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おやきが好きだ。
初めてのおやき体験は、
小学生の頃、岩内町の「甘太郎」だ。
ニセコストアのすぐ近くにあった。
家庭では決して作れないものだったので、
ちょっと特別なお菓子のようで当時から大好きだった。

高校を卒業して札幌へ出ると、めっきり食べなくなった。
行動範囲の中におやきを売っているところがなかったからなのか、
クレープやティラミスなどの新興勢力に目移りしたからなのか
覚えてはいないが、気づくとおやきから遠ざかっていた。

しかし、20代半ば頃から時々食べるようになった。
スーパーマーケットでサザエ食品のおやきが売っているのを
発見してからだ。
久しぶりのおやきはやはり美味しかった。
以来、時々おやきが目に入ると、特に閉店時刻が近づき、
プライスがオフされていると、何となく買っていた。

まるでビートルズのようだ。
高校生の頃はしょっちゅう聴いていたのに、
その後様々な音楽に出会い、ビートルズは古いものに感じ、
大学から社会人になる時期はあまり聴かなかった。
闇雲に何か新しいものを探そうとしていたのかもしれない。

ところが大人になって聴くビートルズは凄かった。
というか、年齢を重ねるにつれ、その偉大さを知るようになった。
いつ聴いてもすっと心に入ってきて、
時に空気のように存在し、時に音楽性の深さに感服する。

そして今私は帯広に住んでいる。
帯広には、おやきをメインにした店が複数ある。
この2016年という時代に、
スイーツの中でもメインストリームではなく、
利幅も小さいにもかかわらず、
おやきをメインにした店が複数ある。
それに触れないわけにはいかない。

■おいしん坊(帯広市自由が丘3丁目)
帯広市街地から西南方向へ5kmくらいだろうか。
片側3車線の中島通沿いにある甘味処。
おいしん01
あん、カスタード、チーズ、いずれも90円。
カスタードとチーズは商品名が型焼きされており、あんは非表示。
おいしん02
生地にコシがあり、もちもちしている。
「もちもち」という言葉のとおり少し餅っぽい。
噛んでいるとやや吸いつくような食感があり面白い。

あんは柔らかく甘さは控えめ。色まで薄め。
カスタードクリームも甘さを抑え気味。
おいしん03 おいしん04
ほんわかした家庭的なおやつという感じで、
ここを通ったら気軽についつい買っちゃうような親しみのある味だ。

チーズも慎ましげ。チーズの強さを出していないので、
お菓子というより、肉や野菜のお供になりそうな感じ。
おいしん05 おいしん06
メニューが大判焼き、クレープ、アイスクリームと
押し出し、寄り切り、寄り倒しのようなラインナップだ。
投げたり、引いたり、かわしたりがない甘いものオンリーのメニュー。
実直だ。

■福豆(帯広市西15条南14丁目)
帯広市街地から西南方向へ2kmくらいだろうか。
長閑な川沿いにある、慎ましくも凛とした佇まいのお店。
福豆01
これは懐かしいとか、素朴とか、おやき表現の常套句では語れない
高級感と洗練さがあるおやき。
型崩れをしないしっかりとした生地で、雑味がなく食べやすい。
小倉あん、クリーム、チーズとも110円。
福豆02 福豆03
クリームは、最初はあっさり、口の中から去って行く頃に
甘みが追いかけてくる。
和というより洋的なエレガントテイスト。

小倉あんは余計な甘みを加えず、
豆の味を生かした丁寧な仕事ぶりがうかがえる一品。
110円でいいんすか、と思えるほど質感が良い。
福豆04 福豆05
チーズはしっかり固めのタイプでとろけない。
生地のクセの無さとうまく融合し、
ちょっと高級なおつまみのようでもある。

営業時間は17時30分まで。そして日曜日が休み。
平日ワーカーにとって行けるチャンスは土曜日しかない。

上等な和菓子のようなおやきだ。
首都圏で出店したら行列のできる店になるのでは。
なお、こちらのお店は甘納豆がメイン。
甘納豆の美味しさにも驚きます。

■TOTTE(本別町北3-4)
店名は「トッテ」と読む。
本別町の道の駅から西に延びる駅前メインストリートにある。
昨年この店の方が本別町で行われる何かのイベントの宣伝のために

STVラジオに出演していて、
商売はおやき屋だと言っていたことから、即座にi-phoneにメモし、
行く機会をうかがっていた。
トッテ02 トッテ03
店のつくりは喫茶店のよう。
営業時間は23時まで。
食事メニューもアルコールもある。
おやきメインなのかどうかは判然としなかったが、
ラジオでは「おやき屋」と言っていた。
トッテ01
どの商品も、本別町の豆をモチーフにしたキャラクター「元気くん」が
プリントされている。

トッテ04 トッテ05
右の写真はキーマカレー(150円)。
マイルドカレー味の挽肉がインしている。
カレーパンにインしているカレーとはかなり異なる。
もう少しカレーの体積割合がほしいかなと。

