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今回は、私の選ぶ「2011・ブック・オブ・ザ・イア」。
半年以上、本の記事を書いていなかったが、
ほぼ週一冊ペースで、何かは読み続けていた。

本の記事は他の記事よりも時間を使うため、
なかなか踏み切れずにいたが、心のどこかが便秘状態のようで、
「2011・ブック・オブ・ザ・イア」をやっておかないと、
開けてこないような気がして、
時期がずれた感はあるものの記事にすることにした。

「2011・ブック・オブ・ザ・イア」は、新作部門と旧作部門があり、
新作部門は、2010年、2011年に発刊された作品を、
旧作部門は、2009年以前に発刊された作品を対象とし、
それぞれ特に心に残った5作を発表するものである。

まず今回は新作部門の5作を。

【新作部門】
■第1位 沼田まほかる「ユリゴコロ」(2011年)
     ユリゴコロ/沼田まほかる2011  
 主人公の男性はカフェを経営している。
 ある日実家に帰り、物置となっている部屋にあった段ボールを
 何気なく開けてみると、
 そこには「ユリゴコロ」というタイトルのノートがあった。
 書かれていたのは、少女の殺人日記のような手記だった。

 読んでいくうちに、このノートに書かれていることは
 現実の出来事だと思うようになり、
 誰が書いたものなのかを調べ始める。
 幼少の頃のかすかな記憶の中にあった母への違和感。
 失踪した彼の婚約者の秘密。カフェの従業員の女性の献身ぶり。
 そうした彼を取り巻く状況が、
 ノートの筆者を知ることによって明らかになっていく。

 ノートに書かれていることは残酷で生々しいが引き込まれていく。
 常に暗さと怪しさを漂わせながらも、
 どんな謎があるのかと読み手を追いかけさせるように構成された、
 まとまりの良さを感じる。
 
 2011年は、筆者の文庫がよく売れた。
 私も「九月が永遠に続けば」と「彼女がその名を知らない鳥たち」を
 読んだが、この「ユリゴコロ」の方が展開にリズム感があり、
 ドキドキしながら面白く読めた。
 エンディング・シーンもなんとも微妙で不思議な気持ちになる。

■第2位 桜木紫乃「硝子の葦」(2010年)
硝子の葦/桜木柴乃2010 
 
  彼女の作品のこれまで「風葬」と「凍原」を読んだことがあるが、
 いずれも道東が舞台の作品である。
 この「硝子の葦」も釧路市と厚岸町が舞台となっている。

 厚岸でスナックを経営する母を持つ主人公の女性は、
 釧路でラブホテルを経営する男性と結婚。
 その男は、母の愛人だったという設定。

 登場人物がそれぞれに抱えた重たい過去と出口のない現実を、
 整然とした筆致で綴っており、
 さらりとしていながも、迫力を感じさせる。
 なんというか、いい意味で文章が大人である。
 
 構成が巧みで、ストーリーとしても十分に面白く、
 また、特に会話によって人物像を浮き上がらせ、
 心情をうまく表現している。
 地域の描き方が相変らず素晴らしい。
 景色やそこにある建物のことなど、あまり書いていないにもかかわらず、
 湿原、霧、特異な形状をした厚岸の街が見えてくる。
 薄暗い作品であり、地域を鮮やかに描いているわけではないのに、
 なぜか魅力的に思え、釧路や厚岸に訪問したい気持ちにさせる。
 もっともっとメジャーになっていい作家だと思う。

■第3位 湊かなえ「花の鎖」(2011年)
    
花の鎖/湊かなえ2011

 大ベストセラー「告白」より後の筆者の作品の中では、
 一番面白かったと思う。

 物語は、3人の女性のことが、それぞれに語られていく。
 3人はそれぞれの場所で、それぞれの悩みを抱えながら
 暮らしているのだが、共通して登場する「K」という男。
 最初のうちは、Kと女性たちの関係が見えないのだが、
 女性たちの生活環境やエピソードが語られるうち、
 「あれ?ちょっと待てよ」、「ああ、そういうことなのか」と
 いうふうに、少しずつわかり始めてくる。

