ADMIN TITLE LIST

先日、「シュガーマン 奇跡に愛された男」なる映画を観てきた。
マイナー映画への造詣が深いカルチャー知人、N山氏から、
「劇中に流れたミュージックが素晴らしかったね。
 おかげで、映画を観た後、即CDを購入してしまったよ」と、
陽気なアメリカ人のセリフを和訳したような言葉で言われ、
私のシネマ神経が大いに刺激された。

ところが、この作品は1日に1回しか上映されず、
しかも午後6時からという、若干厳しい時間帯であった。
場所も「ディノスシネマ」という微妙に距離がある場所であった。
しかし、いつのまにか消えていった70年代前半のミュージシャンの話と
いうのが興味を高めるとともに、

レンタルDVDとしてTSUTAYAに入荷することはないであろうと
予測されたので、どうしても観ておかなければならない気持ちになった。
なぜに人は条件が悪くなるほど欲する気持ちが高まるのか。

私が観に行った日は、約100人が入る劇場に観客は私を含め3人だった。
最高だぜ。
終業時刻とともに職場を出て、時々小走りをしながら、
劇場に来た甲斐があったぜ。

シュガーマン1 

この作品は、1970年にデビューした
デトロイトのフォーク・ロック・シンガー、「ロドリゲス」氏に
関する実話で、実際の人物が出演したドキュメンタリーである。

2枚のアルバムをリリースし、ごく一部の間では絶賛されるが、
セールス的には全くぱっとせず、
1973年頃から音楽シーンにおいてロドリゲスの名を
聞くことはなくなる。
しかし、デトロイトから遠く離れた南アフリカで、
彼の音楽は誰もが知っているほど有名な存在になっていた。
彼のアルバムを持って南アフリカに渡った人がいて、
そこから、人から人へと広まっていったのだと言われている。
そして、20年以上に渡り、幅広い世代に支持され続けた。

1996年、南アフリカのレコード店主とジャーナリストが、
消息不明になっているロドリゲスに関する情報提供を呼びかける
ウェブサイトを立ち上げる。
しばらくは有益な情報がなかった、
しかし数か月後、驚くべきことにロドリゲスの娘からメッセージが届く。
そして、1998年、ロドリゲスの南アフリカ公演が開催されるという
奇跡のストーリーである。

作品は、海が見える崖っぷちのワインディング・ロードを走る車の中から
撮影した夕暮れの景色で始まる。
バックに流れる曲は、ロドリゲスの「シュガーマン」。
美しい映像と哀愁のあるメロディ。
このシーンだけで、作品の世界にいきなり吸い込まれていく。

ロドリゲスの音楽は、わかりやすくも雑な言い方をすれば、
ボブ・ディランやニール・ヤング方面の雰囲気である。
語りかけるように歌っているのに、なぜか伸びやかで声に艶がある。
クスリ、労働者階級、政治など社会性のある歌詞ばかりなのに、
届けられる声と音は優しさに包まれ、実に癒やされる。
デトロイトの自宅の近くの雪道を歩くロドリゲスや南アフリカの街並み、
そんなありふれたシーンなのに、彼の音楽がバックに流れていることで、
立派に映画として成立してしまうほどである。

音楽シーンから消えた後のロドリゲスは、
解体工や電気工などをして生計を立て、
家庭を持ち、子供をもうけ、一市民としてデトロイトで生活していた。
20数年の時を経て、南アフリカでは今でも超有名人であるという話が
舞い込んでくる。
信じられない気持ちだっただろう。

信じられない気持ちのまま、南アフリカ公演へ向かう。
南アフリカに飛行機が到着し、彼が飛行機から降りてくるシーン。
そこは現実の映像ではなく、CG処理されているのだが、
夕日に照らされた鮮やかな映像に鳥肌が立つ。

そして、南アフリカでの公演。
会場は、老若男女5000人の観客で満員。
そこにロドリゲスが登場。
1曲目を演奏する前から、いつまでも鳴り止まない拍手と歓声。
全身がじわっとして熱くなった。
ロドリゲスは、驚くこともなく、照れてしどろもどろになることもなく、
実に穏やかな表情で歌う。
それは自分の帰ってくるべき場所にたどり着けたような穏やかさに思え、
感動の波が押し寄せる。

まるでおとぎ話である。
こんなことが本当にあるのか。
映画を観て、これほど胸が震えたことはあっただろうか。

シュガーマン2 

映画が終わった後、私もすぐにCDを聴いてみたくなった。
帰り道、タワーレコードのあるピヴォの前を通ったにもかかわらず、
これほどマイナーな作品が置いてあるのかという不安から、
帰宅してamazonにて購入。
これが時代なのだろうか。

CD
も素晴らしかった。
キャッチーなフレーズはあまりないのだが、
ずっと寄りかかっていられるような安らぎがある。
捉えようによっては、ジャック・ジョンソンから海っぽい要素を
取り除いて、泥臭くも清らかにした音楽にも聴こえる。
田舎道をのんびりとドライブしたくなる。
無人駅に行きたくなる。

南アフリカ公演からデトロイトに戻ったロドリゲスは、
いつもの仕事に戻り、いつものような生活を繰り返す。
それがまた愛おしい。
祭りの後の寂しさも悪くない。
スポンサーサイト

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画



















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 トゥナイト今夜もRock Me Baby, All rights reserved.