2月11日月曜日、札幌CUBE GARDENに、
オカモトズのライブを見に行ってきた。
ソリッドでありつつ、突き抜けるようなサウンドは、
余計な形容をするよりも、実にロックらしいロック
と言った方が適切だろう。
「みんなと一緒に歌いたいと思ってこの曲を作ったんだ」、
「次は新しいアルバムの曲だぜ。みんな聴いてくれるかい?」など、
ちょっと古いスタイルのブルース色のあるMCも全く違和感がなく、
いい空気感を作ることができるバンドだと感心した。
オカモトズのメンバーは21歳と22歳。
それより年下のお客さんはあまり見かけなかった。
30歳前後の人が一番多かったように思う。
40歳以上と思われる人は1割くらいいただろうか。
ちなみに客の入りは、周囲の人との距離感にストレスや苦痛を
感じない程度に満員。300人近くいたのだろうか。
そういうわけで、お客さんのほとんどは彼らより年上。
20代前半のバンドでこの状況は素晴らしいことだ。
彼らは、決して若さに任せて突っ走るのではなく、
音楽に誠実に向き合っているのが伝わってくるし、
メンバーのトークも、お客さんに対して基本ため口なのに嫌味がなく、
むしろ人の良さみたいのがにじみ出ていた。
そんな彼らを、年上のオーディエンスは暖かく、微笑ましく
見守っているようにも見えた。
と同時にそれは、古くからある王道ともいえるロックンロールを
好きな人達にとって、彼らが期待の若手であることの表れだろう。
◆
トークの中で、雪まつりを見に行ったという話をした。
メンバー4人で出かけ、こういう雪像を見た、こんな雪像があった、
こんなエピソードがあった、など延々と話したのだが、
お客さんの反応は、「へぇ~」や「ああ~」など。
そこでオカモトズは気づいた。
札幌市及びその周辺の市町村の人達は、
ほとんど雪まつりに行かないことを。
「えっ、もしかしてみんなあまり雪まつりに行かないの?」の問いに対して、
「行かな~い」の声多数。
「ちょっと待って、雪まつりに行った人、手をあげてみて」
すると、手をあげたのは30人くらい。
続けて、「じゃあ、毎年行かない人ってどのくらいいるの?」と問うと、
軽く100人以上が手をあげた。
「雪まつりの話をしたら盛り上がるかと思ったのに…。
雪まつりに行ってはしゃいでる俺達って田舎者だよね。
でもみんな、雪まつりには行かないけど、
オカモトズのライブには来るんだ」
いい雰囲気を持ったバンドである。
アンコールでは、メンバーが物販のセールスをした。
「このタオル、かわいいでしょ。すごくかわいいでしょ。
いや違う、めんこいっしょ」
この北海道向けトークに拍手が沸くとともに、
お客さんから、「なまらめんこい!」の声がかかる。
ここで、オカモトズは「なまら」というものを知る。
「“なまら”って、とても、とか、すごくって意味なの?」
会場から、「そう、そう、そう」の声多数。
そこからオカモトズは「なまら寒い」、「なまら美味しい」など、「なまら」を連発。
ひとしきり盛り上がって、少し飽きた頃、
「“なまら”のほかに、北海道弁なんかなんの?ちょっと教えて」
と客席にふる。
それに対して、客席前方から、「わや」の声がとんだ。
問題はここからだ。
前方の客「すごいっていうこと」
オカモトズ「どんなふうに使うの?」
前方の客「“なまら”と同じ」
オカモトズ「えっ、“なまら”と同じなの?わや寒いとか」
ここで一部の客は盛り上がった。
おかしくないか。
「おい、それ違うだろ」と思った客は多いはずだ。
会場最後方の私を含めたオーバー40歳エリアでは、
違和感のせいなのか、ちょっとざわついた。
私が幼少の頃は、「わや」という言葉を使う大人がたくさんいた。
しかし、私の世代は、ほとんど「わや」という言葉を使わない。
高校の同級生では、音楽知人である赤井氏と矢作氏が使っていた記憶が
あるくらいで、私自身使ったことがない。
とはいえ、意味はわかる。
私は、「ひどい」、「どうしようもない」、「めちゃくちゃだ」みたいな意味で、
なんとなく乱雑な状態であることを表現しているものと理解している。
「なまら」と同じということは断じてない。
面倒くさい説明をすれば、「なまら」は形容詞を修飾する。
つまり、「なまら」+形容詞である。
英語で言えば「very」、訳せば「非常に、甚だ」である。
政治家が中国の行為に対して、「甚だ遺憾だ」と言う。
北海道弁で言えば、「なまら遺憾だ」である。
これに対して、「わや」は形容動詞なのではないか。
「わやである」なのだ。
昨日、網走の人は、「断水して、もうわやだ」と言ったはずだ。
英語で言えば、「heavy」とか、「hard」みたいな感じだろう。
オカモトズは調子づき、「わや面白い」、「わや眠い」など連発。
変な使い方に、心がきしむ感じがして、
オカモトズは、「わや」の使い方を誤ったまま、
札幌を後にするのかと考えたら、ライブどころではなくなり、
集中してアンコールのステージを見られなかった。
私の気持ちが、わやになった。
ただ、北海道の若者が、「わや美味い」などと使っているのを
耳にしたことがあるような気もする。
だとすれば、どこかの世代から「わや」の意味合いが違って
捉えられているということだ。
これは非常に気になる。なまら気になる。
皆さんのご意見を伺いたいほどだ。
今回、「わや」の使い方を考えてみて、
「わや」の前に、「もう」という言葉が付くのが自然だと
いうことに気づいた。
これは、「終わりだね」の前には、「もう」を付けるしかないのと同じだ。
私が北海道弁なのかどうか気になっている言葉は、「ばふらっと」だ。
「これちょっとまとめてみて。ばふらっとしたものでいいから」のように、
「大まか」、「ざっくりとした」みたいな意味で使われる。
北海道以外の人が使っているのを聞いたことがない。
オカモトズは、前述したとおり、「わや面白い」、「わやかわいい」など、
誤った使い方なのにもかかわらず、「わや」を面白がって多用した。
そんな中、合わせ技で「なまらわや」と言ったメンバーがいた。
その使い方は間違いじゃないような気がした。