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3月26日、北海道新幹線が開業した。
帯広に住む者として率直に言わせていただくと、
函館があまり遠い存在であるため実感や興奮が小さい。
なにせ函館-東京間よりも、帯広-函館間の所要時間の方が
ずっと長いのだ。

釧路の方が、「新幹線が北海道に来たことより、
高速道路が釧路市内まで伸びたことの方が嬉しい」と
コメントしている新聞記事を見て、そうだよなぁと素直に納得できた。

それはそれとして、北海道の交通史において
ヒストリカルな出来事である。
新幹線に乗りたくても乗れなかったのが、
その気になれば乗れるようになった。
可能性ゼロだったのが、ゼロじゃなくなったのだ。
いつかその可能性を生かしてみようと思う。

こうしたウェルカム新幹線の一方、
開業前日の3月25日、道内で8つの駅が廃止された。
来る鉄があれば、ゆく駅があるのだ。

かねて無人駅フリークである私は、
今回廃止となった8駅は過去に訪問済だが、
惜別と感謝の気持ちを行動で示すため、
今年に入ってから、十三里駅(夕張市)、東追分駅(安平町)、
花咲駅(根室氏)を訪問した。

そしてさらに、3月21日(月・祝日)、
上白滝駅、旧白滝駅、下白滝駅の3駅を訪問してきた。
これらは合併前の白滝村(現在は遠軽町)のエリアにある駅であり、
今回の廃止により、かつての白滝村エリアの駅は白滝駅のみとなる。

この日は午前中に用事があったため、
帯広出発は12時30分頃になったが、
もう永遠にその駅を見ることができないという思いが、
片道190kmに及ぶ十勝、大雪(たいせつ)、石北(せきほく)の道を
走らせた。

旭川側から遠軽方面に向かい、最初の廃止駅が「上白滝駅」
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一日に上り1本、下り1本しかないことで、
フリークスの間ではフェイマスな駅だ。
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また上白滝駅は、旭川側から向かうと上川駅の次の駅である。
この間の距離が34km。
2016032004.jpg 2016032005.jpg
上白滝駅が廃止になると、上川駅の次は白滝駅となり、
その間の距離は約38km。
札幌・小樽間、札幌・千歳間と同じくらいの距離だ。
人口や産業や風土やソウルフードは違えど、
札幌・小樽間に駅がひとつもないと考えると、
白滝エリアはいかに山の中の小さな集落なのかがわかる。
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上白滝駅、旧白滝駅、下白滝駅はいずれも国道333号線沿いにある。
国道沿いということで秘境感は薄いか、というとそんなことはない。
国道333号線に平行する形で高規格道路が走っているため、
基本的には白滝エリア目的の人しか国道333号を走らない。
白滝村が2005年に遠軽町と合併した時の人口が約1,100人。
それから10年以上が経過し、現在の白滝エリアの人口は
1,000人をきっているのではないだろうか。

そこを目的に走る車は極めて少ない。
山間の道が長く続くと、たどり着けずに彷徨っているような錯覚をおぼえる。
次の「旧白滝駅」も国道沿いにありながら、閑散としていて奥地感が強い。
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旧白滝駅の乗客は、遠軽高校に通う女子生徒1名のみであり、
彼女が高校を卒業するのに合わせて駅も廃止になるということで、
ドラマ性もあってか道内の複数のテレビ局で報道していた。
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私はテレビ番組を見ていて、ほぼ泣くことはない。
歳をとると涙もろくなると一般的に言われているが、
私にその現象は起きていない。
動物モノや子供モノも涙腺を刺激しない。
むしろ幼児モノを見ていると、
幼児と弱った年寄りは表情が似てるよなぁという感想が勝ってしまう。

そんな私の涙腺を、時に刺激するのが駅廃止と閉校モノだ。
かつては乗客や生徒がたくさんいたが、時代の流れで無くなっていく。
でもそこには多くの人達の人生があった。
喜び、悲しみ、希望、挫折、後悔、友情、失恋。
そんな様々な思いがあった。
それを想像すると、感情は涙腺へとつながっていく。
そう、動物モノや子供モノはバックボーンが不足しているのだ。
2016032009_2016033021483446d.jpg 2016032010.jpg
訪問日は廃止まであと4日に迫った祝日だったこともあり、
各駅で3、4人のフリークスと会った。
各駅を訪問したのは16時台だったのだが、
駅にいたほとんどの人達は17時台にくる電車を待っているらしかった。
本物のフリークスはここが違う。
きっちりと詰め切る。


