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このブログを2007年8月20日に開始してから6年。
アクセス数が10万を突破した。
これまでお付き合いをしてくださった皆様、
ほんとうにありがとうございます。

この3年ほどは、パソコンに向かう体力の衰えなどにより、
更新頻度が落ち込んでいますが、状況が許すうちは、
しぶとく続けていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。

で、今回はブックレヴューであります。

■桐野夏生「ハピネス」(2013年)
   桐野夏生/ハピネス
東京の埋め立て地に立つ超高層タワーマンションに住む29歳の主婦の話。
夫はアメリカに単身赴任中で、3歳の娘と二人暮らし。
以前からタワーマンションに住むことが夢だった彼女は、
優雅にセレブ生活を満喫、と思いきや、お金も心も不安定な日々を送る。

まず、同じタワーマンションに住む「ママ友」との付き合い。
彼女達はお互いを、「相手の子供名前+ママ」と呼び合う。
例えば、花奈(かな)ちゃんの母親は、「花奈ママ」と呼ぶ。
これだけで胡散臭い。というか、「ママ友」という時点で既に胡散臭い。

彼女達の中には、ボス的存在のママがいて、周りはやんわり服従状態。
彼女とうまく付き合わなければ、激しく仲間はずれになるのではないかと
不安になり、煩わしさにうんざりしながらも関係を保つ。
やがて、自分は人数合わせ要員であると気づくが、
なんとなく付き合いを続ける。

また、単身赴任中の夫とは音信不通状態。
給料は送金されてくるものの、最低限の生活をするのがやっとの額。
洋服は基本ユニクロである。
夫の両親とも折り合いが悪く、娘を引き取って離婚させようとしている
ように思えてくる。

こうした先の見えない不安と孤独とストレスを抱えつつ、
彼女は彼女で見栄を張り、出身地や経歴なども偽り、
自分で自分を苦しめていく。

こんなしようもない話なのだが、桐野さんが書くと面白い。
ママ友同士の駆け引き、姑とのいざこざなどの描写は秀逸。
さらに、「ママ友あるある」的な要素も含め、30代の女性の生態を
よく把握していらっしゃる。
エンディングはちょっと拍子抜けしてしまうが、
文章レベルの高さで十分に楽しむことができる作品。
面白いです。

■三羽省吾「JUNK」(2011年)
三羽省吾/JUNK
「指」と「飯」という2作の中編が収められている。

「指」は、掏摸の話。
「掏摸は、他の犯罪に比べて再犯率が高い。
必要に迫られて技術を修得した奴らも、
いつの間にか技術の方に飲み込まれるからだ」、
「あの“抜く”と決めた感覚は制御できない病だ」など、
切れ味のある文体で、掏摸特有の世界を見せてくれる。

主人公は臆病でありながら、掏摸をやめられない。
金が必要でもないのに、掏ること自体が目的となってしまう。
やがて、別の掏摸集団にスカウトされ、怪しい企みに巻き込まれていく。
次第に間合いをつめてくるような緊迫感を楽しめる。

「飯」は、刑務所近くの食堂でバイトをする男の話。
食堂は、さえないオヤジがひとりで賄っている。
いかにも粗末で、味も悪く、特定少数の客しか来ないジリ貧の店。
バイトの男の本当の仕事は、食堂で働いているふりをして、
刑務所の出口を見張り、ある男が出所したら
依頼者に連絡をするというものだった。
しかし、出所の瞬間をただ待つだけなのは退屈なため、
暇つぶしに食堂の手伝いを積極的にする。

そんな時、食堂のオヤジがケガで入院。
バイトの男は、食堂をひとりで賄わなければならないはめに。
しかし、見張りをやめるわけにはいかない。
そんな状況の中、食堂業務に精を出してしまう。
いい加減だった味付けを改善し、工夫を施したら、客が増え始めた。

正直なところ、出所者を見張った事情とその後のゴタゴタよりも、
店が次第に繁盛していく過程の方が面白かった。
軸のブレが少し気にはなったが、アウトサイダー的な世界を、
クールでタイトな文体で書き上げており、
別の作品も読んでみたいと思えた。

山田詠美「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」
    (2013年)
      山田詠美/明日死ぬかもしれない私
共に子連れで再婚した夫婦。子供は4人。
微妙な寄せ集めの家族だが、皆それぞれに思いやり、
絵に描いたような幸せな日々を送る。
しかし、突然の悲劇が。17歳の長男が雷に打たれて急死する。
そのショックから母はアルコール依存症に。
次第にエスカレートする母の言動に、
残された子供達は、母に愛されていたのは長男だけだったのだと思い知る。
そんな家族の15年間が、長女、次男、次女の視点から語られる。

幸せな家族になろうと必死になり、時には痛いほどに気を使い、
なかでも次男の苦しみと背中合わせのような甘えぶりは辛くなる。
長女はそんな自分達を愚かで滑稽に感じることがあったり、
次女は、満ちあふれた愛情の取り扱いに苦心したり、
それでも、家族に失われたもの、それを埋めるものを
探し求める物語である。

良い作品である。著者の文章力の高さに圧倒される。
さらりとしていながら深みがある。
そして、死があり、毒があり、すさみ、悲しみや苦しみがありつつも、
どういうわけか筆者が書くと美しいのだ。

ストーリーだけを追うと、これといった劇的な場面はなく、
後半はそれまでの静かで重みのある緊張感がとけたように、
表面的には朝のテレビ小説的なホームドラマっぽくもなるのだが、
筆者の技量がそこを引き締め、ラストでは、小説だからこそできる
ちょっとしたマジックもある。

ある意味、「死」というものをめぐる物語である。
「男と女のことに限るけど、かけがえのない人を失った時の穴は、
別のかけがえのない人でないと埋められない」、
「死ね、と、大好き、が組み合わさると、人は何もないところでも躓く」、
「この人が死んだら、私、どうしようって胸が締め付けられそうになるの、
と彼女は言った。でも、あたしは違う。自分が死んだら、
この人はどうなるんだろう、と思いを馳せる側の人間に、あたしはなりたい」
含蓄のある言葉にもあふれた、出会えて良かった作品である。
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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌





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【2013/08/25 11:31】 URL | にじ子 #c1lU9Dss[ 編集]















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