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かゆいところに手が届くのは、そりゃいいことかもしれないが、
かゆいところに手を伸ばしてこないことより、
かゆくないところに手を伸ばしてくる方が、私は苦手だ。

今回はブックレヴュー。

■畑野智美「国道沿いのファミレス」(2011年)
国道沿いのファミレス
主人公の男は25歳のファミレス社員。
東京の店に勤務していたが、わけあって、
高校まで過ごした東京近郊の小都市の店に異動となった。
そこで繰り広げられる彼の恋愛、彼の幼なじみの秘密、
ファミレスで働く人々のすったもんだなどを、飄々と綴っている。

なんというか、終始ダイレクトな表現で、さっぱりとしている。
良く言えば、力みがなく、気負いがなく、ストレートでわかりやすい。
その反面、迫りくる気配や、何かが起こる予感のようなものに乏しい。
前置きがなく、いきなり本題に入り、さっと場面が動いていく。
これは好みが分かれるところだろう。
そして、言葉の使い方にしても、展開にしても、とにかく「軽い」。
特に恋愛行為については軽すぎて不快な気分にも。

主人公のキャラクターが一貫していない。
ぱっとしない風貌で、特に目立つに雰囲気ではないのに、
中学から女性関係は派手で、
それでいて、「立派な社会人になるのを目標に、
人に自慢できる大学に入った」という記述があったり、
一方、現在は、店の裏でヤンキー座りをしてタバコを吸う場面があったりと、
人物像が描けず、違和感は最後まで拭えなかった。

ただ、ストーリーのネタ自体は悪くない。
素材は良いのに、味付けや皿への盛り方が好みじゃなかったような。
ちなみに、この作品を読んでみようと思った最大の理由は
タイトルが良かったことだ。

■沼田まほかる「九月が永遠に続けば」(2005年)
沼田まほかる/九月が永遠に続けば
主人公は41歳の女性。
彼女は離婚しており、家族は高校生の息子が一人。
ある夜、息子にゴミ出しを頼む。
息子は、ゴミを持って外へ。
そのまま息子は行方不明になる。

この女性には付き合っている男性がいた。
息子が行方不明になった翌日、その男性が電車にひかれて亡くなる。
女性は、息子の知り合いに、息子の交友関係を聞いてまわるうち、
付き合っていた男性の電車事故に
息子が関わっているのではないかとの疑念を持つ。

息子が行方不明になってからの女性の不安な気持ちや、
交際男性の不可解な事故が絡んでいるような恐怖感。
さらには次第に浮き上がってくる複雑な人間関係を
実に緻密に描いており、ぐいぐい引き込まれる。
中盤までは一気読みできる面白さがある。

中盤以降は真相が徐々に明らかになっていくのだが、
「だからって、そんなことになるかね」的な現実感の薄さや、
行動の飛躍ぶりのせいで気持ちがとぎれ、だらけ読みになっていった。

ただ、文章表現は地に足がついており、かろやかでありつつ、
しっかりと迫ってくるものがある。
桐野夏生作品にありそうな薄暗さもいい雰囲気を出している。
この作者の作品は初めて読んだが、ぜひ別の作品も読んでみたい。

■村上春樹「1Q84/BOOK2」(2009年)
村上春樹/1Q84-BOOK2
スポーツジム・インストラクターの女性、「青豆」(あおまめ)と、
小説家を目指しつつ、塾の講師をして生計を立てる「天吾」の物語。
二人は小学校の同級生だったが、
青豆は転校し、その後20年間会っていない。

青豆は、裏稼業として殺し屋をやっている。
天吾は、ゴーストライターを担当した本がバカ売れする。
二人はそうした人に言えない秘密を持っている。

BOOK2では、そんな二人がそれぞれに、
秘密を知っている見えない影に追い詰められていく様子とともに、
20年間会っていない二人が、次第にお互いを求めていく経過を
綴っている。

