自らの高齢化のせいだろうか。
オリンピック競技を見たい気持ちが強くなっている。
そして、選手のパワーやテクニックに圧倒され、
やり遂げた姿に素直に感動できる。
メダルをとれれば、もちろん嬉しいのだが、
自分の力を出し切ったという表情やコメントに胸が熱くなる。
女子モーグルの
自分の力を出し切ることが最大の難関だと思っていたと。
全く同感であります。
積み重ねてきたものを、オリンピックという、とんでもない
プレッシャーの中で出せることは、
なんと素晴らしく、感動的なことか。
メダルは、もちろん重要だろう。
記録として、いつまでも残っていくし、
メダル景気によって、その後の人生が変わる人もいるだろう。
しかし、やはり記憶に残るパフォーマンスを見たい。
記憶に残るいい表情を見たい。
いかにも傍観者の勝手な望みではあるが。
ただ、記憶の大小は、そのパフォーマンスの凄さよりも、
結局は、テレビにどれだけ写ったかによるところが大きい。
そのせいで、パフォーマンスではないところの記憶しか
残らない場合もある。
例えば、2006年のサッカーW杯。
思い出すのは、しばらくピッチに寝ころんでいた中田選手だけである。
誠に失礼ながら、プレーの記憶が全くない。
さて今回は、
料理こそ、記録より、記憶に残るものであるべきであります。
■味禄(
店名は「あじろく」と読む。
札幌新道から北方向へ向かい、もう少しでモエレ沼公園に
着いてしまいそうなところにある。
通り沿いに看板はあるが、店舗は引っ込んだところにあるため、
見落としやすいので注意。
東苗穂のこの辺り、30年くらい前は、完全に
佇まいだったのではないだろうか。
周りには畑がまだ多くあった頃から営業してきたような、
リアル昭和なテイスト満載の古いドライブインのようなお店。
メニューは、和洋中幅広く、ファミリー・レストラン的。
メニューが多いので、小上がりでは普通に宴会ができそう。
名物メニューである「ミックスグリル定食」(850円)をいただく。
ハンバーグ、ウインナー、チキングリルをメインに、
ポテトフライやスパゲッティなどがグリルしている。
小さい頃、どこかに出かけた時、道沿いのドライブインで食べたような、
ちょっとした特別感と素朴感が一体になったようなテイスト。
店の雰囲気も相俟って、どことなく懐かしい感じがするグリル。
訪問したのは冬の初めの平日の夜。
にもかかわらず、入れ替わりお客さんが来た。
根強いファンが多い店なのだと実感した。それもまたグリル。
■牛太郎(
定食系の有名店であります。
ウリは、やはりライスの量の多さでしょうか。
標準仕様で、どんぶりに山盛り。
茶碗3杯強はあるのではないかと思われます。
そのことは知っていたので、ライス少なめで注文するも、
それでも、茶碗2杯強はあるのではないかと思われます。
代表的メニューである「とんかつ定食」(700円)。
食堂的な手作り感が嬉しいのであります。
肉はやや薄目で大きめ。
仕込みで肉を叩いた感がして、なんとなく好ましく思います。
付け合わせに、イカ刺しが標準装備なのもハッピーであります。
これまた人気の「カツカレー定食」(800円)。
ルーは、懐かし食堂テイストの家庭的な味。
ルーの量も決して少なくはないのですが、
ライスとのバランスでは足りなくなってしまうのです。
男性一人客の絶大な支持があり、曜日や時間を問わず、
必ずそうしたヘヴィ・ローテーションとおぼしきお客がいます。
たまに若い家族連れも見かけます。
冬の平日の夜に、入口で順番待ちをしている状況も見たことがあります。
店内はリアルに古く、特に小上がりの狭さや畳、壁などは、
私が小さい頃にもなかった感じのオールドぶりなのです。
料理のみならず、この雰囲気を味わうのも、おつなものです。
店を仕切る、マイルドにさばさばした女性の雰囲気も、
居心地を良くする大きな要因でしょう。
ただし、テレビの音はノイジーなのであります。
■あじ萬(
地方にある大衆食堂のようで、
時間の流れがここだけ違うような長閑な佇まい。
オールディで飾り気のないところがたまらない。
その反面、なんとなくは入店しにくい外観でもある。
実はこの店、近所のアラフォー・マスター達に人気である。
具体に言うと、二条市場のところにある「のれん横丁」(南3東1)
にあるバー「STARMAN」のマスター。
それに、北23条東1丁目にある焼鳥店「KEPPARE」(ケッパレ)の
マスター。
