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石北本線の上川駅から網走駅までの間にある無人駅を訪問した
リポートの後編だ。

遠軽駅から留辺蘂までの国道242号線を通ったのは初めてだった。
よって土地勘がない。
ひたすら山間部の平坦の道を進んでいくが、
自分がどこにいて、どこに向かっているのかわからない感覚になり、
どこにもたどり着けないような気持ちになってくる。
その点、海沿いの道は抜け出した感じがして不安がない。

そんな状態の中、国道から数百メートル山側に、
ぽつねんとした駅らしき構造物が見えた。
「生野(いくの)駅」だった。
生野1 
家がないぜ。
しかし、何もないわけではない。
余計なものがないだけであり、緑や土や空や空気はふんだんにある。
それに出会いたくて、300キロ近くの距離を走ってきたんだ。
生野3  
私は、車の中でAMレディオを聴くことが多い。
残念ながら、この辺りはAMレディオの受信状態が良くなかった。
たまに聴こえてきたのは、
「せつない女心に共感する女性ファンが多い」とか、
「歌姫」などと言われる若手女性シンガーの、
ありきたりで、焼き直し感にあふれたラブソング。
テレビで見たことがある方だが、私の印象は、
2年くらい前のことを「昔」と言いそうな方々だな、いうものだった。
「昔、行ったことがある」、「昔、聴いてたけどね」などの表現で、
2年前のことを語りそうだ。
あくまで彼女の見た目と歌詞から想像したものだ。
ちなみに、私にとっての「昔」は、大政奉還以前という認識だ。
どちらか正しいか、という話じゃない。
人生観と価値観の違いだ。
それを埋める必要も理由もない。
生野2

レディオを消し、佐野元春の新譜を聴く。
彼独特のセンスと情熱にあふれたワンダフルなロックアルバムだ。

車は、生田原を過ぎ、て現れたのが「金華(きんはな)駅」。
金華1 

駅前は、こんな風景。
金華2 
殺風景だ。
なぜここに駅が、という気持ちに安らぎをおぼえる。
ここでは、偶然に電車に出会った。
金華3 
誰もいないホームに停車する電車。
愛おしくなる景色だ。残してほしい。
しかし、このために多くの汗とお金がかかっている。
必要なのか、必要ではないのか、それを考えると胸が締めつけられる。

金華駅から、留辺蘂、北見、美幌など11の駅に立ち寄り、
たどり着いたのが、「西女満別(にしめまんべつ)駅」。
容易には見つけられなかった。
国道39号線には西女満別駅を示す案内表示はなく、
線路がどこにあるのかさえわからなかった。

国道39号線から数百メートルほど山に入ると、
なんとなく跨線橋っぽい橋があったので停車。
橋から見下ろすと、おお、あるじゃないか、駅が。
いいぞ~、この佇まい。
西女満別1
写真の中央にホームがあり、左に待合室がある。

駅のホームから待合室側の写真がこれ
町道から未舗装道路を通って駅にたどり着くのだ。
西女満別2 
国道からの経路や周囲の環境など、秘境っぽさが満載の駅。
当然、マニアには人気がある。
駅ノートの記載も少なくなかった。
西女満別3
この駅は、女満別空港の最寄り駅である。
だが、空港までは歩いて20分くらいかかるだろう。
しかも、民家に乏しい山の中を歩かなければ行けない。
というか、森の中にあるせいか、空港が近くにある感じが全くしなかった。

                      ◆

この日は北見に宿泊した。
到着時には日が暮れており、北見市中心部の散策は断念。
しかし、「四条ホルモン」にだけは行ってきた。

これまで北見は素通りしたことしかなく、食事をしたことがなかった。
「北見といえば四条ホルモン」と、
10年以上前から北見関係者に聞かされていた。
なので、北見に泊まろうと決めたその日から、
夜の食事は四条ホルモンしかないと考えていた。
というか、四条ホルモンに行くために北見に泊まることにしたと言ってもいい。
四条ホルモン1
実は私、ホルモンが得意ではない。
ホルモン特有の臭みが一定ラインを越えると対峙できない。
これまでのホルモン経験を精査すると、
3店に2店は、ホルモン1枚で食べるのをやめている。

ところがどうだ、このホルモンは。
臭みがない。噛んでいると旨みが出てくる。
いいぞ~。もっと来い。
四条ホルモン2
タレではなく、塩で食べてみる。
おお~、これもいい。
というか、タレよりいいじゃないか、すっきりとしたこの旨み。
3枚しか食べていない時点で、おかわりしようと決めた。

