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職場の昼休み、毎日20分程度、読書をしている。
その後、10分程度、睡眠する。
しかし今日は睡眠をしなかった。
なぜなら、バンクーバー五輪・女子フィギュアスケートを
観戦したからだ。

さすがは人気競技。
今日の昼休み観戦者は、今回の五輪が始まってから最大人数だった。
10人強がテレビの前に集まった。
ただ、「オリンピックなんかで盛り上がってんじゃねえよ」という空気も
室内の一部に感じたような、そうでないような。
曖昧模糊に表現するしかない哀しさよ。

さて今回はブック・レヴュー。
どれも読み甲斐のある作品でした。
それでは、どうぞ。

■北村薫「街の灯」
       北村薫/街の灯 
2002年リリース作品。

時代は昭和7年。
主人公は10代半ばの女学生、英子(えいこ)。
彼女は巨大財閥の娘。上流階級のお嬢様である。
使用人のいる豪邸に住み、彼女には専属の運転手もいる。

運転手は20歳くらいの女性。
自動車を所有していることが珍しい時代に、
専属の運転手がいて、しかも若い女性である。
彼女は、どういうわけか文学に精通し、拳銃の腕も一流。
いつも落ち着いて、きりりとしている。
この物語においては、影の主役のような存在である。

全体的に描かれているのは、時代の風景と女学生の日常であり、
そこにミステリ要素を沿えた感じのつくり。
カレーライスに対する福神漬のような、
とんかつ定食に対するキャベツのような位置づけで、
ミステリ要素を絡めている。

ミステリの題材は、近所で起こった変死事件の真相、
英子の兄に送られてくる品物から導き出せる暗号など。
英子がこれを、女性運転手の言葉をヒントに解明していく。
女性運転手は、控えめで謙虚に描かれ、謎めき加減などは丁度いい。

この作品は、ミステリというよりも、上流階級同士の付き合いの妙や、
英子が、有能な女性運転手との交流を通じて、
世間知らずのお嬢様から、一人の人間に、そして、一人の女性に
成長していく物語だと捉えて読むと、より面白く感じると思う。
そんな雰囲気を楽しむ文学作品かなと。

ただ、現代あまり聞かないような難しい言葉が頻繁に使われ、
ピンとこないところが多く、映像もイメージしにくかった。
展開も唐突で、一読では状況変化について入けない箇所がいくつもあった。
とはいえ、文章は清楚で端正。
もやっとしたまま読み進むのだが、読み終わると、
「いい作品だったかも」と、じわっと上質ぶりを感じた。

いわば、高級ホテルのオムライスのような作品なのだが、
街角の大衆チャーハンに慣れた私には、すぐに美味しさは感じなかった。
けれども、食べ終わると何かが違った気がして、
なんとなくもう一度食べてみたいような、そんな気持ちになった。

■薬丸岳「悪党」
        薬丸岳/悪党 
主人公は29歳の探偵。元警察官である。
今回の依頼者は、11年前に一人息子を殺された親。
加害者は当時17歳。
少年犯罪だっため、数年で社会に戻ってきた。
依頼内容は、その加害者が、今どこに住み、
どんな生活を送っているのかを調査してほしい、というものだった。
それを発端として、加害者と被害者のその後の在り方を描かれている。

出演者のほとんどは、過去に痛ましい経験をし、
現在もそこから抜け出せずいる人々。
主人公である探偵も、中学生の時に、姉を未成年者に殺されている。
彼は、依頼のあった仕事をこなしつつも、
自分の姉を殺した加害者の現在も探っていく。

過去に身内を殺害された人が、あまりに多く登場し、
ストーリー上のバランスとして、
横への広がりに対して、縦の掘り下げがやや浅いかなと。
読んでいくなかで感じたことの整理がつく前に、
別の展開に食われていくようなところもある。
そのせいか、壮絶な内容で、考えさせられることも多いわりに、
読後感は微妙にあっさりしているというか。