「下白滝駅」の駅舎は、写真中央の緑色の屋根の建物だ。
2016032012.jpg
以前ここを訪れた時は、写真左側の建物の住人が
犬を放し飼いにしており、しかも凶暴性を感じるタイプだったので、
全く落ち着けずに、犬の動向ばかりを気にしながら写真を撮った。
今回は、その犬が存在していなかったので、
景色や風や近づく春の匂いまで楽しめた。
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かつては駅員がいたと思わせる大きさの駅舎だ。

プラットホームから見える景色。
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北海道の山間部にいることを実感する。

思えば無人駅とはテイク&テイクの関係であり、
私から何ひとつギブできていない。
今回は時間がなく、無人駅地域の食にも触れられなかった。
経済的な貢献をしたのは、帯広のモダ石油に対してだけだ。

それでも、廃止間近の土壇場の休日に午後から往復380kmを走り、
最後の姿を心に刻むことができて良かった。
これが無人駅ライフを楽しませていただいている者なりの敬意と誠意だ。
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8つの駅は3月25日をもって廃止となった。
翌26日、ライブのため札幌に向かう途中、
廃止駅のひとつである十三里駅(夕張市)に立ち寄った。
既にプラットホームに立てられていた駅名看板が撤去されていた。
切り替えが早い。
女心のようだ。
しかし余韻はある。
しばらくは、「そこに駅があったこと」を楽しめるだろう。
やはり無人駅はJ-POPでもヒップホップでもないし、
ヘビメタでもベイビーメタルでもない。
ブルースだ。


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2016年3月26日土曜日、
札幌市、スピリチュアル・ラウンジで開催されたライブに出演した。

セットリストは次のとおり。
1 世界は発見にあふれてる
2 チャンス
3 古びた喫茶店
4 いい知らせが聞きたい
5 ゆとり

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リラックスして、落ち着いて、楽しんでできたライブだった。
ライブハウスは本来緊張感や興奮のある場といえるだろう。
と同時に、私にとっては解放感のある場だ。
ステージを観る、音楽を聴く、という共通した目的を持った
特定少数の人達の前だと自由になれたような感覚になる。

我々を観に来たわけではない人がたくさんいても、
全く違う音楽性のバンドがいても気にならない。
決してアウウェイだとは思わず、ホームだという気持ちでやれる。
それは無頓着なのかもしれないし、鈍感なのかもしれないが、
年々音楽という大きな括りの中で楽しめるようになっている。
これが歳をとるということなのか。
2016032602.jpg 
MCはリラックスしすぎだったかもしれない。
ちょっとゲスの極み・川谷氏について触れたら、
そこから私なりの不倫論を延々語る始末。
ライブの後、ドラムのオダ氏の奥さんから、
「MCを聴いていて、“バカ”と言ってしまった」と言われた。
メンバーの妻から呆れられるMCをするリーダーであることが
誇らしいぜ。

ライブのMCではブログに書けないことが言える。
記録として残らず、聞き流されるからだ。
有名人の不倫に対して、「謝罪しろ」はどうなのかと。
有名人の不倫は、一般人にとっては娯楽にすぎない。
謝罪したら、楽しみが終わっちゃったような気分に
なるのではないか。
そんな一般人に謝罪の必要などない。

当事者同士、及び当事者の身近な少数の人達の間では
大変なことになっているはずだ。
番組降板などのペナルティも受けている。
それでいいじゃないか。
そもそも他人の不倫の話など聞きたくないのだ。
それにテレビの画面から消えて、喪失感をおぼえている人は
どれほどいるのかなあと思う。

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この日のライブでは、昭和から平成に変わる頃、
よくライブを共にしていた橋本氏と約25年ぶりに再会。
そのほかにも懐かしい顔にたくさん出会えた。

続ける人は、どこに住んでも、いくつになっても、
きちんと音楽に向き合い、そして楽しんでいる。
それがすごく励みになる。
それは、「負けちゃいられない」という気持ちではない。
「まだまだ音楽をやっていていいんだな」という、
免許の更新を認められたような、救われたような気持ちに近い。

音楽を続けるには、仕事や住んでいる場所、家族の理解など、
置かれている環境というか外的な要因が大きく影響してくるが、
それに加えて、規律と習慣が非常に重要だと思っている。
ザ・ハート・オブ・ストーンのメンバーは
それを意識したことがないかもしれないが、
規律と習慣がしっかり身についている。
でなければ、24年間も不動のメンバーで続いていない。

