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先日、「AR氏」と「チャン森(ちゃんもり)」と飲んだ時のこと。
二人が、このブログに関して口を揃えて言ったこと。
それは、本のネタはついていくことができないということだった。
なぜなら、文字の多い本は読めないからだという。
文字がたくさんある状態が受け付けないという。
AR氏とチャン森の期待には沿えないが、今日は本の話である。

本を読むにはエナジーが必要である。
私は、眠る前に読むのだが、すぐに眠気に襲われ、
3ページ程度しか読めずに終わることもざらである。
結局は、なんとか時間かを作って、一気読みをすることが多い。

図書館への返却期限直前ナイトは、
夜に読み始めて、気づくと眠っていて、
目が覚めると午前2時で、無理矢理また読み始め、
再度あえなく眠ってしまい、次に目が覚めると午前4時。
強引にまた読むが、もろくも眠り、
そんな繰り返しの中で朝を迎えることも稀にある。

ただ、そういう場合は、
そこそこ面白い本なので、とりあえず最後まで読み切りたい
という気持ちの時である。
面白くない本は途中で読むのをやめるし、
面白い本は夢中になるせいか、読むスピードが上がるため、
夜を徹する以前に、読み終えているものである。

さて、最初に紹介する作品は、
米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の2007年の作品「インシテミル」。
インシテミル

タイトルの「インシテミル」は、「inしてみる?」の意だろう。
どこに「in」するのか。
世間とは完全に隔離された、とある地下施設にインする。
なぜ、そんなところにインするのか。
時給11万2千円という、
とてつもなく高額なアルバイトをするためである。
どんなバイトなのか。
その地下施設で7日間、一日中全ての行動を観察される
というバイトである。

このバイトには12人が集まった。
ほとんどが20歳くらい。3人が30代、40代である。
時給11万2千円を24時間、7日間。
合計すると1,800万円程度になる。

地下施設に集められた12人には、いくつものルールが示される。
最も特徴的なルールは、「1人殺すごとに報酬は2倍」、
「殺人者を立証したら報酬3倍」などの異常なボーナス・システム。
初日に参加者達は、「何もしなければ1,800万円が
自動的に手に入るから」と、静かに過ごすことを確かめ合う。
ところが、2日目だったか、3日目に殺人が起こってしまう。

そこからは、誰が殺したのか、この中に殺人者がいる、という感じで、
ただならぬ緊張感のある日々を過ごすことになる。
果たして何人が無事生還し、それぞれがいくらを手にしたのか。
そんなストーリーである。

なかなか惹きつけられた作品だった。
翌日には、また誰かが殺され、誰かが疑われる。
生存している人々の間で派閥ができ、おかしな争いも起こる。
そんなふうに適度に早く展開していくため、
どんどん先が知りたくなる。
できれば、一気読みするのがベスト。

また、12人のバイトが登場するが、
うまい具合にキャラ分けができているため、
人数が多い割には区別がつき、わけがわからなくなることもない。

表紙のデザインはアニメっぽく、タイトルも軽い。
しかし私は、そこに逆に興味を持ったし、
本格ミステリとまでは言わないが、
純粋な推理モノ、謎解きモノという範疇入れられる内容である。

ただ、霊安室や死体描写のシーンが多いため、
この作品を読むシチュエーションによっては怖くなるし、
ちょっとした不快感をおぼえたことも触れておかなければならない。
とはいえ、最後まで惹きつけられた佳作であり、
推理モノが苦手な人も楽しめる作品だと思う。

続いては、昨年5月に亡くなった藤原伊織の代表作である
テロリストのパラソル」。
テロリストのパラソル
1995年の作品で、直木賞も江戸川乱歩賞も受賞している。
新宿で起こった爆破事件をめぐっての、
1960年代後半から今に至る様々な人間模様が描かれている。
展開の基本は犯人捜しに置かれているが、
根底にあるのは人間ドラマである。

主人公は、40代後半のアルコール中毒のバーテンダー。
東大をドロップ・アウトし、
その後は定職につかずフラフラと生きてきた。
簡単に言えば、ダメ人間である。
しかし、ボクシングが強かったり、
ホットドックを作るのがメチャクチャ上手だったり、
セリフがキザだったりと、
生活ぶりのわりには大層カッコ良く、思わず、
「こんな40代後半の中年なんかいねぇーし」と、
リアリティ面で突っ込みたくなる。
そして、登場人物が皆、彼を優れた存在として扱っている。

