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今年の札幌は、高温期間が長かった。
最近10年くらいは、明らかに季節が後ろにずれている。
年内に雪があまり降らなかったり、
4月になってもいつまでも寒かったりする。
私の中では盆を過ぎてからの真夏日は当たり前に思っていた。

それにしても今年は長すぎた。
暑さに強い体質なので、9月上旬の真夏日も気にならなかったが、
9月10日頃になって一気に夏バテ状態になり、
連日身体がだるく、家ではほとんど横になっていた。

と思ったら、4、5日前から急に涼しくなった。
そしたら、やけに体が軽くなってエネルギーを持て余し、
眠気がやってこなくなった。
それはそれで厄介なものだ。
そんなときこそ本を読めばいい。
とは思うが、なかなかそうとはならない。
とかくこの世はままならないのだ。

そういうことで、今回はブックレヴュー。
4冊を紹介。

■相場英雄「震える牛」(2012年)
相場英雄/震える牛
主人公は警視庁の刑事。
二年前に発生し、未解決となっている殺人事件の捜査を
特命で担当することになる。
不可解な形で操作が打ち切られ、棚上げになっていた事件だった。

改めて捜査をしていくと、事件の背景には、
タイトルのとおり、牛が震える病気、
つまり、BでSでEな問題があることにたどり着く。

そこにたどり着く過程で、
地方に進出した大型ショッピングセンターと地元商店街の疲弊、
食肉偽装問題、さらには原発問題なども絡めて描いている。

正直、犯人は誰で、なぜ殺人を犯したのかという本筋より、
こうした本筋を支える出来事の方が面白い。
最近は、高額のテナント料やマージンを嫌って
撤退する人気店も多いことなど、
大型ショッピングセンターとテナントとの間の問題は興味深かった。

食肉偽装のミートでホープ的な問題は今更ながらぞっとする。
私は、ハンバーグやミートボールなど肉のまぜもの系冷凍食品は、
既に10年くらい控えている。
外食店で使われているハンバーグなども実態はわからない。
ただ、びっくりドンキーのハンバーグだけは大好きだ。
安全・安心だと信じているが、
安全・安心の概念を超えた独特のあの美味しさは何にも代えがたい。

枝の部分の話は面白い。
ただ、幹が弱い。
聞き込みをして得た数少ない情報が、都合よくつながり過ぎる。
また、事件が発生した二年前の初動捜査があまりに杜撰であることも含め、
現実離れしている印象が付きまとった。
逆に、流通業界や食肉偽装の問題などはリアリティのあるものだっただけに、

全体のバランスが微妙で、ストーリーがぼやけて感じた。

■桜木紫乃「ワン・モア」(2011年)
   桜木柴乃/ワンモア
桜木さんの作品には、はずれがない。
特にこの2、3年の作品は、ため息の出るような深い読後感がある。
徹底して北海道内の地方都市を舞台にしていることも好感を持っている。
それと、桜木さんの作品は、すぐに読み終えてしまう。
5頁くらいまでに、話の中に引きずり込まれ、どんどん読めてしまう。

この作品は、30代の女医二人と、それを取り巻く人々の物語。
女医の一人は開業医。彼女はガンを患い、余命半年と告げられる。
彼女は、それを機に、別れた夫と復縁し、
また、自らの医院を、大学の同級生だった友人の女医につがせる。

その医院は個人病院で、看護師は一人だけ。
50歳間近のベテラン女性看護師、独身である。
彼女の恋愛話が途中描かれている。
これが、切なくも温かく、展開上いいアクセントになっている。
さらには本屋の店長や放射線技師の恋の話も絡んでくるのだが、
キャラクター設定が良く、さらに人物同士の距離感を
非常にうまく描いている。

淀みなく、さらりとした文章ながら、行間の持たせ方が良いせいか、
濃密になっている。
それなりに人生経験を積んだ大人だからこその葛藤、理解、遠慮。
そうした苦さや痛みが、しっとりと心に伝わってくる。
良い小説とはこういう作品なのだと思える。

■柴田哲孝「秋霧の街」(2012年)
     柴田哲孝/秋霧の街
福島県在住の私立探偵の話。
新潟で二年前に起こった不可解な殺人事件。
殺害されたのは20代の女性。
犯人は、五十嵐という彼女の高校の同級生の男性とされたが、
五十嵐は行方不明。