ちょっと偉そうなことを言ってしまった。
偉そうなことを言うと、なぜかちょっと後悔する。
メンバーの妻から呆れられるような、
人生観の見えるバカな話をした方がキモチE。


まずは、THE HEART OF STONEのライブのお知らせから。

■日時 2016326日(土)1830
場所 スピリチュアル・ラウンジ
       (札幌市中央区南2西4ラージカントリービルB1)

料金 2,000円+ドリンク代500
出演 18:30 THE HEART OF STONE
            19:05 THE HUNGRY RUGRAT
            19:40 Orionids
            20:15 46
°halo
            20:50
メランコリック
       21:25 橋本孝志with Dots Dash & Rico

THE HEART OF STONEの出番は1830です。
よろしくお願いします。

                                             ◆
 

2016年3月20日日曜日、帯広市のホーリーズで
開催されたアコースティックライブに出演した。
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「激しい雨」名義による一人バージョンでの出演だった。
セットリストは次のとおり。

1 雷雨決行(ザ・クロマニヨンズ)
2 トビラ(オリジナル)
3 ポップコーンをほおばって(甲斐バンド)
4 別れても好きな人(ロスインディオス&シルビア)
5 赤いスイートピー(松田聖子)
6 無人駅のブルーズ(オリジナル)

ホーリーズのライブ出演者は、オリジナルの曲をやる方が少ない。
今回は一人での出演だったので、
ホーリーズのトレンドに合わせコピー曲を中心にセットした。

落ち着きがありつつ、アットホームな盛り上がりあり、
非常に雰囲気のいい環境でライブができた。
「別れても好きな人」では、
私が「別れても~」と唄えば、
客席から「別れても~」と思いがけないレスポンス。
「好きな人~」のところでも、「好きな人~」と複数の声の合唱。
こんな経験は初めてだった。
ライブを繰り返している中で、想像できなかった事象が起こる。
世界は経験していないことであふれている。

「赤いスイートピー」は、一人での出演の際リストに入れたいと
昨年から考えていた。
3月から4月の時期に相応しい曲だ。
このタイミングを逃すわけにはいかなかった。

私のコピー曲へのアプローチは、
奇をてらったアレンジや唄い回しはせず、
感情を表に出さず原曲に忠実にやること。
それでいて自分の曲のような馴染ませ方をすることだ。
オリジナルの曲に関してもそうだが、
意識的に感情を外に出す歌い方をすると、
逆に曲が伝わらないと思っている。
2016032002.jpg 
セットリストの最後の「無人駅のブルーズ」。
実はアンコールである。
お約束アンコールはやらないことにしている私だが、
というか、お約束でアンコールされたことはないような気もするが、
この日は約束されていないサドンリなアンコールに戸惑ってしまった。
しかも曲指定のアンコールだった。

「激しい雨」の活動において、
周りの方々から最も話題に出されるのは「無人駅のブルーズ」だ。
ユニット名や私の名前を覚えもらえてなく、
「無人駅の人」と言われることもある。
この曲の印象が強いのか、私に合っているのか、
何か要因はあるのだろうが、どういう形であれ、
曲を覚えていただけているのは非常に嬉しいことだ。
2016032003.jpg 
ライブ中、自分が求めている歌い方や演奏ができず、
そしてそのズレを修正できず、
「ああ、練習が足りなかったんだな」とか、
「練習のしかたが違うんだな」と反省することがよくある。
しかしこの日はズレが小さかった。
課題の捉えが正しくできて、それに合った練習ができたことと、
心身のコンディションをうまく調整できたことが要因だろう。

ライブが終わってもまだ唄いたいテンションだった。
22時30分に帰宅し、ジンビームを飲みながら、
小さな声と小さなギターの音で、赤いスイートピーをまた唄った。
どれだけ好きなんだろう。
しかし唄いすぎず、お酒もほどほどにした。
何事につけ、ちょっと物足りないことろでやめておくのが一番だ。



まずは、THE HEART OF STONEのライブのお知らせを。

■日時 2016326日(土)1830
場所 スピリチュアル・ラウンジ
        (札幌市中央区南2西4ラージカントリービルB1)

料金 2,000円+ドリンク代500
出演 18:30 THE HEART OF STONE
            19:05 THE HUNGRY RUGRAT
            19:40 Orionids
            20:15 46
°halo
            20:50
メランコリック
       21:25 橋本孝志with Dots Dash & Rico

