ADMIN TITLE LIST
9月21日からの3連休を利用して根室まで行ってきた。
その最大の目的は、釧路-根室間の無人駅を訪問することだった。

週末になると雨が降ることの繰り返しだったが、
この3連休の道東は連日晴れた。

初日は、午後1時過ぎに釧路に到着。
約10年ぶりの訪問となった。
「まるひら」のラーメンを食べ、
新釧路川の河川敷や美原の住宅地など、
あえて全く観光地ではない場所をぶらついて過ごした。
こういうのが私にとっての旅の醍醐味なのだ。

2日目は朝8時に東釧路駅を訪問したのを最初に、
日本最東端の無人駅である東根室駅まで車を走らせた。
東釧路駅から東根室駅までの約130kmの道中には19の駅がある。
その中には駅員がいるところもあるが、
滅多に来られる場所ではないので、
コンプリートに訪問をしようと決めていた。

当初の予定では、午後1時過ぎには東根室駅に到着し、
その後、根室さんま祭りの会場へ行き、
釧路町にある難読地名のエリアを通って釧路市に戻り、
ザンギを食べようと思っていた。

ところが時間が足りなかった。
7、8箇所訪問した時点で、ペースの遅さを痛感し、
根室に着く頃には日が暮れてしまうことが容易に想像できる状況に。
さんま祭りは午後3時で終了してしまう。
ならば、午後2時には会場に到着したい。
そこで、東釧路駅から数えて12番目の駅である
「厚床(あっとこ)駅」で一旦無人駅訪問を中断し、
先にさんま祭りへ向かうことにした。

無人駅訪問は地味にハードだ。
釧路から根室までのエリアで丸一日時間があるのに、
納沙布岬も霧多布海岸も風蓮湖も温根沼も行けないのだ。
メジャー観光スポットの訪問を全て断ち切らなければ、
無人駅訪問を成し遂げられないのだ。
価値観が違う、と言われても仕方がないぜ。

というわけで今回は、東釧路駅から厚床駅までの無人駅訪問と
さんま祭りについての話だ。

                 ◆

厚岸町内の国道44号線から5kmほど山に入ったところにある
小さな集落、「上尾幌」(かみおぼろ)。
そこにあるのが「上尾幌駅」。
上尾幌1
駅舎を見ると、古ぼけ感も寂寥感もない。
実際、駅舎の中も外も清掃が行き届いていた。
地域の方々がきちんと見守り、支えているのだ。

上尾幌2
何が心に語りかけてきたかというと、この土地の空気感である。
民家が全くない山中の道を進むと突如現れる集落で、
ひっそりと佇んでいる感が極めて高い。
車がほとんど走っていないので、風の音しか聞こえない。
駅が秘境っぽいのではなく、地域全体が秘境っぽいのだ。

学校も商店さえも見かけなかった。
商店に行くには、10kmくらい行かなければならないのでは。
なのに駅前には、なぜか郵便局があった。
かつては、それなりの規模の集落だったのだろう。

上尾幌3
駅舎には駅ノートが置かれていた。
横浜から船で釧路に旅行に来た女性。
釧路で電車に乗り、何か感じるものがあって上尾幌駅で下車。
駅の周辺を散歩していたら、小学生の女の子に「こんにちは」と挨拶された。
都会にはない、すごくいい時間を過ごした、と書かれたページがあり、
なぜだか涙が出そうになった。
上尾幌4
雪のある季節に来たら、これまた味わい深いだろう。
今回の無人駅訪問の中で、最も印象に残った駅だった。

国道に戻り、車は東へ。
途中、牛ににらまれながらも、次の無人駅を目指す。
130922牛 

厚岸駅のひとつ手前にあるのが「門静(もんしず)駅」。
門静1
「もんしず」の看板を見たら、
とりあえず、ジーン・シモンズのことが頭に浮かんだ。
駅舎のどこかに、「厚岸・メタル・シティ」と走り書きされていないかと
探したが無かった。

門静2 
駅舎と反対側の線路の向こうは、こんな景色。
広い砂利スペースに、何かが大量に敷かれている。

門静3
その正体はコンブだった。
ここにコンブが干されていることを知らずに電車に乗っていたとして、
門静駅に停車した際、車窓からこの景色が見えたら、
少なからず感動するだろう。

