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AKB48には特に興味はないのだが、
唯一、柏木由紀という人は、ちょっと気になるところがあった。
取り立てて何かに優れている感じはせず、
前面に出てくる雰囲気も持っていないのだが、
ちょっと垢抜けない感じが妙に魅力的に思えていた。
しかし、AKB48というグループから離れた場合、
芸能界でやっていけるのか、と余計な心配もしていた。

そんな彼女が、年明けから「ミエリーノ柏木」というドラマに主演。
彼女は探偵役で、手を握ると、その人の近い未来が見えるという
特殊能力を持っている。
なんともバカバカしい設定だと思いつつも、試しに見てみた。

これが面白い。
彼女の素朴さ、意外な男っぽさ、ぶりっこぶりがいい感じで
ミックスされていて、なかなか個性的な人物になっている。
また、脇を固める佐野史郎氏とキング・オブ・コメディの今野氏が
非常にいい味を出して締めており、ちゃんとしたドラマにしている。
毎回、恋の指南役で登場するリリー・フランキー氏の佇まいも面白すぎる。

さらには、バックに流れる音楽がブルース・ギターで、
映像がちょっとスモーキー、そして、セリフまわしが「時効警察」っぽいのも
琴線に触れ、このシーズンで最も楽しみなテレビ番組になってしまった。
テレビ北海道で木曜深夜というのも逆にいい。

この番組もあと一回で終わってしまう。
一度見逃してしまったのが残念だし、
録画はしたものの、その都度消去したのも、今となっては失敗だった。
ぜひDVD化してほしいし、新シリーズでの復活を臨んでいる。

さて、今回はブックレヴュー。
よろしくどうぞ。

■永井するみ「秘密は日記に隠すもの」(2012年)
秘密は日記に隠すもの
日記にまつわる4つの短編で構成されている。
いずれの作品も、日常生活では語られない秘密の出来事を
日記に書きつつも、盗み見されることを想定して、
あえて、架空の話や嘘を盛り込み、
盗み見した者を驚かせるようなストーリーになっている。

例えば、「夫婦」という作品。
定年退職をした夫が書いている日記は、妻に先立たれたものの、
解放されて気ままに生活しているという内容だが、
現実は、妻は元気で、友達と韓国旅行に行となど、
夫は放っておいて、勝手に楽しくやっていたりする。

夫婦や姉妹など極めて近しい関係にある者に対する黒い感情が日記に
記され、だましだまされ、どんでん返しがあり、不思議な面白さがある。
「えっ、そういうことだったの?」と、前のページに戻って確認することも
何度かあり、仕掛けのうまさも楽しめる。

短編ながらも起伏のある展開で、厚みのある内容。
それでいて、さらりとまとめられ、すっきりと読めてしまう大人の文章。
筆者は、2010年、この短編の連載中に亡くなった。
貴重な作家だっただけに実に残念。

■高城高「夜明け遠き街よ」(2012年)
      夜明け遠き街よ
1980年代、ススキノのキャバレーで「黒服」と呼ばれる敏腕店員の物語。
ほとんどは、ホステスや裏社会的な組織とのトラブル解決の話であり、
フィクションではあるが、現実に起こったような内容も
多く盛り込まれているように思えた。

大学生から社会人になる頃にバブル景気を迎えた私は、
バブルで儲けたことも損をしたこともなく、
バブルは首都圏での出来事、あるいは
テレビの中の出来事のように感じていた。
よって、バブル時代への思いが特にないし、
当時の様子を流すテレビ放送も、きらびやかな部分ばかりを出し過ぎかなと
思っている。

そんな私なので、全盛期のススキノへの思いも特にない。
一番強い印象は、夜11時過ぎに公衆電話にできる行列がすごかったことだ。
お金がなかったので、ススキノには滅多に行かなかったし、
当時のススキノの街角は、関わりたくないタイプの人々が多くたむろしており、
そもそもススキノというエリアに抵抗感があった。
抵抗感が小さくなったのは、ここ数年のことだ。

そんな私なので、この黒服ストーリーは別世界のことであり、
正直なところ、黒服ってこんなにクールでスマートで礼儀正しいだろうかと
ちょっと首をかしげながら読んだ。
ただ、読み物としては面白いし、映画を観ているような展開もいい。
また、キャバレーってこんなにお金がかかるんだ、と今更ながら驚いた。
キャバレーが次から次に閉店した後、
黒服の多くは所在が不明になっている場合が多いと書かれていたのには、
なんというか、やはりそういう世界なのかなと、微妙な気持ちになった。

