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仕事が落ち着いてきた。
繁忙期の反動か、やけにお酒が飲みたくなる日が増えた。
しかし飲んだら飲んだで翌日が辛く、
別の疲れがのしかかる。
人間は疲れを求めるようにできているのだろうか。

年齢のせいなのか、
お酒を飲んでいる当日は、
まだ飲めるけどここらでやめておくかとコントロールできるのに、
翌日に予想を超えたダメージがあり、それにも増して、
ダメージ解消までに要する時間が長くなった。

ビールとワインはすぐに飽きるようになった。
というか、ワインは年に1回飲むかどうかだし、
家ではほとんどビールを飲まない。
外で飲むときも、最初はビールにしないと変に目立つので
そうしているだけだ。
日本酒、バーボン、麦焼酎は、年々美味しく感じてきている。
この先、どうなっていくのだろう。

今回はブックレヴュー。

■伊坂幸太郎「AX」(2017年)
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主人公は文具メーカーに勤務しながら、
殺人という仕事を請け負っている。
そうなった経緯は描かれていない。

殺人をあっせんしているのは医師で、
主人公は医師に逆らえない関係にある。
なぜそういう関係なのかは描かれていない。

主人公には妻と高校生の息子がいる。
妻に対しては異常なまでに気を遣う。
特に会話中の妻の発言に対しては、
どういう返しをするのがいいのか慎重になり、
入念に自問自答する。

こう言ったら、こう思われるのではないか、
こう言ったら、自然な感じになるだろう、など、
常に妻のご機嫌をうかがい、平和的に過ごそうとする。
なぜそういう関係になったのかは描かれていない。

殺しがどうのより、
妻にびくびくしながら日々を過ごす夫の心情を描いた作品
というのが率直な感想。
実際、裏をかいたような妻の反応が最もよく描けているような。

伊坂さんの作品なので、最後まで面白く読めたのだが、
いきさつや背景がわからない点が多かったのが残念。

■朱野帰子「わたし、定時で帰ります。」(2018年)
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ウェブデザイン会社で働く20代女性。
業務改善に熱心で、効率的に仕事をこなしつつ、
常に定時帰りをしている。
それを見習う同僚もいるが、否定的な社員が多い。

そこに新たな仕事が舞い込み、
そのプロジェクトのチーフに抜擢される。
メンバーの統率がとれず、業務ははかどらない。
定時帰りは続けられるのか、みたいな内容。

登場する社員の人物描写が上手だし、
ノー残業をめぐる攻防も面白く読める。
しかし、主人公と以前に交際していた男が、
この会社に中途採用になり、
元カレのポジションを活かして変にちょっかいを出したり、
主人公は主人公で婚約中の男性がいながら
いまひとつ本気でなかったり、
定時に帰るとか、プロジェクトの進展状況とかよりも、
終わった恋愛のひきずりぶりと現在の恋愛の空疎感ばかりが
表面を覆い、イライラしっぱなしで、
逆に結末を知りたくて読めてしまった。

■長岡弘樹「道具箱はささやく」(2018年)
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18編もの短篇で構成されている。
仕事上のライバルの争い、認知症、恋愛もの、子供もの、
事故や事件ものなど、
非常に幅広い設定で、様々な人物が登場する。

1話は20ページにも満たない。
でありながら、どの物語も起承転結があり、
きちんと成立、完結している。
ミスリードをされ、最後に鮮やかにひっくり返された作品や、
伏線のひきかたが見事な作品もあった。

極めて短編なので展開が早く、
なぜそうなったのか、経過をもう少し堀り下げて
書いてもらいたかった作品もあり、
物足りなさを感じたりもしたが、
無駄に書きすぎて間延び作品よりは断然良い。

■神田茜「母のあしおと」(2018年)
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筆者は帯広市出身で私と同世代ということで、
彼女の作品を読んでみたいと思っていた。

この物語は、おそらく昭和18年生まれと思われる
「道子」という女性の一生を描いているのだが、
時系列としては逆に話は進んでいく。

始まりは、道子が亡くなってから3年後であり、
以降、道子の葬儀、長男が婚約者を家に連れてきた時、
道子の息子が小さいとき、道子が結婚する前夜、
道子が小学生の時、というふうにさかのぼっていく。

そして道子のことを語っているのは、夫であったり、
息子であったり、親戚であったり、道の母親だったりで、
語り手としての道子は登場しない。

道子の人生は特別なものではなく、どこにでもありそうなもの。
しかも、それぞれの語り手は、
道子を「いい人」のように描写しているわけではない。

道子はちょっとしたクセがある女性で、
語り手たちの心にしっかりと刻まれていることがわかるし、
あの時、こういうことを言ったのは、
昔こういうことがあったからなのかと、時代をさかのぼることで
さりげなく伏線が回収されるような構成にもなっていた。