厚岸町を過ぎたら次は浜中町。
浜中町には、茶内(ちゃない)、浜中、姉別(あねべつ)と
3つの駅がある。
そして浜中町は、ルパン3世の原作者であるモンキーパンチ氏の生まれ故郷。
というわけで、茶内駅では、いきなりルパンがお出迎え。
茶内1 

ホームには、なぜか花に囲まれて、銭形のとっつぁん。
茶内2 

浜中駅では、次元大介と五右衛門がお出迎え。
浜中1 

閑散とした駅前で、ぼうっと街の風景を見ていたら、
ルパン・デザインの路線バス(くしろバス)が登場。
浜中2 

駅舎に入る。お客さんはいない。
無人駅だから、当然駅員もいない。
と思いきや、切符売りの窓口に峰不二子が。
浜中3
これはもう無人駅とは言えない。

姉別駅では、ルパンがワルサーP38を構えていた。
姉別1

姉別駅では、電車にも遭遇。
この写真だけで、質素な環境に漂う安らぎがわかるだろ。
姉別2

浜中町を過ぎれば根室市。
その最初にあるのが、厚床(あっとこ)駅。
厚床駅1 

ここのホームから見た景色が素晴らしかった。
見渡す限り丘陵だった。
車窓からは、こんな感じで見えるはずだ。
厚床駅3 

釧路から根室までの、いわゆる花咲線にある駅舎は、どれもきれいだった。
地元の方がしっかりと管理しているのだろう。
すごくいいなと思った。
クモの巣だらけだったり、床が抜け落ちていたり、すえた臭いがしたり、
というのも、それはそれで味わいがないわけではないが、
あまり利用者のいない小さな無人駅が、
清潔に保たれているのは気持ちがいいものだ。
ホームのベンチがこんな状態なのは愛嬌だ。
厚床駅2 

ここのホームは長居したくなる魅力があった。
食事をして、ギターを弾いて、読書をして、昼寝をして、
目が覚めたら日がかなり傾いていた、
なんていう過ごし方をしてみたくなる場所だった。
厚床駅4 

厚床駅からは、さんま祭りへ直行。
午後2時頃に会場である根室港に到着。
会場は人、人、人。
ほとんど人がいないところを訪問してきて、いきなり人の渦。
メリハリがあり過ぎだ。
さんま祭り1 

さんまは100円で食べ放題。
祭りの終了時刻が近づいていることもあってか、
さんまを配る係の方に、「2匹ください」と伝えると、
「いやいや、もっと持っていって」と3匹寄越す。
そんな空気にのみ込まれ、結局5匹も食べた。
ごはんも大根おろしもない状況で、さんまのみ5匹食べた。
食べ過ぎた。
しばらくさんまは食べたくない。
皮肉な話ではあるが、さんま祭りに来ない方が、
我が家における今年のさんま購入量は多かった、ということになりそうだ。
しかし、さんま効果で血液の流れは良くなったはずだ。
ごちそうさまでした。
ありがとう、いい薬です。
さんま祭り2 

札幌から根室までの距離は、東京-大阪間とそんなに変わらない。
遠くまで来たものだ。
道東の無人駅に心が洗われ、最果ての港のさんまで腹が満たされる。
旅だなあ。
旅してるなあ。
旅すべきだよ。たまには。

スポンサーサイト

テーマ:鉄道 - ジャンル:趣味・実用


私の苦手な食べ物は、生臭さが強いものと、なんか濃いものである。
そのせいで、食べられない魚が多いのが弱みである。
それが顕著に表れるのが、しーすーだ。

寿司は、まぐろ、エビ、ホタテに、ホッキとツブがあれば十分である。
それで大満足だ。
イカとタコは刺身だ。寿司にすると、良さが消えるような気がしている。
イクラ、ブリ、はまち、しめさばなどは論外だ。

最近はエビも少し怪しくなってきた。
かつては、好きな食べ物トップ5に常にランクインしていたのに、
結構生臭さを感じるようになってきており、
現在はトップ20入りもできない状況だ。