以上2名である。
2名とはいえ、たまたまドリンキンした先のマスターが、
あじ萬ファンであるというのは単なる偶然ではない。
それなりの魅力があるということだ。
しかも、自ら飲食業を営んでいるお二人からの高評価なのだ。
音楽業界的に言えば、「ミュージシャンズ・ミュージシャン」。
ミュージシャンの間でファンの多いミュージシャンのようである。
あじ萬は、私が日頃、バンド練習をしているスタジオのすぐ近くにあり、
存在はかねて知っていた。
イート・ウォーキングが好きな私の興味をくすぐり続けた日々。
しかし、賑わいや活気を感じさせないこの外観は、
魅力であり、ネックでもあった。
そこで検索してみると、「KEPPARE」のマスターのブログに行き着き、
訪問しなければならない店であると確信した。
看板メニューである「天ぷら定食」(730円)。
フォトではわからないが、
天ぷらは、海老、イカ、白身魚、かぼちゃ、舞茸、アスパラなど、
10種類以上が盛られている。
どれも小ぶりではあるが、この価格で、この量は凄い。
天ぷら専門店のそれとは趣が異なり、まさに食堂の天ぷら。
真っ当に家庭的に味わいである。
これは深く濃く支持するファンが多いだろうなと納得の一品である。
なお、スターリンの2ndアルバム収録の「天ぷら」とも味わいは違う。
これも看板メニューと思われる「味噌かつ定食」(780円)。
店のフォトにあるとおり、入口にかかっている黄色い屋根に、
「天ぷら」、「ラーメン」とともに、「味噌かつ」と書かれていたので、
まさに、まさしく看板メニューである。
真面目な手作り感の伝わるカツである。
脂身の入り方が実によろしいです。
カツの中に味噌がインされている。
この味噌が、私の味覚では結構しょっぱく感じ、
このしょっぱさでキャベツさえもソース不要でイートした。
なんといいますか、ずっとそこにあってほしいお店である。
郷愁を感じさせる素敵な風情がそこにある。
店を切り盛りする年配のご夫婦も、いい距離感がありつつ、
非常に温かみがあるといいますか。
いいお店です。
ただし、テレビの音はノイジーです。
■KIZUNA(札幌市東区北15条東7丁目 北光線沿い)
環状通近くの北光線沿いに、地味に存在している店。
店の前の舗道を歩いていても見落としやすく、
イン・ザ・カーなら全く気づかないのではないだろうか。
外観は、地方の町の喫茶店のよう。
店内は古くからある和風居酒屋のよう。
実際、夜は居酒屋営業をしているが、
事実上のメインは、600円の定食メニューと思われる。
600円の定食メニューは、ザンギ定食、ハンバーグ定食など10種類。
オーダーしたのは、ヒレカツ定食。
フォトではわかりにくいが、ヒレカツは結構なボリュームがある。
上記の「牛太郎」や「あじ萬」よりも、肉の量は多い。
肉は柔らかく、あっさりと塩、コショウで整えられている。
クセのない家庭的な味で、衣が薄めなのも嬉しい。
キャベツの切り方もいい感じなので食べやすい。
ライスも味噌汁も、普通よりは確実に多い。
以上を勘案すると、非常にコスト・パフォーマンスが高い。
800円でも十分に納得できる内容である。
知名度が低く、そこを歩いていても目立たない店だけに、
まさに穴場と言っていいだろう。
そして、なんといっても店名が強烈。
「KIZUNA」である。
店の表看板には、小さく「絆」と漢字でも表記しているが、基本はローマ字。
私の感覚では、思い切った大胆な店名である。
店を仕切るおばさんは、小さな方で、ソフトな印象。
それだけに、店名の由来が気になるところ。
店名は「KIZUNA」で、店内は和風居酒屋の風情。
それでいて、壁に貼られたメニューなど、随所にファンシーである。
絵も文字も、子供らしいものと大人が書いたものが混在し、
一体感やコンセプトが見えない。
しかし、そうした微妙なアンバランス感が逆に興味をそそる。
間違いなく再訪するだろう。
店内は、i-podのオーディオから、
70年代から80年代にかけてのニューミュージックが控えめに流れている。
この手の定食屋の中ではトップクラスで居心地がいい。
騒がしい宴会客がいたら、印象は異なるかもしれないが…。
◇ ◆ ◇
失業中の知り合いが、
カレーも食べたい、ラーメンも食べたい、ああ決められないと言うので、
メニューが豊富な食堂に連れて行けば、
カレーでもなく、ラーメンでもなく、
失業中だけに、ていしょくを求めました。
クグ丸です。