クリーム(100円)は、キーマに比べると具の量が多い。
やや粘り気の強いタイプながら味はベーシック。
トッテ07 トッテ06
あん(100円)はクリームよりもさらに具が多め。
手作り感のある昔風のあん。普通に美味しい。

本別町にもおやきメインのお店があるのは素晴らしい。

■高橋まんじゅう屋(帯広市東1条南5丁目)
最後に登場するのは「高橋まんじゅう屋」。
帯広を代表するというか、帯広の象徴のような店のひとつだ。
高まん01
土日祝となれば、午後から夜のはじめ頃までは行列となっている
ことが多く、平日もお客さんがいない状態を見かけることは少ない。

こちらは「おやき」とは言わず、「大判焼き」である。
帯広に住んでもうすぐ2年になるが、
「大判焼き」は、あんとチーズと合わせて100個は食べた。
高まん06 高まん07
大判焼きとむしパンと肉まんを合わせて一気に10個食べたこともある。
素朴な味なのに、これに似たおやきに出会っていない気がする。

高まん04
あんの甘味がしっかりしているのがいい。
それでいて飽きない。
帯広歴2年なのだか、幼少の頃から食べていたような感覚になる、
いわばルーツフードのような味なのだ。
しばらく食べないと強烈に欲する中毒性もある。
この美味しさには困ったものだ。

高まん05  
チーズは当初あまり特別な感じがしなかったが、実はそこがいいのだ。
雑味のないナチュラルさにやられる。
あんとセットで食べると、より良さが際立つし、
私にとってはウイスキーやワインの最高のつまみになる。

 高まん03
この文章を書いている途中で、冷凍庫から取り出して解凍し、
あんとチーズをひとつずつ食べた。
味を思い出していたら、食欲を抑えられなくなった。
困ったものだ。

朝食のみならず、夕食でもおやきオンリーの日がある。
おやつではなく食事である。
それでハートは満足するのだが、バランス上身体に良くはない。
ほどほどにしなければ。
でも美味しんだよなあ。
なんだか「おやき」ではなく「ぼやき」になってきたので今日はここまで。

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テレビの液晶画面の中に、ちょっと気になる女性たちがいる。
恋をしているわけではない。
消極的なファンみたいなものであり、
密かに応援しています的なスタンスだ。

また、「応援」といっても、
今後大きく飛躍してほしいというよりは、
今の感じのままで、階段を一段のぼっていただければ、
という程度の気持ちだ。
三段飛ばして駆け上がって別次元に行ってほしくない。
あまりファンが増えてほしくない。
遠くへ行かないで。
そんな一方的でわがままで面倒くさい思いを抱いている私を
楽しませる女性を三人紹介したい。

なお、著作権だとか何か厄介なことは避けたいので、
写真掲載がないことをご容赦いただきたい。

                           ◆

まず一人目。
私にとって平日の早朝はSTV(札幌テレビ)の
「どさんこワイド!!朝」で始まる。
この番組はSTVスタジオからの放送をメインとしながら、
ところどころ日本テレビの「ZIP!」なる番組がはさまれる。

朝6時からの全国ニュースは「ZIP!」の時間帯。
ここで登場するのが日本テレビの「小熊美香アナ」。
目が少しとろーんとした感じと口の形が魅力的。
そしてそれ以上にお気に入りなのが話し方。

小熊アナが登場する際、
メインキャスターである日本テレビの桝アナウンサーが、
「ここからは小熊さんとお伝えします」と小熊アナを紹介する。
そして小熊アナは挨拶をする。
「おはようございます」。
この一言がたまらなく良い。

厳かでありつつも清らか。
きりっとしていて、空気が締まる感じがする。
この一言が聴きたくて、平日は毎朝5時50分に起きている。
目覚まし時計なしで起きられる。

ニュース以外の時間帯や別の番組で、
小熊アナが笑顔でリポートする場面を目にすることもある。
それはそれでいいのだが、中の上というべき良さである。
朝の「おはようございます」は「特上」だ。
「特上」は「上」の上に特例的に設けられたエリアだ。
ちょっとドライで突き放し気味なのが、
逆にいい距離感を作っている。

それとあくまで憶測だが、きれいな文字を書きそうだ。
私にとっては重要なポイントだ。
上手じゃなくて全く問題ない。
読みやすかったり、丁寧さがうかがえる文字であればいい。
だらしない文字が嫌なのだ。
小熊アナが書いた文字を見てみたい。

余談だが、「どさんこワイド!!朝」は7時まで。
7時からはHTBの「イチオシ!モーニング」にチャンネルを変更し、
7時30分台の「あいりチャンネル」まで見る。
その後はNHKにシフトし、
「おはよう北海道」を見終わったら家を出る。
それが月曜から金曜の朝のルーティンだ。

                  ◆

続いて二人目。
一年くらい前からだろうか。
毎週末テレビで中央競馬を見るようになった。
オグリキャップの時代から競馬は好きだったが、
2000年代に突入してからはGⅠレースを見る程度の
付き合いになっていた。

