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盆の入りである。
サマー・ホリデイに突入された方もいるだろう。
私の2009年8月は、暦どおりに仕事をする。
夏休みをとることはままならない夏である。

しかし、土曜日には墓参りに行ってくる。
私はどうやら、墓参りが億劫なタイプではないようで、
むしろ、墓にインしている亡き者達に、
生かしてもらっている感謝を定期的に述べる必要があると感じており、
今年は既に3、4回、墓参りをしている。
ただ、線香も花も持参せず、真狩で汲んだ水を墓にかけて、
手を合わせてくるという、簡易なものである。

さて、今回は本の紹介である。
前回の記事でご存じのとおり、現在、私は検閲恐怖症である。
そこで誤解やチクリを受けないための安全策として本ネタにした。

まずは、ポップで奇想天外でありながら、
根底にある「父と子のつながり」にちょっと感動し、
墓参りに行きたい気持ちを高めた作品から。

■万城目学「プリンセス・トヨトミ」
         万城目学/プリンセストヨトミ 
万城目学(まきめ・まなぶ)の2009年3月発刊作品。
主役は、大阪の中学生2人と東京の会計検査院3人。
会計検査院とは、国民から集めた税金が適正に使われているのかを
チェックすることを業務とする国家公務員である。
例えば、国が都道府県や市町村、社団法人などに、
補助金という形で交付されたお金の使い途を検査するのが仕事である。

3人の会計検査院が大阪府庁に検査に出向いた。
そこで、とある社団法人に多額の補助金が流れていることを発見。
その実態を追求していくうち、200万の大阪人が
400年にわたって共有してきた秘密に行き着くというストーリー。

万城目学の代表作「鴨川ホルモー」にも共通するが、
物語の根幹が非現実的な架空の設定である。
そのため、イメージがしずらく、なかなかしっくりこない。
しっくりこない、といえば、
この時期、高校野球番組に登場する長嶋三奈の声と滑舌は、
未だに何かひっかかりがあるように感じている。

この作品は、映像があるとわかりやすいのに、と感じてしまった。
そう、万城目学の書きぶりは、映像を文章にしたような雰囲気なのだ。
文章自体のパワーが乏しいのだ。
また、必要以上に修飾語が多いため、逆にイメージがぼやけたり、
それがテンポの悪さにもつながっている。
妙に中だるみをして退屈になったかと思えば、
突然、展開が変わったりと、とにかく私のリズム感と合わない。

ところが後半は、ほのぼの、あるいは、じんわりとする箇所を作り、
エンディングに向かって、どんどん清々しくなっていく。
前半から中盤過ぎまでは、噛みごたえのない漫画を読んでいるようだが、
最後の70頁は完全に引き込まれ、ちょっとした感動と涙まで誘う。

最初に書いた、大阪人が400年にわたって共有してきた秘密は、
父から子に受け継がれていく。
受け継ぐ場所は、大阪城の地下を走る秘密のトンネルの中である。
このトンネルは歩いて1時間を要する長さがあるという設定である。
男は一生で二度しか、このトンネルを歩くことはない。
一度目は秘密を父から受け継ぐ時、
もう一度は秘密を自分から息子へ引き継ぐ時である。
では、どんなタイミングで受け継ぐのか。
そのあたりの真相が、この物語のハイライトだろう。

「あなたは大人になってから、1時間でも、父親と二人だけの空間で
話し合ったことがあるか?
 男は普通、そんな時間を一生持たない。
 父と子が二人だけで歩むトンネルでの往復の時間は、
二度と持つことができない二人だけの記憶になる」
こうした文章をはじめ、なかなか泣ける言葉が連発する箇所である。

それと、ハーフで長身で美貌の会計検査院の女性が、
物語の終盤に、お好み焼き屋で関西弁で話すシーンも良い。
素朴で暖かくて、ジーンとくる場面である。
特に、女性になりたい男子中学生に秘密を話すシーンは、
受け入れてくれることの優しさに触れ、感動して、はっとするほど。

全体的にみれば、だらだらとしたストーリー展開である。
前に戻って読み返しても、よくわからない部分さえある。
しかし、最後の70頁で、すべてはオールライトな気分にはなれた。
ただ、504頁のこの長編を、300頁くらいにして
テンポ良く緩急をつけてまとめたら、手放しで絶賛したと思う。
漫画、実写いずれでもいいので、映像で見たくなる作品だった。

■本多孝好「チェーンポイズン」
チェーン・ポイズン 
30代の元OLが薬物自殺をした。
その前後に2人の有名人も薬物で自殺した。
この3人の間に関連性はなく、この連続性は偶然に思われた。
しかし、この薬物の裏には大きな何かがあると疑問を持ったのが、
ひとりの週刊誌の記者の男。

