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今回の記事は本の紹介。
早速ですが、どうぞ。

■東野圭吾「夜明けの街で」

東野圭吾/夜明けの街で 
現在の日本の小説界で、最も人気のある作家の一人、東野圭吾の
2007年作品。
シンプルにいえば、30後半サラリーマンの浮気物語。
しかし、シンプルには進まない。
シンプルではなくしたのは、浮気相手のアラサー独身女性が、
15年前に起こった強盗殺人事件の犯人の疑いがあること。

彼女に隠された秘密は何か。
しかし男は次第に本気になっていく。
事件の時効は目の前である。
行く末を知りたくなる内容であり、
サクサクと展開していくため、中だるみをするこくなく没頭できる。

女性の強引さと毅然としたところが面白い。
何を言うか、どんな行動をするかと興味をもたせてくれる。
切なさや寂しさを感じさせないドライなキャラでありながら、
新潟のスキー場に現れるシーンは、いじらしく、
ちょっとほろっとさせられた。

クリスマス、年末年始、バレンタインなどに、
男が妻に嘘をついて密会する様は、読んでいてドキドキとトホホが交差し、
面白いのだが、辛い気持ちになる場面も多い。

そうしたことも含めて、東野作品らしく、読みやすく、わかりやすく、
それでいて、しっかりと最後まで引っ張ってくれる。
316頁の作品だが、時間に余裕があれば、一気読みできるだろう。
ただ、テンポが良かった反動か、全体としてちょっと軽い感じがした。
重厚感や、読んだ!という達成感がちょっと薄かったかなと。

■道尾秀介「鬼の跫音」

        道尾秀介/鬼の跫音 
タイトルの「跫音」は、「あしおと」と読む。
そんなに遠くないうちに、大きな賞を取りそうな
気がする
若手作家、道尾秀介(みちお・しゅうすけ)の2009年作品。
本書は、彼にとって初の短編集で、6話が収録されている。

いずれも読みやすく、すぐストーリーの中に入っていける。
しっかりと展開してくれるため、ページをめくるスピードも早くなる。
短編ながら、伏線が張られ、オチもあり、腑に落ちて終わる。

ただ、不吉で不気味な物語ばかりである。
狂おしく、捉えようによっては耽美的でもあり、
この世界観を受けつけない方はいるだろう。

6話の中で最も惹きつけられたのが「ケモノ」という作品。
とある引きこもりの青年。
ある時、彼の部屋にある椅子の脚が一本折れた。
その椅子は、刑務所作業製品として、
祖母が、かなり前に購入したものだった。

脚のつけ根(座席部分との接合部分)には、
服役者の氏名と、あるメッセージが刻まれていた。
興味を持った青年は、事件について調べる。
事件の内容は、両親殺害であった。
しかし、殺害時に家にいた、当時赤ん坊だった妹は殺さなかった。
青年は、その妹がどこに住んでいるのかを探し当てる。
そして驚愕の事実を知る。
短編にとどめるには、もったいなような深みと厚みのある作品だった。

そのほかの作品いずれも、猟奇的ながら面白い。
一旦読み始めたら、ずるずると最後まで読み切りたくなってしまう。
そんな「ずるずる感」を引き起こすのは、作者の技量だろう。
日常に疲れている時は、こうしたサクサクと読める猟奇的なストーリーが
意外と気分転換になったりする。

■奥田英朗「オリンピックの身代金」
         奥田英朗/オリンピックの身代金 
奥田英朗(おくだ・ひでお)は私の贔屓(ひいき)作家である。
綿密なのにくどさがなく、
丁寧なのにスケール感があり、
長編に関しては、確実に満足のいく読後感を与えてくれる。
この作品は、彼の2008年作品。
上下2段書きで524頁もある作品ながら、飽きることなく、
最初から最後まで惹きつけられた。

時は昭和39年。
10月に開催されるオリンピックが間近にせまった東京が舞台。
8月頃から、警察関係施設を狙った爆破事件が相次ぐ。
容疑者として浮かんできたのは、東大の大学院生。
彼は、8千万円を引き渡さなければ、開会式会場を爆破すると予告。
果てして結末はいかに。

大学院生と警察との攻防も面白いが、
最も引き込まれたのは、昭和39年という高度経済成長期の
日本における光と影の描写。
大学院生は、夏休みを日雇い土木作業員のバイトをして過ごす。
その現場の壮絶ぶりに圧倒される。

建設工事ラッシュで、労働者の数は不足。
多くの労働者は地方からの出稼ぎ。
過酷な労働条件の中で、東京と地方の貧富の差、支配と服従、
不公正と不平等、そうした様々な矛盾を思い知る。

上の者が下の者をたたき、下の者はさらに下の者をたたく。
最下部の者達は、本来は上の者と闘うべきなのに、
最下部の者同士で闘い、生き残っていこうとする。
こうした理不尽さや閉塞感の描き方は見事。

