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ストレス疲れと、災害ショックで、
三連休は出かける気がせず、ほぼ引きこもっていた。
21日、一時間ほど散歩したら、
この二、三日の間に、ずいぶんと雪解けが進んだなと思った。

春が近づいた。
タモさんも、昼に戻ってきた。

いつまでも不調キャラではいられない。
新しいメガネでも買おうかと考えたりする。
タモさんに触発されたわけではない。

メガネによって、何かが変わるわけではないだろうが、
なんとなく外出したくなるような気がする。

今回はブックレヴュー。
5冊いってみよう。
よろしくどうぞ。

■道尾秀介「月と蟹」(2010年)
      道尾秀介/月と蟹
2010年下半期作品を対象とした第144回直木賞受賞作品。
主人公は小学4年生の男子。
母と祖父と暮らしており、生活は苦しい。
学校生活も決して楽しいものではない。

純粋であるがゆえに傷つき、心の中はぐちゃぐちゃなのに、
なんとなく平然と過ごす主人公の苦悩は、
10歳ならではの世界観や価値観を、
丁寧に、それでいて鋭く描いている。

ところが、正直なところ、あまり面白くなかった。
私の想像力と経験の不足のせいなのか、
頻繁に登場する、スーパーの裏の小さな山でヤドカリを飼う場面は、
映像のイメージができず、この場面になると、
一気に集中力が散漫になり、文字世界から逸脱した。

また、少年の内向的な狂気性みたいなものへの掘り下げは深かったが、
その反面、展開に乏しく、少年の世界の外側のことについては、
なんとも雑ぱくな印象だった。

友達同士の微妙な関係、主人公の母の恋愛、義足の祖父の存在感など、
個々には、波乱を感じさせるポイントがあったのに、
引きこんでくれそうなところで、うやむやになったり、
途切れてしまった印象があり、筆者の作品には珍しく、
なかなか読み進められなかった。
抑制が効いている、と評価する向きもあろうが、
私としては、ちょっと物足りない感じがした。

■東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」(2010年)
東川篤哉/謎解きはディナーのあとで
この作品、売れているらしい。
主人公は女性刑事。
彼女は刑事でありながら、大財閥の娘である。
彼女を取り巻く重要な登場人物が、
彼女の家の執事の男性と、気障でずっこけ気味の男性刑事。
この三人、本のジャケットに描かれた絵のイメージのとおりである。

作品は、六つの短編で構成されている。
いずれも、事件と捜査の内容を、彼女が執事に愚痴るように話し、
それをヒントに、執事が解決の道筋をつけるというもの。

コミカルで、わかりやすい内容である。
それぞれの事件の真相は、特にインパクトがあるものではないが、
キャラクターづくりが上手く、
展開がパターン化しているのも効果的で、ついつい読んでしまう

なんとなくアニメを見ているようであり、
テレビの二時間ドラマを見ているようでもある。
そんなに遠くない時期に、何らかの形で映像化されるのでは
ないだろうか。
また、登場人物とそれを取り巻く環境など、土台となる設定が
しっかりしているため、シリーズ化しやすいだろうとも思う。
ただ、小説としての面白さは賛否が分かれるかも。

■今野敏「エチュード」(2010年)
今野敏/エチュード
新宿、渋谷の人混みの中で起こった連続無差別殺人事件。
犯人は現場で逮捕されるが、犯人は完全否定。
調べていくうち、現場の人混みの中で、
犯人ではない者が犯人に仕立てられていたという可能性が出てくる。
この犯罪の解明にあたるベテラン刑事と女性心理調査官の物語。

今野敏作品は、やはり面白い。
一ページ目からすんなりと招き入れられ、
五ページくらいで、すっかり物語の中に身を置いている。
この一気の引き込む筆致は素晴らしい。

犯人がすり替わったように見せるテクニックを解明しようと、
心理調査官が実験するシーンは特に面白い。
ベテラン刑事が次第に女性心理調査官を理解し、
信頼していく流れも良い。
ストーリーの軸がぶれず、と同時に、
警察内部の事情や登場人物の過去などの肉付けの加減も丁度いい。

あくまで結果論だが、スムーズに終わったせいか、
ずんと心に来るものが、もう少し欲しい気もしたが、
テンポが良く、読後感も良く、素直に面白いといえる作品。

■乾くるみ「セカンド・ラブ」(2010年)
      乾くるみ/セカンドラブ
時代は1983年。
工場で働く、さえない男。
恋愛経験に乏しく、学歴にも職業にもコンプレックスを持つ。
そんな彼が、良家のお嬢様と出会い、次第に仲を深めていく。
しかし、彼女の電話番号は教えてもらえず、住所もわからないまま。
なんとも不自然な形で、二人は付き合っていく。

そんなある日、二人で街を歩いていると、
彼女は、通りすがりの中年から、クラブのホステスと間違えられる。
それが気になった主人公の男は、そのクラブへ行ってみる。
そこには、彼女とそっくりのホステスがいた。
話してみると、双子だと告げられる。
そして、事もあろうに、主人公の男は、ホステスとの仲も深めていく。

転がるようにストーリーが展開するため、ついつい読めてしまう。
お嬢様とホステスの関係も興味をわかせるし、
少しずつ、ちょっとしたズレというか、違和感が表れ始め、
どんなオチが用意されているのかと期待感も高まる。

ところが、違和感が拭えないまま読み終えた感じがして、
いまひとつすっきりしなかった。
ああ、そういうことだったのかと、ちょっと不気味で憂鬱な結末は、
衝撃はあるものの、いくつかの疑問が疑問のまま、
ほったらかしにされたような印象が残った。

面白いことは面白いのだが、余韻はあまりないというか。
それと、ジャケット写真に魅力がない。
また、タイトルと時代からして、何らかの形で中森明菜を
絡めてくるかと思いきや、そんなこともなかった。
なお、この作品を中森明菜的に言えば、
「セカンド・ラブ」というより「禁区」だった。

■百田尚樹「影法師」(2010年)
百田尚樹/影法師
江戸時代の北陸の小さな藩の話。
下級武士から筆頭家老にまで成り上がった男と、
子供の頃から勉学にも武道にも長け、人望も厚く、
将来を嘱望されながらも、後に転落した男の、
数奇な運命と友情を綴った物語。

上級の武士と下級の武士との間の理不尽な差別、
中級の武士であっても、次男、三男となれば不遇となる現実、
年貢に苦しむ農家など、地に足のついた形で淡々と描いている。
また、
一坪とは、一日分の家族の米を収穫する水田の広さであるとか、
含蓄のある豆知識をところどころ織り交ぜていることが、
作品を深みのあるものにしている。

フィクションとはいえ、そこまで自らを犠牲にできるものかと、
ちょっと行き過ぎた感じをおぼえたため、
私の涙腺を刺激するに至らなかったが、
泣けてしまう読者はそれなりに多くいるのではないだろうか。

現在と過去を交差させたストーリーの組み立ては効果的。
また、読んでいると、静かな興奮を感じつつも、
心が穏やかになっていくような雰囲気がある。
いい作品だと思う。

    ◇      ◆      ◇

いくつになっても、群れたがる人は多い。
それで安心するのかもしれないが、
面倒くさくないのかね。
下品に見えるし。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌



















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