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しばらく、このブログで触れていなかったが、
職場に、「ガリガリ君」という全くそりが合わない同僚がいた。
「最近、ガリガリ君のネタ、書かないですね。
 あれ面白いですけどね」などと、
リクエスト的ご意見をいただくこともあったが控えていた。
なぜなら、私からの一方的な悪口となるためである。
それによって、読者の中には気分を害する方もいるだろうし、
私の人間性も、さらに歪むような気がしたため自粛していた。

この4月、ガリガリ君は人事異動により、私の職場を去った。
異動が決まってからも私は淡々としていたが、
申し訳ないが、内心は毎日カウントダウンをしていた。

そもそも「ガリガリ君」という名称は、
一日中パソコンの画面から目を離さず、
マウスをガリガリし続けていることからつけたものだ。
その音がうるさく、また、彼のパソコンの1m先にいる私を
虚ろな目で見ているようでもあり、気持ち悪かった。
なにせ、食事の時も、誰かに話しかけられても
マウスをいじり続け、画面から目を離さない人だったのだから。

この1年の間に、周りに人がいない時、
「決裁を受け取る時ぐらい、画面から目を離しませんか?」、
「上の人だけじゃなく、中村さんや山下さんが、朝、挨拶したら、
 返してもらえませんかね」など、
彼に対し、私にとっての常識を投げかけたこともあった。
彼の中では常識ではなかったようだが、
挨拶については、かなり改善してくれた。

そもそも性質が違うのだ。というか変なのだ。
不祥事をコソコソと小バカにしたり、
変な画像を取り込み、ため込んでは、
気の合う僅かな同僚に見せびらかしたり、
コンビニでパン1個を買っただけでも必ずレジ袋をもらっては、
気の合う僅かな同僚に、エコなんてくだらないとほざいたり、
信じられない音量でラーメンをすすっては、
集中豪雨で河川が氾濫したかのごとく大音量で鼻をかむ。
私にとっての不愉快ポイントが、
彼にとっての普通だったのだろう。
それにしてもパン1個でレジ袋はないだろう。

異動になって本当に良かった。
双方にとって良かったと思う。
職場だけに限ったのストレスなら70%減くらいの効果がある。
昼休みも快適である。
心おきなく読書や睡眠ができる。
昼休み読書量は確実に30%はアップした。
というわけで、今回は最近読んだ作品の中から3冊を紹介です。


■石田浅海「扉は閉ざされたまま」
石田浅海/扉は閉ざされたまま 

「このミステリーがすごい」で第2位、
「本格ミステリベストテン」でも第2位を獲得するなど、
業界で高い評価を得た2005年作品。
ちなみに、その年の第1位は、
いずれも東野圭吾「容疑者Xの献身」であった。

登場人物は大学のサークル仲間7人(男4人、女3人)。
彼らは約10年ぶりに集い、
ある洋館で、1泊2日の同窓会的パーティを開く。
この7人の中の一人の男が、別の男を、洋館の中で殺害するところから
物語は始まる。
殺害された男は、内側からカギをかけた状態で死んでいる。
つまり、あるトリックを使い、自殺あるいは事故と見せかけたのだ。

殺害された男は、部屋から出てこないが、
旅の疲れで眠ってしまったのだろう、じきに出てくるだろう、と、
事情を知らない他の5人+犯人の男の6人はパーティを始める。
しかし、いつまで経っても、男は部屋から出てこない。
皆、不審に思い始める。
一方、犯人の男は、ある事情により、翌日まで部屋には入れさせたくない。
そうした双方の心理戦のような物語である。

「謎解き」という面での構成力はすごい。
経過を丁寧に描き、論理的な詰めていく流れは、卒がなく緻密。
それでいて、わかりやすいため、評価が高いことにはある程度納得する。

ただ、「卒がなく緻密」の裏返しとして、
ちょっとした発言や、ふとした表情に、
いちいちチェックが入っているような「しつこさ」がある。
なんというか、ちまちました心理戦の繰り返しのようで、
はがゆさを感じるシーンもあった。

また、本の表紙に、6人の人物が描かれているが、
一番大きく描かれている男は、どう見ても、大沢たかおにしか見えず、
そのイメージが頭の中に張りついてしまった。
にもかかわらず、主人公のキャラは、
大沢氏とは全く異なるタイプであり、そのズレが終始気になった。

殺人の動機は、高尚すぎて庶民感覚にはないものであり、
リアリティに欠けているかなと。
登場人物達の出身大学は、偏差値がかなり高い設定だろう。
くだけたトークでさえ堅苦しく、ジョークさえ理知的で、
いまひとつ感情移入できなかった。
そう、情に訴えるものがないのだ。

とはいえ、きちんとした謎解きミステリであり、
わかりやすく一気に読ませる筆力もあるため、
時間つぶしに読むにはいいだろう。
なお、私とガリガリ君の関係は、最後まで、この作品のタイトルどおり、
扉は閉ざされたままだった