留萌に住んでいた6年前に食べすぎたからか。
2年前に海老系スープのラーメンを食べ過ぎたからか。
海老系スナック菓子も、一種類を除いては食べなくなった。
袋を開いたときに漂う生臭さが気になるようになったからだ。
その一種類にしても、開封時は臭う。
しかし、中年男にはこたえられない大人の味と癒やしの食感がある。

年をとったんだなあと思う。
というか、「オレってまだ若いな」と感じたことが、
少なくともこの5年間は一度もなかったように思う。

食べ物の好みだけではない。
例えば「月」だ。
私にとって月は、偶然に出会って、ふと風情を感じる、そんな存在だった。
それが今じゃ、晴れた夜などは、「今日はいい月が出るな」と思い、
建物の少ない場所へ、月を見に行きたくなる。

今日19日は、中秋の名月であり、満月だった。
数日前から、小さな楽しみになっていた。
仕事から帰宅後、丘珠へ行って、月撮影をしようかと考えていた。
ところが、日が暮れる頃から雲が張り出し、いい状態ではなかった。

でも、どうってことないぜ。まるで気にしない。
家の中で、満月を楽しんだのさ。
130919

テーマ:日記 - ジャンル:日記


3連休は連日雨だった。

14日と15日は、恵庭で女子プロゴルフを観戦する予定だった。
朝6時、ベッドへの未練を残しつつ立ち上がり、4歩で居間へ移動。
カーテンを開け、外を見ると土砂降り。
会場まで行ったはいいが中止ということもあり得ると思い断念。
ついに今シーズンは、女子プロゴルフを観に行くことができなかった。
残念だ。

16日はスタジオミルクにて朝10時からレコーディング。
この日は、数曲のギター録り。
曲によって、ギターだけではなく、
ジャズ・コーラスにしたり、マーシャルにしたりとアンプも使い分け、
エフェクターで歪ませられるのに、あえてアンプで歪ませたり。
そんなギター初心者のようなことが未だに楽しい。
120916レコーディング
レコーディングは、少しのギターソロと、
数曲のボーカル録りとベース録りを残すのみとなった。
予定より若干遅れてはいるが、メンバー同士、称え合い、
時に慰め合いながら、ピースフル、かつハートフルに取り組んでいる。
自分で慰めているのではない。他者が慰めるのだ。

既にタイトルも曲順も固まっている。
11月にはリリースできるのではないか。
こんな歌、唄いたいと思っていたような曲が揃った。
これについては、また後日。

そして、ライブだ。

■日時 20131012日(土)1830分スタート
■場所 ベッシーホール
      (札幌市中央区南4西6晴ればれビルB1F)
■料金 前1,500円、当2,000
■出演 The Black Sheeps TOBIRA GRACE
       レンジ・オブ・モーション / The Red BullDog
       THE HEART OF STONE

私ども、THE HEART OF STONEの出番は「20時30分」の予定です。
来ていただける方は、ぜひご連絡を。優待します。

                   ◆

さて、雨にやられた3連休。
しかし札幌は、ちょっと空の機嫌が良くない程度のものだ。
全国的に見ると、大きな被害が発生したところもある。
1時間で1か月分の雨が降ったというところもある。

私は連休の3日間で1年分の映画を観た。
1年間に劇場へ足を運ぶのは3回くらいだ。
そんな私が、女子プロゴルフを見に行けなかった悔しさもあってか、
3日連続の映画鑑賞となった。

120915
9月11日から16日まで、札幌国際短編映画祭が開催されていた。
今回で8年目だ。
「ああ、やってるな。観に行ってみたいな」と思っていたこの2、3年。
ついに今年は観に行った。しかも3DAYだ。

1回で6、7本の短編が上映される。
なので、20本くらい観たことになる。
ただ、上映されたのは全部で約270作品。
観たのは1割にも満たない。
だが、面白い作品がいくつもあった。

映画は90分から100分がベストだと思っている。
2時間超えは長く感じ、だれ気味になってしまう。
ストーリーを横に広げすぎて、前に進まない感じになると、
飽きてしまい、集中できなくなる。
映画こそ、削りの美学の最たるものだろう。
そう思っている私なので短編とうまく折り合えると思っていた。