THE HEART OF STONEの出番は1830です。
オンタイムでステージに上がります。
来られる方はぜひご連絡を。
優待します。よろしくお願いします。

                   ◆

3月12日土曜日、俱知安町へ行ってきた。
お酒を飲み、語らい、アコースティックギターでライブもした。
いつ以来か思い出せないくらい久し振りに、
アルコールの入った状態でギターを弾いて唄った。

やはりアルコールを体内に入れてのライブは
私には向かないようだ。
声に粘りがなく、ギタープレイはいつも以上に精度に欠け、
座りの悪さの悪いパフォーマンスになってしまった。

とはいえ実に楽しい夜だった。
極めてプライベートなイベントだったため詳細には触れないが、
酒と笑いと男と女、そして音楽があるサタデーナイトはいいものだ。

倶知安町には平成4年から6年間住んでいた。
20代から30代になる時期で、今にして思えば、
わけわからず突っ走っていた感がある。

地元が近いこともあり、今でも帰省の際はよく通っている。
しかし、お酒を飲んで宿泊して、というのは15年くらいなかった。
今回の俱知安訪問は、前述のプライベート・イベントの参加が
主要な目的だったのだが、せっかくの機会である。
かつてよく通った飲み屋に顔を出そうと思っていた。

                   ◆

倶知安はこの時期もまだ雪が降り続いている。
ちょっと裏道に入ると、両脇にはフレッシュな雪が。
2016031201.jpg
この写真からもわかるとおり、
俱知安町に到着したのは日が暮れる時間帯だった。

かつて住んでいた街の夕暮れは切ない。
帰る場所がないからだろう。
もうすぐ夜がやって来て、この街を後にしなければならないことが
センチなメンタルにさせるのだろう。

しかし今回は違う。
懐かしい顔に合い、お酒を飲み、歌を唄い、宿泊できる。
わだかまりのない清々しい気持ちでサンセットな羊蹄山を拝めた。
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何度も何度も見ているのに、素晴らしい山だ。

今回の俱知安訪問は、コープさっぽろ俱知安店に行くことも
重要な用事だった。
昨年末に俱知安に立ち寄った際、
同店で「あげ天せんべい」なる地元の銘菓を発見。
これがすこぶる美味しく、そのことをブログで記事にしたところ、
同店の高口店長からコメントをいただいた。
そこで感謝の意を込めて、買い物をしようと思っていた。

で、到着。
2016031203.jpg
コープさっぽろは、入口近くに店長の顔写真が掲げられているので、
早速探してみる。
メインではない別の入口で高口店長の笑顔フォトを発見。
感激した。
その気持ちを表すには、買い物をすることが最も真っ当な行動だ。

同店の特徴のひとつが、衣料品売り場の詰め込みぶり。
2016031204.jpg
通路を狭く設定し、衣料品の迷路のような状態になっている。
私はこれが嫌いではない。
地方のスーパーらしい良さがあるし、なぜか懐かしさも感じる。

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協和製菓の菓子類、地元産の野菜、倉島牛乳などを購入。
今後も俱知安に立ち寄った際は、訪問したいと思う。

                      ◆

さて、飲み屋訪問だ。
俱知安に行く前に訪問候補として5店をピックアップしていた。
ホテルにチェックインする前に、
その5店が営業しているか、車でチェックにまわった。
1店は別の店になっており、
別の1店は看板こそあるものの営業をしていない体だった。
念のため電話帳で調べると、これらの2店は掲載されていなかった。
時の流れは時に切ない。

残りの3店の中からセレクトしたのは、焼き鳥の「うしお」
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当時と変わらぬ外観だ。
実際は変化があるだろう。
壁のモルタルは色あせただろうし、
窓枠は老朽化しただろうとサッシがつく。
などと、わかりにくいダジャレをぶち込んでみる。

お通しはイカを酢で味付けしたもの。
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お通しはイカを酢で味付けしたもの。
美味しい。
てらいがなく、実にしっくりくる。

そして焼き鳥。
左が鳥精肉、右が豚精肉。
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十数年ぶりの再会。
そう、この味だ。
炭火のいい香りが肉を包む。
変わらずに美味しいことに敬意のため息が出る。
肉は大ぶり。これで3本280円はかなり安い。

「うしお」には、年に3回くらいのペースで6年間通った。
なので20回近く訪問したことになる。
にもかかわらず、店を切り盛りしているご夫婦とは、
入店時と退店時の挨拶とオーダー以外、言葉を交わしたことがなかった。
20回近くも訪問したのに、私のプロフィールを何ひとつ知らない。

