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今日の札幌は雪だった。
時々、吹雪になっていた。
このところ、毎週、週末は荒れた天気となっている。
そのせいか、ぐだぐた過ごしてしまうことが多い。

外へ出るにも、まだ最高気温は1度とか、2度なので、
ほんとは真冬と同じ恰好をしたいが、
春物に切り替えて、やせ我慢して過ごしている。
それでいいのか、このオレ、ロック・ミー。

今回は本の紹介。
3冊とも面白い作品だった。
よろしくどうぞ。

■乾くるみ「イニシエーション・ラブ」

         乾くるみ/イニシエーション・ラブ 
文庫本の裏表紙には、このように書かれている。
「僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。
 やがて僕らは恋に落ちて…。
 甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを
 瑞々しい筆致で描いた青春小説。
 と思いきや、最後から2行目で、本書は全く違った物語に変貌する。
 必ず二回読みたくなると絶賛された傑作ミステリー」

読む前の予備知識は、これで十分。
主人公は、恋愛経験のない男子大学生。
合コンで知り合って、付き合って、そしてどうなった、という話を
日記風に綴っている。
こういうことを言ったら、こう思われるかも。
このタイミングで、それやったら、変に思われるかも、などの、
ウブで真面目なところが、いちいち入念に書かれており、
それだけでお腹いっぱいになる。

二人の交際は順調に進む。
やがて彼は、東京へ就職する。
遠距離恋愛が始まった。
果たして、この恋愛はどうなっていくのか。

で、最後から2行目についてだが、
「えっ、何?どういうこと?」というのが第一印象。
時間、人、出来事が、どこでどうなっていたかを、遡って考えてみた。
探っていくと、なるほどと思えてくるのだが、
理解をするのに、やや時間がかかるため、
劇的さやインパクトは薄いかも。
文庫本なら、巻末にこの作品のトリックについての解説があってもいい。

このトリックを、最もわかりやすく解説しているのは、この方のブログ
ただし、作品を読む前に見てしまっては、楽しさは99%OFF。
必ず読み終えてから、そのブログをご覧ください。
この解説を読むと、この作品が、いかに周到に整理され、
綿密に作り込まれているのかがわかる。

途中から、秘め事の場面がバランス的に多くないか?とも感じるが、
後半に進むにつれて、微妙な違和感や、不自然な気配があったり、
それが最後のどんでん返しにつながっているのだろうと期待を高める。
流れがスムーズで、展開も面白く、どんどん読めてしまう。
ただ、どんでん返しを除けば、
細かい描写をした記憶力のいい大学生の日記に思えるかも。
しかし、面白かった。
一気読みしたくなります。
そして分析したくなります。

■池井戸潤「空飛ぶタイヤ」
     池井戸潤/空飛ぶタイヤ・上  池井戸潤/空飛ぶタイヤ・下
運送会社のトレーラーのタイヤが脱輪。
タイヤは、舗道を歩いていた主婦を直撃。
残念ながら主婦は亡くなった。
事故の原因は、車輌の整備不良であるとされ、
運送会社の社長が非難の的となる。

運送会社は、整備不良で死亡事故を引き起こしたことを理由に、
取引先が減り、銀行は貸していた金の全額返済を求めてくる。
社長の小学生の息子は、事故のせいでイジメに遭う。

ところが、整備は完璧に行われていた。
警察が会社に家宅捜索に入っても、
整備不良があったことを立証できない。
運送会社社長は、そもそも車輌自体に問題があったのではないかと
独自に調べ始める。

実に引き込まれた作品だった。
取引先、銀行、警察などの一方的ぶりは壮絶。
聞く耳を持たず、ひたすら理不尽なまでに、
社長を追い込んでいくさまは、気持ち悪ささえ感じた。
大きな組織ほど、関心事は外(お客様)へは向かず、
内側の競争に目が向くことに、うんざりする。
モンスター・ペアレントに対して、
何ら意見できない学校にがっかりする。