一年くらい前から毎週テレビ観戦をするようになった理由は
わからない。
ただ、大きく影響しているのは
BSイレブンで放送している競馬中継の存在だ。

競馬のテレビ放送は、メインレースを中心に、
土曜日であればBSジャパンの「ウイニング競馬」、
日曜日はフジテレビの「みんなのKEIBA」があるが、
それらの番組と重ならない時間帯にBSイレブンの競馬中継がある。
12時の第5レース・ダート未勝利戦あたりから始まり、
メインレース付近はお休みし、最終レースまで放送する。
さらに土曜日であれば翌日の、日曜日であれば翌週のレース予想をする。

実に親切な番組だ。そして密度が濃い。
分析や予想がきちんとしており、競馬に対する姿勢が誠実。
番組の進め方も的確、それでいて和やか。
メインキャスターであるTIMの二人の競馬をこよなく愛する気持ちが
心地よく伝わってくるし、
予想記者陣もカドがなく雰囲気のいいメンバーを揃えており、
大変好感をもっている。
他の競馬番組のバラエティ感とは一線を画す本気感がある。

このBSイレブン競馬中継において日曜日のキャスターを務めているのが
内田敦子」さんだ。
目の離れ具合、口のシルエットが魅力的。
それ以上にいいのが喋り方。
滑舌感が私のドストライクだ。
親和性にあふれたキレの良さ、というか、
ハキハキ感の具合が良く、聴いていて癒やされるのだ。
以前に内田さんと会ったことがあるような親近感さえある。

彼女は競馬の知識も深く、他の出演者との絡み方も上手い。
リアクションがナチュラルで、ジョークもユーモアも織り交ぜる。
いいなあ。
笑顔も人懐っこいんだよなあ。
それとあくまで憶測だが文字が上手そう。
文字が「きれい」というより「上手」な感じがする。

TIMのフリで、内田さんも時々馬券予想をするのだが、
6番人気あたりの中穴の馬を推奨することが多く、その点もなんかいい。

なお私は、馬券はほとんど買わない。
午前中に道新スポーツを買いに行き、
予想をしては番組を見ながら答え合わせをする。
実際に馬券は買っていないのに1レース千円までと決めている。

また、実はリアルタイムで競馬番組を観ることはあまりない。
競馬の時間帯は家を空けていることが多いからだが、
それだけではなく、メインレースなどはじっくり予想をしてから観たいので、
競馬中継の時間帯に家にいてもあえて録画をし、
その日の夜にゆっくりとレース観戦をすることが多い。

内田さんは、日本テレビの早朝の番組「Oha!4」にも
出演しているらしいが、北海道では放送していない。
「どさんこワイド!朝」をやっているからだ。
「Oha!4」はタイトルどおり朝4時から放送。
これを北海道で見られるなら、私はとてつもなく早起きになるだろう。

                 ◆

最後にもう一人。
松井玲奈さんだ。
元SKE48の中心人物だった方だ。
私の胸キュンポイントである「離れがちな目」には合致しないが、
素朴ながら引き込むような静かなパワーがある。
口の形は文句なしに良い。

SKE48時代の曲や当時の彼女の存在ぶりはほとんどわからないが、
彼女をたまに液晶画面の中で見かけるたびに、
私の好みのフェイスだと感じていた。
それとともに、彼女の醸し出す雰囲気の中に
AKBグループの面々とは異なるものを感じていた。
歌とダンスよりも芝居をやれば、と。

激しく言えば「狂気」を表現できる、
ソフトに言えば、ちょっとぶっ飛んだ芝居ができる、
もっと具体に言えば、サブカルな脇役として確立できると感じていた。

そんな彼女がテレビの連続ドラマに出演していることを知ったのが1月。
「ニーチェ先生」という水曜深夜に放送されているドラマだ。
奇異なコンビニ店員が主人公で、
松井さんは、その店員に恋する女性客の役だ。

すごくいいです。
ぶっ飛んでいます。
松井玲奈ブランドを残しつつ、
いっちゃってる感じを惜しみなく出せている。
声も表情も歌っているときより数段良い。

役者として今はまだマイナーだが、
助演女優として大化けする予感があるし、
サブカル系映画で重宝されそうな可能性を感じさせる。
あえてちょっとマイナー路線で活動し、
気づいたらサブカルもので引っ張りだこみたいな状況になると面白い。

なお、松井さんの文字はあまり期待できない気がする。
あくまで憶測だが。


ザ・ハート・オブストーンは今年アルバムをリリースする予定だ。
オリジナルアルバムとしては10枚目になる。
2014年と2015年に世界にアウトした12曲を収録予定。
ここで言う「世界」は、限られた小さな世界に過ぎないが、
耳にした、あるいは目にした人が極めて少数なだけで、
世界であることには変わりない。
そう、大小に関係なく私達が生きる場所が世界とも言える。
まさしくウィ・アー・ザ・ワールドだ。

レコーディングは4曲ずつ3回に分けて行う。
札幌のスタジオミルクFスタジオにて、
自前の録音機材を持ち込み、自分たちの手でやっている。
1月30日のドラム録りから始まり、
ここまで3曲のオケの収録を終えた。

