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不思議なもので、パソコンが故障し、
自宅にパソコンがなくなってから、ブログの更新頻度が高まった。
私は、マイナス状態になると、やる気が高まる典型的なタイプなのか。
確かに、屈辱感や劣等感を味わうと、やる気を出すタイプではある。

「ほめると伸びるタイプではなく、負けるとがんばり始める」とか、
「競わせるとやる気を出すタイプ」のようなことを、
中学の時も、高校の時も、教師から言われたことがあり、
もしかしたら、そのことがずっと、無意識のうちに頭の片隅に住みつき、
そういう人間性になっていったのかもしれない。
逆に言えば、過不足のない状態だと何もせず、ひたすら現状維持を好み、
もっと上へ、もっと先へとは思わないタイプである。

それはそれとして、今回はブックレヴュー。
パソコンが故障しても、読書だけは変わらぬペースだ。
極めて面白かった作品もあり。
それでは、どうぞ。

■辻村美月「光待つ場所へ」(2010年)
   光待つ場所へ
素直になれない、プライドが邪魔をする、勇気が出ない、など、
何かすっきりせず、悔しく、恥ずかしく、息苦しい日々を送る。
そんな10代、20代の女性を描いた短編が、三作収められている。

辻村氏の作品ついては、いつも似たような感想を述べてしまうが、
誰のセリフなのかわからなかったり、
ちょっとした説明が省略されている感じがして、
どんな場面で、誰と誰が会話を交わしているのか、わからない箇所がある。

つまり、筆者の思いに、こちらの想像がついていけてないのだ。
一歩一歩、足跡をつけるような書きぶりではなく、
突如、ぽ~んと飛んだり、ふわっと浮いてとどまっているような展開になり、
何をどうしたいのか理解に苦しむのだ。
心情の描き方は、丁寧で緻密なのにもかかわらず、
展開がところどころ不可解なのは疑問。

それでも最後まで読ませるから、辻村作品は不思議だ。
もやっとしつつも、最後まで飽きさせずにページをめくらせ、
きちんとしたオチがあり、結果的に何を書きたかったのかが伝わってくる。
なお、文体や表現の仕方は、私の好きなタイプではある。

三作の短編のうち、「しあわせのこみち」は、画家を目指す女子大生の話。
内にこもりがちな性格の主人公が、
初めて飲み会に行ったり、大学の男子学生と電車に乗らずに歩いて帰り、
心を開いていく場面など、ほんとに上手に描いている。
終盤、過去を整理し、素直な気持ちを表していく様子は、
清々しく、そして、ほろっとくるような、いじらしさがある。

ほかの二作の短編もそうだが、どろどろとした心境や、
誰しも思い当たりそうな青春の痛みみたいなものを軸にしつつ、
最後には、一番大切な気持ちを浮き上がらせ、
優しくほのぼのとした余韻を残す。
そして、どの作品も、登場人物の距離感がとても良い。
それだけに、こちらの想像で補えない点がいくつかあるのは残念。

(1994年)
   閉鎖病棟
1995
年の山本周五郎賞受賞作。
筆者の氏名は「ははきぎ・ほうせい」と読む。

精神科の閉鎖病棟に入院している患者達の物語。
彼らの閉鎖病棟における日常と、家族との関わり、
また、入院するに至った過去の出来事などを織り交ぜながら、
淡々と描いている。

いきなり大声でお経を唱えだす者、
特定の時間になると異常なまでに掃除に没頭する者、
並んでいる蛇口の端から端まですべて水を飲む者など、
患者達の奇異な行動が随所に登場。
これもまた、あくまで淡々と描いている。

病棟での演芸会、殺人事件、退院など、
ポイントとなる出来事が、いくつかある。
これもまた、当たり前の出来事のように淡々と描いている。

こうした一貫した淡々さが、静かな安定感を生み、
過激なシーンも、逆に、より読者に伝わるのかもしれない。
私の印象は逆だった。
もっとえぐってほしいな、もっと迫ってほしいなと思いつつ、
ちょっと歯がゆい思いで読了した。

特に、家族から厄介者にされ退院しても帰るに帰れないこと、
無愛想な医師に対する屈辱的な思いなど、
切なく、つらく、苦しい思いを、もう少し表面に出すとともに、
深く描いてくれてもよかったかなと。

内容自体は濃く、やりきれなくなったり、
ほろっときたりする箇所があるのに、いかんせん素っ気なく、
印象を薄くしている。
筆者と私との感受性の質の違いや温度差を感じずにはいられなかった。

ただ、ある患者の過去を描いている場面。
戦後の混乱と復興の中で、何かが捻じ曲がっていく様は
読み応えがあっただけに、全体としてもっとどうにかできたような。
文学の根本をわかっていない者の感想としてご容赦を。

■貴志祐介「悪の教典」(2010年)
悪の教典・上  悪の教典・下
非常に面白かった。
これほど夢中で読書をするのは、年に何度もない。
読書をするために早く家に帰りたいと思わせた作品である。

東京郊外にある私立高校の話である。
主人公は20代後半の英語教師。
教師達からの信頼が厚く、
親身でスマートな対応は、生徒達からも人気がある。
いわば、完璧な教師である。
しかし、その完璧さの裏には、
人間とは思えぬほどの「悪」が住みついていた。

この2か月くらいの間、最も読んでみたい作品だった。
ところが、札幌市図書館の予約は600件にも達し、
また、上巻と下巻があり、それぞれ1,800円ということもあり、
なかなか思い切れなかった。
しかし、思い切って上巻を購入。
あまりの面白さに、初日に100ページほど読み、
その翌日には下巻を購入してしまったほどである。

完璧と見られていた教師が次第に崩壊し、
信じがたい行動に出てしまう過程は、スピーディでスリリングで、
読むのをやめられなくさせる。
物語の流れは早いが、決して浅いわけではなく、
伏線の張り方も上手で、ウィットに富んだ英語のセリフも、
いいポイントになっている。

とにかくストーリーに圧倒される。
その点では、今年のナンバー1といっていい。
ネタバレになるが、かなりの人が殺される。
読んでいて不快になる方も多くいると思う。
それでも、緊迫感の高さと、どこへ行き着くのかの興味が、
不快感を超えてしまう。

この教師のクラスの生徒全員が登場するが、
生徒の棲み分けが巧みで、交通整理が行き届いているため、
読んでいて混乱することはない。見事だと思う。

正直、文学的な妙味は、それほどでもなく、
後にまた読みたくなるようなタイプの作品とは違うかもしれない。
しかし、映像がはっきりと浮かび(映像化されたらR-15は確実)、
いきなりノンストップの危険なドライブに付き合わされる。
ただ、過激で壮絶でありつつ、意外に意外性は薄い。
山、坂、カーブはあれど、たどり着くべきところにたどり着く感じ。
だからこそ、興味や集中をそらさず、ひたすら面白く読めたかも。
2010ブック・オブ・ザ・イアの上位は確実だ。

      ◇      ◆      ◇

ところで、本日(25日)、新しいパソコンを予約した。
日曜日には、パソコンが家にやってくる。
慌てふためき、振り回された日々も終わる。

しかし、新しいパソコンが届いたら届いたで、
パソコンのない生活に、あれほど弱気になり、
不安になっていたにもかかわらず、
「パソコンが新しくなったからって、何が変わるわけじゃないぜ」などと、
言いそうな気がする、そんな私。
ただ、それこそが、弱い自分をさらけ出しているようで、
逆に自分らしいような気がする。
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