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今回の記事は、2011・ブック・オブ・ザ・イアの旧作部門。
2011年中に読んだ2009年以前に発刊された作品の中から、
特に心に残った5作品を紹介します。

まずは1冊。

■水上勉「飢餓海峡」(1963年)
飢餓海峡・上   飢餓海峡・下
昭和22年、北海道岩幌町で強盗殺人事件が発生。
さらに、証拠隠滅のために放火され、その火は町じゅうに燃え移った。
捜査を進めるうち、犯人は、同日に起こった青函連絡船の転覆事故を
利用して青森に逃げたという推測にたどり着く。

犯人と思われる男は、青森で娼婦と会い、彼女に大金を渡す。
娼婦はそのお金で東京に出る。
10年後、娼婦は、たまたま男の写真付きの新聞記事を目にする。
男は、舞鶴で大事業家になっていた。
10年前の恩を忘れていなかった娼婦は、
一目会ってお礼を言いたいと舞鶴へ。ところが、…という物語である。

2011年に読んだ作品の中で、最も引きこまれた。
展開としては犯人を追う刑事達の執念が軸になっているが、
戦争直後の貧しく苦しい生活の描写に圧倒される。
娼婦の同僚が、田舎に古新聞を送る場面など、特に強烈だった。

昭和29年に起こった洞爺丸転覆事故と岩内町の大火という
実際の出来事を、昭和22年に設定して書き上げられた作品だが、
なにせ自分の地元の大火が題材になっており、
野束(のつか)、敷島内(しきしまない)など、
町内に実在するローカルでディープな地名まで登場し、
少なからず興奮した。
また、岩内線が、この当時で既に結構な赤字路線だったことに驚いた。
ところで、なぜ岩内町を岩幌町としたのか。
それ以外は、実際の地名を使っているだけに未だに引っかかっている。

しかし、そんなことはどうでもいいと思わせる強い引力がある。
密度が濃く、きめ細やかに色々と盛り込まれているのに、
本筋から外れることなく、むしろ本筋を太いものにしている。
そして、人間模様と時代性が自然とにじみ出るような雰囲気がある。
壮大で壮絶な傑作だ。

■野沢尚「深紅」(2000年)

深紅
小学6年生の女子児童が修学旅行先で、
突然教師から家に帰るように告げられる。
彼女の一家が惨殺されたためであった。

彼女は心に大きな傷を負ったまま大学生に成長する。
やがて、加害者には自分と同じ年齢の娘がいることを知る。
そして、自分の正体を隠して、加害者の娘に会う。

引きずり込まれた作品だった。
特に前半の、修学旅行先から家に帰るまでの彼女の心理描写は、
圧倒的な迫力がある。
家に向かう途中の高速道路のサービスエリアのトイレで
鏡で自分の顔を見るシーンなど、胸が張り裂けそうになる

加害者の娘と会うまでの、次第に距離が縮まっていく過程も
ページをめくる手を止められなくなる。
ただ、被害者の娘と加害者の娘は、この後、絡む場面が多いのだが、
思いのほかページを割いているせいか、
衝撃的な出来事なのにもかかわらず、
薄まっていくような、緩くなっていくような感じがした。
とはいえ、両方の娘が背負っているものの重さや、
抜け出せない暗闇の深さは読み応えがある。

■桐野夏生「魂萌え!」(2005年)
魂萌え・上 魂萌え・下
夫が心臓麻痺で急死。残された妻は59歳。
初七日が過ぎた頃、夫の持ち物や、夫の知人の話などから、
夫に愛人がいたことを知る。
また、ほとんど実家にも帰らず、好き勝手に暮らしていた息子と娘が、
相続に関して執拗なまでに介入してくる。

それまで夫の影で静かに暮らしてきた妻が、
突然ごたごたの渦中に放り出された。
そんな妻の第二の人生の始まりを描いた作品である。

大きな事件や事故はなく、誰しも日常にあるような
家族の関係、知人との付き合いに一喜一憂するような内容なのに、
ドキドキしたり、意外な展開に驚いたり、
50代、60代の生活が興味深かったりと、かなり面白く読めた。

心情にしても、人物の行動の描写にしても、
細部まで丹念に綴られていながらも、しつこくないし、くどくない。
引っかかりが無く、さらさらと滑らかに読ませつつ、
厚みを感じさせる文章力がすごい。
これが本当のロープーの作家なのだなと思う。

