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6月に「塩狩峠」(しおかりとうげ)という小説を読んだ。
三浦綾子氏の代表作である。
あらすじは、こんな感じだ。
三浦綾子/塩狩峠
時は、明治時代。
主人公は、鉄道会社職員の永野信夫。
彼は幼少の頃、母は亡くなったと聞かされ、父と祖母のもとで育った。
10歳の時、母が生きていることを知る。
母はキリスト教徒だった。
それを祖母は断じて許さず、母は家を出て行くしかなかったのだ。
キリスト教に対して、凄まじく偏見があった時代である。

祖母が亡くなり、母と一緒に暮らせることになった。
それはとても嬉しいことだった。
ただ、母だけではなく、父も妹も洗礼を受け、信者となった。
毎週日曜日には教会へ行く。
信夫は、そんな家族の行動に違和感をおぼえ、
キリスト教を忌み嫌うかのように距離を置いた。

大人になった信夫は、鉄道会社に就職し、札幌駅に勤務。
この頃から次第にキリスト教に傾倒していく。
やがて彼は旭川に転勤。
鉄道事務員として出世する。
と同時に、旭川にある教会の日曜学校長にも就任。
休みの日には、あらゆるところへキリスト教の講義に出向いた。

32歳になった彼は、結納のため、列車で名寄から札幌へ向かっていた。
列車は和寒駅を過ぎ、塩狩峠を上っていく。
そこで事故が発生した。
列車の連結器がはずれ、最後尾の客車が分離。
上ってきたばかりの道を逆走し始めた。
ブレーキを失った客車は、次第に速度が上がっていく。
その先には急勾配のカーブが続く。
このまま暴走すれば、転覆は必至。
信夫は、列車から飛び降り、線路に身を投げ出し、客車を止めた。
信夫は殉職した。

       ◇      ◆      ◇

壮絶なストーリーだ。
ひたむきに純粋に信仰を貫き、自ら犠牲となり、大勢の乗客を救った。
しかし、それだけではない。
主人公が大人に成長していく物語としても素晴らしい。
非常に生真面目なキャラクターで、
時に融通が利かず、面倒なところもあるのだが、
そんな彼の、10代の頃のキリスト教に対する抵抗ぶり、
キリスト教式で行われた父の死で感じたこと、
幼なじみとの友情、職場での揉め事、病床の女性との恋など、
率直に、丁寧に、わかりやすく描いている。
だから心を打つのだと思う。

また、明治という時代性や、札幌、旭川という土地の様子など、
目に見えるものを細かく描写するのではなく、
さらっと抑制を利かせて描いているのが、
読者の想像を良い具合にかき立て、逆に深みに与えている。

余計な感想ではあるが、
明治という、列車のスピードが遅い時代、
翌日札幌で結納をするにもかかわらず、
遠く離れた名寄で講義をして宿泊。翌朝、札幌へ向かった。
特急が走る現在でさえ、ハードなスケジュールである。
そこまで信仰が深かった、ということなのだろうが、
もう少し結納を優先させても、と思ってしまった私は心が狭いのか。

作品の本文を読み終えた後、
文庫の最後にある「あとがき」を読んで驚いた。
この物語は実話が基になっていたのだ。
さらに、「塩狩峠」は実在することを知った。
なんとも北海道らしい架空の地名だな、とか、
和寒なんて渋いところをチョイスしたねぇ、
などと思いながら読んでいただけに、驚きは大きかった。

そんな無知で恥ずべき自分を悔い改めるべく、
塩狩峠を訪問した。
8月7日に留萌へライブに行った翌日に訪問した。

塩狩峠1
塩狩峠は、国道40号線にある。
標高は263mと、峠にしては、それほど高くはない。
実際、国道の坂道は緩く、しかも、どこが峠の頂上なのかわからなかった。

塩狩峠2
国道から100mくらい入ったところに、JR
塩狩駅があった。
山合の、虫の声しか聞こえない小さな駅である。
この付近に民家は、ほとんどない。
1日に何人が利用するのだろう、というより、
1か月に何人が利用するのだろう、という雰囲気である。

三浦綾子旧家 
塩狩峠顕彰碑
駅の周辺に、三浦綾子氏の旧家や、

主人公のモデルとなった長野政雄氏の「殉職の地」と書かれた顕彰碑がある。

現地を訪れると、やはりなんとも言えない気持ちになる。

ただ、ほんとうに感じたいなら、車で訪問するではなく、
この路線を電車に乗ってみるべきだと痛感した。
それと、「塩狩でお叱り」を受けるようなことはしてはならない。
「しおかりでおしかり」じゃ、まさにシャレにならないぜ。
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テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌



















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