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何日か前から、無性にクロスバイクで遠出したい気分だった。
週末に天気がいいようなら、ライドしまくろうと考えていた。
その思いが通じたかのように、
6月12日土曜日、札幌は快晴となった。
朝10時過ぎ、
月形町を目指して走り出した。
月形町は、札幌の北側、約45kmのところにある。

空には雲ひとつなく、風は弱め。
コンディションはパーフェクトだった。
この日、気温は27度まで上がったようだが、
常に風を浴びて走っていたせいか、
暑さは全く気にならず、ただただ気持ち良かった。

当別町を過ぎてからは、JR札沼線・無人駅の旅となった。
駅をひとつひとつ訪問しながら
月形町へ向かった。

札沼線(さっしょうせん)は、札幌と
新十津川町を結ぶ路線。
元々は、札幌と沼田町を結ぶ路線だったので、
この名称だが、
新十津川町から沼田町は既に廃線となり、
現在は、「学園都市線」などと呼ばれている。
英語にすると、ユニバーシティ・シティであり、非常に言いにくい。
アイドルだった頃の「アグネス・チャン ちゃん」と同じである。

札幌から
当別町の北海道医療大学までの区間は乗客も多く本数も多い。
しかし、それより北側は、1両編成で1日7往復程度。
国道275号線とほぼ平行して線路が走っているものの、
駅はちょっと引っ込んだ位置にあったり、
一般的な駅前のような雰囲気はなくバス停風情のため、
車で走っていても気づきにくい。

しかし、確かに駅は存在している。
そこをひとつひとつ訪問してみたいと、かねて考えていた。
いざ駅に足を踏み入れてみると、非常に味わい深い。
放っておかれているような廃れ方がたまらない。

このように、駅には待合室以外なんにもないぜ状態だったり、
本中小屋駅 

石狩金沢駅のすぐ近くにある廃業したガソリンスタンドは、

ちょっと見方を変えれば、アメリカの田舎のようだったりする。
石狩金沢駅GS

2時間30分ほどで
月形町に到着。
とりあえず、「つきガッタ、アイ・ガッタ」と言ってみる。
なぜ言ったかというと、
私はブルース・マンに憧れてるからだ、アイ・ガッタ。

月形にて昼食。
時刻はまだ午後1時をまわったところ。

体力的にはまだ余裕がある。
そして完璧な青空と柔らかい風。
ここで引き返したら、走行距離は100kmに満たない。
今年のクロスバイク活動における最大目標を
留萌行き(札幌から135km)に置いている私には、
今このタイミングで、オーバー100kmをクリアしておくことは
大きな意味がある。
そこで、さらに北を目指すことを決意。
月形町の北隣の町、浦臼町を目指すことにした。

浦臼町までは、月形町から約15km。
やや向かい風で、やや下り気味だったため、難なくクリア。
JR
浦臼駅の駅舎は新しく、わびさび不足だったため、
「札幌から60km」の表示があった月夜橋にてフォト撮影。
なんとも、おつな名称だ。
月夜橋@浦臼町  

月形町浦臼町の間に、「豊ヶ岡(とよがおか)」という駅があった。
他の駅は、ほぼ国道沿いにあったのだが、この駅だけは違った。
国道から2kmくらい山に入ったところにあった。
驚いた。
駅は完全に森林の中。
駅の付近は砂利道で、車が1台通るのがやっとの細さ。
車を切り返すスペースもない。
左写真の中央が乗降スペース。周りに民家は全くない。
豊ヶ岡駅1 豊ヶ岡駅2

駅の待合室がこれ
豊ヶ岡駅待合室

フォトだとわからないが、
入口の上に、「豊ヶ岡駅」と木彫りの看板がある。
この駅の存在は全く知らなかった。
秘湯ならぬ、秘駅とでも言おうか、
これほどの隠れた環境にある駅を見たのは初めてだった。

時間の経過とともに、やはり疲れが出てきた。
いきなり脱水症状ムードを感じて、力が入らなくなってきたり、
サドルにあたる部分の痛みが結構気になるようになってきた。
それでも、休憩を取りつつ、なんと
か当別町まで戻ってきた。