好物の「シンタン」を食べる。
おほ~、つくづく美味しい。まさにオホーツク。

いい旅だったとしか言いようがない。

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テーマ:鉄道 - ジャンル:趣味・実用


今月初め、知床へ行ってきた際、道中にある無人駅に立ち寄った。
石北本線だ。
石北本線は、旭川から、上川、遠軽、北見などを経て、
網走まで続く234kmの区間である。
ここに、駅員がいるところも含め、「40」の駅がある。

石北本線にある全ての無人駅を訪問したわけではない。
なぜなら時間が足りないからだ。
無人駅訪問は、意外に手間と時間がかかる。
国道や道道沿いにあったり、駅の案内板があれば早いのだが、
そうじゃないところは、見つけるのに苦労する。

わからないまま通り過ぎ、次の駅が出てきてしまい、
何キロも引き返したことも少なくない。
無人駅の周辺をさまよい、それでも見つけられず、
たまたま外にいた地元住民に聞いたこともある。

また、無人駅に到着後、駅前、駅舎の中、ホーム、

ホームから降りて、など散策しながら写真を撮り、
ここを利用するのはどこに住む人なのかと想像したりしていると、
思いの外、時間が経っている。
あと10分したら電車がくるからと、ただ待っているときもある。
そんな感じで、早ければ7、8分、長ければ30分くらい駅にいる。

こうした事情から、上川駅から網走駅の区間にある無人駅に絞って
訪問してきた。
今回はその前編である。

上川駅をスタートし、いきなり長い山道を走ることになる。
北見峠を越え、34キロもの区間、駅がない。
そして、閑散とした国道沿いに現れたのが、上白滝(かみしらたき)駅。
上白滝1 
う~ん、いい。実にいい。
駅舎も古いが、バックの景色まで昭和40年代のようだ。
ここは、上川駅から普通電車で1時間くらいかかるらしい。
鉄道の一区間の所要時間としては日本最長であり、
鉄道好きの間ではフェイマスな駅である。

また、上白滝駅は、ダイヤの面でもフェイマスである。
上白滝2
写真でわかるだろうか。一日一往復しかないのだ。
遠軽・網走方面は朝7時04分の便のみ。
旭川・上川方面は夕方17時08分の便のみである。
これは、普通に考えると、朝、遠軽方面に行き、
夕方帰ってくることしか想定されていない。
旭川・上川方面に行くなら、その日のうちに戻ってこられない。
勝手にしやがれ状態だ。
行ったきりなら幸せになるがいい状態だ。
戻る気になりゃいつでもおいでよ、と言われても、戻る電車がない。

なぜか漫画の本も置かれている。
汚れている、というか、朽ちている感じで、触れられなかった。
パキパキになっていて、ページをめくることはできないだろう。
「がんばれ元気」が充実しているのも、
時の過ぎゆくままにこの身をまかせた感があって切ない。

上白滝4
こんな感じで「駅ノート」もある。
マニアに人気のある駅には、大体置かれている。嬉しい配慮だ。
春から夏は訪問者が結構あり、1週間で2ページが埋まるペースで
書かれていた。
古いノートはパキパキになって、開く気にはなれなかった。

上白滝3
上白滝駅は国道333号線沿いにあるのだが、
国道と平行して高規格道路があり、多くの人はそちらを使うせいか、
国道は閑散としており、すれ違う車はほとんどない。
車で山の中をさまよっている感覚になり、
自分がどこにいて、どこへ向かおうとしているのかわからなくなる。
それが不安でもあり、いい意味でちょっとドキドキするのだ。
そんな白滝は、味わい深い無人駅の宝庫で、
この「旧白滝駅」も、ぽつりと存在。
旧白滝 

これは、「下白滝駅」。
下白滝
写真には映っていないが、左側に民家が1件あり、
数匹の犬が放し飼いになっていた。
車の近くまで来て、すごく吠えられ、生命の危険を感じたため、
車から降りず、窓から思い切り手を伸ばして、
恐怖に震えながら、この写真を撮った。

駅舎の方へ車を走らせたときも、追いかけては来なかったが、
激しく吠えられた。
駅舎の前に車を駐め、写真を撮っているときも、
いつ犬が走ってきても、すぐに車に乗れるように、
運転席のドアを開けたまま、
身震いしながら写真を撮った。