 こうした真相を小出ししていくバランスが非常に良い。
 特に、人付き合いの面でさりげなく時代背景を織り交ぜているのが
 実に効果的である。
 2011年の新作5作は、どれも静かな余韻に浸るような作品ばかりと
 なったが、この作品はちょっとほろっとくるような感動もある。
 また、タイトルと内容がぴたっとはまっているのも好感。

 「告白」がとんでもなく売れたことにより、
 いまだにそれと比較されることの多い筆者だが、
 確実に力はつけているし、
 きちんと世界に引き込んでくれる力作だと思う。

■第4位 池井戸潤「下町ロケット」(2010年)
下町ロケット/池井戸潤2010  
  2011年上半期の直木賞受賞作。
 ロケットエンジンの開発に夢を馳せた中小企業社長の物語。
 大企業による下請けいじめや、手のひらを返したような銀行の貸し渋り
 などにより、深刻な経営難に陥る。
 そこに追い打ちをかけるように、企業つぶしを得意とする企業から、
 特許をめぐって訴訟を起こされ、会社存亡の危機に。

 そんな中、この中小企業が取得したロケットエンジンの特許技術が、
 ある大企業の目にとまり、また夢は歩き始める。
 しかし、あら探しとも、嫌がらせともとれる執拗なエンジンテストが
 繰り返され、次第に追い込まれていく。

 文学というよりは、テレビドラマを文章にしたような感じで、
 NHKで火曜日か土曜日の夜に全6回で放送してそうな内容である。
 それがいいのか悪いのかはよくわからないが、
 ストーリーが明快でわかりやすく、
 紆余曲折がありつつも、自らの信念と周囲の協力、支援によって、
 夢に向かって突き進んでいく展開は、
 読み手も同じような気持ちにさせるのではないだろうか。

 事実、読み終ると、面白い映画を観たような、
 心地よい疲労というか、達成感のあるため息が漏れる作品である。

■第5位 薬丸岳「刑事のまなざし」(2011年)
刑事のまなざし/薬丸岳2011
 少年鑑別所などで、心理学の専門的な知識などにより、
 少年と向かい合い、非行や犯罪の原因を分析し、
 立ち直りや更生の指導をする「法務技官」という職業がある。

 主人公はかつて法務技官だった。
 しかし、十年前に娘が襲われた事件をきっかけに刑事に転身。
 犯罪者を改善する立場から、犯罪者を捕まえる立場になった。
 そんな彼が、自分の過去と現実と戦いながら事件を解決していく。

 この作品は7つの短編で構成されており、連作となっている。
 落ち着きがありつつ、淡々と核心に入りこんでいく展開は、
 重たく、苦しく、悲しい気持ちにさせる。
 また、筆者はどの作品もそうだが、事件の背景にあるものが切なく、
 実にやりきれない気持ちにさせる。

 暗く憂うつになる読者も多くいると思われるが、
 この作品には優しさがある。
 フィクションだからこその優しさと言えなくもないが、
 静かに充実した時間を過ごせる一冊ではないだろうか。

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 こんばんは、お元気ですか。カルパッチョ田中です。
やっと『花の鎖』を読みました。
 この小説は読んでいると無性に“きんつば”が食べたくなります。
 夢中で読んでいると、ランバード藤田が「ニセコのお土産。」と言って偶然“きんつば”をバイしてきたのでビックリしました。道の駅で買ったとか。
【2016/10/13 22:19】 URL | カルパッチョ田中 #-[ 編集]

カルパッチョさん、どうも。
もう5年近く前の記事にコメントを寄せるところが
ブルースですね。

ランパード氏はいい感じにマメですな。
きんつばをセレクトするところもソー・ナイス。

柳月のきんつば「十勝大納言」。
実家に帰るとき、時々買って持って行きます。
仏壇に供え、翌日、私が食べています。
【2016/10/24 23:58】 URL | 本人 #-[ 編集]















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