ところが一筋縄ではいかない。
画期的なものを見せてやるぜ的なアバンでギャルドな内容で、
ストーリーが全く理解できない作品。
120分映画から15分を切り取っただけのようで、
背景がわからず、想像するにも追いつかない作品。
で、なんだったの?しか感想が出てこない作品など様々。
でも、不思議と飽きなかった。
いい意味で製品化されていないというか、
手作り的なラフな部分が、妙に馴染みやすかったのかもしれない。

120916
ストーリー的には、「ゆびわのひみつ」という作品が一番だった。
日本の作品である。
同棲して三年になる男女。
女性が、男性の鞄の中にあったプレゼント用の結婚指輪を
たまたま発見したことに端を発する話なのだが、
短編ながら、起承転結がきちんと配置され、
序盤の何でもないようなシーンが伏線になり、
エンディングの見事なオチにつながっている。
まさに痛快。面白かった。

冒頭のカレーを食べながら、ちくわの話をするシーンは、
だらけた同棲物語を見せられるのかと嫌な予感がしたが、
余計なところは省き、軸がしっかりと、流れるように展開する。
短編ならではの良さが感じられる作品だった。

この作品も含めて、人気の高かった作品が
9月22日に北海道近代美術館にて特別上映がされるようなので、
気が向いた方はぜひ。

ただ、どうしても言っておきたいことがある
「ゆびわのひみつ」主演女優の滑舌に悩まされた。
口を少し開いたまま、あまり動かさず、だらだら喋るため、
何を言ってるのかわからない。
最初は日本語かどうかもわからなかった。
このイライラ感も、気が向いた方はぜひ。

ちなみに、このイベントは国際映画祭であり、外国作品の方が圧倒的に多い。
お客さんも外国の方がそれなりにいらっしゃる。
そのせいか、日本映画は、英語の字幕が出る。

この、だらだら喋りの女優のセリフが聞き取れないため、
英語の字幕で意味を確認することになり、
図らずも、ちょっとした外国人気分で鑑賞するはめに。
初歩的な単語を使った英訳だったのでわかりやすく、非常に救われた。
これは冗談なんかではない。
同じ状態になった人は多数いるはずだ。
その人達も、ちょっとした外国人気分になったはずだ。

しかし、外国人になった気分がしただけだ。
外国人はおろか、他の日本人にだってなれるわけがない。
自分は自分以外にはなれないのだ。
自分が持っているものをどれだけ出せるかなんだ。
120%の力を?
そんなの無理なのです。
身の丈以上のことなど、そもそもできないのだ。
100%の力を出すことだって至難の業だ。
身の丈以上のことをしようなんて思うな。
身の丈を大きくすることを考えろ。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画


今年の札幌は、やけに雷が発生している。
この1週間はそれほどでもなかったが、
先週、先々週は、ほぼ毎日発生していたような感覚だ。

これほど雷を聞いたのは、
1986年にザ・ルースターズが新譜をリリースした時以来だろう。
1曲目の「OH! MY GOD」で、花田氏の激しいボーカルに驚き、
2曲目の「クリミナル・ロック」では、
「オレはロックの犯罪者」という歌詞に衝撃を受け、立て続けに、
「もちろんお前は共犯者」と歌われ、何がなんだかわからなくなった。

雷の多さに日照不足が追い打ちをかける。
なんとなく体調が悪いような、すっきりしない気分で過ごす日々。
しかし、音楽が私を救ってくれる。
6月から新しいアルバムのレコーディングをしている。
現在のところ7割ぐらい終了している。
11月にはリリースしたいと思っている。

そして、ライブがある。
5月18日以来、5か月ぶりのライブだ。

■日時 20131012日(土)1830分スタート
■場所 ベッシーホール
     (札幌市中央区南4西6晴ればれビルB1F)
■料金 前1,500円、当2,000
■出演 The Black Sheeps TOBIRA GRACE
      レンジ・オブ・モーション / The Red BullDog
       THE HEART OF STONE

私ども、THE HEART OF STONEの出番は「20時30分」の予定です。
来ていただける方は、ぜひご連絡を。優待します。

120908 

久しぶりのライブとなるが、
レコーディングのリハと、レコーディングをしていたので、
状態は悪くない。というか、良い。
普通の体調ならば、これまでで一番のパフォーマンスに
できそうな気がしている。