それにしても、「上白滝」、「旧白滝」、「下白滝」の白滝トリオは、
なかなかの秘境感にあふれていた。
とにかく、山間の地に、静かに、ひっそりと存在しているのが良い。
まさに、「森閑」という言葉がぴったりだ。
と同時に、放し飼いの犬に震撼させられた。

テーマ:北海道/道東 - ジャンル:地域情報


NHK連続テレビ小説「あまちゃん」が大ヒットしているらしい。
私はこれまで、NHK連続テレビ小説を一作品すら
きちんと見たことがない。
最もヒットしたと言われる「おしん」でさえ、あらすじを知らない。
当時の放送開始時刻である午前8時30分は、
10代の頃であれば学校に、20代以降は職場にいたわけで、
見られるわけがないのだ。

ただ、これまで、いくつかの作品について、
ダイジェスト版や総集編を見ようとしたことはある。
しかし、集中できずに、すぐに持て余すはめに。
私が最も愛おしく感じる女優、井上真央主演の作品ですら
続けて見るには至らなかった。

7月某日、テレビのチャンネルを回していると、
偶然に「あまちゃん」の前半放送分の総集編が始まるタイミングに
出くわした。
世間では何やら話題になっているようだし、ちょっと観てみようかと、
リモコンをテーブルに置き、ソファに座り直した。

最初の3分くらいで、「面白いかも」と思い、
その後は、吸い込まれるように見入ってしまった。
面白い小説なら最初の5頁で既に面白いし、
良い音楽なら最初の1分で既に良いのと同じだ。
奥の深さや、底辺の広がりは後からついてくる。

おそらく興味を持った最初の要因は、
テレビ朝日かテレビ東京の深夜ドラマのようなノリだろう。
ストーリー上はなくてもいい小ネタの挿入具合が良かったのだ。
さらには、古田新太、ピエール瀧、松尾スズキなど、
朝から、しかもNHKに出演していいのか、という顔ぶれだ。
彼らが、深夜ドラマのようなノリでやっているのだ。
特に、松尾スズキだ。
あのキャラクターが朝から普通にテレビで流れることを
NHKは許諾したのだ。
ボブ・ディランを気取っているわけじゃないが、時代は変わった。
と同時に、松尾スズキという稀有で貴重な存在が
お茶の間に受け入れられていくことが少し寂しくも思う。
かと思いきや、世間一般の多くの方は、そこを注視してはいないだろう。

総集編を見て、すっかり「あまちゃん」ファンになった私は、
それ以降、夜11時からの再放送をほぼ毎日観ている。
たまに忘れてしまうが、翌日の放送でなんとなくフォローできてしまう。
土曜日には一週間分を放送するというサービスもある。
いつからこれほどNHK側が歩み寄り姿勢を見せるようになったのか。

「あまちゃん」を観たくなる理由として、
やはり、主演の能年さんに魅力があるのは間違いない。
彼女は嫌味がないというか、いい意味でクセがない。
実に微笑ましく、応援したくなるような何かを持っている。
また、地味にナレーションが上手い。
自然体ながら、ポイントをやんわりと抑えている。

薬師丸ひろ子の女優としての器用さ、
すっかり一皮むけた松田龍平の存在感、
吹越満の正しい「なまり」など、脇を固める布陣もいい。
あまり登場しないが、安藤玉恵をキャスティングしたことも賞賛に値する。
彼女は、適役にはまれば大化けすると思うし、
貴重なバイプレイヤーとして欠かせない存在になれると思う。
もっと映画に、ドラマにと出演してほしい女優だ。

それと、美保純だ。
この方、あまり取り上げられないが、いい芝居をしている。
余計なオーラがなく、どんな役にも溶け込んでいける技術がある。
他の海女役の方々は、劇場で芝居しているかのような、
大きな演技に思えてしまうが、
美保純の、ある意味、馴染んでいて目立たない存在感がいい。

ところで、あまちゃん大ヒットとはいえ、
北海道内の視聴率は10%台後半で推移している。
単純に考えると、8割くらいの人は観ていない。
複雑に考えると、録画したり、深夜に観ている人がいるので、
実質的な視聴率はもっと高いのだろうが、
それでも30%まで達しているのかどうか。

そう考えると、低い、低いと言われる国政選挙の投票率が、
結構な数字に思えてくる。
7月の参議選は約60%である。
6割の人が、靴を履き、ドアを開け、ドアを閉め、
ガソリンを使い、あるいは徒歩で、投票に行くというのは、
決して少なくない数字のように思える。

