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先日、「虚夢」(きょむ)という小説を読んだ。
夏から札幌の図書館に予約をしていたが、
予約数が多すぎて、順番が回ってくるのは
何ヶ月も先になりそうなので、旭屋書店で購入した。


作者は「薬丸岳」(やくまる・がく)。
彼の2005年の作品、「天使のナイフ」は、
少年法の限界と矛盾を描いた、やりきれなくも非常に切ない内容で、
私の中では、2000年代に出版された小説において
トップ10入りするであろう素晴らしい作品である。
そんな薬丸氏の2008年の作品が、「虚夢」である。
今作では、精神障害を持った人の犯罪を描いている。

薬丸岳/虚夢 
舞台は札幌の平岸。
その冬はじめて雪で覆われた公園。
そこで遊んでいた4歳の娘とその母。
2人は、精神障害者である通り魔にナイフで襲われ、
母は重傷を負い、娘は亡くなった。

ところが、犯人は精神障害者であるという理由で不起訴となった。
不起訴ということは、裁判が行われなかったということであり、
つまりは、罪を問われなかったということである。
そして滝川にある病院の精神科へ送り込まれた。

娘を失った夫婦は、生活が崩壊。
妻はPTSDを患い、日を追うごとに症状が悪化し、結果的に離婚。
その事件から4年が経った時のこと。
妻は偶然、札幌市内で犯人の男を見かけた。
たった4年で、普通に生活していることを知り、愕然とする。
妻は、離婚した元夫に連絡をとる。
連絡を受けた元夫は、犯人の追跡を始める。

やがて、犯人の居場所を突き止めるが、
犯人の私生活において新たな事件が発生。
一方、妻の病状はさらに悪化。
こうしたことが複雑に絡み合い、どんでん返しもありつつ、
話は進んでいく。

先が知りたい気持ちを抑えきれず、
2日間、深夜読書をして読み切ってしまった。
登場人物のキャラの棲み分けがうまくできており、
場面の描き方も的確。
また、刑法第39条の問題を、一般人の視点で表していることや、
展開がうまく整理されていることから、わかりやすいし、読みやすい。
結果、どうなっていくのかの興味度が高まり、
眠たくっても、疲れてきても、電気代かさんでも、
灯油代かさんでも、やめられない、というプリプリ状態で読み倒した。

最後まで集中して読める面白い作品だった。
ただ、コンパクトにまとめられた気がする。
精神障害者の犯罪という、もっと知るべきだし、
もっと考えたいテーマであることからすると、
プラス100頁にして厚みを持たせ、
さらにえぐるような展開にしても良かったような気がする。
なんとなくあっさり終わった印象で、
ストーリーが壮絶なわりに、余韻が少ないという印象も残った。

もう少し、はみ出しても良かったと思う。
「もう一歩掘り下げれば、息づかいが聞こえるのに」
というところを削って、わかりやすくスピーディに、
そして、良くも悪くも、きれいに整理された感がある。

舞台が、6年くらい住んでいたことがある平岸であったことも
場面を見えやすくした。
さらに、犯人の男は、留萌の高校を卒業し、留萌の水産会社に就職。
その時に精神的にやられたという設定である。
ただ、それ以外、留萌を描いていない。
逆に、犯人の男と懇ろになった女は羽幌の出身という設定。
羽幌については、バスターミナルや飲み屋の雰囲気が描かれており、
さらに、クライマックスは、
羽幌のサンセット・ビーチを見下ろす丘である。
羽幌サンセットビーチを見下ろす丘 


現在、羽幌町在住で、この作品を読んだ方は
3人にも満たないような気がする。
もしかしたら、いないかもしれない。
羽幌町立図書館に電話をして教えたいぐらいだ。
もし、私を喜ばせるようなファンキーモンキーな反応を
してくれたら、この本を寄付してもいいと思っている。

ただ、羽幌町の図書館に電話をするとして、
最初になんと言えばいいのだろう。
何から伝えればいいのか、わからないまま時は流れるのではないか。
結果、何ひとつ言葉にできないという、
小田和正ティックな展開になりそうだ。

そんなことを考えていたら、「言葉にできない」を聴きたくなった。
パソコンに保存してあるはずだと思い、
パソコン内の曲が表示される画面を出し、「言葉に」で検索した。
しかし、「言葉にできない」は表示されなかった。
パソコンに保存していなかったのだ。
出てきたのは、「C調言葉に御用心」(サザンオールスターズ)だった。

さて、この物語の軸になっている刑法第39条。
この条文は、「心身喪失者の行為は罰しない」と
「心身耕弱者の行為はその刑を軽減する」である。
心身喪失者は「責任能力のない者」、
心身耕弱者は「責任能力が減退している者」である。
不必要な規定だとは思わないが、納得はできない。
いくら心身喪失者とはいえ、無差別殺人を許せるわけがない。
というか、人を殺すこと自体、精神障害の有無に関係なく、
まともな精神状態ではないだろう。

この作品の中で、刑法第39条について、
「精神障害者と精神障害をもつ犯罪者とを混同させている」
という一節がある。
私も同感である。
「どんな人がやったのか」より、犯罪の事実を重視すべきである。
犯罪の内容より、「どんな人がやったのか」の方が重たいのか?
命の価値ってそんなもんか?
このことは少年犯罪にも言えることである。

もちろん犯罪に至った経緯は様々な場合があるため、
十分考慮すべきたが、
無差別殺人にどんな考慮が必要だというのか。
まして生い立ちだとか、環境だとか、うんざりである。
それによって刑が変わるなんて信じられない。

また、物語の中で、精神障害者による犯罪を、
マスコミがタブー視することに触れている。
無差別殺人の犯人が精神障害者だとわかった途端、
マスコミはなんらの報道をやめたのである。
そんなマスコミに対する壮絶なる挑戦も描かれている。

マスコミのあり方の問題は、ずっと言われていることだが、
その権力たるや、警察や裁判所、ひいては法律を凌ぐと
感じることも多い。
例えば最近ならば、小室哲哉事件。
私自身、彼に対してなんらの同情はないが、
マスコミやメディアの袋叩きぶりはひどい。
裁判官が裁く前に、マスコミやメディアが
裁いてしまったようなものだ。

さらに、小室妻が姿を見せるというだけで、
大分県での小室妻のお父さんの法事にマスコミが殺到した。
その分別の無さに呆れた。
話題の人ならば、どこへでも、どんな状況のところへでも
行ってしまうのか。
情けない。プライドはないのか?

刑法第39条に話は戻るが、
被害者のことを考えれば、このまま野放しにしていいわけがない。
法律を変えられるのは、国会議員である。
麻生総理におかれては、マンガばっかり読んでないで、
こういう小説も読んでいただきたい。
そしたら、今より漢字も覚えるだろう。
読み違いも減るだろう。
しかし、「定額給付金」をばらまけば、国民は喜び、景気も回復?
読み違いをしているのは、漢字だけではないようだ。

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