今更ながら、音楽というものの「違い」がわかるようになってきた。
ザ・ハート・オブ・ストーンを始めた頃は、
スポーツに例えるならば、
「武道をやりたいんじゃなくて、走りたいんだ」という程度の、
大雑把な違いを目指していたように思う。

それが活動を続けるにつれて、
「短距離走じゃなくて、長距離走をやりたいんだ」から、
「1万メートルじゃなくて、マラソンをやりたいんだ」になり、
「瀬古選手じゃなくて、宗兄弟のような走りをしたいんだ」というように、
「違い」の感じ方が細分化されてきた。
30年くらいバンド活動をしていて、やっと見えてきた。

ただ、これまでも、つかんだと思ったら、
手の中は空っぽになっていることの繰り返しだ。
しかし、その繰り返しがあるから見えてくるものがあるのだ。

この先、突き詰めていけば、
「宗茂じゃなくて、宗猛のような走りをしたいんだ」というレベルまで、
違いを感じられるようになるのではないか。
そこに何が待っているのかはわからないし、
もしかしたら何も待っていないのかもしれないが、
自分がどこまで音楽というものを手に入れられるか楽しみだ。
完全に自己満足だ。
いいじゃないか。
そこから始まるんだ。

テーマ:音楽のある生活 - ジャンル:音楽


今年7月、桜木紫乃さんが、「ホテルローヤル」にて直木賞を受賞した。
桜木紫乃さんは私にとって大変お気に入りの作家であり、
私が選ぶ2012ブック・オブ・ザ・イア」では、「ラブレス」で第1位、
2011ブック・オブ・ザ・イア」では、「硝子の葦」で第2位に
輝いている。

私が桜木さんの作品を高評価していることを知っている
何人かの人からは、「とっちゃいましたね」、「良かったですね」など、
私が受賞したわけでもないのに、お祝い的な言葉をいただいた。

受賞後、桜木さんがメディアに登場することがすごく増えた。
というか、受賞前はほとんどメディアに出ていなかった。
いまや書店では、いい場所に平積みされ、サイン会をやれば行列。
9月5日の道新ホールでの桜木さんの講演会に応募したが、
私は抽選に漏れるほどの注目どの高さだ。

これだけいっぺんに周り状況が変わったら、
執筆活動に影響が出やしないかと心配になる。
嫌な人間関係や、断ち切れない過去などによる暗澹たる心情を描くのが
上手い方だけに、よく知られた賞をもらったことによって、
マイナスの意味で大衆路線になり、
刺激の薄い方に傾いたりしてしまわないだろうか。

直木賞をとって、さらに作品が充実した人より、
受賞後、燃え尽きたように、作品がぱっとしなくなった人の方が多いような
印象を持っているだけに気にかかる。
      

                   ◆

ところで、このページの右側にある「カテゴリ」という項目がある。
そこに、「本の一覧」というのがある。
これは、このブログで紹介した本を羅列し、
タイトルをクリックすると、その紹介ページへと移動するものである。
先日、3年ぶりに整理したので、必要あればご利用ください。

ということで、今回はブックレヴュー。
よろしくどうぞ。

■綾辻行人「ANOTHER」(2009年)
   綾辻行人「ANOTHER」
学園ファンタジー・ホラーというべきか、青春ミステリというべきか。
主人公は男子中学生、恒一。
転校初日、教室に入ると、窓際の一番後ろの席にいる
女子生徒が目に入った。
彼女は眼帯をしており、一人だけ古びた机に座っていた。
転校前に彼女を見たことがあった。
ある病院にて、人形を抱えて霊安室に向かう姿だった。

彼女は誰からも話しかけられず、いつも一人。
授業中に勝手に教室を出て行くこともある。
しかし誰もが無視している。
どうなってるんだ、このクラスは。彼女はいったい何なのだ。
やがて恒一は、このクラスに26年前から語り伝えられている、
死を巡る「呪い」の伝説があることを知る。

