が出てしまう、これも傑作。
  
○ 角田光代「八日目の蝉」
  八日目の蝉

  生後6か月の赤ん坊を誘拐した女性の逃亡日記が前半、
  後半は、その赤ん坊が成長し、現在20歳になった女子大生の日記である。

  誘拐を題材とした話なのに、全体を通して、切ない気持ちの連続である。
  劇的でも、強烈でもないのだが、出来事や心情の切り取り方が上手い。
  じわっと心に押し寄せて、スッと消化されていくような感覚になる。
  まさに、良い小説のお手本のような作品だと思う。

  角田光代作品のこれまでの印象としては、
  「まあ普通に面白かった」という堅実で無難な印象であったが、
  「八日目の蝉」は心にずしんときた。
  期せずして、こういうことがあるから、読書がやめられないのだ。

○ 近藤史恵「サクリファイス」
  サクリファイス

  「サクリファイス」とは「犠牲」という意味である。
  自転車ロードレース界のチーム・プレイを題材としている。
  吉田修一の「悪人」については、誰が悪人かを考えるなと書いたが、
  この作品は、誰が犠牲なのかを考えて読むほうが入り込める。

  自転車ロードレースという、ちょっとマイナーなスポーツの話だが、
  それに疎くても、すんなり読めると思う。
  ちょっと短めの作品で、3時間くらいで一気に読み切ってしまった。
  とにかく、展開において、余計なものが一切はさまっていない。
  それでいて、しっかりと伏線が敷かれ、
  終盤は真相が二転三転し、最後まで興味をそぐわず、釘付けになる。

  この作品を2007年の№1にする方も多いと思う。
  しかし、私としては、若干注文したい点がある。
  自転車ロードレースの白熱さと、人物の描き方について、
  もう少し切り込んでほしい気がした。
  展開の波が小さく、ちょっと淡泊かなと感じた。
  それと、「正直、ここまでのことをできるか?」という気持ちは残った。
  それでも、間違いなくレベルの高い作品である。

○ 薬丸岳「天使のナイフ」
  天使のナイフ

  2005年の作品。2007年の1月に読んだ。
  この作品は、人物を描く、切り口がどう、表現がどう、というより、
  ストーリー自体の重み、強さだけで評価できる傑作。

  主人公(30代半ば)の妻が、13歳の少年3人に刺殺された。
  それは衝動的な殺人として処理されたが、
  異なる真実が明らかになっていくという内容である。

  前半は、少年法の壁の前に、主人公がやりきれない思いをするという内容。
  人権は加害者のためにあるのか?と思わされるほど、
  心の中に重たいものが残る。

  犯人である3人の少年が出所後、
  そのうち1人が、何者かに殺されるところから展開が変わる。
  これをきっかけに、主人公が殺された少年のことを調べ始める。
  すると、自分の妻のことにぶち当たっていく。

  そこから読むのをやめられなくなる。
  そこまでに張られた、いくつもの伏線絡まり、一気にたたみかけてくる。
  最後は、切なさとやりきれない気持ちで、胸が苦しくなる。
  特に、亡くなった妻に関わる万華鏡の話は、ほんとうに泣ける。
  
  2005年に読んでいたら、間違いなく大賞を獲得していた作品である。
  事実、これを書いていたら、また読んでみたくなった。
  「ナイフ」だからいうわけではないが、胸に突き刺さる作品である。


○ 桐野夏生「OUT」
  
OUT

  1997年出版の桐野夏生の代表作であり、超有名作。
  昨年春に、留萌から札幌に引越する際に、本を整理していて発見。
  おそらく5年くらい前に買って読んでいなかった。
  (そんな本が10冊くらいある)

  引っ越してから、この本読んだかなぁ?と確認するため、
  少し読んでみたら、読んでいないことが判明。
  と同時に、一気にはまってしまった。
  何で今まで読まなかったんだろうと後悔した。

  
深夜の弁当工場で働く4人の女性(30代~50代)の話である。
  このうちの一人が夫を衝動的に殺してしまう。
  この遺体の処理のところから、4人の女性は、
  とんでもなくOUTな道を突き進んでいく。

  やはり、桐野夏生の展開の上手さに圧倒される。
  「読ませる力」のようなものがすごい。
  ぶっちぎられる感じである。
  そして、ストーリー自体もすごい。すごすぎる。
  シンプルな内容だが、描き方が生々しく、奥深い。
  これを読んでいる期間、肉を食べたくなくなる、まじに。
  終盤、息切れというか、なにか腰砕けの感じがするのが残念。

  
以上が、クグエ@スカイウォーカーの選ぶ
「2007 ブック・オブ・ザ・イア」である。
見返してみると、吉田修一と薬丸岳を除いては女性作家である。

「時代が悪くなるほど、優れた芸術作品が生まれる」と言われる。
言い換えれば、芸術作品は時代を反映しているのだろう。
この2、3年の日本の小説は、非常に充実している。
特に、今回の結果でもわかるとおり、女性作家の充実ぶりはすごい。

と同時に、私の知らない素晴らしい作品が、
まだまだ沢山あるのだろうと思う。

以前から、なんとかならないかと思っていることだが、
新刊本に関する情報が決定的に少ない。
音楽の新譜に関する情報と比べると、その差は歴然としている。
そのため、ほかにも色々と面白い作品があるだろうに、
それを知る術や、知るきっかけ、機会が少ない。

私自身の見つけようとする努力が足りないこともあるが、
「この作者の、こういう内容の作品が発売されます」ということが
幅広くわかるツールはないものかと思う。

また、作者も生活していく上で仕方ないのだとは思うが、
贔屓にしいる一人の作者が、1年に何冊も発行すると、
読むのが全く追いつかない。
ミュージシャンなら、「3年ぶりの新作リリース!」という感じで、
「待ってました感」がある。
しかし、新刊本は、発行するのを待ってくれと言いたくなる。

読みたい本は沢山あるが、読むことができないまま、
本という名の海で溺れているような気がしてくる。

えっ?どんなふうに溺れるのかって?
本だけに、「ぶっくぶっく」と溺れます。

えっ?本の外側についてる厚い紙が取れたようなこと言うなって?
つまり、「ひょうし抜け」したってこと?
本にカバーはつけられても、私のオチはカバーできないと…。

えっ?最後にきて長いって?
わかりました。本と同様、これで話を閉じます。
久しぶりのクグ丸です。

余談
桐野夏生「OUT」について書いている途中で、
誤ってデータを完全に消してしまったこと、及び、
ここに紹介した本を、ところどころ読み返しながら書いたことから、
この原稿を書くのに、これまでで最も長い時間を要し、
とんでもない時刻に更新するはめになりました。
スポンサーサイト

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌



















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 トゥナイト今夜もRock Me Baby, All rights reserved.