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バイオリズム低調期にある私は、
最近、読書をする時間が多い。
気持ちを落ち着かせるためか、
単に時間があるからか、
心の隙間を文字で埋めるしかないのか、
その真意は自分でもわからないが、
この1か月くらいは、どこへ出かける時も、
本を持参している。

1月中旬を目途に、クグエ@スカイウォーカーの選ぶ
「2008・プック・オブ・ザ・イア」の発表を控えていることも、
この時期の読書ラッシュの要因のひとつだろう。

今回紹介する作品は、どれも入っていきやすく読みやすい。
なお、紹介の仕方が、ひたすら本の内容と感想のみに
終始していることをご容赦ください。
では、どうぞ。

■有栖川有栖「妃は船を沈める」

妃は船を沈める 
人気作家 有栖川有栖(ありすがわ・ありす)の2008年の代表作。
有栖川有栖ファンにはお馴染みの犯罪心理学者 火村シリーズである。
主人公は、「妃(きさき)」と称される41歳の女性。
彼女を取り巻く20代の男性達との不思議な関係と、
そこに起こる殺人事件を、
奥深くもライトタッチに描いた謎解きミステリーである。

登場人物それぞれのキャラがたっており、
また、状況がわかりやすく、
すうっーと自然と物語に引き込まれる。
そして、飽きることなく、さあっと読ませる力はさすが。

ただ、本筋とはかけ離れてはいないのだが、微妙な寄り道が多く、
音楽でいえば、Aメロ→A’メロ→Bメロ→サビというように、
すとんと落ちる感じがしない。
A’メロの辺りでサビがみえてしまうような、
Bメロで、またAメロのフレーズを出すような、
微妙に同じ繰り返しをしているような雰囲気があった。

そのため、すうっーと物語に入っていける反面、
最後は、すうっーと物語から離れてしまい、読後の余韻に乏しい。
派手さはなく、劇的でも、驚きも薄い。
とはいえ、起承転結がよく整理されており、
やっぱりそれなりに面白いため、
最後まで読まされ、腑に落ちさせてくれる。

また、本筋ではないところに引き込まれたりもした。
特に、「猿の手」の解釈で議論を戦わせる場面は面白かった。
「猿の手」は、ウィリアム・ジェイコブス作の怪奇小説の名作。
願い事を3つ叶えてくれるが、その見返りに良くないことが起こる、
いいのか悪いのかわからない魔法の手の話である。

1つめの願いとして、家を買うために200ポンドを欲しいと願う。
すると翌日、その家の息子が事故で亡くなり、
その補償金として、200ポンドが支給される。
2つめの願いとして、その息子を生き返らせてくれと願う。
すると、玄関のドアが壊れそうほどに、凄まじく連打される。
墓地に埋葬された息子が戻ってきたのか。
しかし、事故による遺体の損傷がひどく、
本人確認をさせてもらえなかった、その姿で戻ってきてるでは。
そこで、3つめの願いを唱える。

この3つめの願いに至る解釈に関する議論は、非常に面白い。
そして、それがこの物語の真実に迫るカギになっている。
純粋にミステリを読みたい方にはオススメです。

■東川篤哉「もう誘拐なんてしない」
もう誘拐なんてしない 
大学生(男)が、ひょんなことから女子高校生と知り合いになる。
二人は手を組んで狂言誘拐をやり、
女子高校生の親から身代金をゲットしようとする。
しかし、彼女の親は暴力団の組長だった。
果たして、結末はいかに
という話である。

とにかくコミカルな書きぶりになっており、
シリアス場面で脱力的になるような突っ込みがあったり、
トリックを謎といている場面で、強引にボケを入れたりと、
肌触りはギャグ・マンガのようである。
展開も早く、状況も見えやすいので、
「文字の多い本はちょっと」という方にとっては
非常に読みやすいと思う。

しかし、これほどコミカルにする必要があったのかな?
というのが、私の率直な感想である。
ミステリ部分だけに着目すると、結構しっかりとしているため、
もう少し人間模様や心理描写を丁寧に拾って書いた方が、
もっと印象づけられたと思う。

また、何かの伏線だと考えていたことや、
その後の行方が気になると思っていたことが、
最後まで触れられずに終わった箇所が多い。
印刷工場の死体、敵対する安川組との関わり、
妹の手術、偽札のあり方、通報された警察の対応など、
中途半端に終わった箇所が多すぎる。

ただ、評価したいのは、
舞台となった下関市と北九州市という関門海峡シティを、
非常に魅力的に描いていること。
関門海峡をはさんだ本州と九州の雰囲気の違いや街の情景など、
地域愛を感じる書きぶりとなっている。
この辺りを旅してみたいと思った。

私にとっては、必要以上のコミカルさがミステリ部分を上回り、
なんとも軽い作品に感じてしまったが、
一般的には、とっつきやすく、読み始めてすぐに話に入っていけるし、
飽きずに最後まで到達できるポップ・ミステリであることを
申し添えたい。


■道尾秀介「ラットマン」
ラットマン 

高校時代にバンドを結成。
それから14年、エアロスミスのコピー・バンドとして、
細々と活動を続ける30歳の男3人と20代の女性ドラマー。

この女性ドラマーの死体が、スタジオの倉庫から発見される。
事故か、事件か?
深まる謎と、メンバー同士への疑い。
この真相が、主人公である姫川の過去とともに明かされていく。

文句なしに面白かった。
最初から最後まで、淀みなく一気に読まされた。
まず感心したのが、決して構成はストレートではないのに、
文章が読みやすく、ストーリーの進め方が上手なこと。
そのため、物語にとけ込み、主人公と同じ呼吸で進んでいけた。

また、ポイントとなる箇所を作り、「ドキッ!」とさせたり、
いい意味で「あれ?」とさせたりと、
読み手の集中を途切れさせないような抑揚を施している。
そして、後半は一気に読み手を引きずり込む。

序盤から張り巡らせた伏線が絡み合い、
最後には思いがけない真実が明らかになる。
心地よい圧倒気分を味わっていると、
最後の最後に、さらにどんでん返しがある。
ほんとにラストまで気が抜けないストーリーだった。

二重、三重の仕掛けの絡め方には感服である。

シンプルながら奥深く、複雑だけどわかりやすく、
その完成度の高さに唸ってしまった。

作者である道尾秀介は、
それほど遠くない将来、メジャーな賞を手にするように思う。

地に足のついたストーリー展開と意外性の見事さは、
派手さはないが、ぶれずに独特の薄暗い世界に引きずり込む。
その筆力、実力は相当に高いと見る。


「ラットマン」というタイトルも絶妙。
「ラットマン」とは何か、
なぜ「ラットマン」というタイトルなのか。
読むと納得できます。

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