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不思議なもので、仕事などで忙しい時ほど、
仕事以外のことをやりたくなる。
時間が取りにくいのに、あれもこれもやりたくなる。
そして実際に行動に移す。

その反面、フリーな状態におかれると、
なぜか何にもやる気がしなくなる。
抑圧こそが行動の動機となり、解放は怠惰へと向かうのか。

実は読書も、そんな傾向にある。
思う存分、読書ができる状況になると、逆に読書をせず、
何をするでもなく、だらだらと緩慢に、そして散漫に過ごしてしまう。
しかし、そんな日も必要だと思う。

結局、私はわかっちゃいないのだろう。
と同時に、わかったところで、どれほどの意味がある?
と思っているところもある。
わかることだけが人生じゃない。

というわけで、今回はブックレヴュー。

■野中広務・辛淑玉「差別と日本人」(2009年)
   野中広務・辛淑玉「差別と日本人」
元衆議院議員で被差別部落出身の野中広務氏と、
在日朝鮮人の辛氏による対談を中心とした作品。
対談というか、厳密に言うと、
辛氏が野中氏にインタビューをしているような展開になっている。

全体として、辛氏は自ら受けた差別の具体例を織りまぜながら、
ズバズバと核心に触れ、野中氏にダイレクトにつきつけている印象。
それに対して野中氏はやり込められ気味で、
言葉に詰まり、「…」状態になっている箇所がいくつかある。
その辺りを変に脚色せず、微妙なまま対談が途切れてるのが逆に良い。
        
野中氏は、部落差別について、あまり語っていない。
というか、意図的に踏み込んでいない感じがして、
その点は物足りないかなと。
ただ、野中氏の政治理念は、「機会の平等」ではなく、
「結果の平等」だと書かれている箇所は面白かった。

「結果の平等」のために、政治的な談合や裏取引などを画策し、
みんながそれなりに潤う、そうした構造を維持することに専心してきたと
評されている。
「平和や人権も、談合によって守ろうとしたのではないか」と、
辛氏が綴っているのは痛快。

本書において野中氏は、自身の政治家生活について、
問題解決や紛争処理ばかりやってきたと嘆いている。
しかし、町議、町長、府議、副知事、衆議と、
国・都道府県・市町村の全ての立場で、
ひたすら政治家の道を歩んできたわけで、
結局、好きでなければそこまでできないと思うのですが。

前記のとおり、辛氏の感情が先に走っている感じがして、
野中氏は押され気味なところがある。
ただ、それは野中氏の作戦かもしれない。
野中氏の腹の底に、もっと迫れたはずなのに、という気持ちは残る。
とはいえ、読みやすく、それなりの発見もある作品かと。

■宮部みゆき「小暮写眞館」(2010年)
   宮部みゆき「小暮写眞館」
東京の、とあるシャッター通り商店街。
その通りには、廃業となって誰も住んでいない古い写眞館兼住宅がある。
そこに引っ越ししてきたのが、夫婦と息子二人の4人家族。
上の息子は高校生。彼が主人公である。

前半は、心霊写真の解明が軸になったストーリー。
中盤以降は、主人公の恋と、家族が避けてきた過去との対峙を中心に
展開していく。

まず最初に出てくる感想。それは、
「宮部みゆきという人は、小説を書くのが上手だな」である。
キャラクターの作り方、出演者の登場のタイミングと
出演者間の関係の持たせ方、伏線の設定のさりげなさなど、
さらりとした熟練ぶりが際だつ。

例えば、登場人物は多いのだが、
「この人、誰だっけ?」と、前のページ戻って確認することなどない。
読み手の記憶に残るよう、見事に印象づけさせる。

登場人物が皆、嫌みがないことも、非常に好感を持った。
主人公の高校生と、その同級生の等身大加減が実に良い。
ディテールに凝りすぎることなく、
リアリティのない派手さや過激さを排除し、
普通の日常の一場面を、味わい深く描いている。

713頁に及ぶ長編。
ストーリーの面白さと、巧みな書きぶりに、長さを感じさせない。
かと思いきや、やはり長い。
正直、色々なことを盛り込みすぎで、展開がもたつくところもある。
特に前半は、内容的にちょっと退屈か。

しかし、中盤以降は、引き込まれた。
登場人物の行動も心情も、一気に転がりだしていく。

そして、ところどころ、ほろりとさせてくれる。
特に、終盤の、使い捨てカメラの交換にまつわるシーンは
胸が締めつけられるような切なさがある。

青春小説として秀逸。
というか、これぞ小説のお手本のようだ。
また、NHKで「夜のテレビ小説」なるものがあったとしたら、
実にはまりそう。

じんわりと心に響く形で、きちんと読者を納得させるような
エンディングも見事である。

■道尾秀介「光媒の花」(2010年)
道尾秀介/光媒の花
タイトルは「こうばいのはな」と読む。
6作の短編で構成されているが、
それぞれの作品につながりを持たせている。
かといって、連作とか長編とは、ちょっと違うような構成である。

どの作品も、主人公は閉塞感に苛まれた人。
その心に潜む狂気、というか影の部分を、
流れるように繊細に、それでいて濃密に描いている。
嫌な気配がつきまとうような薄暗い雰囲気ながら、
どこか甘美で麗しく、古典的な文学作品のようでもある。

特に引き込まれたのは、「虫送り」という作品。
兄は小学四年生、妹は小学二年生。
両親は共働きで帰りが遅い。
兄と妹は、夜になると、よく河原へ虫取りに出かけた。
ある日、橋の下に住んでいるホームレスに、妹がいたずらをされた。
動転した兄は、ホームレスの住居めがけて、
橋の上からコンクリート片を落とす。

翌日、そのホームレスが死亡したことを知る。
ある男が兄弟の前に現れ、いつも河原へ虫取りに行ってるのかと尋ねてくる。
その迫り来る恐怖の描き方が素晴らしい。
ドキドキし、暗澹たる気持ちになりながらも、
どうしても先を知りたくなる、強烈な引力のある作品だった。

また、小学生の語り口は、小学生らしい言葉と思考回路で、
女性教師が主人公の作品は、女性らしい語り口で、
子供言葉や女性言葉を用いずに、見事に雰囲気を出している。

これまでの道尾作品の中で、文章レベルが最も高い作品ではなかろうか。
なんでもない言葉で流れを作り、読者を導いていく技術は卓越している。
文章リズムが美しいというか、世界を持ってる人だなあと改めて感心。
なお、前記のとおり、作品のムードは薄暗いが、
優しさや希望が、物語を支えている。
2010年屈指の作品だろう。
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しばらく、読書から遠ざかったいました、私。
「読書の秋」を遂行しようと心に決めました。
ので、またまたレビューを参考にさせていただこうと勝手に思いました。
【2010/09/20 19:33】 URL | yoshimiffy #-[ 編集]

yoshimiffyさん、コメントありがとう。
振り返ってみると、1か月もコメントがない、コメント不況状態でした。
それを打破したのがYOU、そうyoshimiffyさんでした。

読書には時間を使うので、ほんとはやらなきゃいけないことを
やらなくなるというマイナスはありますが、
やる必要のないことをやらなくなるというメリットもあるので、
やはり読書すべきですね。

ちなみに先日、ついに暑寒別岳に登りました。
下山後、留萌に行き、オクトパスとびーえーを買って帰りました。
オクトパスとびーえーは、やはり留萌方面のが一番美味しいです。
次は農作物も買って帰るぜ。
【2010/09/22 23:35】 URL | #-[ 編集]















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