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もう二週間も更新していなかったのか。
地震に大雪、不規則な勤務、深酒と菓子パンの暴食などにより、
体調が安定しない日が続いていた。
しかし、ここ二、三日の音楽鑑賞(主にデヴィットボウイとシュガーベイヴ)と
読書によってだいぶ落ち着いてきた。

今回はブックレヴュー。
面白かった作品ばかりだ。

                                                        ◆

■櫛木理宇「チェインドッグ」(2015年)
    櫛木チェインドッグ
志望していた大学受験に失敗し、不平と不満を抱えて、
屈折した日々を送る男子大学生。
彼のもとに死刑判決を受けた連続殺人犯から手紙が届く。

その殺人犯は、大学生が中学生の頃よく通ったパン屋の店主だった。
連続殺人犯が手紙で大学生に依頼した内容は、
「連続殺人は認めるが、一件だけは俺がやったんじゃない。えん罪だ。

それを証明してくれないか」というものだった。

最初は無視をしていた大学生だったが、
なぜ自分が依頼されたのかという疑問が興味に変わり、
やがて刑務所まで面会に行く。
その後も何度か足を運び、殺人犯の話を聞くたび、
彼の雰囲気に引き寄せられていき、
ついには事件の解明を始める。
そこから浮かび上がってきた事実は、
大学生とは無関係ではなかった。

ずっと何かが怪しく、ぼんやりと暗い。
二重、三重に秘密が隠れていそうな先の読めない展開。
つなぎの熟度がやや不足しているところはあるが、
軸はしっかりしており、世界観がぶれていないので、
気持ちが途切れることなく読み進められる。

若者の屈折ぶりやこじらせ感の描き方も面白い。
アンハッピーな要素だらけの作品だが、
不気味さの押しと引きの加減が良く、ページをめくらせる。
それだけに主人公と中学の同級生だった女子大学生の
エンディングの有り様が曖昧に思えたのが残念。
わかる人にはわかるだろうが、私には解読できなかった。
また、表紙のデザインの意図が全く理解できなかった。

■桜木紫乃「星々たち」(2014年)
   桜木星々たち
愚直なのか、愚鈍なのか、真面目なのか、いい加減なのか。
そんなに行き当たりばったりの昭和40年生まれの女性の半生を
綴っている。
彼女の目線ではなく、彼女と関わった人物を主人公にして、
その人のドラマの中に彼女を登場させる形で描かれた連作短編。

感情を表面に出さないが、求めれば応えてくれる。
それでいて気まぐれで、後先考えずに行動する。
おとなしいのにずうずうしく、ひどい目にも遭うがあっけらかんとしている。
つかみどころのない女性だが、はっきりしているのは逞しいこと。
この手の女性を描いたら、桜木さんはほんとうに上手だ。

流れ流され生きてきた、なれの果ては哀しい。
あえて不幸に突き進んでいくようでもある。
決して共感できる女性ではなかったが、
終盤、幼少の頃に別れた娘に会いに行く場面は切なかった。

桜木さんの描く北海道はやはり良い。
地に足がついている。実生活をよくわかってらっしゃる。
小樽の塩谷、幌延町の問寒別(といかんべつ)、それに増毛だろうか。
舞台となる地域のチョイスもいいところを突いてくる。
文章も滑らかで、心の垢がとれていくような純粋さがある。
もっと注目されていい作品だと思う。

■渋谷直角
「奥田民生になりたいボーイ/出会う男すべて狂わせるガール」
(2015年)
   渋谷直角/奥田民生
渋谷直角氏の作品を楽しみにしていた。
私の選ぶ2013・ブック・オブ・ザ・イヤー」において選考した、
「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」は
サブカルチャーやロックが好きな人にとっては
たまらない面白さがあったと思う。
今回の作品も良い。
かゆいところ、というか、痛いところに手が届く面白さである。

だらだらとやっていそうに見えて、決めるところはしっかり決める。
というか、結構ハードに精力的に仕事をしているのに、
力を抜いてマイペースに活動しているように見える。
そんな奥田民生氏のようになりたい編集社勤務の35歳男性の話だ。

奥田氏の作品の歌詞がストーリーに盛り込まれており、
特に物語の導入部分の切り込みは、
業界の胡散臭さも絡まってあまりに魅力的。
奥田氏のファンであり、サブカル好き、ロック好きの私は、
にやけっぱなしだった。

後半はおバカな恋愛模様にフォーカスされ、
かつ蛇行するような展開になり、
奥田氏は関係なくなってしまったのが残念。
しかし、前半のインパクトや勢いは凄い。
奥田氏のようになりたい男を主人公にした、その感覚だけで絶賛できる。

■樋口毅宏「ドルフィン・ソングを救え!」(2015年)
   ドルフィンソング
自分に絶望して自殺を図った女「トリコ」(45歳・独身)。
目が覚めてみると、そこは1989年の東京だった。

彼女は80年代後半から90年代にかけて邦楽シーンに
強烈なインパクトを与えた「ドルフィン・ソング」という
男性二人組ユニットを敬愛していた。
しかし、1991年解散する。
その理由は、メンバー同士による殺人だった。
過去に戻って人生をやり直す機会を得たトリコは、
ドルフィン・ソングの解散(殺人)を阻止すべく奔走する。

これもまたサブカル好き、ロック好きには堪えられない作品だろう。
トリコは、ドルフィン・ソングに近づく方策がないまま、
レジ打ちのバイトで生活をする。
そんな中、洋楽ロック誌「rockin’on」に送った原稿が
編集部の目にとまり、業界に出入りできるようになり、
ついにはドルフィン・ソングと懇意になっていく。

一度90年代を実体験してきたので、
どのバンドが売れて、どのバンドが売れないか、
音楽シーンはどうなっていくのかを知っている。
なので、アルバム批評は実に的確で、
音楽ライターとして引っ張りだこになる。

例えば、全く売れないエレファント・カシマシを嘆く音楽関係者に対して、
「悲しみの果てにたどりつけば売れます」と言いきったり、
ローリング・ストーンズの日本公演は最初で最後かもしれないと
大騒ぎする業界関係者の中で、
「大丈夫、何回も来ますから」と言い放ったりと、
タイムスリップ感を心憎いほど面白くチョイスしている。

岸信介にクリソツだと言って渋谷陽一氏を登場させたり、
場末のバーに入ったら、精神的にやられた中森明菜が
ひとりで酔いつぶれていたりなど、実在する(した)人物も多数登場。
80’S
から90’Sという激動の時代を
真剣に痛快にもてあそんでいる感が最高だ。


                      ◆

帯広は先週の大雪以降、晴れの日が続いている。
冬の十勝のスタンダードな天候だ。
もったいないくらい連日青空だ。
寒さは厳しいが、風が強い日は少ないし、ほんとに生活しやすい。

日曜日、帯広駅に立ち寄った時、
これから結婚披露宴に出席すると思われる男女4人(30歳前後)の
会話が耳に入った。
「どのタイミングでキス・コールする?」みたいなことを喋っていた。
キス・コールを受けキスをする新郎新婦。
それも珍しくないのだろう。
でも、人前でさせるかね。
それに、人前でするかね。
しかも知ってる人達の前でだ。
家族や親戚だっているのに。
その披露宴に呼ばれていなくて良かった。

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