ビジネスライクというか、ドライというか。
もしかしたらご夫婦の笑顔は一度も見たことがないかもしれない
しかしそうした素っ気なさが居心地を良くさせていた。
十数年ぶりの訪問でもそれは変わらなかった。
ちなみにご夫婦は現在70歳近いのではないかと思われる。

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今回はこのまま黙って店を後にするのは何か違う気がした。
今度はいつ来られるのかわからない。
当時は私も若くて、私自身も素っ気なかったと思う。
今はその頃より少しは心が広くなり、情け深くもなった。

会計の際、ご夫婦に、十数年ぶりに訪問したこと、
店の外観も内装も以前と同じでなぜかほっとしたこと、
そして焼き鳥は変わらずにすごく美味しかったことなどを話した。

すると、いつもは離れたポジションでそれぞれの役割に
撤しているご夫婦が寄り添って、
笑顔で「ありがとうございます」と言いながら、
二度、三度お辞儀をしてくれた。

感動した。
じわっと身体が熱くなった。
当時は会話などしたことがなかったのに何度も通ったのは、
味もさることながら、こうした優しい笑顔と真摯な気持ちを、
言葉ではない何かで感じていたからなのだと、今になって納得した。

話ができてほんとうに良かった。
私もやっと少し大人になれた気がした。


北海道を代表する十勝の菓子メーカー「柳月(りゅうげつ)」。
その看板商品が「三方六(さんぽうろく)」。
バームクーヘンをミルクチョコレートとホワイトチョコレートで
コーティングした、洗練された甘みと親しみを感じさせる銘菓だ。

三方六は大きな筒状で製造され、切り分けて商品とされる。
その際、筒の切れ端部分はカットされ商品とはならない。
しかし、切り落とし部分のみを集めて販売されている。
柳月サイドは三方六の「お買い得品」と名付けているが、
一般的には「切れ端」の俗称で通っている。

ただ、これを手に入れるのは容易ではない。
売られているのは、
音更町にある「柳月スイートピア・ガーデン」の一店舗のみ。
201603柳月01
周辺に民家はない。
完全にイン・ザ・十勝平野なロケーション。
帯広市街地からは車で20分程度を要する場所だ。

「切れ端」は開店と同時に売り出されるのだが、
これを求めて開店前から店の外に結構な行列ができる。
開店30分前に「整理券」と呼ばれる番号札が配布され、
これを手にした人だけが購入できるというシステムだ。

売り出される「切れ端」の数は日によって異なる。
なので整理券の数も日によって異なる。
開店前に並んだものの、整理券をゲットできない人も少なくないらしい。
そこに情けはない。
どんなに遠くから来たとしても、
家族の反対を振り切って行ったとしても、
ステイタスや政治力がある人であっても、
並んだ順番が全てだ。
それが平等というものだ。
平等に情けは不要だ。

このように不確定要素の多い買い物はそれなりのリスクを伴う。
無駄になる時間と浪費することになるガソリン。
整理券をもらえない虚しさ。
切れ端に翻弄された悔しさ。
敗北感、屈辱感、自己否定。
こうした様々なマイナス現象が我が身にふりかかるかもしれない、
いわばギャンブルだ。
それなら定価で三方六を買った方がいい。

ドラマ性やスリルが乏しくなるだけで美味しさは確約されており、
十分にサティスファクションを得られるのだから。

ただ、私は帯広に住んでいる。
切れ端にトライするのに大きなアドバンテージと優位性がある。
アタックするチャンスだ。
谷原章介氏にそう言われ、背中を押されたい。

そういうわけで、三方六の切れ端ゲットは、
私の「帯広に住んでいる間にやるべきことリスト」において、
2014年はトップ10圏外だったが、
2015年にトップ10入りし、
2016年になってからはトップ3入りを果たしていた。

冬場の平日が狙い目だ。
ハードルはあるものの、帯広にいることで低く抑えられる。
悔しい思いはしたくない。
ならば相応の努力をし、犠牲を払うことだ。
というわけで3月上旬の某日、
一切の予定やしがらみのない日をセレクトして冬休みを取得。
「柳月スイートピア・ガーデン」を目指して日産車を走らせた。

冬場の開店時刻は9時30分。
9時から整理券が配られるらしい。
確実に整理券をゲットできる時刻に関して知識、経験とも不足している私は
9時の時点で行列の一部に組み込まれていなければならないと思った。

ところが店に到着したのは9時05分。
通勤の時間帯であることを甘く見てしまい、
移動所要時間の読みを誤った。

くじけている暇はない。
行列に加わる。
201603柳月02
何番目なのか数えてみた。
38番だった。
白糠町にあるラーメン店と同じだ。
行列を成しているのは60歳超の方が7割くらいだったように思う。