しかし、社長を信じて、手をさしのべてくれる人達がいる。
そうした人達に支えられながら、
一縷の光明をたどり、やがて真実に近づいていく。

社長と一緒に怒り、苦しみ、悲しみ、やりきれなくなるなど、
実に感情移入度の高い物語だった。
長編であったが、長さを感じさせない面白さ。
登場人物の心理描写がわかりやく丁寧。
次々に起こる厄介ごとも、自然で無理がない。
読後感も良い。

社長が、常に被害者に配慮している言動も好感。
また、目立たないが、脇役達の存在のさせ方が上手い。
特に、自動車会社のエリート社員の妻が、いい味を出している。
他人を出し抜いてでも、出世にかける夫に対して、
ほんとにそれでいいの?的な、さりげない雰囲気がいい。
物語の本筋との関係は薄いが、こうした脇役達も、
それぞれにキャラが立ち、作品に厚みを増している。

■橋本治「巡礼」
橋本治/巡礼 
郊外の住宅街にあるゴミ屋敷。
そこには70代の男が独り暮らしをしている。
住民は役所に相談。
役所の人間は、ゴミ屋敷の男に、処分するよう働きかけるが、
返ってくる返事は「うるせえ!」のみ。

物語は、ゴミ屋敷の周辺住民の様子から始まる。
何人かの住民を取り上げているのだが、
思いの外、深く掘り下げており、
そのせいで、物語が前に進まない感じがした。

例えば、ある主婦は、ゴミ屋敷の向かいに住んでいる。
郊外に購入した念願のマイホーム。
引っ越してきた時は、ゴミ屋敷ではなかった。
引っ越しから程なくして、ゴミ屋敷に変貌していった。
運の悪さを悔やみ、ゴミ屋敷対策に無関心な夫に苛立つ。
そうした話が多いのだ。

近所の主婦同士の付き合いや噂の広がりの様子、
ゴミ屋敷近くに住む老婆は、かつて「押し絵教室」を開いており、
その生徒の一人が、ゴミ屋敷の男の母親だったとか、
その後の物語の本質を考えると、
そこまで説明してくれなくても…、な部分の多い前半である。

その後は、ゴミ屋敷の男の半生が描かれている。
男は、終戦時、現在でいう中学一年生だったと書かれているので、
昭和7年生まれくらいの設定だろう。
彼は高校へ進学。その後、住み込みで荒物問屋に就職。
やがて結婚し、実家で荒物屋を営んでいく。
家族の死、離婚、荒物屋の衰退など、閉塞感のある人生と、
戦後激動の昭和という時代背景を交えながら、
ゴミ屋敷へと変貌していった過程を描いている。

結局は、ゴミ屋敷は整理される。
ただ、なぜ整理する気持ちになったのか、
なぜ、その後、四国八十八カ所の遍路に出たのか、
そのあたりの心境が、私には見えなかった。
行間を読み取れない私の読解力不足のせいか。

また、小さな荒物屋がゴミ屋敷になるまでは綿密に書かれているのに、
ゴミを整理するに至る過程が、やけにあっさりしているように思えた。
全体的に独特の言い回しである。
特に前半は、ひねりのある文章というより、ねじれのある文章のようで、
最初の3、40頁は、なかなか入っていけず、二度読んだ。

とはいえ、最後まで読まずにはいられなかった。
郊外の原っぱが住宅街に変貌していく中で、
時代に取り残されたかのように、ひっそりと生きた男の半生を、
淡々と、薄暗く描かれた空気感は、惹きつけるものがあった。

    ◇      ◆      ◇


「巡礼」の主人公の男は、小さな「ねじれ」をきっかけに、
もう何もかもが面倒になり、一生ねじれ続けたのだと思う。
我々も、そうした危険をはらんでいるだろう。

安っぽいプライドに縛られてはいけない。
つまずいた時こそ、戻る勇気が必要だ。
前進することだけに気を取られ、
自分でなんとかしなければと、かたくなになりすぎると、
やがては意固地になり、周りが見えなくなる。
そして、意地と感情だけの言動を繰り返す。
意地と感情だけの言動ほど迷惑なことはない。

なんといいますか、
他人の力を借りて生きるって、とても大切なことだと思います。
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テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌



















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