また、この時代、地方の山村に住む者は極めて貧乏だった、
そんな生活ぶりが描かれている。
特に印象に残ったシーンがある。
秋田から出稼ぎに来ていた男が亡くなった。
男の妻は、遺体を確認するために秋田から列車で上京する。
遺体と対面しても妻は淡々としていた。
結婚してから夫は、年中、東京へ出稼ぎに行き、
お金がなく、ほとんど秋田に帰ることができなかった。
妻が遺体を見てつぶやいた言葉は、
「この人、こういう顔をしてたんだねえ」だった。

また、夫婦には子供もいたが、旅費がかかることと、
父親のいない生活が当たり前だったから、
遺体と対面するほどではないとして、上京しなかった。
そういう時代だったのだろうか。
地方の貧困さに、なんとも胸が締めつけられるシーンだった。


遺体は秋田に運ばず、東京で火葬し、
遺骨とともに秋田へ帰ることにしたのだが、

妻は、秋田行きの列車をひとつ遅らせる。
「夫が東京で亡くならなければ、一生東京に来ることはなかった。
 死ぬまで、あの山の中で、農作業と家事に追われていたと思う」
そう言って、東京タワーなど、しばしの東京見物をする。
少し楽しんでいるようでもあり、一生に一度という刹那感などで、
非常に切なくなるシーンだった。

とにかく読み応えがあった。
すごい映画を見たような気分でもある。
ただ、気になった点を言わせていただくと、
大学院生が、日雇い労働者を始めた経緯が弱いかなと。
それと、麻薬、爆弾事件、身代金と墜ちていく過程が、
あまりに短期間かつ一気だった印象がある。
その辺りの心理描写の厚みがもう少しほしかった。

とはいえ、読後の達成感も満足度も高かった。
昭和39年。日本が変貌を遂げていくすごい時代だったのだと思う。
明らかに、「心」よりも「物質」の時代だった。
現代は、「物質」よりも「心」の時代と言われる。
いや、現実はそうでもないかも。
「子ども手当」なる、ばらまき施策が評価されるくらいだから。
せめて、例えば年収が低く、ほんとに困っている家庭に対して
手当するものならば異論はないのだが。
というか、お金を多く与えれば子供が増えるという政治家の発想が、
全くもって理解できません。
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わんばんこ!
ググエちゃんの本の紹介には関係ないけど
ザ・ビートルズのリマスター板のCD聴いた?
私は今日、レンタルで古いアルバムを聴きましたが
ブイシーですよ!
やはりノーマルのレコードの音が良い方もおりますが
私は今回のはドラム、ベース、ギターの音が出て
素晴しく良いと思います。
特に古いアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」や「ウィ
ズ・ザ・ビートルズ」など聴いてみては?
Keep on Ronk'n Roll !!!
【2009/09/28 22:17】 URL | ジョン・ンレノ #-[ 編集]

コメントありがとうございます。
「わんばんこ」という古風な出だしに卒倒しそうになりましたが、
「ジョン・ンレノ」で完全に意識がとびました。
さすがに「ンレノ」はあまりにアナーキーですね。
一般的な変速活用としては「ノレン」とするところですが、
「ンレノ」とは。
一文字目に「ン」を持ってくるとは凄まじいです。

ビートルズはもちろん初期のも素晴らしいです。
というか全て素晴らしいです。
私は初期作品なら「ヘルプ」ですね。
オリジナルCDは、イエロー・サブマリン以外は保有していますが、
よりいい音で、という欲望はなく、リマスター版は全く興味なしです。

なお、ビートルズは、レンタルではなく、
バイしておかなければならないアーチストだと思いますよ。
またエキセントリックなコメントをお待ちしております。
【2009/10/01 22:28】 URL | クグエSW #-[ 編集]

>バイしておかなければならないアーチストだと思いますよ。

ファンタスティックなコメント、サンキューソーマッチ!
オリジナルCDはもちろん愛買一途!
こんなコメントを書いていると湯のラヂオプログラムを
思い出します。
【2009/10/02 00:02】 URL | アナーキー #-[ 編集]

アナーキー様にはかないません。
「湯のラヂオプログラム」の「湯」は、
「YOU」のことだとは思いますが、あまりの変換の妙に、
にやつかずにはいられません。

このコメントには、気持ちとともに、
アルコールが入っていることが十分に伝わりました。
ありがとうございました。
「愛買一途」も謎ですが…。
【2009/10/03 21:18】 URL | クグエSW #-[ 編集]

愛買一途=I buy it
です。意味のない言葉をコメントして忝いです。
【2009/10/04 19:43】 URL | アナーキー #-[ 編集]

愛買=I buyは、ワールドクラスの想像力を働かせれば、
なんとかたどり着けるかもしれませんが、
「一途」が「it」 とは超人的発想だと思います。
勉強になりました。
【2009/10/05 21:12】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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