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今回は、2009・ブック・オブ・ザ・イア。
私が2009年中に読んだ作品の中から、
新作部門はトップ10作品を、過去作品部門からは4作をピックアップ。

選考対象は、新作部門が2008年1月以降にリリースされた作品。
つまり、最近2年間にリリースされた作品である。
過去作品部門は、それ以前にリリースされた作品である。

2009年は、1年を通してコンスタントに読書ができた。
私の中で読書は、生活をニュートラルに戻す要素もあり、
心が穏やかではない時の、良い緩衝剤になっている。

ただ、時間がある時に読書ばかりしていては、
他のことをする時間がなくなるし、
冊数をこなすことに気を奪われると、感受性が麻痺してくるので、
意味のある読書ライフを送るためにも、
心身のバランスと環境づくりは重要だ。


さて、新作部門は1位から4位が大激戦。
正直、明日になれば、順位が入れ替わるかも、というくらい、
甲乙つけがたく、どれも非常にオススメしたい作品である。
では、どうぞ。

【新作部門】
第1位 樋口明雄「約束の地」
 09-01樋口明雄/約束の地

  山梨県の八ケ岳に赴任した、環境省のキャリア官僚。
  仕事は、畑などを荒らすクマやイノシシを山に返し、
  人間と動物がきちんと棲み分けられる環境を作ること。
  しかし、無闇に捕獲する地元のハンター、動物愛護団体の抗議、
  山を浸食する環境汚染、その環境汚染の原因を隠蔽する市長など、
  様々な圧力の中で、官僚は苦闘する。
  そんな状況で、いくつかの殺人事件が起こり、
  さらには大人同士の不和に起因する小学生同士のいじめがあったりと、
  あらゆる問題が絡み、読み出したら止まらない面白さである。
  山の空気や獣臭を感じるほどの臨場感。
  そして、何よりヒューマニズムを感じる社会派作品。
  興奮し、圧倒され、考えさせられます。

第2位 奥田英郎「オリンピックの身代金」
      09-02奥田英朗/オリンピックの身代金

  昭和39年、東京。オリンピックを間近にして、
  警察関係施設を狙った爆破事件が相次いで起こる。
  容疑者として浮かんだのは東大の大学院生。
  彼が、そうした行為に及んだ経緯を、
  当時の建設現場での過酷な労働条件や、
  都市部と地方の貧富の差などの時代背景とともに描かれている。
  特に、地方からの出稼者が、理不尽な労働環境に苦しみ、
  次第にヒロポンに手を出し、どん底に落ちていく様は壮絶。
  どうしようもない閉塞感に息をのみ、ページをめくる手が止まらない。
  とにかく読み応えがある硬派な作品。

第3位 東野圭吾「新参者」
09-03東野圭吾/新参者 

  東野作品でお馴染み、加賀恭一郎刑事の事件簿的な作品。
  ひとり暮らしの40代女性の絞殺事件をベースに、
  東京・日本橋にある店を歩き回り、事件を解決していく。
  前半は、落語的な人情話のようで、実はその点だけでも、
  十分に感動できるのだが、次第にミステリーになっていく。
  とにかく構成力が素晴らしい。
  それぞれの店でのジーンとくる話の裏に、きちんと仕掛けがあり、
  全ての話をつなげると、事件の全容が見える。
  まさに職人技。鮮やか、かつ完璧である。
  東野圭吾はやはり凄いのだと感服。ただ、衝撃はやや薄いか。
  
第4位 多島斗志之「黒百合」
 09-04多島斗志之/黒百合

  昭和27年、夏休みを六甲山にある別荘で過ごす男子中学生二人と
  一人の女子中学生。そんな三人の夏物語である。
  ただ、本質はミステリーである。
  最後に、ふとしたある出来事によって、それまで随所に置かれた点が、
  一気に結びつき、線どころか、面になってしまうほど鮮やかな結末。
  さり気なく仕掛けられた伏線に、後になって驚く。
  また、昭和27年当時にヒットした「君の名は」や
  「テネシーワルツ」を、単に時代背景としてではなく、
  かけがえのない青春の一ページとなるべく素敵に演出している。
  さわやかな感傷と、切ない痛みに、なぜか癒されます。

第5位 佐藤正午「身の上話」
 09-05佐藤正午/身の上話

  とある地方都市の本屋の女性店員。
  歯医者に行くために、仕事の合間に休暇を取った。
  その時、たまたま空港行きのバスが目に入った。
  気の向くままにバスに乗り、そのまま飛行機で東京まで行ってしまう。
  魔が差して、一歩踏み外した行動。
  そこからジェットコースターのごとく流転していく物語。
  終盤、軸がやや横ずれした感はあるものの、先を知りたくて、
  どんどん読み進めたくなる部門では2009年のナンバー1。
  無駄なく、読みやすい日記のような文章も良かった。