老年の合コン仲間が若作りをして常に身なりを気にしている場面や、
親に向かって敬語で話す息子のいやらしさなど、
「なんか嫌な感じ」を描くのがほんとに上手い。
嫉妬や思い込み、裏切りや妙なお人よしぶりなど、
イライラしたり、むかむかしたりしながら、楽しめる作品である。

■夏川草介「神様のカルテ」(2009年)
     夏川草介「神様のカルテ」
2010年の本屋大賞(2009年発刊の作品を対象)第2位の作品。
映画化もされ、また、「神様のカルテ2」も発刊されている。
地方で働く若手医師の、心温まるストーリーのようだったので、
なんとなく内容を勝手に想像してしまい読まずにいた。

読む気になったのは、東京に行った際、
持参した本を往路で読み終えてしまい、
帰りの、京急→羽田から札幌までの航空機→千歳か札幌までのJRという、
4時間以上の復路を考えると、
本なしには、どうにもやりきれないと思ったからだ。
そして、東京の三田の本屋で、平積みされていたこの作品をバイし、
羽田行きの京浜急行に乗り込んだ。

そこからは、ほぼ一気読みの状態だった。
地方の病院が抱えている様々な問題、
例えば、医師不足や救急医療、終末期医療のことなどを織り交ぜながら、
いい意味で淡々と、さわやかな雰囲気で綴られている。

そして何といっても、この作品が多くの人に支持されたのは、
登場人物それぞれの愛おしくなるようなキャラクターだろう。
なかでも主人公である医師の妻の可愛らしさとたくましさは、
2012年という時代の中ではリアリティがないが、
かなりのポイントになっている。

ちょっとうまく行きすぎかな、と感じられるところもあるが、
優しい気持ちになれるような、癒されるような温かい作品である。

■越谷オサム「陽だまりの彼女」(2008年)
越谷オサム「陽だまりの彼女」
最後の一冊である。
「1Q84-2」とどちらにしようか迷った末、この作品にした。
表現力、密度、迫力など、「1Q84-2」の方が完全に上だが、
展開が遅く、読むのがだんだんと面倒くさくなったところがあり、
今となっては、ストーリーをあまり思い出せない。
なお、「1Q84-3」は、あまりにファンタジックかつ観念的で、
中盤以降はついていくのがやっとだった。

で、「陽だまりの彼女」である。
主人公は広告代理店で働く20代半ばの男性。
ある時、新たな営業先に出向いたところ、
担当として対応したのが、中学の同級生だった女性。
その後、意気投合し交際に発展。
相手方の両親から反対されるも、駆け落ち的に結婚する。

甘く穏やかな結婚生活。
しかし、時間が経つにつれて、彼女に少しずつ変化が表れてくる。
そこには、とんでもない秘密が隠されていた。

率直に言って、中盤までは、平凡で少しコミカルな浅めの恋愛劇。
中盤以降は、少しずつ違和感や疑問がわいてきて引き込まれていくも、
結末はファンタジックで、肩透かしをくったような気分にもなる。
また、詰めて迫る感じではなく、なんというか、ぽわーんとしている感じが
するだけに、賛否が分かれる作品かもしれない。
ところが、少し時間が経ってから振り返ってみると、
実に切ない物語だったなと思う。

最近この作品の文庫版が結構売れているようで、帯には、
「女子が男子に読んでほしい恋愛小説№1」と大きく書かれている。
どういうエリアで、どういう年代の人に、
どの程度の人数でアンケートをとったのかは知らないが、
私の感覚としては全く逆だ。
むしろ男子が女子に読んでほしい小説ではないだろうか。

その最大の理由は、奥さんになる女性の健気さにある。
中学の時、彼が転校して離ればなれになり、
その後音信不通となっていた10年間、ずっと彼に会いたいと思い、
高校では彼が目指すであろう大学に入れるよう勉強し、
就職してからも、彼の会社と仕事ができるよう努力していく様は、
ほんとに愛おしい。
畳の部屋にできた陽だまりで丸まっているのが大好きだった彼女を思うと、
心の底から彼を好きだったんだなと今でもちょっと泣けてくる。

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今回は、私の選ぶ「2011・ブック・オブ・ザ・イア」。
半年以上、本の記事を書いていなかったが、
ほぼ週一冊ペースで、何かは読み続けていた。

本の記事は他の記事よりも時間を使うため、
なかなか踏み切れずにいたが、心のどこかが便秘状態のようで、
「2011・ブック・オブ・ザ・イア」をやっておかないと、
開けてこないような気がして、
時期がずれた感はあるものの記事にすることにした。