なんらかんら変な展開はあるものの、結局は面白い作品だと思う。
一つひとつの場面の動きの幅が小さく、
状況の変化を綿密に描いているため、興味がそれない。

青豆の友人や、懇意にしている家の番犬が殺害されたり、
天吾の不倫相手の夫から突然連絡が来たり、
天吾を支援していた出版社の男と音信不通になるなど、
徐々に周囲が断ち切れていく経過を綴った中盤までは実に面白い。

ただ、その後は変化に乏しく、
また、二人が求め合い、次第に近づいていく心理が、
理屈っぽくも大雑把で、なんだかよくわからないため、じりじりする。
そんな気持ちのまま、
BOOK2は終わる。
こんな気持ちでは終われない。
BOOK3も読まずにはいられない。

■奥田英朗「純平、考え直せ」(2011年)
      奥田英朗/純平、考え直せ
新宿の21歳のチンピラが、組の親分から別の組の幹部を
殺害するよう命じられる。
その見返りとして、多額の現金と三日間の自由を与えられる。

三日のうちに初日に、同年代のあると女と出会う。
チンピラは、その女に、三日後に殺人をすることを喋ってしまう。
女はそれをインターネットの掲示板に書き込む。
すると、驚くほどたくさんの反応が返ってくる。

「そんなことはするな」、「思いとどまれ」、という全うな意見が多いものの、
「やくざが一人でもこの世からいなくなるのは
普通の市民にとってはとてもいいこと。

鉄砲玉になるチンピラも刑務所行きなので一石二鳥です。」、
「若いやくざがヒロイックな気分に浸っているだけで、語る価値なし。
どの道、犯罪者 になるしかない連中。勝手にやらせておけばいい」など、
小馬鹿にした意見も多数あった。

その三日間に、チンピラはたくさんの人に出会う。
普段の生活への未練を感じてくる。
組の親分への信頼も微妙な気がしてくる。
しかし、ヤクザとして男になるという魅力もある。

果たして、結末は。

奥田氏の文章は、文章に過不足がなく、展開も上手なので、
引っ張られるようにどんどん読める。
ネットの反応が妙にリアリティがあって面白い。
これを随所に織り交ぜながら、展開させていくのも面白い。

ところが、なんだろう。
読んでいる時は先へ先へと気持ちがはやるのだが、
読み終わってからの余韻が薄い。
主人公にまるで共感できないし、魅力を感じないのも要因だろう。
ただ、そうであっても、良い作品は良い。

どうしてそういう結末に至ったか、主人公の心理が読めない。
彼は、実は結構楽しく日々を過ごしているように思え、
心の影の部分や孤独さみたいなものが見えてこない。

自由な三日間の中で知り合った元大学教授の言葉。
これが最も心に残った。
「若者が死を恐れないのは、人生を知らないからである。
 知らないのは、ないのと同じ だから、惜しいとも思わない。
 我が子を抱いた感動も、大業を成しえた喜びも、
 肉親を看取った悲しみも、旧友と語り明かした温かみも、
 ろくな経験がないから、今燃え尽きてもいいなどと平気で言う。
 まったく若者はおめでたい生き物だ」

          *

内閣不信任決議案提出の是非など、どうでもよくなって、
いつ身をひくのかが焦点に。
みんな、踊らされるなよ。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌





政治はゲームか!政局禁止法案提出したい。
 その前に衆議院議員撰に出馬ですね。
 コネと金、権謀術数駆使して当選した暁には、政局禁止法案提出します!料亭に行ってみたいです!
【2011/06/02 19:44】 URL | タピオカ鈴木 #-[ 編集]

タピさん、コメントありがとうございます。
この状況を打開するいくつかの方法のひとつが、
「タピオカ鈴木料亭訪問」であることに異論はありません。
そもそも、総理が変われば、まとまるのでしょうか。
そのことを教えてくれる説明会を開催してほしいですね。
【2011/06/04 00:26】 URL | ksw #-[ 編集]















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