9時08分頃、整理券の配布が始まった。
店員の女性が行列の中をこちらに向かって歩いてくる。
私のところまで番号札は残されているか。
不安だ。

残っていた。
ゲッツできた。
この瞬間、「柳月」は「柳ゲッツ」に変わった。

切れ端は、正式商品と同様に、「プレーン」、「抹茶」、「メイプル」の
三種類がある。
整理券(プラスチック製)は種類によって色が異なる。
購入できるのは一人一個と決められている。

メイプルの整理券は私の前の人が最後だった。
私の時点では、プレーン10枚弱、抹茶10枚強が残っていた。
ビギナーの私は、抹茶という冒険はせず「プレーン」を選択。
渡されたプレーンの整理券のナンバーは「18」。
201603柳月03 201603柳月04
私は全体で38番、残りの整理券は約20枚ということは、
この日用意されたのは三種類合わせて60個弱だったということだ。
私の後ろにできた行列の中でゲットできなかった人もいた。
9時20分頃がゲットできる、できないの分かれ目になったと思われる。

整理券を確保できただけで高揚した。
早い時間に来たら手に入れられるという公正で平等で
シンプルなシステムなのにもかかわらず、
わけもなく勝ったような気持ちになった。
当たりくじを引いたような感覚にもなった。
そうこれは一種のゲームなのだ。

9時30分の販売開始を前に、
店員の方が、行列客を前に、おすすめ商品のピーアールをする。
はきはきと誠実な姿勢でプレゼンをする。
この雰囲気もなかなか良い。
こうなるともうイベントだ。

9時30分ちょうどに、バックヤードから、
多数の切れ端をのせた台車(ワゴン)が登場。
201603柳月05
拍手したい気分になった。
2014年4月にゼップサッポロのステージ袖から
ボブ・ディランが現れたときと遜色のない感動があった。

整理券と引換に商品が渡される。
支払いは別のレジでするので回転が早い。
そして無事ゲット。
201603柳月06
結構重たい。
4つも入っているではないか。
このボリュームで500円とは。
まさにお買い得品だ。
というか、お買い得という言葉以上にお買い得感がある。
「切れ端」と呼ぶのはおこがましい。

お買い得品だけを買ってそのまま帰るのは申し訳ないような
気持ちになったし、

店内で待っている間に、あの商品を食べて見たい、
これはどんな味なのだろうなど、興味が高まっていた。
実際、お買い得品を手にした方のほとんどは、
一般の商品もそれなりに購入しており、店内は大賑わい。
音更の閑散とした場所にある平日午前9時台の菓子店とは
信じられないほどの盛況ぶりだ。

店を出て、自宅へ戻る車中は、お祭り帰りのような感覚だった。
ホスピタリティの充実ぶりも素晴らしかった。
「ありがとう、柳月さん」と敬称つきで独り言を言いそうになった。
まさに柳月ワンダーランドと言える世界だった。
世界は広く、そして身近だ。

帰宅し、お買い得品のひとつを取り出してオン・ザ・ディッシュ。
201603柳月07
よぉーこそ、我が家へ。
直径は15.5cm。
結構大きいし、重たい。
ひっくり返してみよう。
201603柳月08
端を切り落としたことがよくわかる。
まさにバームクーヘンたる見事な層だ。

そして食べる。
三方六はやはり美味しい。
雑味なし。
この安定感と安心感。

優しくすっきりとした甘さ。
なのにしっかり余韻を楽しめる。
これで500円は安すぎる。
これまでの人生で一番のコストパフォーマンスの高さだ。
201603柳月09
ただチョコレートがコーティングされていない面積が広いので、
三方六よりもあっさりしており、
北海道的表現で言うと、三方六より食べらさる。

つまりこれは三方六でありながら三方六ではない。
三方六から派生した別の商品だ。
いわば三方六のスピンオフ作品。
それでいて本物に勝るとも劣らない美味しさ。
これを「切れ端」だとか「お買い得品」だとか言うのは失礼だ。

アウトレットではない。
そもそもが失敗作ではないのだ。
成功した作品の一部である。
アウトレットというよりは、むしろアウトサイダーであり、
三方六のソウルを持った別物なのだ。
ならば独立した商品名を付与したくなる。
例えば「四方六」だとか「三方ROCK」だとか、
三方六のアイデンティティを感じさせる商品名がいい。