当別高校の近くにあるセブン・イレブン前に
クロスバイクを止め、カギをかけて入店。
どら焼きとウーロン茶を買う。
店の横の方に座り、それを食べ、飲む。

札幌まではまだ25kmほどの距離が残っていたが、
ここからは、よく知っている道である。
もう札幌に着いたかのようにほっとした。
クロスバイク100km超えをできるという
ちょっとした達成感もあった。

    ◆      ◆      ◆

そんなふうに、特に問題もなく、小さな旅を終えられそうだと思ったその時、
全く予想だにしない事件が発生した。

どら焼きを食べ切り、ウーロン茶を半分飲んだところで、
札幌へ向かうべく、立ち上がり、クロスバイクの横へ。
ポケットからカギを手に取る。
ところが、カギを手にとれない。
イン・マイ・ポケットにカギがなかったのだ。

カギはどこへやらと、リュックの中身を全て出して確かめる。
自転車を駐めた位置から、セブンイレブンの入口までを探す。
見つからないので、セブンイレブンに再度入店し、
自分の歩いたところに落ちてないかと探す。
どこにも見当たらない。

ポケット、リュック、路上、店内と、
同じことをもう一度の繰り返してみる。
やはりカギは見つからない。

私は、キーホルダーにじゃらじゃらとカギを複数つけるのを嫌う。
ひとつのカギに対して、ひとつのキーホルダー主義者である。
つまり、カギの数だけキーホルダーがある。
誕生日の数だけ命日があるように。

自転車のカギは、短パンの左ポケットに入れていた。
1時間前に月形で休憩した時は、確かにカギは存在した。
その後、左ポケットに関する動きは、携帯ラジオの出し入れのみである。

どこで紛失したのか全く心当たりがない。
心当たりはないが、カギを紛失したのは事実だ。
札幌から25km離れたセブンイレブンで、
カギをはずせないクロスバイクと自分のふたりきりになってしまった。
大変なことになった。
面倒なことになった。
ここから、どういう行動をするべきか。
まずは落ち着けということで、
セブンイレブン前に座り、残っていたウーロン茶を飲みながら、
タバコを吸った。
時刻は午後5時をまわり、風が急に冷たく感じてきた。

まず考えたのは、電車で自宅に戻り、
車で自転車を取りに来ることだった。
しかし、自転車を見知らぬセブンイレブン前に
放置していくのは危険だ。
店の人に事情を伝えたとしても、
店の人が自転車を守りきれるわけではない。

ならば交番に行き、しばし預かってもらおうと考えた。
そこならば安全だろう。

交番は当別駅の近くにある。
ただ、そこまで1km以上はあるように思えたし、
当別町特有の、線路をはさんで入り組んでいる道に翻弄され、
どこをどう進んでいけばいいのかわからなかった。
しかも、カギのかかった自転車を連れての道程である。
困った。

仮に交番に預けて、後で取りに来るとする。
交番まで歩き、電車に乗り、地下鉄に乗り、
自宅まで15分歩き、車のエンジンをかけて
当別町へ向かう。
その時間と手間を想像したら、
ここでカギを破壊し、そのまま乗って帰る方が、
よほど楽なのではないかと思い始めた。
というか、そうすることに決めた。

そうなると問題は、カギを壊せる道具や技術がある人を
見つけ出せるかである。
それは自転車屋しかない。
私は、自転車屋を求めて、自転車を担いで歩き始めた。

セブンイレブンで、近くの自転車屋を聞き出して、そこへ向かう。
その道の途中で、犬の散歩をしている人にも、念のため同じことを聞いた。
普段は非常に人見知りなのに、どうにもならずに困り果てると、
全く意識せずに、礼儀の正しいフレンドリー人間になれるから不思議だ。

15分くらい歩いて、その自転車屋が見えた。
ただ、不安がよぎった。
カギを壊してくれと言って、はいわかりました、と対応してくれるものだろうか。
盗難車かもしれないのだ。
防犯登録はしているが、自転車屋に確認手段はないだろう。
その日、デジカメで撮った写真に自転車が写っているものが
何枚かあるので、それでわかってもらうしかないか、
などと考えているうちに、自転車屋の前に着いた。
驚いたことに自転車屋は休みだった。