とはいえ、わかりやすい文章表現で、展開が明確であり、
無駄な掘り下げがない分、どんどん読めてしまう。
読み物としては、十分に面白く、
加害者、被害者双方の心情を、
徹底して硬派に切り込んでいる点も評価。

読んでいる間は、気持ちがずっとどんよりした感じ。
ダイレクトに痛いセリフも多く、
行き場のない気持ちが伝わってきて辛くなる。
しかし、物語の後半、主人公が、4年ぶりに実家に帰った場面。
娘を過去に殺された父が息子に言うセリフ。
「いつでも笑っていいんだぞ。
 いや、笑えるようにならなきゃいけないんだそ。
 おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
この一言に救われます。

■佐藤優「国家の罠」
佐藤優/国家の罠 
2005年作品。
筆者は、元外務省の職員。
ロシア外交のための情報収集に携わる主任分析官だった。
2002年に背任罪容疑で逮捕。その後、偽計業務妨害容疑で再逮捕。
512日間の勾留中に受けた取調べを軸に、事件の真相を解説したもの。

端的に言うと、この背任罪は、
イスラエルで開催された国際学会の経費について、
外務省のマネーを違法に支出したというもの。
偽計業務妨害は、2000年に、国後島に発電所を建設するに当たり、
三井物産が落札するよう便宜を図ったというもの。

これらは、ムネオハウスだ、疑惑の総合商社だ、などと騒がれたことに
関連した事件である。
筆者は、鈴木宗男氏と極めて密接な関係にあった。
当時、ワイドショーや週刊誌は、鈴木氏の横暴ぶりを盛んに報道した。
そこで検察が動いた。
外務省は筆者に罪を着せ、逮捕への道筋を作った。
これを突破口に、鈴木宗男氏逮捕に向けて一気に動いた。
と、筆者は綴っている。

あくまで筆者方向からの見方、感じ方なのだが、とにかく壮絶。
検察が周りをどんどん固めていき、自らに危機がせまってくる。
自分は違法だという意識はないのに、
違法ありきで犯罪を成立させるストーリーが強引に作られていくさまは、
ぞっとするような怖さがあった。

怖いどころか、気持ち悪くなった。
自分に全く身に覚えのないことで、
誰かの手が伸び、何かにはめこまれているのではないかと、
根拠のない不安に襲われ、憂鬱な気持ちになったほど。

それほどにエネルギーのある内容である。
執拗な取調べに、普通の人の精神であれば、確実に参っている状況だが、
一貫して正面から理論的に違法性を否定。
まさに、筆者の「まじ、やってらんないって」という、
やりきれない気持ちが爆発している。

それにしても、筆者の記憶力はすごい。
事件の経過は、極めて精密で克明である。

当時の外務大臣、田中真紀子氏のやりたい放題ぶりも描かれている。
決まっていた人事を強引に元に戻したり、
指輪紛失のせいでイラン外相との階段に遅刻したり、
確かにそういう出来事があったなと。
また、田中真紀子と鈴木宗男の闘いの構図も、わかりやすく書かれている。

我々が日頃、映像や文字で見ていることは果たして真実なのか、
と思えてくる。
人々は、ワイドショーと週刊誌の中吊り広告に書かれたことが
事実であると認識してしまい、物事は動いていく。
ほんとに怖い。

目立たぬように、はしゃがぬように、
ひっそり消極的に生きていこうかなと考えてしまうほど、
元気とやる気を奪う作品でもある。

しかし、スポーツ選手や芸能人などが、
「国民に夢や感動を与えたい」とか、
「みんなに元気と勇気を与えたい」とか、
大上段から発言されるよりはずっといい。

夢、感動、元気、勇気みたいなものは、
無理するものではなく、自然に発生するものでありたいなと。
その場合、場の空気やタイミングなどがポイントになるわけで、
例えば、心地よい平穏を楽しんでいる時に、
えらく元気な人に接すると、こちらは元気がなくなってしまうような。
そんな勝手なこのオレ、ロック・ミー・ベイベー。
けれどどうにもできない、ベイビー・ロック・ミー。
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テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌



















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