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梨木香歩のヒット作、「西の魔女が死んだ」を読んだ。
読みながら、こういうところに感動するんだろうな、
こういうことを言わんとしてるんだろうな、などと考えるほど、
同時にその裏側にある様々な現実も感じさせられた。
そんなクグエ的解釈が、本の感想よりも多くなるものと思われるので、
本に興味がない方も、是非最後まで読んでいただきたいと思う次第である。

西の魔女が死んだ 
主人公は、中学1年生の「まい」。
彼女は、中学に入学してまもなく、
仲間はずれ状態にされたことなどが原因で登校しなくなる。
やがて、まいは、ひと月あまりの間、
森のような田舎に住む祖母のもとで生活することに。

祖母はイギリス人。祖父(既に他界)は日本人。
したがって、まいはクォーターである。
この祖母が「西の魔女」である。
多感な時期にあり、もろく壊れやすい年代のまいに、
祖母は、時に優しく、時に厳しくも温かい言葉をかけていく。
まいは次第に心が解きほぐれ、少しずつ成長していく、
というストーリーである。

この作品は、中学生あたりの年代をターゲットにしているのか、
平たくわかりやすい文章になっている。
そのため、何か物足りなさはあるのだが、
梨木氏らしい、落ち着きと品がある文章である。
また、中学生らしい心の揺れや自我の目覚めを上手に拾っており、
大人が読むからいいのかも?とさえ感じるところがある。

祖母は、まいに「魔女修行」を始める。
その最大の基本は、「何事も自分で決めること」だった。
そのための第一歩は、「規則正しい生活をする」という地味なものだった。
これがベースとなって、物語は展開していく。

「何事も自分で決めること」の大切さを、随所で触れてくる。
確かに理解できる。
ただ、それに異を唱えた、まいのセリフが非常に印象的だった。
「おばあちゃんは、いつもわたしに自分で決めろって言うけれど、
 わたし、何だかいつもおばあちゃんの思う方向に
 誘導されているような気がする」

そう、人間の幸福も不幸も、運の善し悪しも、自分が決めるのではない。
実は、周りにいる者が決めるのではないか。
つまり、自分の意志がどうのこうのより、
どういう環境にあるか、周りにどういう人がいるかによって
決まってしまうのではないか。
私たちの日常生活において、
自分で決めることは小さな枠の中の物事だけであり、
大きな枠の物事は、周りの者が決めているのである。
何事も自分で決めること、とは、自分で道を切り開くことではなく、
その環境を受け入れる強さを持つことなのかも、と感じた。

そして、「規則正しい生活をすること」。
おっしゃるとおりだ。まずは、安定だ。
安定の上にこそ、安心や信頼が成り立つだろう。
ところが困ったことに、安定にしがみつくと、
退屈になったり、息苦しくなることもある。

裏を返せば、不安定というのは、ある意味、魅力的なのだ。
例えば、パチンコや競馬は、定期的に当たるものではなく、
不定期に大当たりする種類のものである。
大当たりの味をしめると、しばらく大当たりをしなくても、
次は当たるのではないかと、やり続けてしまうのだ。
つまり、大当たり間隔の変動が大きいものの方が依存性を高めるのだ。

例えばメールにしても、そうかもしれない。
相手を異性に限定しよう。
送信すればすぐに返信がきたり、定期的にメールを寄こす人よりも、
返信がこなくてヤキモキしたり、忘れた頃にメールを寄こす人の方が、
良くも悪くも継続的に連絡をとる関係になってはいないか。
気まぐれなメールに、時にペースを乱されたりしていないか。

不安定は、悪循環の根源にもなる。
不安定の中では、大切なことを見落としてしまう側面もある。
つまり、「規則正しい生活をすること」とは、
大切なことを見落とさないための基本なのかもしれない。

ところで私も、携帯メールの返信は非常に遅い。
決して不安定キャラとなって、だらだら関係を
維持しようとしているわけではない。
単に文字をうつのが面倒なのだ。
パソコンならばいいのだが、携帯の場合、相当な手間と時間がかかる。
これがかなり苦痛なのだ。
シンプル質問やシンプル連絡なら対応も早いのだが。

