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今年も残すところ、今日を含め3日。
年内まだ仕事がある方も、冬休みに入った方も、
何か気持ちが落ち着かない12月29日、大晦日イブ前日である。

今回は、今年最後のブックレヴュー。
期待はずれ作品に、時間を返してほしい気持ちになり、
素晴らしい作品との出会いに、いい時間をありがとう、と感謝した。
今回は、そんなピンキリの3冊。
さっそくどうぞ。

■米澤穂信「儚い羊たちの祝宴」
米澤穂信/儚い羊たちの祝宴 
5作の短編が収録されている。
いずれも、昭和中期の上流階級の館で起こるミステリ。
お手伝いや専属の料理人など、
使用人的立場の人が物語の中心に置き、
上流階級の陰の部分を描いている。

全編にわたり、派手さはなく、静かでひんやりとした雰囲気。
展開も淡々としている。
しかし、話の運びはテクニカルであり、
キャラクターに関しても、説明が僅かなのに、きちんとイメージさせる。
どの作品も、じわじわと不気味さを滲ませ、
何が隠されているのかと、興味をつなぎとめる。

ただ、動機がわかりにくかったり、弱かったりで、
面白さはあるのだが、グッと引き寄せる強さがないかなと。
そのため、読み進められるものの、読み終わると印象に残らない。
火は存在するのだが、炎にならず、煙の中で小さく燃えているような。
読後感は、そんなもやっとした感じで、余韻がもう少し欲しかった。

■桜庭一樹「製鉄天使」
桜庭一樹「製鉄天使」 
主人公は昭和41年生まれの少女。
描かれているのは、彼女が12歳から17歳まで。
昭和53年から昭和58年という、
ツッパリ、ヤンキー、暴走族が全盛の時代。
彼女が率いる、鳥取県の海岸沿いの村のレディース暴走族「製鉄天使」が、
島根、岡山、広島、山口各県のレディースを打ち負かし、
中国地方制覇をする話である。

作者の桜庭一樹の2007年作品、「赤朽葉家の伝説」を絶賛した私だが、
その次に出版された直木賞作品「私の男」における、
不必要なしつこさと意味不明な親子関係に嫌悪感ばかりが残り、
その次の「ファミリー・ポートレイト」では、
中盤以降のぐだぐだ感に、行き詰まりを感じた。
ただし、「ファミリー~」の前半は、桜庭氏独特の懐古的な幻想感が
素晴らしかったため、復活なるかと期待して、この新作を読んだ。

残念な出来だった。
描き方が、コミカルでマジカルで、まるでファンタジー暴走族だった。
リアリティが欠落しすぎで、ギャグマンガの世界観だった。
それでも、文章が魅力的ならいいのだが、なんとも浅い。
レディースをやっていることによる負の部分が、ほとんど描かれていない。
家庭生活も学校生活も、面倒なことは全部カット。
ひたすら中国地方制覇までの経過を羅列した日誌であるかのよう。

簡単に言うと、雑なのだ。
やけくそ気味に書いたのかと思えるほど無闇。
かといってスピード感があるわけでもなく、
ティーンネイジャーを描いているのに、まるで切なさや輝きがない。
奇をてらった表現は上滑りしまくりで、
結局何をどう書きたいのか、よくわからなかった。

中盤で、これは駄目だと確信したが、
半分読んだので、最後まで読み切った。
そして、桜庭一樹という作家を贔屓にしてきたので、
今回レヴューとして掲載したが、本来ならボツ作品である。
どうしてしまったのだろう。
直木賞受賞で燃え尽きたか。

■山田詠美「学問」
山田詠美「学問」 
舞台は静岡県の小都市。
主人公達は皆、1962年(昭和37年)生まれ。
描かれているのは、彼らの小学2年生から高校2年生まで。
日常生活における性への目覚めから、それぞれが成長していく過程を、
「学問」と捉えて、丁寧に、ユーモラスに、そして美しく描いている。

内容的には、後半ちょっと緩みがちになり、
「そういうもんかねぇ?」と共感しかねるところがあり、
緊張感も、とぎれがちになった。
中盤までは、いい具合に抑えが効いていただけに、ちょっと残念。
また、主人公の一人である貧乏カリスマ的少年が、
いまひとつ現実味がなく、つかみどころのないキャラだったかなと。

とはいえ、秀逸な作品だった。
読んでいて見えてくる景色は瑞々しく、
また、心の動きが手にとるように伝わり、なんとも切ない。
先を知りたくなる、というより、
静かに引き込まれ、この物語の世界観に浸ることが心地よい感じ。

極めて効果的だったのが、
各章の冒頭に挿入されている登場人物の死亡記事。
青春を謳歌しているこの若者達も、いずれは死ぬことを
間接的に漂わせつつ、
青春の日々を、より輝かしく、切ないものにしている。
この手法に、私は完全にはまった。

それと、とにかく文章が素晴らしい。
難しい言葉やひねった理屈があるわけではない。
普通の言葉で普通に書いているのだが、
言葉の選び方、表現の仕方など、無駄なく正確で、
日本語の美しさと文章の上手さに圧倒される。
私にとっては、良い文章を書く意味での「学問」とも感じた傑作である。

        ◇       ◆       ◇

昨日、札幌の街は人出が多かった。

車の数も多かった。
雪が溶け、アスファルトが出ている箇所も多いのに渋滞。
年末の慌ただしさってやつなのだろう。

それを尻目に私は大人しくしている。
年末年始は完全オフだ。
長い休みだからこそできることなどしない。
何にも巻き込まれず、平穏に年を越したいだけだ。
「怠惰な冬の中年」と呼ばれても結構。
プチ引きこもりによって英気を養う。
ドント・ウォーリー心配するな。
何もしなければ自然と何かをしたくなるのが人間。
だから今は、何も考えずに休むぜベイベー。
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学



















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