第6位 山田詠美「学問」
 09-06山田詠美/学問

  静岡県の小都市における、1962年生まれの男女数人の、
  小学2年生から高校2年生までを、「性」の観点を軸として描いた作品。
  高校生になった中盤以降は、なまめかし度が増すことによって、
  共感しずらい点や、緊張感が薄れる点が多くなったが、
  全体を通して、言葉の選び方、表現の仕方が的確かつ瑞々しく、
  単なる青春日記を、優れた文学作品に押し上げている。
  登場人物の死亡記事を、ところどころに、はさめているのが効果的。
  今、青春を謳歌している若者達も、いずれは死ぬことを漂わせ、
  戻らない10代の輝きを際立たせている。ジャケットも素晴らしい。

第7位 牧薩次「完全恋愛」
 09-07牧薩次/完全恋愛

  第2次世界大戦中、福島県に疎開したある少年時代から、
  平成19年に亡くなるまで、ある画家の60有余年の生涯を描いた作品。
  その軸になっているのは、疎開先での秘めた恋。
  それは結実することはなかったが、生涯その気持ちを貫いた。
  誰にも知られず秘めた恋心。
  これがタイトルの「完全恋愛」なのかと、納得しつつ読み終える。
  かと思いきや、「そっちだったのか!」と、最後にどんでん返し。
  3つの殺人事件や、福島の山奥の村社会、民主主義への変化など、
  時代背景を織り交ぜながら、ミステリアスかつ切なさにあふれた物語。

第8位 天童荒太「悼む人」
    09-08天童荒太/悼む人

  第140回(2008年下半期)直木賞受賞作。
  新聞やニュースで知った死者を悼むため、その人が亡くなった場所に赴き、
  手を合わせる青年と、それを取り巻く人々の物語。
  死者と関わりのない見知らぬ青年が突然訪れ、死者のことを聞くため、
  行く先々で気味悪く思われる。リアルに考えれば当然だろう。
  だが、読んでいくうちに、生きていることへの感謝、
  死者を思い出してもらえることの有り難さのようなものを感じてくる。
  後半は、青年の母のガンの経過と、それに伴って変化する気持ちが
  メインのようになる。それも含めて死の意味を考えさせてくれる作品。

第9位 湊かなえ「少女」
 09-09湊かなえ/少女

  大ヒットした「告白」の次の作品。
  ある二人の女子高生。二人は、人が死ぬ瞬間を見てみたいと、
  一人は老人介護施設のボランティアをして老人の死を、
  一人は小児病棟で本の読み聞かせをして子供の死を見る機会を窺う。
  そんな二人が、ある出来事をきっかけに意外な事実に近づいていく。
  「告白」で免疫がついたこともあり、衝撃や心のざわめきは
  前作ほどではないものの、ドキドキさせられ、意外な展開ありで、
  十分に面白く読める作品。女子高生の嫉妬心の描き方も絶妙。
  また、ストーリーの組み立て方が非常に巧みだなと感心。
  
第10位 井上荒野「切羽へ」
 09-10井上荒野/切羽へ

  第139回(2008年上半期)直木賞受賞作。
  九州の離島で、教師の夫と二人暮らしをしている妻。
  平凡で穏やかな生活を送っている。にもかかわらず、
  知らず知らずのうちに、ある男性教諭に惹かれていく。
  そんな微妙な心模様を、ぼんやりと、淡々と描いている。
  劇的でもなく、驚きもない。しかし、常に静かなうねりがあり、
  心がざわめき、嫌な気配を感じさせる書きぶりは見事。
  離島という狭い地域社会であるがゆえの濃密な人間関係や、
  スローな生活ぶりなど目に見えるようであり、それとともに、
  匂いや音までも想像させる空気感を巧く表現している。

【過去作品部門】
■大沢在昌「狼花」
09大沢在昌/狼花 
  2006年リリースの「新宿鮫シリーズ」9作目。
  大麻入手をめぐっての裏組織と警察組織の攻防を描いている。
  明快な文章とスピード感で、一気に読み手を引き込み、
  スマートながら重厚感のあるセリフが、奥行きを広げている。
  場面の変化が激しく、まるで映画を見ているかのようなスリル感。
  また、裏組織や薬物のことなど、入念に調べているのが窺える。
  だからといって、マニアックに説明するのではなく、
  エンターテイメント性を重視し、面白さと緊迫感を常に備えている。
  大沢氏の2000年代10年間の中で最高の作品ではないだろうか。
  ちなみに、先日、文庫化されたばかり。