「2011・ブック・オブ・ザ・イア」は、新作部門と旧作部門があり、
新作部門は、2010年、2011年に発刊された作品を、
旧作部門は、2009年以前に発刊された作品を対象とし、
それぞれ特に心に残った5作を発表するものである。

まず今回は新作部門の5作を。

【新作部門】
■第1位 沼田まほかる「ユリゴコロ」(2011年)
     ユリゴコロ/沼田まほかる2011  
 主人公の男性はカフェを経営している。
 ある日実家に帰り、物置となっている部屋にあった段ボールを
 何気なく開けてみると、
 そこには「ユリゴコロ」というタイトルのノートがあった。
 書かれていたのは、少女の殺人日記のような手記だった。

 読んでいくうちに、このノートに書かれていることは
 現実の出来事だと思うようになり、
 誰が書いたものなのかを調べ始める。
 幼少の頃のかすかな記憶の中にあった母への違和感。
 失踪した彼の婚約者の秘密。カフェの従業員の女性の献身ぶり。
 そうした彼を取り巻く状況が、
 ノートの筆者を知ることによって明らかになっていく。

 ノートに書かれていることは残酷で生々しいが引き込まれていく。
 常に暗さと怪しさを漂わせながらも、
 どんな謎があるのかと読み手を追いかけさせるように構成された、
 まとまりの良さを感じる。
 
 2011年は、筆者の文庫がよく売れた。
 私も「九月が永遠に続けば」と「彼女がその名を知らない鳥たち」を
 読んだが、この「ユリゴコロ」の方が展開にリズム感があり、
 ドキドキしながら面白く読めた。
 エンディング・シーンもなんとも微妙で不思議な気持ちになる。

■第2位 桜木紫乃「硝子の葦」(2010年)
硝子の葦/桜木柴乃2010 
 
  彼女の作品のこれまで「風葬」と「凍原」を読んだことがあるが、
 いずれも道東が舞台の作品である。
 この「硝子の葦」も釧路市と厚岸町が舞台となっている。

 厚岸でスナックを経営する母を持つ主人公の女性は、
 釧路でラブホテルを経営する男性と結婚。
 その男は、母の愛人だったという設定。

 登場人物がそれぞれに抱えた重たい過去と出口のない現実を、
 整然とした筆致で綴っており、
 さらりとしていながも、迫力を感じさせる。
 なんというか、いい意味で文章が大人である。
 
 構成が巧みで、ストーリーとしても十分に面白く、
 また、特に会話によって人物像を浮き上がらせ、
 心情をうまく表現している。
 地域の描き方が相変らず素晴らしい。
 景色やそこにある建物のことなど、あまり書いていないにもかかわらず、
 湿原、霧、特異な形状をした厚岸の街が見えてくる。
 薄暗い作品であり、地域を鮮やかに描いているわけではないのに、
 なぜか魅力的に思え、釧路や厚岸に訪問したい気持ちにさせる。
 もっともっとメジャーになっていい作家だと思う。

■第3位 湊かなえ「花の鎖」(2011年)
    
花の鎖/湊かなえ2011

 大ベストセラー「告白」より後の筆者の作品の中では、
 一番面白かったと思う。

 物語は、3人の女性のことが、それぞれに語られていく。
 3人はそれぞれの場所で、それぞれの悩みを抱えながら
 暮らしているのだが、共通して登場する「K」という男。
 最初のうちは、Kと女性たちの関係が見えないのだが、
 女性たちの生活環境やエピソードが語られるうち、
 「あれ?ちょっと待てよ」、「ああ、そういうことなのか」と
 いうふうに、少しずつわかり始めてくる。

 こうした真相を小出ししていくバランスが非常に良い。
 特に、人付き合いの面でさりげなく時代背景を織り交ぜているのが
 実に効果的である。
 2011年の新作5作は、どれも静かな余韻に浸るような作品ばかりと
 なったが、この作品はちょっとほろっとくるような感動もある。
 また、タイトルと内容がぴたっとはまっているのも好感。

 「告白」がとんでもなく売れたことにより、
 いまだにそれと比較されることの多い筆者だが、
 確実に力はつけているし、
 きちんと世界に引き込んでくれる力作だと思う。

■第4位 池井戸潤「下町ロケット」(2010年)
下町ロケット/池井戸潤2010  
  2011年上半期の直木賞受賞作。
 ロケットエンジンの開発に夢を馳せた中小企業社長の物語。
 大企業による下請けいじめや、手のひらを返したような銀行の貸し渋り
 などにより、深刻な経営難に陥る。
 そこに追い打ちをかけるように、企業つぶしを得意とする企業から、
 特許をめぐって訴訟を起こされ、会社存亡の危機に。

