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昨年帯広に住み始めてから、
このブログで一度もブックレヴューをしていない。
2014年は、毎年恒例だった「ブック・オブ・ザ・イヤー」も
やらずじまいとなってしまった。

札幌にいた頃は頻繁に読書記事があったのに、
なぜこのような状況になったのか。
理由は二つだ。
ひとつは面白い作品に出会う頻度が減ったことだ。
読書量も帯広に住んでから3割減といったところだ。
もうひとつは単に面倒だからだ。
あらすじや感想を思い出して整理するのは、
意外と時間とエネルギーを要するのだ。

標準以上に面白い作品に出会ったら、
その都度一冊ずつ紹介していけばいいのだが、
なんとなくボリューム的に物足りないような気になって、
しかし、数冊を紹介となると面倒になるという悪循環。

そんな中、今回は一年半ぶりに復活だ。
この2か月ほどは、標準以上に面白い作品に続けてあたったので
気持ちがのった。

それではどうぞ。

■麻耶 雄嵩「さよなら神様」(2014年)
       さよなら神様
鈴木太郎は、小学5年生の男子生徒の姿を借りた「神様」。
この世の中に起こるあらゆる事件の犯人は誰なのかを言い当てる
特殊な能力を持っている、と思われている。

一方、鈴木の同級生で、探偵団活動をしている生徒が数人いた。
彼らは、鈴木の特殊能力を信じていない。
そんな中、小学校の関係者が立て続けに殺害される。
その都度鈴木は、「犯人は○○だよ」と、探偵団に告げる。
鈴木の真偽を確認すべく犯人捜しをする、というストーリー。

まず、登場する小学5年生の会話が完全に大人である。
推理も全く小学生とは思えない。
大人というより、刑事並みの推理と捜査をする。
おそらく作者が意図的にそうしたのだと思うが、
この違和感がなぜかクセになる。

「神様」である鈴木の異質なキャラと、
犯人捜しや人間関係などに苦悩する小学生探偵団との対比も面白い。
動機が弱かったり、殺害する理由としては強引すぎる事件もあるが、
本格推理モノと言っていいだろう

全体的に薄暗いテイストで展開していくが、
エンディングの「残念でした」というフレーズはコミカルに衝撃的。
ここでコケるか、思わずにやっとしてしまうかは読み手によって
異なるだろう。
私は、にやっとしてしまうとともに、奇妙に清々しい気持ちになった。

■桐野夏生「抱く女」(2015年)
       抱く女
時代は1972年。
東京で酒屋を営む実家から大学に通う20歳の女性の話。
大学にはほとんど行かず、雀荘やジャズ喫茶に通い、
男女を問わず友達の部屋を泊まり歩く生活。
そういう堕落した毎日の中、本気で恋をし、
一方では兄が衰退をたどる学生運動の中で、
生死をさまよう重傷を負う。

だらしなく虚しく、行き当たりばったりで能天気。
学生運動の終焉を迎えた時代の、ひとつのモデルケースなのか。
見方を変えれば、実は意外と裕福で恵まれた学生とも受け取れた。
この女性に共感するところはなかった。

内容だけを見ると、「なんだったんだろうね」というような印象だが、
桐野氏が書くと、なぜか読めてしまう。
物語、というより文学としてきちんと成立しているというか。

時代の空気を感じるし、当時のかぶれた大学生の嫌な感じを
うまく切り取っている。
しかし、桐野氏なら、もっと踏み込んで、ヒリヒリした感じで
描けるのではないかとも思った。
期待が大きい分、ちょっと物足りなかったかと。
とはいえ、この独特のあっけらかんとした雰囲気は、
桐野氏ならではの味だなと感心。

奥田英朗「ナオミとカナコ」(2015年)
       ナオミとカナコ
直美と加奈子は大学の同級生。もうすぐ30歳。
直美は大手百貨店の外商部員。
加奈子は都市銀行勤務の夫と二人暮らしの専業主婦。

久し振りに加奈子に会った直美は、
加奈子が夫から暴力を受けていることを知る。
詳しく話を聴くと、鎖につながれたような暗澹たる日々を送っていた。
やがて直美は、加奈子を救うべく夫殺害をもちかける。

これまでに誰かが書いていそうなストーリーだが、
奥田氏の手にかかると、キレがありつつ、奥行きのあるものとなる。
「殺害」という言葉だと重たいからと、
直美は、「排除」や「クリアランス」と表現して、
半ばゲーム感覚で計画を立てていく過程のテンポの良さや、
殺害計画のほころびが次第に明らかになっていく悪化速度など、
実に加減が良く、気づくと共犯者気分になっていた。

読み手を引きつけつつ、想像とはちょっと違う方向に
持っていく展開の妙もある。
また、日本で商売する中国人の図々しさもうまく描き、
展開上、良いスパイスとなっている。
読み出したらやめられなくなる引き込み度の強い作品だった。

■辻村深月「ハケンアニメ」(2014年)
       ハケンアニメ
アニメ会社が覇権を競う話。
タイトルの「ハケン」は、「覇権」であり、「派遣」ではない。
テレビ番組で3か月放送する、いわゆる1クールにおいて、
最も支持を得たアニメを「覇権アニメ」と呼ぶらしい。
それを目指して苦悩するアニメ業界のお話である。

私はアニメに疎い。
もちろん業界のことも知らないし、感心もなかった。
なのにアニメ話を読んでみようと思ったのは、
辻村深月作品だったからだ。
彼女の作品はハズレがない。
確実に平均を超えた読み応えや面白さがある。

アニメ番組は、第何話かによって絵を描く人(会社)が異なったり、
人物を描く人と背景を描く人が違うことを初めて知った。
声優がセリフをレコーディングする際も、
映像が出来上がっていることは珍しく、
絵コンテを見ながらやることが普通らしい。
そうした業界の現実を、驚きとともに興味深く読めた。

登場人物の心の描写を、かゆいところに手が届くような丁寧さで
描いており、人間関係の機微上手に浮かび上がらせている。
まさにアニメ業界を題材にした人間ドラマである。
中だるみがなく、最初から最後まで楽しめた。
いい作品だ。

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