スタジオミルクはレコーディングスタジオではなく、
バンドや個人が練習するスタジオである。
なので、レコーディング中に他のスタジオで演奏している音が
聴こえてくる。
それでは余計な音を拾ってしまう可能性があるし、
レコーディングに集中できなくなる。

そこで、スタジオミルクの通常の営業時間は13時のところ、
レコーディングをする日は特例措置で
10時から使わせていただいている。

私の使用ギターは、「ギブソン・レスポール・トラディショナル」と
「ギブソン・レスポール・ジュニア」。
音楽性も理念も質も異なるが、
バンプ・オブ・チキンと同じ組み合わせだ。
2016021401
このマーシャルのアンプが素晴らしい。
マーシャル1959というシリーズで70年代的な
抜けのいい歪みが奏でられる名器だ。
このアンプのおかげで基本的にエフェクター無しで音を出している。

これを見たことがあるのはスタジオミルクのFスタジオだけだ。
このアンプを使いたくて、私の録りがあるときはFスタジオ指定だ。
いかにも使い込んだ風貌だが、温かさとキレのあるいい音を出す。
サイコーだ。

ギターソロを弾くときはエフェクターを使う。
とはいえ、私の使用エフェクターは2種類のみ。
2016021402
FEEL THE TONE
社製のオーバードライブと、
エキゾティック社製のブースターのみ。
前者は温かい歪みを、後者はキラッとした輪郭を出す、
まさにベーシックなロックサウンド仕様のエフェクターだ。

2月で4曲を録り終え、
4月から5月にかけてまた別の4曲を、
夏にまた別の4曲を録り、秋にはリリースしたい。

今回のアルバムはオールドロック・テイストの濃いものになるだろう。
意図的にそうしたというよりは、
自然体で曲作りとサウンド作りをしたらこうなったという感じだ。
メンバーにとっては逆に新鮮かもしれない。
我々にとってのゴーイング・トゥ・ザ・フューチャーは、
バック・トゥ・ザ・オールドロックだったのだ。

50歳が迫ってきた時だからこそ作れた曲。
そして、この年齢になって新曲オンリーの新しいアルバムを
リリースできる幸せ。
帯広に移り住んでもリリースできることも嬉しい。
転勤する時は帯広在住中のリリースは困難だろうと考えていただけに
レコーディングに突入できた喜びは大きい。

いい年をしてしぶといだろ。
この背景には、バンドメンバーの音楽活動に対する誠実さと、
活動拠点は変わっても変わらずに遠くから支えてくれる人達や、
帯広において温かくも熱くもあるミュージシャンとお客さんに
出会えたことがある。

感謝です。
そして運に恵まれている。
それを忘れてはならない。



2016年になってから増えたこと。
ひとつはお酒を飲む日。
寒さに屈し、アウトドアできない日々が続き、
何か手持ち無沙汰というか、落ち着かないというか。
それで夜な夜なジンビームを口にしてしまい、
その勢いで甘いお菓子をつまんで長い夜に。

もうひとつ増えたのは読書をする時間。
お酒を飲んでいるとき、
酔い加減と作品の引き込み力がぴたっとはまる時があり、
そうなると活字が良いつまみになり長い夜に。

というわけで、またしてもブックレヴューです。

■辻村深月「朝が来る」
   2016021201
それまではいい作品を書いていたのに、
直木賞などの有名どころを受賞したら、
燃え尽きたのか、力みなのか、焦りなのか、
その後ぱっとしなくなる作家がいる。
逆に、直木賞を受賞したことで注目度が増し、
潜めていた能力を活用できる場が提供され飛躍する作家がいる。

辻村さんは明らかに後者だ。
元々、言葉の選び方や話の運び方が上手ではあったが、
作品ごとに安定感が増し、余裕さえ感じる。
そして何より辻村美月的な文章表現が明確になってきている。

この作品は、子供ができない事情がある夫婦と、
子供を身ごもったものの育てられない事情がある女性の話。
女性が産んだ子は、特別養子縁組によって夫婦に引き取られる。
大事に育てられ、子供は6歳になり元気に幼稚園に通っている。
そこに産みの親が突然現れて言う。
「子供を帰してほしい。できないならばお金がほしい」

産みの親は、中学時代から突如転落していく。
一度歯車が狂うと、もう止めることができず、
流されるままに生きていく。
歌謡史を振り返れば、「自分の気持ちに素直に生きればいい」、
「時の流れに身を任せればいい」、「あるがままに生きればいい」など、
楽観的なメッセージの曲が多くあるが、
現実はそんなふうに生きていたら
とり返しのつかない事態に陥っていくものだ。

産みの親の無知さ、短絡ぶりをよく描いている。
例えば、署名も押印もしていないのに勝手に保証人にさせられた際、
借金取りが来たら、「私は保証人てばない」と戦うのではなく、
職場を捨てて逃げ、窃盗をはたらいたりする。
何か問題が起こったら、そこで対峙するのではなく逃げていく人生。
そして行き場もなくなる。
そんな彼女に光をくれたのは意外な人物だった。