■早見和真「ひゃくはち」
早見和真/ひゃくはち 

主人公は東京に住む26歳の新聞記者。
彼には、つきあい始めて3か月の恋人がいる。
ある日、彼女から不可解なことを打ち明けられる。
「二人は高校時代に会っていた」というのだ。
しかも、それは彼女にとって、あまりいい思い出ではないらしい。
彼は高校時代へと記憶をたどる。

彼は神奈川県の高校野球名門校の補欠選手だった。
寮生活と厳しい練習。
そうした環境ではあったが、酒、タバコ、ナンパなど、
野球部員らしからぬ遊びもたくさんした。
そんな日々を思い返していく中で、
今も越えられずにいる辛い出来事があった。

昨年、王様のブランチや紀伊国屋書店の書評で高評価を
受けていたことから

興味を持ち、昨年秋に図書館に予約した。
3月上旬に貸出の順番がまわってきたが、
時間が経ちすぎたせいか、読みたい気持ちが下降しており、
少し読んで面白くなかったら、すぐにやめようと思って臨んだ。

ところが、読み始めてすぐに引き込まれた。
特別な言葉や手法を用いているわけではないが、
文章に躍動感があり、テンポがいい。
特に、試合、練習、寮での野球部員とのやり取りなど、
直接的に野球に関係するシーンは、
高校生らしい戸惑い、安っぽさ、気取り、友情などを
非常に活き活きと描いており、気持ちが乗ってくる感じがした。
また、過去の秘密が明かされていくというミステリ要素も含んでおり、
最後まで飽きることなく読み通せた。

ただ、疑問と注文もある。
まず、主人公のキャラが、単なるお調子者なのか、
結構勉強ができる努力家なのか、
全体を通して人物像が一致しなかった。

主人公の彼女は、それ以上に、ぼやっとしたイメージだった。
ストーリー上、重要な存在なのに、性格が見えず、外観も想像できず、
現在と過去とを結ぶ調整役として登場させただけか?と思えた。

頻繁に合コンをやっているような記述が多いことも違和感があった。
今時の高校生は、寮生活をしていても、
そんなに合コンの機会があるものなのか?
そんなに時間があるのか?というか、そんなにお金を持っているのか?
また、タバコと野球部監督の暴力については全くの無法状態。
作者は、これを肯定しているのか、否定しているのか、
どう伝えたいのか全く見えなかった。

また、野球関連部分の引き込みパワーは強い反面、
野球以外の、友情や恋愛部分の描写や展開は、
ちょっと強引で、こなれていない感じがしたのが残念だった。

とはいえ、楽しめた作品だった。
心身を煩わし悩ませる妄念を「煩悩」(ぼんのう)と言う。
煩悩の数は「108」、硬式ボールの縫い目の数も「108」。
この作品タイトルは、そこからとったのだろう。
名門高校野球部の日常を中心としながらも、
一人の高校生としての煩悩をうまく絡め、
なかなか良い適確なタイトルだと思う。

■伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」
伊坂幸太郎/フィッシュストーリー 

伊坂幸太郎の2007年作品。
短編4作品が掲載されているが、
表題作の「フィッシュストーリー」が圧倒的に良い。

他の作品も、淀みがなくスマートな展開であり、
それでいて味わい深く、かつスリリングであるという、
伊坂氏らしい上手さがあるのだが、いずれもオチが弱かった。
ただ、あくまで、伊坂氏の安定したクオリティを踏まえての評価である。
一般的に見ると、どの作品も面白く、かつ切なく読める。
しかし、「フィッシュストーリー」が際だって良かったので、
この作品に特化して解説させていただく。

「フィッシュストーリー」は、35年くらい前に、
あまり売れなかったバンドが残した最後のアルバムの中の1曲。
その曲の持つ意味、その曲に偶然であった若者、
航空機で偶然隣り合わせになった女性、そこで偶然起きた事件。
そうした時間を超えた偶然が、素敵に連鎖して世界を救う。

この作品は、今年3月に映画化され、現在も上映中である。
小説では50ページ程度の作品だったが、軸がしっかりした話なので、
映像によって人物や状況を深めれば、
さらに面白さや感動が増すような気がする。
その意味では、映画向きの作品かもしれない。

読後感が非常にいい。
エンディングは、現実的には気恥ずかしくなるようなキザっぽさがあるが、
素直に受け止められる爽快感があった。
「どうもこうもねえよ。でも、それが人生だ」と語ることの多い私だが、
「君の強い思いは、必ず誰かに伝わっている」と元気づけられ、
「人生ってやつは、まんざらでもないぞ」と思えた作品だった。
そう、希望が見えるストーリーなのだ。
そして、エナジーをもらえたような気がする。

そのエナジーは何に使うのか。
「いつか」のため準備しておくことに使うのだ。
今は、何をやってもうまくいかなくて、さえない毎日を送っていても、
いつか訪れるチャンスのために準備しておくことが大切なのだ。
気持ちを込めたもの、人生をかけたものは、
時代を超えて誰かにつながって生き続けていく。
素直にそうした前向きな気持ちになれた、後味のいい作品である。
ちなみに、ガリガリ君とは後味の悪いまま終わった。
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人一倍、トレーニング量はこなしているのに、球速が伸びない... 今の指導メニュー... ちやうやんしい【2009/04/11 19:44】

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