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天気の悪い週末は、読書が最適です。
今回は、ブック・レヴュー。
よろしくどうぞ。

■湊かなえ「贖罪」(2009年)
湊かなえ/贖罪
小学4年生の女子5人。
学校のグラウンドで遊んでいた。
そこに現れた作業服姿の男。
彼は、プールの更衣室の換気扇の点検に来たという。
一人の女子が、その手伝いを頼まれる。
残った4人は、またバレボールを始める。
そして、手伝いに行った女子は男に殺害された。

4人の女子は、身体に不調を抱えたり、
引きこもったり、ぐれたりなど、
それぞれに事件を引きずったまま、いや、囚われたまま
大人になっていく。
そんな4人が、25歳になって今、起こしてしまったことと、
そこに行き着くまでの経過を描いている。

結末がどうとか、暗いとか、不快になるとか、
そういう感想を持たれる方はいるだろう。
しかし、そんなことはどうでもいい。
ぞくっとするようなタチの悪さに惹きつけられ、
本の中の世界に吸い込まれていくような感覚で読んだ。

前半、ところどころピンとこない箇所があるのだが、
読んでいくうちに、真相が浮き彫りになっていき、
つながりを持たせ、きちんとパズルを埋めてくれる。

特に、人間の持つ弱い部分や陰の部分を、
醜くも切実に、それでいて娯楽的に描いているのがすごい。
陰湿なのにスカッとしているというか、
とにかく不思議な圧倒力がある書きぶりである。

湊かなえ氏は、2008年の「告白」で大ブレイクした。
その衝撃の大きさのせいか、その後の作品が薄まっているような書評を
よく目にするが、「告白」ではなく、この作品を先にリリースしていても、
大きな反響を呼んだのではないだろうか。

良い作品かと聞かれれば、なんとも言い難いが、
夢中になって読める非常に面白い作品だと、はっきり言える。

■東野圭吾「聖女の救済」(2008年)
         東野圭吾/聖女の救済
東京に住む結婚1年の夫婦。
ある日、妻は、実家の父親が体調を崩したため、泊まりがけで帰省。
その夜、夫は、自宅で飲んだコーヒーに毒が含まれていたことにより死亡。
その死の真相を描いた作品。

まず、犯罪のトリックがわかりにくい。
並々ならぬ根気と情熱が必要なトリックだということはわかるが、
どこにどう仕掛ければそうなるのか、私はイメージができなかった。
これは、物語の登場人物と私との間での、
飲み水に対する生活スタイルの決定的な違いによるところが
最大の理由である。

とはいえ、東野氏の作品らしいテンポの良さが、
どんどん読ませてくれる。
つまりは、トリックが不可解で理解できないものであっても、
妻と夫の関係や、その周辺の人物の有り様、
また、刑事と大学教授が連携し、次第に真相に迫っていく過程だけで、
それなりに面白い作品だということだ。

ところが、読後感は軽く、余韻に乏しい。
なんとも平坦で、引き寄せる緊張感がないというか。
もちろん、あまたある現代の推理小説に比べれば、
読み物としてのまとまりや洗練ぶりに納得する。
ただ、東野作品ということで期待値が大きいだけに、
東野作品にしては…的な、なんというか、
ガツンとくるこってりしたメーランを食べたいときに、
あっさりとしたストレート細麺の「しょうゆらーめん」と、
平仮名で表記されたラーメンを食べたような印象である。

余談だが、安易に平仮名表記にすることに、
以前から、しっくりこない感じを持っている。
特に、市町村名と食べ物における平仮名表記は、
もういい加減、食傷気味だ。


■中島京子「冠・婚・葬・祭」(2007年)
中島京子/冠・婚・葬・祭
タイトルどおり、「冠・婚・葬・祭」にまつわる4つの短編で
構成された作品。
なお、「冠」は成人式を、「祭」はお盆を題材としている。

率直に言って、「冠」と「葬」の物語は、感触に乏しかった。
一般的には、人のつながりを根底にして、
きれいにまとめた作品だと評されるものと思われるが、
成人式に関して、ちょっとした誤りのある記事を書いた記者が、
それを理由に退職するとか、
取引先の会社の依頼で、ある老女を葬儀会場に送迎する会社員とか、
そもそもの設定に違和感があり、いまひとつ入っていけなかった。
また、どこかふわっとしていて、読後の余韻もなかった。

一方、「婚」と「祭」の物語は、人生の機微を上手く捉えているなと。
「祭」は、中年になった三姉妹が、お盆に、
今は誰も住んでいない、亡くなった親の家に久し振りに集まるという話。
古き良きお盆の姿を、さりげなくも味わい深く描いており、
懐かしいような、愛おしいような気持ちになった。

また、お盆のあり方を考える意味でも有用な作品だと思うし、
三姉妹が、二対一のような状態にあるという設定も、
なんともリアリティがあって良い。

どの作品も、ちょっとした希望を漂わせたエンディング。
偏見含みだが、しみじみ、ほのぼのムードで、女性的な作品かなと。

この作品の中で、最も印象に残った箇所。
「婚」にまつわる物語の主人公は68歳の女性。
58歳の時に夫を亡くした。
以来、毎日、仏壇に炊きたてのごはんを供え、一緒に食事をし、
寝る前に一日のことを報告して終わる。
だから、夫が亡くなってからも、まだ連れ添っている気分である。
こうした、亡き夫の「不在の豊かさ」が、
結婚から得ることのできた最も大切なものの一つだったという箇所である。

年をとったときに自分を支えてくれるのは、
その時誰がいるとかいないとかではなく、

それまでどう生きてきたかなのですね。
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