こうしたキャラクターづくりは、小説や映画ではよくあることであり、
それが主人公を魅力的にすると思うし、演出としては必要だろう。
必要だろうが、私は、ダメ人間はダメに描き、ダメな中に
魅力を表現してほしいタイプなので、深く感情移入はできなかった。
できなかったが、それを差し引いても見事な作品である。

何が見事かって、とにかく文章がいい。
内容も展開も計算されていて素晴らしいが、
それ以上に文章の良さが際立つ。
ひとつひとつの文が短く、切れ味があり、いいリズムを作っている。
セリフの内容、掛けあいも絶妙である。
文章がいいので退屈しないし、読み飽きない。

タイトルも良い。
タイトルの理由が最後の方でわかる。
それがちょっと切ない。
犯人が起こしたテロは、爆破テロではなく、
恋愛テロだったのだと私は受け取った。
切ない、つうか、哀しいっすね。

最後は、麻生幾(あそう・いく)の2007年の作品、
「エスピオナージ」。
エスピオナージ
エスピオナージとは、「スパイ」の意。
ロシアから潜入しているスパイを追う公安警察の話である。
「捕縛」、「諜報」、「追尾」、「外事警察」など、
少しばかり馴染みの薄い警察用語が連続するが、
それが逆にリアリティを感じさせる。

スパイを追うということで、
表向きには活動しない警察官の話であるため、
情報量は少ないと思われるにもかかわらず、
とにかく、丁寧に綿密に調べあげ、それをスリリングに描いている。
そこに感心するし、全編を通して緊迫度は高く保たれている。
その点だけで、この作品は評価できる。

しかし、捕まえられそうで捕まえられない。
失敗に終わっても、意外に切り替えが早い。
そのうち、標的が違う人に変わっていくなど、
重みがあるのか軽いのかがわからなくなるところや、
堂々巡りをしているように感じられる箇所があるのが残念。

また、登場人物が多く、しかも、とびとびで登場する人もおり、
「あれ?これ誰だっけ?」とか、
「あれ?この人こういうキャラだっけ?」と、
ずっと前のページに戻って確認することもあった。
登場人物がわからなくなってしまうのは、
キャラが立っていないというより、堂々巡り的展開のせいだと思う。

ただ、変なテクを使わず、正面突破的な強さがある作者だけに、
もう少し、重みと軽さのバランスをとり、
すとんと落としてくれるような的確な区切りをつける工夫をすれば、
かなり面白い作品を書きそうな予感はする。

私は、小説が映像化されるのは、どちらかといえば否定的である。
文章としての良さやリズム感が、映像では楽しめないからである。
映像ではストーリー偏重になってしまい、
ハートの部分が見えにくくなる。

しかし、時々「これは映像化した方が伝わる」と感じる作品がある。
福井晴敏氏の「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」は、
小説として大きな評価を得たが、
船の機械設備に関する執拗な説明や登場人物の多さに、
途中で何がなんだかわからなくなり、
わからないところは無視して、ストーリーだけを追って読んだ。
その結果、読み終わった後は、「無駄に長くねえ?」と、
語尾を上げて言わざるを得なかった。
そして、映画化されてやっとわかったようなところがあった。

それと同様に、この「エスピオナージ」も、
映像にした方がわかりやすいし伝わると思う。
言葉では、難しくややこしいところがあった。
素材は良いだけに、緊迫感のあるいい映画になると思うが。

以上3作品を紹介した。
本ネタは、ブログに掲載するまでに、最も時間を要する。
そのせいか、読み始めたものの面白くなさそうな本は、
見切りをつけて途中で読むのをやめる、
そのタイミングが早くなっている気がする。
とはいえ、ブログに掲載するために読んでいるわけではないし、
「本を読むと、こういうメリットがある」という、
いわば、手段として読んでいるわけではない。
単に面白い話に、魅力的な言葉に、素晴らしい文章表現に
出会いたいだけだ。
そして、いい本に出会って満足するだけではなく、
その感想をここに記し、皆様に見ていただけるというのは、
大変ありがたく嬉しいことなのです。
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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌





文章を書くのがお得意のようですね。
ふわーっと、勉強させていただきます。
【2008/05/22 09:50】 URL | PC大好き #-[ 編集]















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