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本日は、久しぶりに本の紹介。
5月21日以来である。

最近気づいたことがある。
自分の枕じゃなきゃ眠れないという人がいるが、
私は、自分の家じゃなきゃ本を読めないタイプのようだ。
外出時に少し時間が開いたら本を読もうと、持ち歩くことが結構ある。
しかし、まともに読んだためしがない。
それどころか、バッグから本を取り出すこともなく
帰宅することの方が圧倒的に多い。
やはり目的があって外出しているため、
そちらに心がいって、本を読むべき集中力がわかないのだ。

また、本を読む作業は、別の何かをしながらできない。
音楽を聴くのは、車を運転しながらでも、
掃除をしながらでも、天井を見ながらでもできる。
目をつぶって聴くこともできる。
本を読むときは、本を読む以外のことができない。
ほんとに効率の悪い作業である。
しかし、全ての神経が読書に傾けられているときは、
ちょっとした快感でもある。
そう、集中することは、なんであれ、
気持ちがいいことなのかもしれない。

さて、今回は3作品を紹介。
いずれも事件モノである。
しかし、ミステリーや謎解きというよりは、
いずれも、心の奥にある執念を見せつけられる作品である。
それでは、どうぞ。

◆ヒキタクニオ「負の紋章」

負の紋章 


ヒキタクニオ氏の作品を読んだのは初めてである。
この作品を読むきっかけになったのは、
たまたま車内で流れていた、STVラジオ「日高晤郎ショー」
において、日高氏が評価していたことによる。

主人公は45歳の会社員。
彼には、妻と10歳の娘がいる。
ある日、夫婦が外出中、留守番をしていた娘が姿を消す。
そして4日後、死体となって発見される。
彼は、仕事も家庭も捨て、家も売り払い、
犯人の復讐に、人生の全てをかける。
というストーリー。

警察の捜査は難航し、一向に犯人の手がかりは掴めない。
彼は、自らの手で犯人を見つけ出し、
自らの手で殺害することを思い立つ。
そして、犯人を捜す過程で、様々な協力者が現れる。
その協力者達は皆、いわゆるアキバ系である。

展開は、本筋重視で、非常にすっきりとしている。
娘の葬儀、警察の難航ぶり、協力者の日常生活など、
側面的な部分はかなり省略され、
ひたすら犯人捜しと復讐計画へと話は突き進む。
そのせいで、伏線や気配がないままに、急展開する場面もある。
とはいえ、本筋重視の一本道の展開ながら、
娘を亡くした悲しみ、怒り、苦しみが、
常に心を支配していることが、よく描かれている。

にもかかわらず、協力者との犯人捜しや復讐の過程が、
全体として、ちょっと軽い、というかポップな感じがする。
意外に暗さや重さがなく、
途中で事件の悲惨さを忘れてしまいがちになる。
また、協力者達が犯人捜しなどに協力する動機が、
いまひとつ見えない、というか、弱い。
そして、最終的な復習方法が非現実的というか、結局シンプルというか、
「あれ?そのやり方でやっちゃう?ああ、そうですか…」という感じで、
どこか納得できない気持ちを抱えたまま読み終わった。

しかし、最初から最後まで、緊張感を持って読めた。
もっと話題になっていい作品だと思うし、
ヒキタクニオという作者も、もっとメジャーであっていいと思う。
彼の別の作品も読んでみたいと思った。
また、完全に映像化に向いている作品である。

◆曽根圭介「沈底魚」

 沈底魚


2007年の江戸川乱歩賞受賞作。
機密情報を中国に送っている日本人スパイがいる。
そのスパイは現職国会議員の中にいるとの疑惑が。
その真相を追う警視庁公安部の刑事の話である。

それなりに、すいすい読んでいけることや、
人物の描き方、場所の描き方などは、
シンプルながら的確に表現していて、なかなかの技量を感じた。
全体のストーリーも、「どうなっていくんだろう」と
興味を持って読み進められる。ところが、である。

実はあの人がスパイで、この人はスパイのフリをしていた、
というように、「実は」という展開が後半たたみかけてくる。
そうした二転三転ぶりは、ある意味、小説の醍醐味であり、
その作品が面白いかどうかの重要なポイントになってくる。
ところが、二転三転が多すぎて、なんだかよくわからなくなった。
途中で読み返して、伏線を探ったが、
事前の印象づけが弱い感じがした。
しかも、そうした展開が微妙にあっさりとしていて、
なんというか、パサパサして、香りがしない。
半日放置されたピザのようである。

しかし、この相次ぐどんでん返しを、
素直に評価する方も多くいると思われる。
ただ、スパイものとしては、5月に紹介した「エスピオナージ」の方が、
地に足の付いた重厚感がある。

◆矢口敦子「償い」

償い 


春先のある日、ふとテレビを見ていたら、
何年も前に発売された文庫なのに、今、紀伊國屋書店で売れている
ということで、話題作として、この作品を紹介していた。

作者が札幌在住ということもあり、
なんとなく頭の片隅に残ったのだろう。
6月のある日、ふと立ち寄った紀伊國屋書店で、この本を買った。

主人公は、以前は医者で、現在はホームレスの36歳の男。
彼は偶然に、放火事件と、複数の殺人事件に出くわす。
やがて彼は、それらには全て関連性があり、
同一人物による犯行ではないかと思い始める。
そんな時に一人の中学生と出会い、
この中学生との付き合いを通じて、
事件の真相に迫っていくというストーリー。

この作品のテーマとなるフレーズは、作品中にも使われているが、
「人の肉体を殺したら罰せられるのに、
 人の心を殺しても罰せられないのですか?」ということだろう。
素直に引き込まれた。
まず、設定がしっかりしているため、場面を映像にしやすかった。
都合がいい偶然もあるが、流れが自然で気にならなかった。
感動や衝撃はあまりないが、
登場人物の心情や物の考え方を追っているだけで十分に面白い。

この作品は、2008年の上半期の文庫本ランキングで第3位らしい。
(1位、2位は、「チーム・バチスタの栄光」の上・下)
ちょっと売れすぎかなとも思うが、
同5位の伊坂幸太郎「死神の精度」、
同8位の東野圭吾「さまよう刃」より、ずっと引きつけられた。

思えば、この矢口敦子さんという作家、
なんとなく男性作家のような書きぶりである。
男目線での描き方が自然で無理なく、
読んでるうちに、女性作家の作品であることを忘れる。

また、脇を固める人物の描き方や、
心の闇をえぐっているせいか、全体的に薄暗い感じがするところなど、
東野圭吾作品に雰囲気が近い。
ゆえに、東野作品が好きな方にはオススメである。

なお、「償い」というタイトルだが、
文中で語られているのは、「償い」よりも圧倒的に「後悔」である。
しかし、「後悔」というタイトルじゃ売れなかっただろう。
よって、これでいいのだ(追悼・赤塚不二夫氏)。
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学



















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