なお、ストーリーには直接影響はしないが、
夫婦と同じマンションに住む若いママ友の浅ましさや
ズケズケしたところなど、嫌な感じをうまく拾っている。
こうした周辺のストーリーにも工夫とこだわりがあり、
結果的に核心部分を際立たせている。
しっかりと組み立て、まとめられた作品だ。

■下村敦史「闇に香る嘘」
   2016021202
69歳の全盲の男が主人公。
41歳で失明。現在ひとり暮らし。
娘と小学生の孫はいるものの疎遠。
というか娘の側から距離を置かれている。
原因は傲慢な態度。
すぐに怒鳴ったり、嫌みを言う父親だった。
今はそれを後悔している。

孫は重い腎臓病を患っており、腎臓移植をするしか回復する術がない。
男は孫のために移植を申し出るが、検査の結果不適合と診断される。
移植できるのは患者と六親等内の血族に限定されている。
そこで男は、自分の兄に移植を願い出るが頑なに拒まれた。
再三申し入れるが完全にシャットアウトされる。

その態度が気になり、兄の過去を調べ始める。
というのも、男は戦後まもなくの幼少期に
中国から日本に戻れたのに対し、
兄は中国残留孤児として1982年まで帰国できなかった。
兄と離ればなれになったのは幼少の頃。
兄が帰国した時には全盲になっていた。
もしかしたら別人が兄になりすまして日本に渡ったのではないか。
そんな疑念にかられていく。

盲目であるがゆえの厳しさ、辛さ、孤独。
それでもなおプライドが許さない不器用さを丁寧に描いている。
それにしても、盲目の老人とはいえ、料理は作れるし、
行ったことがない都内各地に電車で行けたりと、
こんなに色々なことができるのだなと意外だった。

登場人物が皆怪しげで、いい意味でもやもや感が保たれたまま
読者を引っ張っていく。
ただ、キャストの登場が唐突で、登場した背景も説明不足かなと。
また、常に緊迫感はあるのだが、目が粗く隙間が多い印象。
その結果、話の転がしがこなれていない感じがした。

とはいえ、素材はとてもよろしいと思う。
よく調べられているし、よく練られている。
多くの布石をおいて、後半にひとつずつ拾っていき、
終盤で意外な方向にひっくり返し、「そっちだったのか!」と
思わせる。力作だ。

■湊かなえ「望郷」
   2016021203
瀬戸内海にある「白綱島(しらつなじま)」なる離島を舞台に、
島を出て行った者、戻ってきた者、ずっと住み続けている者の
それぞれの視点から、故郷とのつながりや思いを描いている。

ただ、そのつながりや思いはダークサイドなもの。
家族への不信感、島の閉塞感、
いつまでも引きずる過去のイジメや事件。
皆それぞれ下ろしたくても下ろせない荷物を背負っている。
その荷物の大きさや重さが読み手を息苦しくさせつつも、
淀みなく引き込んでいく。
がつーんとくる衝撃はないものの、
静かに迫ってきて連れられていく感覚だ。

島の高校を卒業して都会へ。
ミュージシャンとなってヒット曲も生まれた。
彼は同級生からの強引な誘いで、卒業以来初めて故郷へ帰る。
彼は島にいた頃、同級生から数々の嫌がらせを受けていた。
それが今では手のひらを返したように歓迎する。
しかしそれは、有名人と同級生だったという自己アピール。
過去の出来事を引き合いに出した脅しともとれる言動によって、
サインを何百枚も書かせたり、無理矢理歌わせたりする。

作品の中にはこの手の展開が何度かあるのだが、
いずれも、きっぱりと断れず、ずるずるいくパターンである。
葛藤の中で、結局は深みにはまっていく。
しかしエンディングでは小さな希望を灯してくれる。
誰かが自分を守ってくれていることを、さらりと描いて締めくくる。
書きすぎることなく、よく整えられた作品だ。

■新 雅史「商店街はなぜ滅びるのか」
   2016021204
昨年、TBSラジオを聴いていて紹介されていた作品。
全国的に商店街の衰退が進んでいる。
「シャッター通り」は珍しくないどころか、
逆にシャッターが開いている店ばかりだと違和感をおぼえることもある。

高度成長期以降、道路の整備が進むとともに
移動手段は自動車中心になった。
情報通信手段も飛躍的に発展した。
生活スタイルは変化し、顧客のニーズも多様化した。
その結果、大型店や通信販売などに食われる形で商店街は衰退した。
ただ、このことは誰もが感じ取れる外的な要因だ。

本書は、「商店街とはなんなのか」という根本的なところからスタートし、
戦後の都市一局集中やオイルショック、法律改正などの時代背景に
言及しながら、商店街が衰退した内的な要因を丁寧にまとめている。

最も印象に残ったのは、商店街衰退の大きな要因として
商店が家族経営で行われたことを挙げている点。
江戸時代は、跡取りがいなければ家族以外の人材を積極的に活用して、
店を後世につなげていった。
奉公に店を譲った例も少なくない。
戦後昭和の商店は家族で営まれ、家族以外の者を経営に参加させなかった。
その結果、せいぜい二世代程度しか存続できない事態を招いた。
家族が衰退していく中で、商店だけが生き残れるわけがないのである。