がっかりしている暇はない。
すぐに、別の自転車屋を探す。
誰かに尋ねたいが、人ひとり歩いていない。
しょうがないので、通りがかりのクリーニング店に入店し、
別の自転車屋はないかと聞いた。
こうなったいきさつを話していたら、大層、気の毒がってくれた。
ただ、その説明は複雑で、自転車屋の位置がよくわからなかった。
とはいえ、商店街の中に自転車屋があることはわかった。
それだけでも収穫だった。

とりあえず商店街方面に向かって歩くと、
当別町役場が現れた。
ということは、駅も近い。
駅が近いということは、交番も近い。
交番に行けば、私がこの自転車の防犯登録をしていることを
確認してもらえるのではないか。
それを根拠に、カギ壊しもスムーズにできるのではないか。
しかも交番なら、自転車屋の場所も適確に教えてくれるだろう。

自転車をかついで歩く中年は、役場を横切り、ローソンを超え、
駅舎の階段を上り、そして下り、交番にたどり着いた。
そこには誰もいなかった。
「事故処理に出かけている」みたいな紙が置いてあった。

すぐに見切りをつけた。
最初に見つけたおばさんに、自転車屋のありかを聞く。
信号をふたつ行って、左に行って…、と説明してくれたが、
その方向に信号はなく、しかも複雑な説明で覚えられないので、
熱心に聞いているフリをしていた。

丁寧に礼を言い、とりあえず商店街方面へ。

自転車に乗った中学生らしき女子が通りかかった。
複雑な説明はいらない。
シンプルでいいのだ。
教えてくれるのは、10のうちの4くらいでいい。
残りの6は、自分で見つけるし、別の人に聞く。
そこで、方向と何mくらい先かだけ聞いた。
「500mはないと思う」とのことだった。

300mくらい進んだところで、
銭湯へ向かって歩いているらしきおじさんに声をかけた。
また、方向と何mくらい先かだけ聞いた。
あと100mくらいだと言われた。
「パンクしたの?」、「どこ行って来たの?」など、
色々と事情を聞かれ、順を追って話すと、
気の毒がりつつも、「まあまあ災難だわな」と笑っていた。

そして自転車屋に到着。
時刻は午後6時をまわっていた。
事情を説明し、カギを壊してほしいと依頼。
「自転車を預かるから、明日取りに来れば」とも言ってくれたが、
迷わず、カギ破壊を申し出た。

自転車をかついで歩いているうちに、
この自転車を残して、ひとり札幌に帰るわけにはいかないと思った。
知らない街の夜の中に置き去りになどできないと思った。
自転車はただの遊び道具ではある。
しかし、実は非常に愛着のある相棒なのだと気づいた。

仮に、子(マル子)という女性がいたとする。
それまでは特別な存在とは思っていなかったが、
自分が別の女性から言い寄られてみると、
子が急に愛おしい存在に思えたり、
別の男性が○子に告白したと聞いたら、
子が他の誰かのものになるなんて耐えられないと、
子への恋心に気づいたり。
それに似た気持ちになったのだ。

自転車屋にて、盗難車だと思われないよう、
デジカメの写真を見せるため、
リュックの中のデジカメを取り出そうとした、その時。
自転車屋のおじさんは、既にバカでかいペンチを手にしていた。
そして、「じゃあ切るよ」と言って、あっさりとカギは分断された。
口頭説明だけで、私の自転車だと信じてくれたのか。
危機管理の甘さにやや驚きつつも、とりあえずオッケイオーライだ。

100612札幌大橋
そこから札幌までの道程は、昼間の快晴はどこへやら、
もやが発生し、霧雨っぽい空気に包まれた。
しかし、自転車が愛おしくて仕方なかった。
普通に走ってくれることが有り難く思えた。
疲れや痛みは、なぜか吹き飛び、
この自転車とともに、自宅へ帰れることが、
当たり前のことなのに妙に嬉しかった。

