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今回は前置きもなく、いきなりブックレヴュー。
よろしくどうぞ。

■小野不由美「残穢」(2012年)
小野不由美「残穢」
タイトルは、「ざんえ」と読む。
けがれや災いが消えずに残っている、みたいな意味のようだ。
タイトルをすんなりと読めないのは、ちょっとしたストレスだ。
CDで「ジャケ買い」があるように、
私の場合、本では「タイトル買い」というのがある。
その点、「残穢」なるタイトルなら読もうという気にはならないのだが、
山本周五郎賞受賞作というブランド力の興味が勝り、読むことに。

一人暮らしのマンション。
リビングの隣りの和室で、時々畳を擦る音がする。
その音は日を追うごとにひどくなる。
霊がいるのではないか。
疑問にかられた住人は、その部屋の以前の住人に何か不吉なことが
あったのではないかと疑問を持ち、調べ始める。
やがて、住人が短期間で変わる、居つきの悪い部屋であることを知る。
また、その土地に過去に災いが起こっていたことを突き止め、
最終的には大正時代の九州での出来事にまで及ぶ。

端的に言うと、マンションに棲み着く悪霊の原点をたどる物語である。
怖い、でも、面白い、と多くの評価を得ている作品なのだが、
物語ではなく、ルポを読んでいるようで、
迫ってくるものがなく、つかみどころがないまま読み終えた。
展開の妙もオチもなかった。

登場人物が数珠つなぎに増えていき、収拾がつかなくなる。
これほど都合良く、過去の事件や奇妙な現象に結びつくのか。
その結びつきも接着力が弱く、気持ちがのっていけなかった。
相性の問題か。

■真保裕一「正義をふりかざす君へ」(2013年)
真保裕一「正義をふりかざす君へ」
タイトル買いしてしまった。
「正義」を大義名分にして、おごり高ぶり、人を見下す。
そんな人間が、がつーんとやられる痛快な物語だと思った。
実際は、不当に正義をふりかざす者が入り乱れるドタバタ劇だった。

長野県の小都市が舞台。
市長選挙をめぐり、立候補予定者への中傷、地元有力者の陰謀などが
複雑に絡む中、政争の発端になった秘密があぶり出されてくる。

7年ぶりに故郷である長野県に男が帰ってくるところから話が始まり、
不穏な出来事にどんどん巻き込まれていく。
前半はすいすいと興味をかき立てられながら読める。
ところが、中盤で動きが停滞。
その反動か、後半はめまぐるしくストーリーは転がる。

でも、どうだろう。
動機が弱く、つながりが薄い展開で、
そんな理由で、そんなことをするのか?という違和感が離れず、
中盤以降、いまひとつ気持ちがのっていけなかった。
ラストのどんでん返しも、そりゃないだろう、という感じ。
伏線が弱すぎる。

カレールーがあって、豚肉、タマネギ、じゃがいも、人参などがある。
料理を始めるが、肉じゃがを作っているとしか思えない展開。
やがてカレールーを投入するが、ヨーグルトだ、バナナだ、コーヒーだと、
隠し味を入れすぎて味が混乱。
それでもなんとかカレーが完成、と思いきや、
作っていたのはカレードリアだった。
ドリアになる気配などなかったのに。
そんな感じがした。

■薬丸岳「友罪」(2013年)
薬丸岳「友罪」
埼玉県川口市のステンレス加工工場。
鈴木と益田という二人の20代の男が中途採用される。
鈴木は他人を寄せつけない雰囲気をまといながら、黙々と仕事をこなす。
コミュニケーションをとるのが苦手のようだ。

そんな彼を益田は気にかけ、少しずつ鈴木も心を開くように。
しかし、鈴木のちょっとした言動や彼が持っていた写真、
そうしたいくつかの点が、益田の記憶の断片が結びつき線になる。
鈴木は、かつて世間を震撼させた幼児連続殺害事件の犯人だった。
少年法によって裁かれ、服役を終え、実社会に戻ってきたのだった。

鈴木がその事件を起こした経緯については何も語られない。
ミステリでもなければ、伏線らしきものもない。
少年犯罪の「その後」を淡々と描いている。
描かれているのは、実は鈴木本人というよりも、彼を取り巻く人々がメイン。
これが良かった。
読み手に対して静かに投げかけてるかのようだ。
あなたならどうする、と。

自らの家庭を顧みず、鈴木の面倒を見続ける医療少年院の女性。
鈴木に好意を抱く工場の女性社員の暗澹たる過去。
それをネタに卑劣な嫌がらせを繰り返す男。
鈴木を激しく排除しようとする会社の同僚達。
インターネットによる総攻撃。

辛い。厳しい。

きちんと向き合おうとすればするほど、気持ちが踏みにじられる。
そこを耐えなきゃ、などと簡単に言えるものではない。
筆者は、答えを出していない。
というか、答えの出しようがないテーマだ。
辛い。しかし読み応えあり。

余談だが、薬丸岳さんの作品は、映像化されることがほとんどない。
映像化するには酷な内容が多いためかもしれない。
そんな中、現在、TBS系の月曜夜8時から、
「刑事のまなざし」が放送されている。
辛い過去を抱える刑事の人情味あふれるストーリーである。
松重豊。
脇役として、いい味、出してます。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌



















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