かつては酒、米、たばこなど販売規制商品が多く、
それは既得権となって商店を守ってきた。
また、メーカーと特約店との関係で価格統制が行われてきた。
言われてみれば、ナショナル(松下電器)やポーラ化粧品など、
そのメーカーの商品だけで営業している小店舗が珍しくなかった。

こうした規制が少しずつ突破割れてきたのが1980年代半ばから。
今にして思えば、消費者はずいぶんと高い買い物をさせられていたし、
不便だったし、非効率的だったと思う。

商店街にはそれなりの良さがある。間違いなくある。
ただ平成28年の国民の生活様式とニーズを考えると、
環境や要件が整った特定の地域でしか
商店街は盛り上がっていかないのではないかと思う。
ドライな感想で恐縮です。

                    ◆

私が10代だった80年半ば頃はまだ個人商店が多くあった。
入店したら何も買わずには帰れないようなプレッシャーがあった。
本屋で立ち読みはできず、レコードもゆっくり選べなかった。
なので中高生の頃、たまに札幌や小樽へ行った際の最大の楽しみは、
本屋で立ち読みができることだった。
それとお祭りでもないのにタコ焼きを食べられることだった。

現在CDはほとんど通信販売で購入。
本も通信販売率が高くなっている。
しかしタコ焼きはお祭りで食べるのが一番美味しく感じる。


国道5号線を小樽から余市に向かう。
オタモイ、塩谷、そして桃内まで行くと、
そこからは海辺のワインディングロードとトンネルが交互に現れる。

それが終わると、蘭島(らんしま)、余市となるのだが、
ひとつ忘れてるぜ。
蘭島の手前に、国道からはずれた小さな集落があるじゃないか。
そう、忍路(おしょろ)だ。
2016020701
国道から海側に岬のように突きだしたところにある、
ひなびた寂しげな漁村テイストのエリアだ。
こういう集落、嫌いじゃない。

そこに大人気のパン屋がある。
店名は「エグ・ヴィヴ」
2016020702
丘の上というよりは、安全な崖の上にある感じ。
塩気を多く含んだ強い海風をまともに受けるものと思われ、
自動車の消耗が早まるだろうと推測される場所だ。

なにゆえ商店さえない狭間の小さな集落にパン屋があるのか。
しかも大衆的なパンではなく、
ヨーロピアン系のハードなパンばかりの品揃え。

確かにこうしたスペシャル系なパンは、
市街地や住宅地から離れた、
いわば不便な場所に店を出している例が少なくない。
羊蹄山エリアにはそういうパン屋が複数あり、
特に真狩村の「ブランジェリージン」やニセコ町の「奧土農場」などの
秘境感には驚く。
十勝でも例えば芽室町の「カントリーブラン」や新得町の「ビオラ」など、
なぜこんな奥地に?お客さん来るの?という場所にあったりする。
普段使いというより特別感あふれるパンだからこそ成立するのかもしれない。
2016020703
それにしても、店はまともに昭和50年代的な民家。
たまたまここを通っても、パン屋だとは思わないだろう。
というか、地元の人でなければ、たまたまここを通ることなどない。
忍路のメインストリートからさらに枝分かれした道なのだから。
2016020704
衰退していく北の漁村。
そのはずれにひっそりとある昭和民家のパン屋。
なのに店内はアンティークでモダン。
2016020705
オープン展示だが、オーダーは口頭制。
お客さんにパンは触れさせないスタイルだ。

写真には収められていないが店はお客さんであふれていた。
訪問したのは11月の土曜日の午前10時頃だったが、
店の外店の入口パンのディスプレイ箇所レジまで
行列になっていた。

女性客が圧倒的に多いが、年齢層は幅広く、
おそらく職業や出身地や体質も様々だろう。
マルサの女、極道の妻たち、時をかける少女、科捜研の女。
色々な女性たちが、土曜日の午前中に忍路まで足を運んでいるのだ。

前置きが長くなった。
パンを見てみよう。

〇ボストック(250円+税)
2016020706 
 ボストックはフランスの菓子パンらしい。
 大きめのパンにアーモンドや砂糖がふんだんにのっている。
 甘みのチューニング感が良い。
 高級感と親しみのバランスが最もとれるポイントの甘さだ。
 ふちは固いが生地はしっとり。
 本物だなあと思わせる食感。
 飽きのこない美味しさ。
 この価格でも十分に納得。

 これはいい。

〇クロワッサン(210円+税)
2016020707
 しっかりとした作りで、まわりのサクサク感と
 中のしっとり感のバランスが素晴らしい。
 コース料理においてこのパンが使われていたら
 メインディッシュよりも存在感があるかもしれない。
 ただ価格の割にボリューム不足。
 やむを得ないことだが、これをどう捉えるかだ。

〇パン・オ・ショコラ(250円+税)
2016020708 2016020709
 基本的にはクロワッサンに近い。
 チョコレートが少量入っている。
 もちろん美味しい。
 ただ、もうひと押し何かが欲しい気が。

