気づいてみると、ザ・ハート・オブ・ストーンのライブまで、
あと4日である。
改めて、ライブのお知らせを。
月日 2010年2月11日(木・祝日)
時間 OPEN 18:00 START 18:30
場所 スピリチュアル・ラウンジ(
出演 BLACK VELDT GONER
BETTER
黄金クリムゾン(帯広)
山岸大輔
THE CHEVY
THE HEART OF STONE
料金 前:1,000円 当:1,500円
ザ・ハート・オブ・ストーンの出演は2番目。
出演時刻は19時予定です。
新しいアルバム「雨の交差点」から5曲を演奏します。
当日、会場において、「雨の交差点」を発売します。
チケットをご用命の方は、ぜひご連絡を。
よろしくお願いします。
さて今回は、ブック・レヴュー。
5冊を紹介。
よろしくどうぞ。
■樋口明雄「約束の地」
私の選ぶ2009ブック・オブ・ザ・イアでは第1位を獲得した作品。
2009年の最後に読んだ作品であったことから、
個別のレヴューよりも、ブック・オブ・ザ・イアが先になってしまった。
そこで、改めてご紹介させていただく。
山梨県の八ケ岳に赴任した、環境省のキャリア官僚。
仕事は、畑などを荒らすクマやイノシシを山に返し、
人間と動物がきちんと棲み分けられる環境を作ること。
クマ等は薬殺せずに、センサーをつけて山に返し、
山のどこに棲息しているかの調査なども行う。
しかし、役所のそうした取組は、地元民に受け入れられない。
被害を受けた農家は、クマを射殺してほしいと思い、
狩猟免許を持ったハンターは趣味的に乱獲する。
それに抗議する動物愛護団体。
さらには、山にあるごみ焼却施設の環境汚染、それを隠蔽する市長、
大人同士の不和に起因する小学生同士のいじめなど、
問題が複雑に絡んでいく。
非常に面白かった。
516頁の長編ながら、ぐいぐいと引き寄せられ、全く飽きない。
環境保護と人間のエゴを描いた読み物としても面白いが、
メディアであまり語られることのないリアルな問題を、
わかりやすく表しており、勉強になるなあと。
野生動物、人間、自然の共存。
そのあり方を、役所、動物保護団体、狩猟団体という主張の違う
それぞれの視点から描いてだけではなく、
動物視点でも描いているのが、ストーリーに深みを増している。
この作品は映像化しても面白いだろう。
映画ではなく、NHK土曜夜9時枠がぴたっときそうだ。
問題は、クマやイノシシとの格闘シーンだろう。
主人公は大沢たかおで決まりという感じだ。
物語を豊かなものにしたのは、自然や動物への愛、
そして、家族愛が底流として常に存在したこと。
読後感は清々しい。
■東野圭吾「新参者」
「このミステリがすごい」第1位、「週刊文春傑作ミステリー」第1位と、
圧倒的な強さを見せた、2009年の日本のミステリ小説の代表作。
ただ、私の選ぶ2009ブック・オブ・ザ・イアでは第3位と、
惜しくも3冠を逃した。
2009年中に読まなければと、年末の押し迫った時期に
読み終えたことから、前記の「約束の地」と同様、
個別のレヴューよりも、ブック・オブ・ザ・イアが先になったことから、
改めてご紹介させていただく。
東野作品でお馴染み、加賀恭一郎刑事の事件簿的な作品。
東京・日本橋で起こった、40代女性の絞殺事件。
捜査のために、日本橋の老舗を次々と訪問。
それらの店における家庭の事情などを、人情話に料理しつつ、
次第に事件を解決していく。
ほんとによくできた作品。
削って、削って、わかりやすい文章にしたのだと感じる、
平坦ながら厚みのある文章はさすが。
構成力が素晴らしい。
異なる店での出来事がつながって、事件の全容が見えてくる。
仕掛けの配置が絶妙で、最後にはすっきりと腑に落ちる。
あまりに完成度が高く、ひっかかりがないため、
逆に心に残りにくいという、おかしな弊害も発生するほど見事。
ただ、本書は、いわゆる連作短編である。
短編が連なって、長編的な結末を迎えるのだが、
連作であっても、やはり短編なのだ。
短編ごとに気持ちがニュートラルに戻ってしまうため、
せっかくの熱気が、やや途切れがちになったのが残念。
ほんとによくできた作品。
すっきりと上手すぎて、逆に心に残りにくいという、
おかしな弊害もあるほど完成度の高い人情ミステリー。
東野作品の凄さを再認識した。
この2、3年、東野作品は、ほとんど読んでいなかったのだが、
やはり、毎年何かの作品は読んでおくべきだなと。
■大沢在昌「罪深き海辺」
大沢在昌氏の2009年リリース作品。
