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一昨日の夜、借りていた本を返却するため、元町図書館へ行った。
既に閉館していたので、夜間・休日用のポストに本をインした。
そして帰宅。
テーブルの上には、一冊の本があった。
それは、今、返してきたはずの本だった。
そう、私は、借りた本ではなく、自ら所有している本を、
返却ポストに入れてきてしまったのだった。

翌朝、図書館が開いてすぐの時刻に電話し、事情を説明したところ、
誤って投函した本の存在を確認できた。
そして、週末に取りに行くことで話はついた。
ただ、「来館してカウンターで言ってもらえればいい」とだけ言われ、
こちらの名前すら聞かれなかった。

電話で対応した人が、当日カウンターにいるとは限らない。
いざカウンターに行ったら、「そんな話は聞いてない」
ということになり、面倒な展開にならないか。
そう思った私は、面倒だったが、
自ら名乗り、相手のネイムを確認し、
訪問日時を告げた。
訪問してから面倒になるよりはいい。

ちなみに、返却しそびれた本は、昨夜、返却ポストに投函してきた。
今回は、その作品から紹介だ。

■野沢尚「反乱のボヤージュ」(2001年)
野沢尚/反乱のボヤージュ
東京にある国立大学の敷地内に存在する学生寮。
大学事務局は、寮の廃止を打ち出すが、寮生は抵抗。
両者の折衝は平行線をたどる。
結局、今後、寮の規則を破ったら、即取り壊しということになり、
大学事務局は、寮生の監視役として、元刑事の50男を
「舎監」として寮に送り込む。

舎監と寮生は、当然のことながら、対決姿勢に。
舎監は厳しく、ときには容赦なく寮生達を打ちのめすようなことも言う。
その反面、舎監の実直さが、次第に寮生達との距離を埋めていく。
複雑な親子関係にある者、就職取り消しで自暴自棄になる者、
ストーカー被害に遭う者、
舎監は、そんな寮生達の相談役として、大人として、父として、
そして最終的には仲間として絆を深めていく、そんな物語。

良い作品だった。
と同時に、上手に書いてるなと思った。
大学事務局と寮生の対立という、ちょっと古めかしいストーリーながら、
生きることの難しさや、日常の機微みたいなものを巧みに織りまぜて、
単なる青春小説ではなく、深みのあるものにしている。


例えば、現代の若者について、こう綴っている箇所がある。
「漂いながら、障害物を避けて通っている。
 世の中の矛盾を前にしても、まあいいか、と簡単に諦めてしまう。
 自分の半径二メートルの生活さえ安泰ならばいいと思っている」。
見て見ぬふりをするとか、自分だけ良ければいい、など安易に
書くのではなく、こうした骨のある表現が随所にある。

また、焚き火のシーンが多くある。
舎監と寮生が語り合う場面で使われている。
焚き火を囲んで、寮生は胸の内を語る。
焚き火のような小さな火を見ていると、なぜか吸い寄せられ、
ぼぅーと意味もなく集中したり、心が和んだりする。
物語の中の焚き火が見えるようだし、
自分も焚き火をしたい気持ちになる、いい場面である。

両親が離婚し、父親とはしばらく会っていない寮生に関する、
久し振り父親とのやり取りは、思いがけず泣けるし、
その寮生の、あまりイケてない同級生との恋も素晴らしく、
これまた最後に思いがけず泣ける。
焚き火シーンも含めて、暖かくなれる作品である。

■瀬尾まいこ「幸福な食卓」(2004年)
瀬尾まい子/幸福な食卓
主人公は、女子中学生。
彼女の家族を取り巻く物語である。
両親は別居。しかし、決して仲が悪いわけではなく、
家を出てアパートを借りている母は、毎日、家に来る。
父は「父を辞める」と宣言し、塾でバイトをしている。
兄は秀才でありながら、なんだか、ぼうっと生きている。

つまりは変な家族なのだ。
家族同士、うまくやっていくために、かなり気を使っている。
しかし、のほほんとしていて、ふわっとしていて、
微妙に暖かく、一見穏やかで、でも内側には緊張感があり、
なんともつかみどころのない家族である。
街角の小さな雑貨店兼カフェのようである。
商売としてやっていけるのか、いつも気になってしまう。
そんな家族である。

そんな不思議な家族の日常を描いた作品ながら、
内容的に違和感をおぼえさせず、非常に読みやすい。
読み飽きさせない流れるような展開も見事。
言葉の使い方のリズムも良い。
音読しやすい作品だと思う。
こうした技術力の高さゆえ、どんどんページがめくれていく。

