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岩内町、2017年夏。
土曜日の夕方、岩内港に人の姿はほとんどない。
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バイク旅の男性が携帯電話をいじっていたくらいだ。
というか、夕方の港に人がたくさんいることの方がイレギュラーだ。
町フェスでもない限りそんなシーンはない。

私が小学校低学年だった1970年半ばの岩内町の人口は2万6千人。
それが今は1万3千人。
半分になった。
産業、風土、インフラ整備、住民ニーズの変化など様々な事情により、
なるべくしてなったと思う。
誰も責められないし、責めるべき事柄ではない。

それにしても、国道229号線沿いの岩内町商店街ストリートにおける
シャッター率の高さはすさまじい。
全道でもトップクラスの率ではないか。
元々商店が多く立ち並んでいただけに、カウンターパンチも強い。

そんな岩内町にかつて「福井庵」という店があった。
蕎麦メインでありつつも、ラーメンや丼ものも充実していた。
特にカツ丼とカツカレーは他に類を見ない逸品で、
小学生の頃から30代まで結構な回数食べた。

ところが平成19年(2007年)3月に閉店した。
あのカツ丼とカツカレーをもう食べられなくなったことが非常に残念で、
誰か復活させてくれないかと何度も思ったし、
自分で作れないかと自宅でトライしたことも何度かある。
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福井庵が閉店して10年経った。
店の入口は鉢植えでふさがれているが、
建物はしっかりと残っており、看板もそのままだ。
住居として使っているのだろう。

もう一度、あのカツ丼とカツカレーを食べたいという気持ちは、
未だに心の片隅にある。
もう無理なことに執着していると必ず墓穴を掘るので考えないように
しているが、岩内町市街地にくると、つい考えてしまう。

ところが奇跡が起こった。
砂川市の某レストランで食事待ちをしているとき、
「熱狂B級グルメ」なる雑誌を見ていたら、
岩内町に福井庵のカツ丼をカバーしている店があることを知った。
福井庵のカツ丼をリスペクトし、アレンジを加えつつ再現しているという。

胸が踊った。
僥倖だ。
信じていいのか、と疑問さえおぼえた。
喜びと不安、冷静と情熱、期待と失意、そんな様々な感情を抱えて、
7月某日、その店「たろ」を訪問した。
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店は旧福井庵から徒歩2、3分の距離にある。
国道229号線沿いあり、過疎地の食事処なのに駐車場なし。

メニュー表を開く。
あるじゃないか、「ふわとろロースかつ丼」(900円)。
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一般的なカツ丼派の方のために「普通ロースかつ丼」もある。
では、「ふわとろ」は、どこが普通ではないのか。
決定的な違いは、玉子が多めで、べちゃっとしていることだ。
「ふわっ」ではない。
水分多めの「べちゃ」だ。

玉子は、そばつゆのダシが効いた独特の味がする。
玉子以外の食材は盛り込まれていない。
玉子の白身が見えないように調理されている。
トンカツは肉も衣も薄め。
そうした福井庵メソッドをどう再現したのか。

いよいよカツ丼登場。
10数年ぶりの対面だ。
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いいじゃないか。
見た瞬間、福井庵をカバーしたことがダイレクトに伝わった。
そして食べる。

これだ、これなんだよ。
これを求めていたんだ。
これを探していたんだ。

玉子のべちゃっと感が見事に表現されている。
味も特徴をとらえ、きちんと再現されている。
福井庵よりダシが効いた大人の味のようではある。
福井庵の方がもう少し甘めだった。
しかし、それは誤差の範囲であり、個性でもあり、何ら問題がない。

トンカツは明確に違った。
福井庵のは肉が薄かった。
ここのは厚い。
一般のトンカツより厚いのではないか。
それが900円という価格設定につながっているのか。
しかし何ら問題はない。
原曲のソウルを守り、活かして、アレンジしたものだ。
素晴らしい出来だ。

「福井庵」と「たろ」のカツ丼はどの程度の違いなのか。
カレイとヒラメの違いか。いや、違う。
西城秀樹と東条英機の違いか。そういう違いではない。
五木ひろしとコロッケの違いか。根本的に違う。
強いて言えば、コカコーラとメッツのコーラの違い程度のものだ。
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これは使える。
再訪間違いなしだ。
福井庵リバイバルとして十分な作品だ。
よくぞカバーしてくれましたと感謝の気持ちの中、日本海に日が沈む。
ごちそうさまでした。

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