                      ◆

お客さんは総じて購入量が多い。
滅多に来られないからなのだろう。
普通に2千円台、3千円台レベルで買っていく人ばかりだ。
タクシーで乗りつけた人もいたし、
店を出て国道にあるバス停まで歩いている人も複数いた。

まちがいなく質の高いパンだ。
遠くから訪れたり、大量に買っていく気持ちもよくわかる。
ただ、庶民派ジャパニーズパンに慣れ親しんだ人にとっては
何かが違うと感じるかも。
それは良いとか悪いとかではなく、趣味や価値観の問題としてだ。

私はパンやお菓子類を買ったときは、
レシートをもらうようにしている。
何を買い、いくらしたのかを後で確認したいからだ。
こちらの店ではレシートを発行していないと言われた。
「そうですか、レシートはないんですか…」と残念がったら、
「商品と金額なら書きますけど」と言われ、渡されたのがコレ。
2016020712
どう反応していいかわからなかった。
とりあえず「ありがとうございます」とは言ったが、
そう言いながら、「読めないんですけど」と心が発信していた。
どうなんすかねえ。
私は面倒くさい客だったんでしょうね。
文字は読み取れないが、姿勢やポリシーは読み取れるような気がした。

2016020710
忍路はいわば古びた漁村だが、このお店があることで、
ほんの一瞬だが、地中海にある閑静な港町に思える。
浜辺に行ったら、ジュディ・オングが魅せられているのではないかと。
しかし忍路の現実は、「あれからニシンはどこへいったやら」と
北原ミレイが番屋から海を見ている雰囲気だ。
エレジーだよなぁ。


2月だ。
夜明けの時刻が早くなり、日没の時刻が遅くなっているのを
日々感じている。
ここ帯広も春に向かって少しずつ歩みを進めている。
しかし寒さは1月よりも厳しさを増し、
この一週間ほどがピークかもしれない。
だから今が「おびひろ氷まつり」をやるに最も相応しい時なのだ。
2016020401 
十勝以外の方にはあまり知られていないだろうが、
「おびひろ氷まつり」はなかなかのものだ。
街のど真ん中に巨大テントを設置して飲み会会場にしたり、
巨大すべり台があったり、花火大会があったりと結構なスケールだ。
私も飲みに出かけようかと思っている。
そして帰宅してからも飲むだろう。
そんな時、面白い小説があると、結構いいつまみになるのです。

というわけで、今回はブックレヴューです。

                       ◆

■柚月裕子「孤狼の血」(2015年)
   2016020402
広島県の暴力団抗争と、
その裏側で暗躍する暴力団対策担当の刑事の話。
豪胆で荒々しく、勤務時間はほぼフリー。
暴力団に対しても睨みをきかせ、上前をはねているという噂もある。
警察内部にも、暴力団の間でも彼を疎ましく感じている者は少なくない。
しかし事件を解決する手腕に長けており、
警察幹部も彼に厳しく対処できずにいる。

話の設定は昭和63年。
パソコンや携帯電話が普及するずっと以前なので、
連絡方法や待ち合わせなど時代を感じさせる記述が随所にあるが、
それを殊更に強調するわけではなく、
むしろ同僚との付き合い方や、暴力団の有り様など、
物質面に偏らずに時代を表現しているのが好感。

主人公の刑事は、新人刑事とコンビを組むことになったり、
行きつけの小料理屋(美人女将がひとりで経営)があったり、
高校時代からの悪友が某組の組長だったりと、
ちょっとありきたりなテレビドラマ的設定が多いのが気になるが、
内容も文書表現も重厚で浮き足だったところはなく、
女性が書いたとは思えない男性目線での描写も的確だ。

すぐに話に引き込んで、キープさせる筆力というのか、
派手さはないが、話の進め方や言葉の選び方がうまいので、
リーダーズ・ハイのような状態にさせてくれる。
柚月さんの作品はハズレがない。

後半、「あれ?そうなったら話が終わっちゃうんじゃないの」という
予想外の展開をする。
ところがそこからもうひと展開がある。
最後まで緊張感が揺らぐことはない。
内容も文章力も楽しめる佳作。

■朝井リョウ「何者」(2012年)
   2016020403
就職活動をする大学生男女5人の話。
彼らはそれぞれが熱心にツイッターをやっている。
普段も結構会っている5人なのに、
各自の日々の動きや考えていることはツイッターで知るという、
つながっているような、つながっていないような妙な関係。

ツイッター上でつぶやいていることは虚飾っぽい。
理想の自分を想像させるかのような
「表向きのキャラクター」としてつぶやく。
ツイッターの中でも、みんなで会っている時でも本音で向き合わない。
表面的なかっこいい付き合いを楽しむ。
本音は、本人とは特定されない秘密の別のツイッターでつぶやく。
それを仲間内で暴いていくような展開もある。
ただの傍観者が上から目線で評論することへのアンチテーゼを感じた。