投票率は60代をピークに、若ければ若いほど投票率が低い。
この傾向は、この30年前から続いている。
ということは、20代、30代の頃は投票に行かなかったのに、
50代、60代になると投票に行く、という人が多くいるということだ。
そんな、人って変われるかね。
変われるってことなんだろうね。
でも何も変わってなんかいないんだ、ほんとうは。

余談が長くなってしまった。
今年の暮れの紅白歌合戦では、「あまちゃん」の時間帯が設けられ、
紅白出場者の数人が、「じぇ、じぇ、じぇ」と言う場面があるのだろう。
能年ちゃんをはじめ、あまちゃん出演者が舞台に上がる可能性も高い。
その際は、ぜひ松尾スズキも入れてほしい。
しかし、無理だろう。
ならば、松尾スズキを紅白の審査員の一人にしてほしい。
喫茶店でアイドルの曲をたくさん聴いているのだから適役だと思う。



このブログを2007年8月20日に開始してから6年。
アクセス数が10万を突破した。
これまでお付き合いをしてくださった皆様、
ほんとうにありがとうございます。

この3年ほどは、パソコンに向かう体力の衰えなどにより、
更新頻度が落ち込んでいますが、状況が許すうちは、
しぶとく続けていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。

で、今回はブックレヴューであります。

■桐野夏生「ハピネス」(2013年)
   桐野夏生/ハピネス
東京の埋め立て地に立つ超高層タワーマンションに住む29歳の主婦の話。
夫はアメリカに単身赴任中で、3歳の娘と二人暮らし。
以前からタワーマンションに住むことが夢だった彼女は、
優雅にセレブ生活を満喫、と思いきや、お金も心も不安定な日々を送る。

まず、同じタワーマンションに住む「ママ友」との付き合い。
彼女達はお互いを、「相手の子供名前+ママ」と呼び合う。
例えば、花奈(かな)ちゃんの母親は、「花奈ママ」と呼ぶ。
これだけで胡散臭い。というか、「ママ友」という時点で既に胡散臭い。

彼女達の中には、ボス的存在のママがいて、周りはやんわり服従状態。
彼女とうまく付き合わなければ、激しく仲間はずれになるのではないかと
不安になり、煩わしさにうんざりしながらも関係を保つ。
やがて、自分は人数合わせ要員であると気づくが、
なんとなく付き合いを続ける。

また、単身赴任中の夫とは音信不通状態。
給料は送金されてくるものの、最低限の生活をするのがやっとの額。
洋服は基本ユニクロである。
夫の両親とも折り合いが悪く、娘を引き取って離婚させようとしている
ように思えてくる。

こうした先の見えない不安と孤独とストレスを抱えつつ、
彼女は彼女で見栄を張り、出身地や経歴なども偽り、
自分で自分を苦しめていく。

こんなしようもない話なのだが、桐野さんが書くと面白い。
ママ友同士の駆け引き、姑とのいざこざなどの描写は秀逸。
さらに、「ママ友あるある」的な要素も含め、30代の女性の生態を
よく把握していらっしゃる。
エンディングはちょっと拍子抜けしてしまうが、
文章レベルの高さで十分に楽しむことができる作品。
面白いです。

■三羽省吾「JUNK」(2011年)
三羽省吾/JUNK
「指」と「飯」という2作の中編が収められている。

「指」は、掏摸の話。
「掏摸は、他の犯罪に比べて再犯率が高い。
必要に迫られて技術を修得した奴らも、
いつの間にか技術の方に飲み込まれるからだ」、
「あの“抜く”と決めた感覚は制御できない病だ」など、
切れ味のある文体で、掏摸特有の世界を見せてくれる。

主人公は臆病でありながら、掏摸をやめられない。
金が必要でもないのに、掏ること自体が目的となってしまう。
やがて、別の掏摸集団にスカウトされ、怪しい企みに巻き込まれていく。
次第に間合いをつめてくるような緊迫感を楽しめる。

「飯」は、刑務所近くの食堂でバイトをする男の話。
食堂は、さえないオヤジがひとりで賄っている。
いかにも粗末で、味も悪く、特定少数の客しか来ないジリ貧の店。
バイトの男の本当の仕事は、食堂で働いているふりをして、
刑務所の出口を見張り、ある男が出所したら
依頼者に連絡をするというものだった。
しかし、出所の瞬間をただ待つだけなのは退屈なため、
暇つぶしに食堂の手伝いを積極的にする。