■大野更紗「困ってるひと」(2011年)
      困ってるひと
「筋膜炎脂肪織炎症候群」という原因不明の難病を発症した20代女性の
闘病記録を綴ったエッセイ。
この難病は、体中が炎症を起こして常に激しい痛みがつきまとい、
発熱や倦怠感なども強く、筆者の言葉を借りれば、
毎日がインフルエンザにかかっている状態だという。
歩くことさえままならず、車いすでの生活をしている。

暗澹たる気持ちになるエッセイであり、読んでいて特に辛くなるのは、
病名がわからず、病院をたらい回しにさせられ、
そのうちどんどん症状が悪化していく過程。
特に、大学病院における冷たい対応は気持ち悪くなるほど。
私もこれまで二度の骨折の際、同じような経験がある。

彼女はやがてまともに歩けなくなり、移動はほとんどタクシーとなる。
そのうち入院。多額な医療費、痛みとの戦い、不遜で傲慢な医師、
介護認定などにおける役所との間の手続地獄。
読んでいて恐ろしくなる。
病院間の対応の差も激しいが、役所にしても、市区町村によって、
素っ気ないところと、親身になってくれるところの違いが凄まじい。
というか、病人にこれだけ手続きをさせなければ、
介護をはじめとした認定ができない仕組みは、なんとかならないのか。
若き厚生官僚に期待したい。

内容の多くは辛い闘病記録なのだが、
軽いタッチで、ユーモラスに書かれているとともに、
ポップな知性がうかがえる読みやすい文章である。
医師と看護師が陰口を言っているのを聴いてしまったり、
病院内でちょっとした恋物語があったりと、
悲喜こもごもあらゆる感情にあふれた良質エッセイ。
筆者はあらゆる才能をお持ちの方だと思う。応援したい。

■伊坂幸太郎「砂漠」(2005年)
      砂漠
仙台の大学生5人の男女による大学生活4年間の青春物語。
合コンから始まり、麻雀、ホストとの抗争、
強盗事件とそれに伴う事故、文化祭、そして恋愛など、
大学生という中途半端な時期を生き生きと描いている。
タイトルは不毛感や荒涼感をおぼえさせるが、内容はポップで熱い。

大学生5人のキャラクターが絶妙。
皆、なにがしか欠けている要素があるのだが、
そこが愛おしくなるように巧く描いている。
なかでも、不器用ながらぶれない男、西嶋のキャラクターの立ち方は
他の登場人物を圧倒している。
見た目はぱっとしないが、本気で世界平和を願い、
常に毅然たる態度で正直に接し、ロックが好きで心優しい。
筆者の理想の人物、あるいは、自分の思考や思想を
投影した人物なのかなと思えるほど、
伊坂イズムを感じさせる人物でもあった。

西嶋はラモーンズとザ・クラッシュが大好きで、
歌詞の一部や、ジョー・ストラマーの名言なども随所に盛り込んでいる。
まるでロックに興味がなかった女性が、西嶋に会ってから、
ラモーンズを聴いてみたくなり、CDを買いに行く場面も非常に良い。

また、一部のロック好きにはたまらない、こんな場面がある。
セドリックが衝突事故を起こしたという場面でのこと。
 「そのセドリックはもちろん新型なんでしょうね」
 「新型じゃないとまずいのかよ、西嶋」
 「まずいですよ」
 西嶋はこだわったが、追求はしなかった。
 おおかた、彼の好きな音楽であるとか小説に関係するたぐいだろう。

ルースターズだとか触れずに、
わかる人にだけわかればいいという感じで
さらっと流しているのが逆に印象に残る。

エンディングも良い。
爽やかというか、晴れやかというか、見事に決めたな、という感じである。
この言葉をここに生かしてきたかと、「してやられた」感を楽しめる。

伊坂作品は、「アヒルと鴨のコインロッカー」が一番気に入っており、
それに次いで、「ゴールデンスランバー」かなと思っているが、
その二作と甲乙つけがたい作品である。

楽しい大学生生活を描いた作品ながら、終盤こんなセリフがある。
「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、
 あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは
 絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」
はっとするような、ちょっと元気をもらえるような素晴らしいフレーズだ。
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