仲間意識があり結束力もあるようで、実は互いに牽制し合う不気味さ。
若者の面倒くさい付き合いや
いけ好かない関係性に上手く切り込んでいる。
読んでいて共感はしないし、むしろイライラする場面が多い。
しかし、今時の大学生群像として読む価値はあるし、
構成がしっかりしており、よくまとめたなあと思う。

ツイッターをする理由はなんなのだろうか。
自分をアピールしたいのか、誰かにかまってほしいのか、
それとも単にこぼしたいだけか。
仮にリアクションが一切なくても続けるのか。
そのあたりがうまく理解できない。
そんな私が言うのも失礼ではあるが、この作品を読んでいると、
「とりあえずツイッターやめれば」としか思わなくなる。

■馳星周「雪炎」(2015年)

   2016020404
日高地方にある「道南市」の市長選挙を巡る話。
選挙の争点は原子力発電所の再稼働。
札幌で弁護士をしている男が、地元である道南市長選挙に
原発反対の立場から出馬すべく準備を始める。
原発推進でまとまり、しばらく無風だった地域が穏やかではなくなる。
原発利権を得ている建設業者、反社会勢力、政治家などが
躍起になって反対派候補をつぶしにかかる。

物語の舞台は、地理的には「むかわ町」を想定したものと思われる。
苫小牧の東側にある町だ。
それでいて「道南市」というのはどうなのか。
道南は、北海道民からすれば、渡島・檜山エリア限定だろう。
苫小牧市は道央エリアだろう。
そうなると日高地域はエリアづけが難しいが、
少なくとも道南ではないなと。
筆者である馳さんは浦河町出身だが、違和感はなかったのだろうか。
なお、道南市以外は実在する地名が使われており大変親しみを持てた。

福島原発は、反社会勢力の関わりが深く、
利権も複雑であると幾つかの文献で目にした。
本作もそういう設定で描かれている。
原発反対派に対してそこまで嫌がらせや脅しをするのか。
目に見えなかったり、噂を聞かないだけで泊原発もそうなのだろうか。
だとしたら怖いし、悲しい。

主人公は原発反対派候補者の同級生で元公安警察官の男。
彼の人物像がいまひとつ掴めなかった。
刑事感覚に優れ行動も判断も迅速、的確だが、
無愛想で憮然としている場面が多い。
また、鬱屈気味で意固地。
かと思いきや、社交的で女性好きでお酒好きな面も見せる。

小説的な妙味よりは、2時間ドラマ的な展開重視な色が濃いが、
どんどんページをめくらせるスリリング感を楽しめる。
また、苫小牧から静内あたりを知っている方は情景が目に浮かぶと思う。
と同時に、北海道の冬の厳しい寒さが伝わってくる。

■筒井康隆「旅のラゴス」(1986年)
   2016020405
ただひたすら旅を続ける男「ラゴス」の物語。
赤道近くまで南下し、その後は人が住んでないところまで北上する。
移動は基本的に馬か徒歩。
電気がない時代という設定。
でありながら、随所に時代や場所を越えたワイド感やワープ感を
盛り込んでおり、矛盾を感じる箇所も多くある。
例えばコーヒー栽培を始めたのも、
電気を発明したのもラゴスなのだから。
それでいて、なにがしかの統一性と連続性があり、
矛盾などどうでもよくなり受け入れてしまう。
実に不思議な作品だ。

波瀾万丈の人生なのに、数々のエピソードを深掘りせず、
全体的に拙速に話が進んでいく独特のリズム感。
なので、長いあらすじを読んでいるような感覚にもなる。
いきなり結論に至ったり、突然数年間が経過していたりと、
展開の切れ込みの鋭さと速さに驚くとともに違和感をおぼえる。
最初はそのリズムにのれないのだが、かみ合うと不思議とクセなる。

読者をひきつける最大の魅力はやはりラゴスの人間性だろう。
基本的にはスケールが大きく慕われる人柄なのだが、
どんな場所でもどんな人とでもうまくやれるなど
順応性に優れているかと思えば、
研究に熱中し始めると何年間も他者の訪問を拒んだり、
悪党に捕らえられて奴隷にされると従順だったり、
二人の女性が大事だからと悩みや迷いもなく重婚したり、
その妻を残して突然旅に出かけ、そのまま戻らなかったり。
気まぐれで自由で、真面目で芯が強く、優しいのに勝手。
とにかくぶっ飛んでいる。
そのぶっ飛びぶりを、平然と淡々と綴っていることがまた凄い。

内容の面白さもあるが、とにかく世界観やラゴスの人生観が魅力。
一気に読みたくなる。
時間が経つとまた読みたくなる。
これは常備本にしていいだろう。

                   ◆

新聞やテレビのニュースを見ていると、
清原和博氏に対して、著名人、一般人を問わず、
温情主義的なコメントをする人が圧倒的な気がする。
「まさか」ばかりで、「やっぱりね」はほとんどない。
そういう人をチョイスして報道しているのだろうか。

この騒動を見ていて、
ヤンキーテイストやワルなキャラクターを支持する日本人は、
平成28年の今も多いのかなあと、ぼんやりと思った。




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