面白かった。
前半はとにかく眼帯の少女に翻弄される。
怪しいぞ、怪しいぞ、と思いながら引き込まれ、
「本来クラスにいないはずの誰かがクラスにいる」という設定に
どんどんミスリードされていく。

もちろん非現実感や無理矢理感があるし、それがゆえ、
アニメーション的な映像が浮かんできて、
映像を文章化した作品であるかのような感覚にもなる。
しかし、文章の安定感や伏線の置き方など、小説としてきっちりと成立し、
ホラーとミステリががっちりと両立している。
単行本で700頁近く、文庫本は上・下巻がある長編だが、
読み切らずにはいられなくなる面白さがある。

■中村文則「迷宮」(2012年)
中村文則「迷宮」
交際している女性は、どこか謎めいている。
何か秘密があるようであり、心に闇を抱えているよう。
世間一般に言う「恋人」という感じでもない。
何となく会い、何となく過ごしているような関係。

男は、彼女の過去を調べていく。
そして十数年前に起こった一家惨殺事件の遺児だった事実にたどり着く。
彼女が小学生の時、両親と兄が自宅で殺害されたのだった。
事件は既に迷宮入りをしており、犯人はわからないまま。
やがて男は、彼女が計画的に自分に近づいていたことを知る。

先を知りたくなるような面白さはある。
筆者の特徴でもある、主人公の内面の葛藤や社会とのズレに苦しむ様を
ほじくるように描いているのに、
どんよりすることなく、なぜかサクサクと読めてしまう

ただ、筆者独特の切れ味鋭い文体は影を潜めたような気が。
また、事件の真相やオチが妙に軽いような気がして、
これまでの筆者の作品に比べて、読後の余韻が小さかった。

■長岡弘樹「教場」(2013年)
長岡弘樹「教場」
タイトルは「きょうじょう」と読む。
警察学校の生徒のエピソードを描いた6つの短編で構成されている。

教官はこれほどまでに絶対的存在なのか、
生徒は、自分が他人よりも上に、前にと進むために、
ズルしたり、嘘をついたりと、これほどまでにつぶし合うものか。
警察学校という世界はほとんどオープンにされておらず、
どこまでリアリティのあるものかわからないが、非常に面白かった。

淡々と物語に突入し、ひっかかりなく吸い込まれていく。
すいすいとリードでして、ラストでは、心地よくひっくり返される。
そうした展開は、ミステリー作品のようでもある。
また、どの短編も、「仕返し」がベースになっているストーリーであり、
たとえ鮮やかなオチがなかったとしても、
緊迫感だけで十分に楽しめたと思う。

怪しく謎めいていて、でも、微妙に優しさも垣間見られる教官、風間は、
ジョーカーゲーム(柳広司・著)に登場する結城中佐と、
どことなく似た存在感がある。
風間のキャラクターがもう少し掘り下げられていれば、
さらに面白かったような気がする。
続編を見越して、あえてそうしたのだろうか。
続編がリリースされれば、ぜひ読みたい。

「同じ数字が連続した車のナンバーは暴力団関係の車に多い」、
「数字を足して9になるナンバープレートも、組の構成員が好んでつける」、
敬礼の姿勢に関して、「自分の体を時計の針だと思え。
真っ直ぐ立っているときが6時。敬礼の時の体の角度は6時2分30秒」
など、警察学校的な小ネタがちりばめられているのも面白い。

普通自動車に希望するナンバーをつけられるようになったのは平成11年。
私もその当時から、ぞろ目のナンバーをつけている車は
ヤンキー的な要素が濃かったり、怪しげな高級車である場合が多いと
感じており、このことをこれまで数十人に話している。
(あくまで「多い」というだけで、全員がそうだとはいうわけではない)
「そうかなぁ」というイマイチな反応が圧倒的だったが、
この作品を読んで、自分の考えが認められた気がしてちょっと興奮した。

数字を足して9になるのを好むのは、
トランプを使った賭博に関係するらしい。
ということは、ぞろ目との合わせ技で「333」は相当注意が必要だ。

ちなみに、「2525」ナンバーの車内にいる人が、
憮然としていたら、微妙な気持ちになる。

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2013 トゥナイト今夜もRock Me Baby, All rights reserved.