この作品は、元OLの自殺前後の状況について、
それを調査する週刊誌の記者の視点と、元OL自身の視点で
交互に綴られている。
主に語られているのは、自殺をしようと決めてからの1年間である。

どんどん展開していくし、文章も読みやすい。
中だるみもあるが、真相は何か、という興味は最後まで持たせてくれた。
そして何より、終盤、「えっ、そういうことだったの?」と、
作者のトリックにまんまとはまっていたことを知る。
種明かしも鮮やかで、ページを戻して確認し、なるほどと納得する。

しかし、設定に無理が多かった。
記者はなぜ、2人の有名人ではなく、元OLの取材をしたのか。
自殺をしようと決めてから、1年間という期間を置くものだろうか。
薬物で楽に死ぬことは、自殺志願者にとってそんなに魅力的なものか。
こうした違和感が尾を引き、ミステリー部分に感情移入ができなかった。
また、全体として、迫ってくるような文章の強さがなかったかなと。

むしろ、物語の本筋とはずれるが、

自立支援施設を巡る行政のあり方や、
施設経営者の息子の不誠実さ、子供達の苦悩などの方が、
面白く読めたような気がする。

知人の女性が絶賛していた作品だったので読んでみた。
失礼ながら、それまで本多孝好という作者を知らなかった。
札幌市の図書館に予約したところ、200件くらいの予約があり、

5か月も順番待ちをした作品である。
そのわりには…、という気持ちは残ったが、
確かに、女性、特に20代後半から30代の女性には
高い評価を得られる雰囲気がある。

■今野敏「疑心」
今野敏/疑心 
堅物の警察官僚、竜崎を描いたシリーズ3作目。
シリーズ2作目の「果断」は、
私の選ぶ「2008・ブック・オブ・ザ・イア」における
入賞作5作のうちの1作である。

竜崎は、アメリカ大統領の来日に伴い、
羽田空港を中心とした区域の警備本部長に任命された。
しかしそれは、現在の役職を超えた抜擢であり、
周りの罠にはめられているかのような怪しい雰囲気が漂う。
そこに、羽田空港をターゲットにしたテロ情報が入る。
それに立ち向かう竜崎の姿を描いている。
と思いきや、ストーリーを展開させていくのは「恋」である。

相変わらず面白かった。
展開に淀みがなく、テンポがいいため、とにかく読めてしまう。
心の動きの描き方がリアルなので、話の中にどんどん引き込まれた。
ところが、読み終わってみると、
羽田テロ疑惑の捜査は、偶然が重なって、都合良く解決したように思え。
もう少し厚みと緊張感が欲しい気がした。

というか、羽田テロ捜査の核心が薄らぐほどに、
部下の女性への恋心に揺れる場面の比重が高く、
ユニーク警察官僚のユーモア小説のように思えた。
とはいえ、「恋をすると苦しむ。問題は嫉妬なんだ。嫉妬が苦しいんだ。
それさえなけりゃ、恋はそれほど苦しいものじゃないはずだ」
という一節など、納得できる部分も多々あり、
堅物男の恋愛ものとして読んでも、しっかりと面白いかもしれない。

シリーズの1作目、2作目ともそうだったが、
最後の10頁程度の、竜崎夫妻のやり取りが良い。
特に妻の大人ぶりがいい。
仕事のことで、夫にあれこれ言わず、
どんな大仕事を終えようが、いつもと変わらない態度で接する。
それが逆に夫の救いになっている。
私もそれが理想です。
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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌





秘密のトンネルの話し
いいですねー。クグエさんの解説だけで充分想像できました。
最近の世の中、秘密?が暴露、露呈され続けて事件続きですが・・・
何故、秘密なのか。秘密であることに意味がある?
秘密でなければならないことって意外にたくさんあって、秘密の部分が多い人間ほど
秘密を秘密とさせるための戦略や努力をし続けるので
意外に魅力的な人として映るかもしれないな~などと
ストーリーと関係のない妄想を楽しんでました~(笑)
【2009/08/16 11:17】 URL | なつき #-[ 編集]

なつきさん、コメントありがとうございます。
秘密は、魅力的に見せる人と、単に怪しかったり、変にもったいぶって
「どうでもいいわ」と思わせる人がいますね。
「秘密」も生き物なのでしょう。
「秘密」も情報のひとつなので、情報と同様、
得ることも大事ですが、使い方が大事ですよね。

不思議なもので、「このことは、あの人には知られたくないな」と思っていると、
知られたくないその人にかぎって、しつこく聞いてきたりします。
なんだか難しいですね。
【2009/08/16 23:36】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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