美味しさと楽しさに酔い、その酔いの気持ち良さが忘れられず、
別の日にまた買いに行ってしまった。
この時も平日。8時55分に店に到着し、行列は30番目。
配布されたプレーンの整理券はまたしても18番。
ただメイプルの整理券も3、4枚あった。

この日ゲットしたお買い得品は、
コーティングされたチョコ面積が広かった。
しかしミルクチョコレートがないタイプだった。
201603柳月10 201603柳月11
また買いに行きたい。
これはお土産にもいい。
賞味期限は5日間。
冷凍保存をしても変わらぬ美味しさ。
ほんとに素晴らしい作品だ。
次はメイプルだな。

連日お買い得品を食べていたら、本来の三方六も食べたくなった。
三方六の魔力というか奥深さというか、不思議なものだ。
完全に三方六の虜になってしまった。

インデアンカレー西21条店に行き、
カツカレーにトッピングでカツをオーダーするようなものだ。

お買い得品によって、三方六の価値が高まった。
柳月メソッドに感服だ。
柳月さん、ありがとう。



帯広から根室へと敷かれたレール。
終着である根室駅の二つ手前にあるのが「花咲(はなさき)駅」
2016年3月25日をもって廃止される。

その報道が流れたのが昨年9月。
以来、廃止前になんとしても行かねばと考えていた。
以前に訪問したことはある。
それは2013年の9月で、
根室さんま祭りが開催されている時だった。

帯広に住む前から、冬の根室を訪問してみたいと思っていた。
北海道の東の最果ての冬はどんなものかを体感したかったし、
エスカロップ、ホームラン焼き、オランダせんべいという、
私がイメージする根室3大フードを現地で食べたかったからだ。

この季節、札幌から根室に行くのはかなり難儀だ。
しかし帯広からであれば日程を考える上で選択肢は多い。
私の「帯広に住んでいる間に行くべきところリスト」には、
「冬の根室訪問」がクリアされずに残ったままだ。
そんな中、「さよなら花咲駅」が目前に迫ってきた。

早く行かねば。
片道約250km
本来ならば宿泊してディープに根室を巡りたいところだ。
しかし花咲駅が廃止となる3月25日までに
2日連続のフリーを確保するのは困難だ。
ならばどうする。
日帰りしかない。
往復500km
いいじゃないか。
走ろうじゃないか。
冬の根室とさよなら花咲駅への思いは、
ハードなワンデイ・トリップによってもたらされるであろう
アイム・ソー・タイアドを凌駕するだろう。

というわけで2月下旬の某日、朝6時に帯広を出発。
早朝の道東の国道を走る車は少ない。
白糠まで来ると太平洋が現れる。
海から登る朝日は道東だからこそだ。
2016022501
やっぱり海はいい。
ウニを食べるより、海を見る方が私は好きだ。

釧路を越え、厚岸、浜中を過ぎれば根室市のエリア。
最初に登場する無人駅は「厚床駅」。
2016022502
この風光明媚さがたまらなくいい。
道東の中で特にお気に入りの駅だ。

厚床駅からは国道を離れ、花咲駅を目指しつつ、
全ての無人駅に立ち寄った。
初田牛駅、別当賀駅、落石駅。
味わい深い駅が続く。
落石市街は何度見ても美しい。
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右側に写っているのはユルリ島だったか。
写真だと伝わりにくいが、じかに見るとかなりダイナミック・ジャガーで、
異国チックでもある。

その後、昆布盛駅、西和田駅を訪問し、
到着しました「花咲駅」。
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大地の中にぽつんとある。
孤立しているのではない。
孤高なのだ。
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ここは花咲の市街地とは数キロ離れている。
周囲に民家はほとんどない。
孤高なのだ。
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なぜにここに駅ができたのか。
その理由をイマジンしてみる。
イマジンするだけでいい。
本当の答えはわからなくていい。
答えは風の中だ。
エルビス・コステロを聴きながらそう思った。
(レノンでもディランでもないのか)
2016022507 2016022508
駅ノートには多くの書き込みが。
この2週間は平日、休日を問わず毎日2、3人が書いている。
駅ノートによると、車で来られなかった人は、
バスで来たり、隣の駅から歩いて来ている。
激しいパッションだ。
ロット・スチュワートにも勝るとも劣らないパッションだ。

私も「花咲駅があったことをイマジン・オーザピーポー」と書いて
花咲駅を後にした。
来て良かった。
来られて良かった。
雪が溶けて春になると、駅はなくとも花は咲くだろうし、
つくしの子が恥ずかしげに顔を出すだろう。
もうすぐ春ですね。