浦臼往復120kmを、なんとかクリアした。
それは大いに意味のあるステップとなった。
それよりもっと意味があったのは、自転車への愛に気づいたことだ。
君じゃなきゃだめなんだと思い知った。
愛だけじゃ乗り越えられないのはわかっている。
しかし、愛がなければ乗り越えられない。
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クグエさん、こんにちは。

私は札沼線にのって、新十津川まで行ったことがあるのですが、駅舎なんかは外から見た方が姿がはっきりわかりますね。
それでもなお、あの路線そのものに乗って頂けると良いなあと思います。

ちなみに帰りは、新十津川から滝川まで歩いて、そこから帰ってきました。こちらは電車の本数が潤沢です。
【2010/06/13 05:16】 URL | SH #gt3YS3lE[ 編集]

ううう~~気になります。

トウベツ町での虎舞竜が・・・何なのか。
【2010/06/14 13:02】 URL | 爆竹BOY #-[ 編集]

SHさん、コメントありがとうございます。
札沼線体験者なんですね。
ほぼ国道に沿って線路があるとはいえ、
電車から見える景色は車からとは違うでしょうね。
それにしても、札沼線は意外に駅が多いですね。
無人駅訪問を、シリーズ化したくなってきました。

爆竹BOYさん、コメントありがとうございます。
虎舞竜って…。
学園都市通みたいなストリートを歩いていたら、
ここがどのあたりで、駅との位置関係はどうなっているのか、
よくわからなくなりました。

当別を知る方なら、文中のセブンイレブン、閉まっていた自転車店、
その並びにあるクリーニング店、カギを破壊してくれた自転車店、
その近くの銭湯など、全てわかるのでしょうね。

文中には書きませんでしたが、
自転車をかついで電車、地下鉄に乗ろうかと考えた時間帯もありました。
当別町はドラマのある街です。
【2010/06/15 00:12】 URL | クグエSW #-[ 編集]

石狩金沢駅すぐの温泉がお気に入りです。
【2010/06/15 10:27】 URL | タピオカ鈴木 #-[ 編集]

いやぁ、大変でしたね。
無事に帰ってこられて何よりです。

あれ?スタンドつけたんですね。
【2010/06/15 23:35】 URL | マキシ #-[ 編集]

タピオカさん、コメントありがとう。
石狩金沢駅すぐのところに温泉があるのですか。
中小屋温泉ではなく?
今回、中小屋を走っていて、セブンイレブンがなくなったことを知りました。

月形のポポットのオムライスは美味しかったです。
これまでに食べたオムライスの中で一番でした。

マキシさん、コメントありがとうございます。
自転車での遠出は、風向きとパンクばかり注意しており、
カギ紛失は全くの想定外でした。
ただ、市街地ではないところでのパンクを想像すると、
だいぶましだったかなと。

札幌からどんどん離れ、こんなところまで来てしまって帰れるのか?
と思いつつ、次の街を通り抜ける時、特殊な感覚が現れます。
意識が活性化されて、何かを越えた感覚といいますか。
ランナーズ・ハイみたいのとはちょっと違う。
なんというか、スリルみたいなものといいますか。
そして、そういう感覚の再現を、脳が求めるのです。
自転車は危険な遊びかもしれません。
【2010/06/16 00:54】 URL | クグエSW #-[ 編集]

久しぶりです♪仕事の都合でずっと読めなかったので、先ほどいっきに読んだところですよ笑。相変わらず楽しかった♪

ところでやっぱり北海道の景観はいいですねぇ。一度走ってみたいなぁ。のんびりと。
【2010/06/17 11:44】 URL | bull #35BUUDj.[ 編集]

bullさん、コメントありがとうございます。
お久しぶりです。
いかが過ごしているのか気になっていただけに感激です。

クロスバイクは楽しいですね。
もうほんとにシティサイクルとか、ママチャリには乗れないですね。
あの独特の爽快感は、やみつきになりますね。

北海道に住んでいても、
北海道の景観の素晴らしさに感動することは多々あります。
そのうち、クロスバイクを車に積んで、走りに行く日が来そうな気がします。
4連休くらい欲しいところです。
【2010/06/18 23:33】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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