そんな時、食堂のオヤジがケガで入院。
バイトの男は、食堂をひとりで賄わなければならないはめに。
しかし、見張りをやめるわけにはいかない。
そんな状況の中、食堂業務に精を出してしまう。
いい加減だった味付けを改善し、工夫を施したら、客が増え始めた。

正直なところ、出所者を見張った事情とその後のゴタゴタよりも、
店が次第に繁盛していく過程の方が面白かった。
軸のブレが少し気にはなったが、アウトサイダー的な世界を、
クールでタイトな文体で書き上げており、
別の作品も読んでみたいと思えた。

山田詠美「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」
    (2013年)
      山田詠美/明日死ぬかもしれない私
共に子連れで再婚した夫婦。子供は4人。
微妙な寄せ集めの家族だが、皆それぞれに思いやり、
絵に描いたような幸せな日々を送る。
しかし、突然の悲劇が。17歳の長男が雷に打たれて急死する。
そのショックから母はアルコール依存症に。
次第にエスカレートする母の言動に、
残された子供達は、母に愛されていたのは長男だけだったのだと思い知る。
そんな家族の15年間が、長女、次男、次女の視点から語られる。

幸せな家族になろうと必死になり、時には痛いほどに気を使い、
なかでも次男の苦しみと背中合わせのような甘えぶりは辛くなる。
長女はそんな自分達を愚かで滑稽に感じることがあったり、
次女は、満ちあふれた愛情の取り扱いに苦心したり、
それでも、家族に失われたもの、それを埋めるものを
探し求める物語である。

良い作品である。著者の文章力の高さに圧倒される。
さらりとしていながら深みがある。
そして、死があり、毒があり、すさみ、悲しみや苦しみがありつつも、
どういうわけか筆者が書くと美しいのだ。

ストーリーだけを追うと、これといった劇的な場面はなく、
後半はそれまでの静かで重みのある緊張感がとけたように、
表面的には朝のテレビ小説的なホームドラマっぽくもなるのだが、
筆者の技量がそこを引き締め、ラストでは、小説だからこそできる
ちょっとしたマジックもある。

ある意味、「死」というものをめぐる物語である。
「男と女のことに限るけど、かけがえのない人を失った時の穴は、
別のかけがえのない人でないと埋められない」、
「死ね、と、大好き、が組み合わさると、人は何もないところでも躓く」、
「この人が死んだら、私、どうしようって胸が締め付けられそうになるの、
と彼女は言った。でも、あたしは違う。自分が死んだら、
この人はどうなるんだろう、と思いを馳せる側の人間に、あたしはなりたい」
含蓄のある言葉にもあふれた、出会えて良かった作品である。

テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌


少し早い夏休みをとり、知床へ行ってきた。
知床行きは、過去に二度エントリーしたが、
いずれもゴールデンウイークだったこともあり、
風雪に阻まれ、知床半島入りを断念せざるを得なかった。
こうなれば行くなら夏、しかも、夏の真っ只中しかないと
心に決めていた。

前日に北見に宿泊した。
道内でも有数の猛暑の地、北見だ。
ところがどうだい。
宿泊した日の北見の最高気温は20度に届かず。
夜は、「もう秋も終わりだね」などと言いながら、
熱燗を飲みたくなるような寒さ。
またも天候に苦しめられるのか、と不安を抱えつつ朝を迎える。

「イチオシ」の清水気象予報士と木村愛理氏(24歳)が言うには、
網走、北見方面は完全に曇りで、気温も20度までいかないとのこと。
オホーツク以外は全道的に晴れなのに、どういうことなのか。

北見を出発し、斜里町が近づくにつれて、雲はどんどん濃くなっていく。
太陽はどこへ行った。
知床五胡の駐車場は霧の中で、小雨が降っていた。
道内で今雨が降っているのはここだけなんだろうなと、
巡り合わせの不運を悔やみつつも、
念願だった知床入りを果たせたことに、
少なからずエキサイティングな気分だった。

00_知床五胡
金曜日の午前10時にもかかわらず、駐車場には結構な混みようで、
駐まっている車の3分の2くらいはレンタカーだった。
みんな遠くからここを目指してくるのだ。
にもかかわらず、知床はサマーレインだった。

