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今回は「2015・アルバム・オブ・ザ・イヤー」。
私が2015年に聴いたアルバムの中から、
特に心に残ったもの、今の自分を象徴するもの、
たくさん聴いたものをセレクトし、
誰からも求められていないのに発表する毎年恒例の企画である。

年々新譜を買わなくなっているし、聴かなくなっている。
それは自然なことだ。
今回選ばれたのは、ほとんどが70年代の作品。
年齢的、キャリア的に最もフィットする時期なのだろう。

こちらから目的を持って歩いて行って出会っているのではなく、
散歩している途中で予期せず出会い、
また会いたくなって、そのうちすっかり気に入ってる。
そんなふうに付き合いが始まった4枚のアルバムを紹介したい。

フリー「FIRE AND WATER」(1970年)

01_フリー 
この年齢になって初めてきちんとフリーのアルバムを聴いた。
なんとも座りがいいロックだ。
合皮の質感、クッションの堅さ、背もたれの角度など、
やけにフィットする一人掛けソファを見つけたような感覚だ。

つや消しブラックのようなサウンドがたまらない。
当時メンバーの平均年齢が20歳だったというのが信じられない。
安定感のあるプレイは、ちょっと熟していて渋みさえ感じる。

ポール・ロジャースのボーカルが素晴らしい。
スモーキーで湿り気があるのに、伸びやかで、
どこまでも突き抜けそうだ。
それでいて、シング・ライク・トークなのだ。
話すように唄っているかのごとく聴こえてくる。

キャッチーなメロディはないし、口ずさむようなところもない。
しかし、ギターソロはしびれるフレーズが多い。
楽器は基本、ギター、ベース、ドラムのみで、
隙間も多めで、それぞれの音がクリアにリアルに聴こえることで
いいノリというか、いいグルーヴが生まれている。
これがロックなんだよ、とでもいうべき、ロック・オブ・ロックな一枚。

ザ・ローリングストーンズ「エモーショナル・レスキュー」(1980年)

02_ストーンズ
今年もまたストーンズのアルバムが登場だ。
私がリアルタイムで聴いたストーンズの最初のアルバム。
私と同学年であるドラムのオダ氏のミート・ザ・ストーンズも同じだった。
つまり、私の世代の洋楽リアルタイム体験は
中学2、3年頃だったということになる。

この作品は、数あるストーンズのアルバムの中で、
あまり取り上げられない印象がある。
大ヒットした「SOME GIRLS」(1978年)と
TATTOO YOU」(1982年)の狭間の作品と捉えられている感があるし、
いわゆる有名な曲や大ヒットした曲は収録されていない。
リード・シングルとなった「エモーショナル・レスキュー」でさえ、
全編がミックジャガーの怪しい裏声で、気色の悪ささえ感じる。

ただトータルで聴くと、実に味わい深い。
当時のダンスミックス的サウンドやレゲエなどが盛り込まれつつ、
ストーンズならではのジャンキーさとうまく絡み、
バラエティに富んでいながら一貫性があり、
アルバムという単位で捉えると、よくまとまっているなと。

刺激を受け、衝動にかられ、自分も何か表現をしたくなるのではなく、
ザ・ローリングストーンズという街で
ナチュラルに過ごしたくなるようなアルバムだ。
キース・リチャーズの弾きすぎないギター・プレーが渋い。
余計な装飾や隠し味を排除した老舗の定番の和菓子のようで、
なんとなくにやけてしまう。

ボビー・コールドウェル「イブニング・スキャンダル」(1978年)
03_ボビー
2015年における私にとっての音楽的な広がりのトピックスのひとつが
AORミュージックとフレンドリーになれたことだ。
きっかけは明確に覚えてはいない。
何かのタイミングで、ドナルド・フェイゲンの「ナイトフライ」が
しっくりと耳に馴染む日があり、
スティーリー・ダンの「Aja」がしっとりと胸にしみた日があり、
AORをもっと聴いてみようかと思ったことが始まりだろう。

そういうわけで、AORの定義も概念もよくわからないまま、
ボズ・スキャックス、エア・プレイ、クリストファー・クロスなど、
なんとなくAORにカテゴライズされそうなものを色々と聴いた。
その中で、最も聴いた、というか、使ったのが
ボビー・コールドウェル「イブニング・スキャンダル」だったように思う。
「使った」というのは、聴く目的ではなく、とりあえず流しておこうか
ということが多かったからだ。

なぜかしらニュートラルな感覚になれる。
落ち着くというか、音楽が流れていることを忘れるというか。
どんなメッセージが込められているとか、
ここのベースのフレーズが素晴らしいとか、
そういう方向に興味が向かない。
それを追求する気もない。
音楽とのそういう付き合い方もある。

ただ、そうしたある種「無」の感覚にさせてくれる
ボーカルの肌触りの良さと優れた演奏テクニック、
そしてサウンド・プロダクトがあるということだ。

洋楽AORに興味を持ったことで、
そのアンテナは日本のAORにも波及し、
杉山清貴氏までたどり着いてしまった。
12月下旬に「最後のHoly Night」を聴いている自分が信じられない。

ピンクフロイド「狂気」(1973年)
04_ピンク
2015年の私のミュージックライフにおける象徴が
フリーとの出会いだったとすれば、
最大の事件はピンクフロイドの世界に「入学」できたことだ。
いや正しくは「入楽」だ。
ピンクフロイドを楽しめるようになる音楽的なキャリアを
積んだということだ。
一方、キャリアを積んだことで楽しめなくなった音楽もあるだろう。
しかしそれでいい。
容量には限界があるし、容量に合わせて楽しむのが健康的だ。

それにしても、このアルバム「狂気」は凄い。
最初の感触はざらついていて、形もいびつであり、
外から見ていて抵抗感もあったのだが、
気づくと外から包まれていた。
いつのまにかピンクフロイドの世界につかまれていた。

流れを壊すような実験的な展開がありつつもなぜか馴染み、
何気にメロディアスでありながらクール。
音の芸術の追究、壮大なサウンド。
「狂気」という名の大浴場・露店風呂につかり、
すっかり気持ち良くなってしまったかのようだ。

メロディやフレーズやテクニックや個々の素晴らしさは
もちろんあるが、それを語る気にならない。
ピンクフロイドという「世界」を味わっている快感。
まさにモンスターなアルバムだ。

                     ◆

ストーンズ以外は、一年前には全く聴いていなかった作品ばかり。
自分の音楽アンテナがどこへ向かうのか今後も楽しみだ。
進化しているのか、退化しているのかはわからないし、
感性が鋭くなっているのか、鈍くなっているのかもわからないが、
音楽全般がとにかく好きなので、触れ合っていれば、
自然とその時の自分に合った音楽が、
音楽の側から近づいてくるのかなとも思っている。

音楽以外のこともそういう感覚がある。
目立った成果や、華々しいことは起こらずとも、
前のめりにならず、やり過ぎず、
でも怠らず、あきらめずに過ごしていれば、
望むべきものが向こうからやってきてくれるものだと思う。

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