                     ◆

花咲駅を後にして、エルビス・コステロを聴きながら花咲市街へ。
目的は「ホームランやき」。

メインストリートにあるものの、見過ごしてしまいそうな店舗。
ついに発見、ホームランやき。
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ボーイ・ミーツ・ガールなテンションだ。
そんなに食べるのかと思いつつ、勢いのあまりホームランやきを5個注文。
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おおー、少年野球っぽい縫い目だぜ。
私が少年野球をやっていた頃、つまりは、
渚にシンドバッドがいたり、失恋をして津軽海峡を渡る女性がいた頃を
思い出せる軟球のようだ。

おやきをひと回り小さくして、丸みをつけた形状。
生地にカリッと感はなく、しなっとしている。
おやきよりはお好み焼きに近い。
あんは甘さを控え、結構な大人味。

興奮と雰囲気に引きづられ、店内で一気に5個を完食。
いいな、ホームランやき。
名称だけで客を引き寄せられるし、
根室市街から離れたこの小さな集落で、
「ホームラン焼き」をメインに長く営業をしていることに
大きな意味と価値がある。
いいもので出会えた。

                     ◆

その後、根室市街へ。
次の目的は、「どりあん」のエスカロップ。

根室市街は道が狭いですね。
仲通りも裏道も広い帯広に慣れてしまうと尚更そう思う。
で、本場のエスカロップを味わいたく、「どりあん」へ。
2016022513
ついに訪問できた。
聖地に来られた。
これまでスーパーケットの「根室フェア」みたいので食べたことはあるし、
自宅でも作ってみたことはあるが、やはり現地で本物を食べなきゃ。

というわけで、長年の念願が叶う時が。
トンカツ、バターライス、ドミグラスソース。
濃いものオンリーの組み合わせだ。
胃袋が重たくなり、血管がギトギトになるだろう。

オーダーして5分くらいで出てきた。
既に準備はできていて、盛りつけただけなのだろう。
それでもいい、本物に出会えるのならば、。
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おお、来たね。
思ったより小ぶりだ。
見た目はいたってライト。
ライスの量も少なめ(茶碗一杯強くらいか)。
カフェめしのようだ。

食べてみると、あつあつではなく、ぬるめの温度感。
見た目どおりに味もライト。
くどさは全くなし。
強烈さはないが、やさしい味で柔らかな食感。
繰り返すがカフェめしのようだ。
さらっと食べられた。
エスカロップで五臓六腑も喜んだ。

ただ、私の胃袋の座りを良くするにはもう少しボリュームが欲しい気が。
でも、本物を食べた感動は大きかった。
根室に行ったら食べるべきだよ、と素直に思えた。

腹八分目まで到達しなかったのは決して悪いことばかりじゃない。
なぜなら別の根室フードを味わえるスペースがあるということだ。

今回の根室訪問では、端谷菓子店のオランダせんべいを
本店で購入して食べことも宿題のひとつだった。
実際、端谷菓子店に行きオランダせんべいを買った。
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しかし、胃袋に入ったのは別のものだった。

根室市街地にある「マルシェ・デ・キッチン」というスーパーで、
「山森製パン」なる根室の地場のパン屋の商品に出会った。
結構なスペースを占拠していた。
これは地元で根強い支持があるということだろう。
ちなみに、「マルシェ・デ・キッチン」だけではなく、
イオン根室店でも「山森製パン」は多く売られていた。

陳列状況からして看板商品はカステラサンドとふんだ。
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迷わず購入、すぐさまイート。
昭和のコッペパンのような生地にカステラがサンドされている。
カステラとパンの間には薄くクリームが塗られている。
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パンもカステラも水分が少ないタイプで、

空気にさらしていると、すぐに乾燥してくる。
まさしく昭和の給食のコッペパンだ。
袋に入れているのは乾燥対策なのだろう。

パンもカステラもナチュラルでライトな味。

さらっとした身近な味だ。
パンとカステラの組み合わせもいけるが、
コッペパン然としているので、「カセイ」のジャムも合うだろう。

こんな感じで冬の根室を楽しんできた。
根室の甘太郎のおやきも買ったし、北の勝も買った。
根室、いいっすよ。
帯広にいるうちに、また行かなきゃ。

今回は納沙布岬まで足を伸ばす時間がなかった。
次回は北方領土を眺めたい。
なお私は「歯舞」を全く迷いなく「はぼまい」と読める。
北海道に思いがある人なら誰でも読める。
北海道に住んでいるから読めるのではない。
思いがあるから読めるのだ。



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