東京から2時間程度のところにある海辺の小都市において、
第三セクターが運営するリゾートホテルを巡って、
大地主、市の有力者、暴力団らの利権争いを描いている。
大沢氏らしい、密度の濃い人間描写と、
過不足のない詰められた場面設定によって、
ポイントを絞り込んで、ぐいぐい引っ張られ、
どんどんと読まされてしまう。
特に、暴力団員のキャラの使い分けは、やはり巧い。
ストーリー自体は、殺人事件のタイミングや、
人のつながりのミス・リードのさせ具合などが絶妙。
誰がほんとの悪なのか、誰が騙し、誰が騙されているのかの
スリル感を楽しめ、504ページという長さを感じさせない。
真相は陰湿な内容ではある。
しかし、テンポが早いせいか、良くも悪くもライト感覚になっている。
そう、良くも悪くも、である。
読みやすいのだが、次々に起こる出来事の動機が弱いような。
また、後半、人のつながりがごちゃついたせいで、
犯人判明の際の衝撃が小さくなったのも残念。
オチも、やや強引かなと。
主役である定年間近の男性刑事が、
自分のことを「あたし」と表現していることも、
オカマっぽいイメージが拭えず、どこかしっくりこなかった。
とはいえ、安定した大沢ワールドを楽しめる佳作である。
■桐野夏生「東京島」
桐野夏生氏の2008年リリース作品。
船旅の途中、嵐に巻き込まれるなど、それぞれの事情により、
沖縄の南方、台湾あたりと思われる無人島に住みついた男31人と女1人。
そんな男女32人の無人島での数年間を描いている。
無人島という自由なのに不自由な、
開放的な空間なのに閉鎖的な人間関係の中で、
派閥ができ、争いが起こったり、理性が壊れ、野生化していく。
基本的に汚れている。
フィジカル面でもメンタル面でも汚れている。
追いつめられ、精神がずたずたになり、変貌していく様は怖い。
内容は、シリアスでグロテスクである。
しかし、肌触りは結構コミカルである。
どろどろしており、気持ち悪くもあるのだが、
全体として、あっけらかんとした感じがする。
例えば、島にある自殺の名所の「サイナラ岬」というネーミングは、
安直ながら最高。
また、空腹になって、一番に食べたいと思ったものが、
イチゴジャムを塗った山崎製パンの食パンだったりと、
妙にミニマムなリアリティがあったりする。
ただ、この物語の世界観には入りきれなかった。
途中、同じ状況を繰り返しているような停滞感があり、
このまま、ぐだぐたなまま終わったらがっかりだな、
と思ったところで、後半、一気に大展開する。
しかし、ちょっと力業っぽいかなと。
太めの女性の艶っぽさや、
「自分が一番だけど、何か間違ってる?」的な
身勝手で自意識過剰な女性を描かせたら、ほんとに上手い。
というか痛快。
■木内一裕「OUT-AND-OUT」
元ヤクザの探偵。
仕事の依頼を受け、依頼者のもとを訪れると、依頼者は射殺されていた。
驚くことに、そこに殺人犯もいた。
そして、探偵が犯人であるかのような工作をされ、犯人は逃亡。
探偵は、殺害された依頼者の身元を洗い、殺人犯を割り出す。
その殺人の裏には、大きな悪がうごめいていた。
面白い。
ハイウェイをノンストップで走り抜けたくなるような
スピード感と刺激的な場面の連続。
予期せぬ展開はいくつかあるが、
全く不自然さはなく、その後のフォローも完璧。
きちんとした技巧があっての疾走感。
最初から最後まで全く飽きさせない。
探偵は、かなり荒いし、一方的なところはあるが、
無駄なし、ブレなしで、キャラクターも展開もしっかりしている。
ちょっと古くさいB級ハードボイルドっぽい。
しかし、エンタテイメント性は高く、
映像化しても、小説での面白さをキープできるように思う。
主役は寺島進氏のイメージ。
ところどころ切なくさせるシーンもある。
さっくりとしたスピード感とのバランスも良く、
実はすごく良くまとまっている。
もっとメジャーになっていい作家である。
◇ ◆ ◇
ここ数日、札幌は最低気温がマイナス10度を下回る日が続いた。
そして6日は午後から大雪になり、夕方からは猛吹雪。
一日中、自宅にこもり、YOU TUBEで、
ルースターズやストリート・スライダースなど、
80年代の日本のロックを見て、自分のロックの原点を確認した。
当時は、どういうわけか男性ミュージシャンの化粧が派手だった。
化粧が派手といえば、日本の女子フィギュア・スケート選手のそれも、
いくら華やかな協議とはいえ、ちょっと過度すぎないだろうか。
塗りすぎだし、目もとを強調し過ぎだと思いマスカラ。