 そんな中、この中小企業が取得したロケットエンジンの特許技術が、
 ある大企業の目にとまり、また夢は歩き始める。
 しかし、あら探しとも、嫌がらせともとれる執拗なエンジンテストが
 繰り返され、次第に追い込まれていく。

 文学というよりは、テレビドラマを文章にしたような感じで、
 NHKで火曜日か土曜日の夜に全6回で放送してそうな内容である。
 それがいいのか悪いのかはよくわからないが、
 ストーリーが明快でわかりやすく、
 紆余曲折がありつつも、自らの信念と周囲の協力、支援によって、
 夢に向かって突き進んでいく展開は、
 読み手も同じような気持ちにさせるのではないだろうか。

 事実、読み終ると、面白い映画を観たような、
 心地よい疲労というか、達成感のあるため息が漏れる作品である。

■第5位 薬丸岳「刑事のまなざし」(2011年)
刑事のまなざし/薬丸岳2011
 少年鑑別所などで、心理学の専門的な知識などにより、
 少年と向かい合い、非行や犯罪の原因を分析し、
 立ち直りや更生の指導をする「法務技官」という職業がある。

 主人公はかつて法務技官だった。
 しかし、十年前に娘が襲われた事件をきっかけに刑事に転身。
 犯罪者を改善する立場から、犯罪者を捕まえる立場になった。
 そんな彼が、自分の過去と現実と戦いながら事件を解決していく。

 この作品は7つの短編で構成されており、連作となっている。
 落ち着きがありつつ、淡々と核心に入りこんでいく展開は、
 重たく、苦しく、悲しい気持ちにさせる。
 また、筆者はどの作品もそうだが、事件の背景にあるものが切なく、
 実にやりきれない気持ちにさせる。

 暗く憂うつになる読者も多くいると思われるが、
 この作品には優しさがある。
 フィクションだからこその優しさと言えなくもないが、
 静かに充実した時間を過ごせる一冊ではないだろうか。


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3月4日日曜日、ザ・ハート・オブ・ストーン、今年最初の
ライブを終えた。
観に来てくださった皆さん、冬の日曜日の夜にもかかわらず、
足を運んでいただき、ありがとうございました。

セットリストは次のとおり。
1 抱きしめたい
2 口笛とゆううつ
3 家路は春の訪れ
4 Sweet Little Baby
5 三日月の舟
6 人生
120304ライブ01 

私自身、2月に入ってからは新曲の制作に没頭するとともに、

他の曲もこれまで以上にギターを弾き、そして体調も整え、
実はこれまでで最もいい状態でライブを迎えた。
当日のリハーサルでも好調だった。

ところが、いざ本番になると、
なぜかギターソロで混乱して本来のフレーズを弾けず、
アドリブ演奏の連発となり、自分で自分に驚いてしまった。
普段は、寝転がって目を閉じた状態でも弾けたのに、
なぜこうなってしまったのか。
おそらくは気の緩みなのだろう。
自信と余裕が完全に裏目に出たパターンだ。
要は力不足だったのだ。

ただ、バンド全体としては、楽しく充実したものになったと思う。
メンバーは成長している。
この状態を突き詰めて、地から湧き上がるようなサウンドに

なっていければと思う。

他の出演者の方々も皆それぞれに素晴らしかったし、印象的だった。
打ち上げでもそんな話になり、特にクローズアップされたのが、
「といしちひろ」さんという女性シンガーだった。
どこか事務所的なところに所属しているのか、
チラシやCDはロープーのそれと変わりない本格的なものだった。

何より良かったのが、日本語をきちんと発音していることと、
柔らかくて深みのある声だった。
容姿も実に魅力のある方だった。
この良さは、日常にはない特別感がありつつ、
いき過ぎてないというか、丁度いいというか、
自分のエリアにすっと入ってくるような和風なナチュラルさが
醸し出されているからだろう。
おそらくや彼女の虜になっているメンズも多くいるはずだ。
御活躍を期待しています。
ちなみに、「といしちひろ」さんの歌はyou tubeに複数あります。

120304ライブ02
今回のライブでのMCは、銀行の金利からワオンカードの話となり、
いったい自分はライブをどこへ向かわせようとしているのか、
自分で自分に疑問を投げかけそうになったが、
普段様々なことで自問自答しっぱなしなのでやめた。
そうやって私は今日を毎日生きている。

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