知床五胡を全て見るコースは約3km、90分。
こんな感じの道を歩いて行くと、
01_知床五胡

湖が現れた。
02_知床五胡 

幻想的というには、何かが足りず、何かが多い中途半端な曇り具合。
それでも五つの湖の姿を見ることができた。
いいじゃないか、それで。
最果ての半島の森の中に、こんな湖があること自体が神秘的だ。
また、明らかに違いがわかるほど空気が澄んでいた。
03_知床五胡

その後、ウトロに戻って昼食。
「ウトロ漁協婦人部食堂」なる店にイン。
04_ウトロ
ウトロ漁港のすぐ近くにあり、店員のご婦人の皆さんはR-50。
ちなみにウトロ漁港は、ウトロの人口規模のわりにかなり広かった。

焼魚定食(1,200円)を食べる。
ホッケ、ごはん、味噌汁、以上だ。
正確には、イカの塩辛もついていたが、私にとっては、
食べる以前に、
見た目と匂いだけで神経が衰弱する食べ物であるため、
失礼ながら写真に映らない位置に置かせていただいた。
イカの塩辛によって、おそらくこれまで18回の神経衰弱を起こしており、
今回で19回目になりそうだったのでご容赦願いたい。
05_ウトロ
ところでこのホッケ。
素晴らしく美味しかった。
臭みがなく、脂のノリが良く、それでいて脂の旨みはすっきりしていた。
海の町に生まれ、風のある丘に育ち、愛のある人に会い、
相当な数のホッケを食べてきた私だが、
今までに食べたホッケの中で一番美味しかった。

この後、ウトロと羅臼を結ぶ知床峠に向かった。
峠の頂上から羅臼岳を見ること、それが知床へ来た最大の目的だった。
しかし、完全に雲に阻まれてしまった。
06_知床峠
看板以外、何も見えません。
私は雲と戦った。そして雲が勝ったというわけだ。

知床峠を越え、羅臼へと向かう。
曲がりくねった急な坂道を下るにつれ、
雨は弱くなり、霧は薄まっていく。
10分ほど走ったら、一面が青空になった。
羅臼の市街地はこれほどまでに晴れ渡り、
14_羅臼 

羅臼岳もパーフェクトに眺めることができた。
08_羅臼 

峠の頂上を境に、ウトロと羅臼とでは、これほど天気が違うのか。
まるで、表と裏、本音と建て前、土曜の夜と日曜の夜、酒と泪と男と女。
ウトロと羅臼は、まさにそんな感じだった。

09_羅臼
羅臼があまりに快晴なので、ドライブ・モチベーションが上昇。
知床半島の先端に向かって、行けるところまで行ってみることにした。

そして出会ってしまったのだ。こんな虹に。
10_羅臼

写真ではわかりにくいかもしれないが、
海辺から50mくらいの極めて近い位置に出ていた。
虹をつかめるのではないかと本気で思った。
というか、虹の中に入ることは可能だっただろう。
しかし、虹の中に入るメリットよりも、海の中に入るデメリットの方が
大きいため断念。
虹の小ささも微妙な衝撃区だった。
まるで生き物を見ているようだった。

そして、行き止まりの地、相泊(あいどまり)に到着。
15_羅臼
羅臼市街地から20kmくらいあったと思うが、
ずっと海岸沿いに民家があり、それなりの規模の漁港もいくつかあった。
まさしく漁業の町であることを実感した。

12_羅臼
羅臼市街地へと戻る道中、若干薄くなったが虹はまだ残っていた。
虹の内側と外側では結構色が違うものだ。
佐野元春「レインボー・イン・マイ・ソウル」を聴きながら、虹ロードを走った。

羅臼からウトロへ戻るため、再度知床峠へ。
これだけ羅臼は晴れているのだ。
もしかしたら、知床峠の頂上付近も天気が変わったか。
そんな期待をもちながら峠を登っていく。
カーステレオから「ギミー・シェルター」が流れ始めた頃から、
いきなり雲の中に突入することになり、頂上はこんな状態だった。
13_知床峠
何も見えなくて夏、としか言いようがない。

今回は知床峠との巡り合わせが良くなかった。
しかし私はまだいい。
北海道以外の地からここへ来た方々は相当がっかりしただろう。
私はまたトライできる。
知床峠からの羅臼岳は、どうしても見てみたい。
内心は残念な気持ちでいっぱいではあったが、
楽しみが先送りになっただけだと思うことにし、
しれっと知床を後にした。

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