この作品は、祖母の言動をはじめ、ファンタジックなところがある。
その裏返しとして、現実も見せてくれる。
ラストは、亡くなった祖母が眠る祖母の家でのシーンである。
そこに祖母が残したメッセージに、涙する方も多いと思う。

ところが私にとっては、それよりも衝撃を受けたシーンがある。
まいは、祖母が亡くなったという知らせを聞き、
母と一緒に祖母の家に来た。
まいは、中学3年生になっていた。
中学1年生の時に、祖母の家でひと月あまりを過ごした。
かけがえないのない時間であり、祖母に大きな影響も受けた。

にもかかわらず、祖母が亡くなって、祖母の家に来たのは、
ひと月あまりを過ごした中学1年生以来だった。
つまり2年間、音信が途絶えていたのだ。

車で4時間程度の距離にもかかわらずだ。
札幌-函館間、札幌-釧路間より時間的には短いのにかかわらずだ。
この作品は、優しく温かくも凛としている内容であり、
ラストシーンは感動に値するものだろう。
ところが同時に、家族の疎遠さや、祖母のひとり暮らしの寂しさを
見せつけられたような気がした。
というか、私の中では、そうした現実の方が際だった。

祖母は2年間ずっと、まいのことを考えていた。
それが最後のメッセージに現れている。
それが非常に切ない。
作者・梨木香歩は、表向きはファンタジックに見せておいて、
実はファンタジーと対比させて現実を見せたかったのではないか。
いずれにしても、二度、三度と読める作品だし、
性別や年齢に関係なく読めるので、一家に一冊あってもいい作品である。

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌





2日連続の書き込みすみません...
ワタシも大好きな本で、年に一度は読んで泣いてます。自他共に認める「生涯思春期」なワタシには、まいの思うことがいちいちわかりすぎて辛い本でもあります(笑)
おっしゃるとおりファンタジー的なところやラストに目を奪われがちですが、実は現実との対比があってこその感動なんでしょうね。今思えば隣のおっさんも効果的な存在だったのかなぁ...かなり嫌いでしたが。あとホントにおばあちゃんは魔女だったのか、そして最後はどんなからくりであーなったのか(やったのは隣のおっさん説もありますが)今だに気になってます。
映画になってかなりメジャーになりましたが、この本を読んだ人がいると勝手にうれしくなるので、つい書き込みしてしまいました!
【2009/03/08 02:19】 URL | M子 #-[ 編集]

2つの記事が連続して、M子アンテナにひっかかるとは光栄です。
やはり、読む方にとって合致する部分があることは
非常に重要であると考えているため、嬉しい限りです。

この作品には、色々なメッセージがありますね。
色々な解釈ができるような書き方をしているとも言えます。
それは様々な想像ができるということでもあり、
その点でも良書といえます。
どう生きるか、どう死ぬかということの意味を問いかけている面も含め、
年齢に関係なく読めますね。
ただ、男性よりも女性の方がグッとくるのかなと思います。

それにしてもM子さんは、何度読んでも泣けると。
結末が分かっているのに泣けるというのは、
作品に相当の力があるということです。
なお、M子さんに対して、今後は生涯思春期の女として接していきます。
【2009/03/08 21:59】 URL | クグエSW #-[ 編集]

とっても人でなしな発言を…。
発行された頃に読んで今も家にはあるのですが、内容がまったくと言っていいほど思い出せないのです。
クグエさんが書いている内容を読んでも…「???」という…。
なんなんでしょう。。。
もう一度、読んでみる必要がありそうですね。
人として。(T-T)
【2009/03/09 11:39】 URL | yoshimi #-[ 編集]

yoshimiさん、どうもありがとう。
この作品に対して、私のような面倒くさい解釈をする人は
あまりいないと思います。
ちなみに、祖母が住んでいる森の中の家の様子は、
千望台を越えた砂利道の向こうにある景色を
想像しながら読みました。
本当だぜ。
【2009/03/10 22:59】 URL | クグエSW #-[ 編集]















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