■藤沢周平「蝉しぐれ」
     09藤沢周平/蝉しぐれ 

  1988年作品。
  江戸時代、山形の小さな藩における一人の侍の半生を描いた作品。
  父の死によってもたらされた不遇な環境の中で、
  それを受け入れ、気持ちに整理をつけながら、
  質素に、しかし力強く成長していく様は、心が洗われるよう。
  また、初恋の行く末は、時のいたずらというのか、運命というのか、
  非常に切ない道をたどる。物語の進み具合は早い。
  やや淡泊な文章ではあるが、そぎ落とすことにより、
  
核となる心情を浮き上がらせ、味わい深いものにしている。

■藤原伊織「名残り火」
     09藤原伊織/名残り火 

  2007年に亡くなった藤原伊織氏の遺作。
  かつての同僚が命を奪われた殺人事件を調べる中年男の物語。
  事件の真相は、コンビニ業界に潜む闇の部分と関係していた。
  そうした業界の仕組みなど、裏事情が丹念に描かれ、
  それを読んでいるだけでも引き込まれた。
  主人公の中年男の悲哀や情けなさが随所に描かれている。
  しかし、受ける印象はスタイリッシュ。そして気高い。
  派手さはないが、大人のミステリだなと思える佳作。

■桐野夏生「メタボラ」
09桐野夏生/メタボラ 
  2007年作品。
  目が覚めた時は、記憶喪失になっており、なぜか沖縄にいた。
  そんな青年の、沖縄での壮絶な日々を描いた作品。
  彼の記憶は少しずつ取り戻されていくが、暗澹たる過去を知ることに…。
  とにかく人物描写が素晴らしい。特に、人間のマイナス部分や、
  心の闇の描き方が丁寧かつキャッチーである。
  沖縄という土地の光と影について鋭くえぐっているところが、
  物語に厚みを持たせている。
  全体として薄暗さや不快感がつきまとう書きぶりだが、
  それでも読み進めずにはいられなくする桐野氏のテクニックに感嘆。

      ◇     ◆     ◇

一日が終わるのが早い。
なかなかやりたいことをする時間がない。
しかし、やりたいことができる時間ができても、
果たしてやりたいことはできるだろうか。
また、やりたいことをやって満たされるのも、なんとなく怖い。

そう考えると、適度に満たされない状態というか、
満たされそうなイメージがてきた時が、
一番満たされているのかもしれない。
自分で言ってることが、よくわかりません、ROCK ME。
そして、ROCK YOU。

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テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌





 帰宅途中に石山通り沿いのラーメンの名店「王香」で塩ラーメンをすすった日、過多な情景描写に辟易しながら「黄金を抱いて翔べ」を読みつつ、貴兄のアルバム「見慣れた町を抜け出して」をiTunesに取り込んだところ、驚いたことにアルバム名や曲名が自動的に表示されました。

 表示された内容に違和感を感じてよく見ると、アーティスト名が「Heart And Stone」、アルバム名が「090514」となっていたのは誰かの陰謀でしょうか。
【2010/01/22 23:04】 URL | オーガニックオオガミ #-[ 編集]

オーガッニッ君、コメントありがとう。
おっしゃるとおり、「見慣れた街を抜け出して」をiTunesに取り込むと、
アーティスト名が「Heart And Stone」と表示されます。
これは、ミキサー方面の事情です。残念なことです。

「黄金を抱いて翔べ」は、数年前にブック・オフで買ったものの、
未だに読んでいない作品です。
感想を聞かせてください。
それ如何によって、読むかどうか判断させていただきます。
それにしても、オーガニックなコメントで嬉しいです。

なお、新しいアルバムも聴くべきだ。
これは完全D・I・Yなアルバムなので、iTunes表示も、ぬかりがないぜ。
【2010/01/25 00:41】 URL | クグエSW #-[ 編集]

「黄金を抱いて翔べ」の世界には浸れませんでした。
板についていない専門用語や冗長な情景描写が読むリズムを阻害し、私を置いてけぼりにします。
最後の襲撃シーンは今までと打って変わって畳み掛けるようなスリリングな展開か、との淡い望みも裏切られました。

気分を一新するために貴兄の新しいアルバムを聞いて見たいのですが、販売している店舗まで北上する機会がありませんので直バイを申し込ませてください。
【2010/01/27 12:58】 URL | オーガニックオオガミ #-[ 編集]















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