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寒い夜でも、雨の日曜日でも、
何を食べたいのかわからなくても、
街を歩いている人が楽しそうに見えても、
理解できなくても、受け入れがたくても、
本を読んでいると心が鎮まります。

今回は本の話。

■桐野夏生「グロテスク」

桐野夏生/グロテスク 
桐野夏生の2003年作品。
文庫版では上・下巻合わせて850ページもある長編で、
「このミステリーがすごい!2004」で第4位、
「週刊文春傑作ミステリー」で第3位にランキングされるなど、
一般的にも高い評価を得た彼女の代表作のひとつ。

名門女子校を舞台に、女性の見栄や階級意識の中に潜む深層心理を
克明に描いた重厚な作品。
ただ私にとっては、どろどろの内容だけに、重すぎるし、厚すぎた。

物語は全て、登場人物それぞれの手記の形で綴られている。
ところが登場人物が全員まともじゃない。
つまり、「まともじゃない人が書いた、まともじゃないこと」
という設定である。

黒く淀んだ感情をダイレクトに見せつけられるとともに、
内容的にも、描き方も執拗で、くどいため、
なかなかサクサクと展開してくれない。
まさに、流れることをやめた泥のごとくだった。
この圧倒的な毒にどっぷりと浸かれた読者は多かったのだろうが、
私はあまりの毒の連続にどっぷりと疲れた。

いつ劇的な展開があるのだろうと根気強く読み進めたが、
ねじれて墜ちて、墜ちてはねじれ、
結局は、延々どろどろ、終始ぎすぎすな物語だった。
あの出来事は何だったのか。その真相は何なのか。
なぜこんなに変なキャラクターなのか、など、
数々の疑問と腑に落ちない気持ちを残して読み終わる。

ただ、殺人犯である中国人「チャン」の供述は、
吸い込まれるように読めた。
中国の片田舎で生まれ、どうしようもなく貧乏な少年期を過ごした後、
上海に出て、やがて日本にやってくるまでの、
破天荒な人生についての書きぶりは、
桐野夏生らしいスピード感とドラマチック感があり見事だった。

■伊坂幸太郎「モダン・タイムス」
伊坂幸太郎/モダンタイムス 
伊坂幸太郎の2008年作品。
札幌市の図書館に予約をしてから順番がまわってくるまで、

9か月近くを要した。

タイトルは、チャップリンの映画タイトルをモチーフにしている。
産業革命によって工場が機械化され、分業が進む。
単純作業の繰り返しとなった人間は、
機械に翻弄されるという映画である。

伊坂氏の「モダンタイムス」は、時代設定が22世紀。
現在よりもパソコン化が進み、構築された様々なシステムの中で、
人間がからかわれ、責められ、もてあそばれるような物語である。

ある不可解な事件について調べようと検索していくうちに、
その検索をした者が次々とひどい目に遭う。
見えない大きな力に追われていく。
追われつつも、真相を暴こうとする。

そうした設定は面白いのだが、
パソコンのシステム上のマニアックな説明が多いため、
うまくイメージできず、もやっとしたまま読み進めざるを得ない。
また、22世紀設定でありながら、
人の身なり、住宅、交通、景色などが現在と変わらない感じがして、
22世紀という思い切った設定の面白さがなく、むしろ混乱した。

伊坂作品らしい気高さにあふれた文章ではある。
こういうことを書きたいんだ、という理念や哲学はわかる。
わかるのだが、そこにこだわるあまり、
堅苦しい表現や七面倒な説明的な会話が多く、
展開にスムーズさを欠いた。
そして、エンディングもうやむやで、ちょっと消化不良かなと。

伊坂氏の気高さとユーモア・センスは高く評価する。
それだけでも読破に要した時間は無駄ではなかったといえるが、
いかんせん、力みを感じてしまい、どこか馴染めなかった。
理念は伝わったが、ストーリーのまとめ方としては物足りなかった。
すごく練った、というよりは、行き当たりばったり感が勝ってしまった。

■木内一裕「水の中の犬」
木内一裕/水の中の犬 
初めて木内一裕氏の作品を読んだ。
どういう経歴の方か詳しくは知らないが、
ビー・パップ・ハイスクールの作者であるらしい。
小説はこれまでに3作しかリリースしていない。
この「水の中の犬」は、2007年にリリースされた2作目。

車中でたまたま聴いていた、STVラジオの大看板番組
「日高晤郎ショー」において、日高氏が、
木内一裕氏の作品について、高い評価していたことが心に留まり、
まずは試しにと、図書館で借りて読んでみた。

探偵モノである。
アウトロー中年だが、心優しく、礼儀をわきまえた探偵の男。
だが、警察や裏社会系の人脈もあるという、よくありがちな設定。

しかし、贅肉をそぎ落とした筋肉質な文章で、
ジャブとストレートのコンビネーションが良い。
それがテンポの良さにつながり、読むスピードも上がる。

依頼主はクラブ・ホステスの女。
彼女の不倫相手は妻子持ち。
彼女は不倫相手の弟に乱暴をされていた。
その相談にのった探偵。
調査をしていくうちに、探偵が追われるはめに。

登場人物のキャラクターも展開も、ばっさり、すっきりとしていて、
ぐいぐいと物語の中に引きずり込まれる。
直線的に話は進むが、場面づくりが非常に的確で、
適度に意外性と厚みがありつつ、
要所で、クールにどんでん返しを繰り出してくる。
印象に残る言葉や、表現の妙などはあまりないが、
とにかくストーリーとして面白い。

途中から探偵は、ひたすら破滅へと向かっていくのだが、
その動機が、いきひとつはっきりしなかったのが惜しい。
はっきりしないが、なんとなく理解できなくはない。
全く理解できないのは、高速道路無料化政策である。

無料化にした場合、高速道路は間違いなく混む。
高速バスやトラック輸送など、
スピードと時間の正確性がポイントになる業者は、
時刻管理ができなくなるだろう。

また、一般人にとって高速道路は、
時間短縮と手間軽減のためにお金を払うようなもの。
つまり、スピードとシンプルさを買っているのだ。
そもそもお金の使い途は、極端に言えば、
物を買ったり役務に対しての支払いと、時間や手間を買うことの
二つに区分されるのではないかと思っている。

高速道路という、スピードとシンプルさを
お金で買える選択肢は存在すべきだ。
そこは差別化されて然るべきだと思う。
私は、年に1、2回しか高速道路を使わない。
時間がなくて、切羽詰まった時だけ使う。
そういう特別な時や困った時だけ高速道路を使う方は多いだろう。
高速道路が無料になると、
世の中は切羽詰った人だらけになってしまう。

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元々、本を読むのは好きなのですが、異常なほどに読むのが遅い私です。

最近は少し時間に余裕があるので、また本でも読もうかと思っています。

CDのジャケ買いという言葉をよく聞きますが、私が本を買う際にもジャケ買いをしてしまいます。
表紙の絵が好みであれば、本の内容も好みのような気がして。。。

・・・まぁ、「そうでもない」ということがほとんどですが。
何にせよ、本を読むキッカケになれば、ジャケ買いも有りかと思っています。
【2009/10/21 17:15】 URL | yoshimi #-[ 編集]

本のジャケ・バイもありますね。
ただ、本のジャケは、CDほど、内容とリンクしていないといいますか。
むしろ、タイトル・バイしたくなるのはありますね。
まだ読んでませんが、「死ぬときに後悔すること」という作品は、
タイトルだけで読みたくなりバイしました。

混沌と虚無が入り交じる毎日の中で、
ニュートラルに戻してくれるのは、読書と睡眠です、今の私は。
【2009/10/23 00:55】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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