家族がそれぞれ抱える心の闇が次第に表に出てくる。
ただ、やはり、さらりとしていて、グッとこない。
また、この作品の根底にあるのは、「再生」だと思われるが、
「再生」というものの考え方が、筆者と私はちょっと違うかなと。
むしろ、主人公の恋にまつわる部分が良い。
甘酸っぱく、それでいて、意外に器用なところもあり、
そして、こんな展開になるとは、という意外性。
恋愛部分だけでも、十分に面白い。

本来、心の中の重たい部分が前に出るような設定だが、
ふわっと、さらっと、暖かい部分を見せている。
一般的な評価も高い作品である。
ただ、偏見覚悟で言えば、圧倒的に女性ウケする作品ではないか。
やはり、街角の小さな雑貨店兼カフェのような印象だ。

■貫井徳郎「乱反射」(2009年)
貫井徳郎/乱反射 
非常に面白かった。
圧倒的な筆力で、読み進むほどに、ぐいぐい引き込まれた。

道路拡幅に伴う街路樹の伐採に反対する主婦。
過酷な医療現場にうんざりして、怠慢に職務をこなす救急医。
日中は混んでいるからと、救急外来ばかり通う若者。
犬のフンの始末をしない常習の高齢者。
車庫入れ恐怖症の姉を思いやらない家族。
極度に潔癖性な造園業者。

こうした、自分さえ良ければいい、こんな小さな悪事など
誰でもしているという勝手な自己愛。
それが悲惨な事故を招き、取り返しのつかない状況を生んだ。

嫌な人間の行いと心情を、テンポ良く丁寧に描いており、
どんどん感情移入していく。
怒りとやり切れなさで、読まされてしまう凄い作品。
現代の世相を集約していると言ってもいいかも。

事故後、関係者は皆、自己弁護をして、関係ないと言い張る。
その様に、どうしようもない気持ちになるが、
その中で、造園業者の在り方には共感。
この作品における唯一の救いのように思えた。

ラストにおける、被害者の新たな一歩も、
一般的な解釈としては、「救い」にあたるだろうが、
私には、やはり辛い気持ちが強かった。

事故にまつわる連鎖の組み立ても見事だが、
登場人物の心の動きと、周辺人物とのやり取りが絶妙。
それが物語を厚みのあるものにした。
引き込まれます。

     ◇      ◆      ◇

最近の傾向として、なんでもかんでも、
ラー油を入れれば美味しくなると思ってないか。
それでいいのか。
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最近少しずつ本を読む時間を作っている、私です。
私も女性なので、「幸福の食卓」が面白いかどうか、読んでみたいと思いました。(面白そうなので…というより、女性ウケされそうな作品が、私ウケするのか確認してみたい…というちょっとした実験チックな感じです。)

自宅から図書館が近いので、今まで全然使ったことがないのですが、これからは使ってみようかな~とも思っています。

眠りさえ邪魔されなければ、生活スタイルを変えるのはちっとも苦ではないので、色々挑戦してみようと思います。
【2010/11/07 00:20】 URL | yoshimi #-[ 編集]

久しぶりです☆クグエさんのレビューを読むといつもは手に取らないジャンルでも読みたくなるんだなぁ。本屋に立ち寄るとクグエレビューを携帯でチェックして購入するパターンが多いです笑。で、そのまま静かな飲み屋で一杯やりながら読むのがいい♪いつもありがとうです☆
【2010/11/07 22:03】 URL | bull #35BUUDj.[ 編集]

yoshimi さん、コメントありがとうございます。
「幸福の食卓」は、君向きかもしれない。
ほんとうだぜ。
読みやすく、テンポがいいのと同時に深さもあり、先を知りたくて、
早く読み終わってしまうタイプの作品だと思います。

読書はほんとに眠気を誘いますね。
でも、作品に引き込まれて、逆に眠気が吹き飛ぶこともあり、
今回紹介の「乱反射」はその状態になり、
気づいたら午前3時になっていた日がありました。

読書をしてるうちに眠ってしまうのは快感です。
眠る気がないのに眠ってしまうあの気持ち良さは貴重です。
なお、本を読んでいて眠くなる時は、眠るべき時なのだと思いますよ。

bullさん、コメントありがとうこざいます。
本屋にて携帯でチェックしていただけるなんて嬉しいですね。
光栄です。やる気がアップしました。

私の理想の読書空間は、2時間くらい特急電車に乗ってる時ですね。
贅沢ができるなら、読書をするために特急電車に乗りたいくらいです。
しかも、指定席を2つ確保して。
読書をするための旅などしてみたいものです。
【2010/11/09 00:34】 URL | #-[ 編集]

↑このコメントは私です。
署名漏れでした。
【2010/11/09 00:37】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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AKB48前田敦子の激 似A.V! AKB48前田敦子の激似A.V【2010/12/01 15:30】

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