殺害された女性の父親は、五十嵐は犯人ではないとして、
真相を調べてほしいと探偵に調査を依頼。
調べていくうち、新潟の港湾地域におけるロシア人社会に
秘密が隠されていることを突きとめる、という内容である。

まず感じたのは、新潟の都会化である。
市町村合併などにより、いまや人口80万人を超える、
本州の日本海側最大の都市であること。
それとロシアとの取引がこれほど密に行われていることに驚いた。

ただ、港湾地域の状況、例えば道路、建物、市街地との距離感など、
頭の中で映像を描きにくい書きぶりになっており、
ストレスを感じながら読むはめになった。
ストレスを放っておきたくないので、
石狩湾新港地域に置き換えて読んだ。
6万人都市の石狩市の港と、筆者のイメージは異なるだろうが、
映像化しにくい書きぶりなので、そうするしかなかった。

前半、少しずつ手がかりをつかんでいく過程はなかなか面白い。
また、「双眼鏡 -ニコン・モナークⅢ 10×42D を出し、
周囲を見渡した」とか、
「携帯電話を取り出した」と書かず、「iphoneを取り出した」など、
ハードでボイルドな感じの表現もうまく溶け込んでいる。

ところが、全体的に濃密さがない。
どこかで見たことがあるような場面が多い。
また、人物の心理描写が薄い。
前記の映像化しにくい港湾地域の有り様も含めて、
どしっと構えた落ち着いた雰囲気が不足しているかと。

■浅田次郎「降霊会の夜」(2012年)
     浅田次郎/降霊会の夜
人里離れた高原の地で、静かに生活している初老の男。
ある雨の夜、見知らぬ女性が彼の家の庭に迷い込む。
助けられた彼女はお礼をしたいと言い、後日、彼を降霊会に招く。

その降霊会には彼のほか3人の女性がいた。
そこで起こったのは、降霊の術によって、
亡くなった人が誰かに取りつき、
その亡くなった人のように話を始める、というものだった。

読む側としては、怪しくもファンタジックな世界に突入され、
リアリティが崩壊する。若干しらける。
ところが、ここからが面白い。

まず登場するのは小学校の同級生とその周辺の人物。
昭和30年代の半ば、小学生だった主人公の家庭は裕福だった。
ある日、転校生がやって来て仲が良くなる。
ただ、その転校生の家はひどく貧乏で、親もびとい人で、
周りはあまり付き合うなと言い始める。
やがてその転校生を見捨てるような言動を繰り返してしまう。
そんな時、転校生は不慮の事故で亡くなる。

冷たくしてしまったことへの罪悪感や後悔が、
ずっと心にひっかかっていたのだろう。
それが転校生の霊を呼び寄せた。
当時が語られるシーンは壮絶である。
激しく貧富の差があった時代。
不公平さと理不尽さを伴いながら繁栄へと進もうとする日本。
主人公に冷たくされながらも、亡くなる日の別れ際、
泣きながら、「ごめんね」、「さいなら」と言って手を振った転校生の
場面は、どうしようもなく胸がつまる。

また、昭和40年代前半、大学生になった主人公が出会った、
工場で働く貧乏な女性のエピソードも胸がざわめいた。
若さゆえ、カッコつけて一方的に見捨てた恋への苦悩が、
実に丁寧に描かれている。

いきなり雨の中現れ、降霊会の誘いを受け、
行ってしまう方も行ってしまう方だと、
テンションが下がりながら読んだ序盤だったが、
滑らかにぐいぐい引き込む文章力のすごさに、
リアリティの無さなどふっとんでしまう。

昭和の成長期の社会と青春時代の痛みがかみ合い、
苦しみと癒しが同居するような、なんとも言えない気持ち。
それと、きちんと別れることの大切さが書かれているように思えた。
過去にきっぱりと決別しなければ前へは進めない、みたいな。
しかし、それはとても難しいことだ。
その辺りは一般的に女性の方が器用だろう。
だか、どちらでもいい。
こうやって考えているうちに、もう次々と未来がくる。
反省しながら歩いていく。
今はそれでオールライトということにさせてほしい。
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