この時代の女性の、いわば普通の人生であり、
ちょっとした人生のイベントや節目、エピソードなどを
ピックアップして描いているだけなのだが、
構成の妙か、書き手の技術か、
ぐっと心にせまるような、癒されるような良質な作品だった。
舞台も釧路を中心とした道東だったのも
気持ちが入り込めた要因のひとつ。

                       ◆


外でお酒を飲むのは気を遣う。
都市部では、外でしか飲まない、という人は多いようだが、
外だと、純粋に飲みたい酒を頼めない、
自分のペースで飲めない、
常に何か話していなければならない、
その人は好き好んで私の隣や向かい側に座っているわけではない、
など、様々な心の起伏と折り合いをつけなければならない。

飲みミュニケーションというものは否定しないが、
私は仕事に関するあれこれは全部職場で、
しかも正規の勤務時間中に言うように徹底している。
そのためにはコミュニケーションが不可欠であり、
職場の人とは職場で完結できる(させたい)と思っている。
職場の外まで引きずりたくも、引きずられたくもない。

なので、飲まなきゃコミュニケーションをとれない、
飲んでこそコミュニケーション、という考えはない。
その気があれば、いつだってコミュニケーションはとれると。
飲みミュニケーションというものは否定しないが。

飲んで、若手のプライベートなことを聞き出し、
情報を持っているのが良いというような風潮もあるが、
飲まなくても、普段そういう話ができるし、
そもそも若手は中高年の近くには座りたくないのです。
私としてもゲームの話にがんばって付き合う気はない。

というか、職場の飲み会は100%付き合いだろう。
付き合いは重要なことだ。
それも仕事のうちだ。
その仕事には残業代が発生しないし、代休もないが。


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まずはライブのお知らせを。

■日時 2018年10月27日(土)19時
■場所 (旧)岡川薬局(小樽市若松1丁目)
■料金 2,000円(ワンドリンク付き)
■出演(出演順・敬称略)
      ひろみとたつや/激しい雨/mitsumi/市沢光英


思いの外、忙しさがおさまらない毎日。
しかし、やっと巡ってきた(旧)岡川薬局のライブだけに、
残り少ない時間で、なんとか整えてライブに臨みます。
よろしくお願いします。

             ◆

今回はブックレヴュー。
否定的な感想も一部述べているが、
読みごたえのある作品ばかり。

■森絵都「みかづき」(2016年)
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昭和36年に千葉県で小さな学習塾を立ち上げた女性。
次第に勢力を拡大していくものの、
講師間の教育論の違いや家族の確執など波乱万丈で紆余曲折。
子供、孫へと引き継がれていく平成20年代までの学習塾物語。

読書好きの間では非常に評価が高い作品。
ただ長い。必要以上に長い。
そのわりに、経過が見えないまま、突然状況が変わっていたりと
展開上の盛り上がりがなく、肝心なところが薄味な印象。

政府の動きや中教審(中央教育審議会)の答申など
小説ではなく解説になっていて読みにくいところ多し。
内容的には面白いのに、文章が硬く、力みが目立ち、
それを力作と感じるか、ちょっと面倒と感じるかだ。

■辻村深月「かがみの孤城」(2017年)
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部屋の鏡を通り抜けると、そこは城だった。
その城には、自分と同じく登校拒否中の中学生が6人いた。
しかし、どこに住んでいるのかもわからない初対面同士。
そこに城の管理人が現れ、
その城で、あるものを見つけたら、ひとつ願いが叶うと伝える。
ただし、その城に行ける時間は平日の午前9時から午後5時まで。
しかも翌年の3月までの1年限りという設定。

本屋大賞1位をはじめ、数々のタイトルを獲得した作品だが、
中学生の話、しかも相当ファンタジー。
最後まで読めるかなと疑問だったが、
辻村さんの文章はやはり優れている。
文章のなめらかさと展開の巧さで読めてしまう。
そして、どうなっていくのかという興味を途切れさせない。

登校拒否になったそれぞれの事情。
城に招かれた中学生の不思議な関係。
次第に心を通わせていく7人の中学生。
願いを叶えるための「あるもの」を誰も探そうともしない。
常に何か違和感があるのだが、それが逆にミステリアス。
終盤はちょっと「なんでもあり感」をおぼえたが、
素晴らしい物語を描ける方だと、筆者の才能に改めて敬意。

■柚月裕子「凶犬の眼」(2018年)
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広島の田舎の交番警察官と広島ヤクザの物語。
時代は平成2年頃という設定。
とはいえ、これほど正面からヤクザの有り様を描き、
さらに、交番警察官とヤクザが親密になるという設定。
嫌悪感を抱く人も多い内容だと考えられるが、
私はフィクションとして面白く読めた。

柚月さんは近いうちにメジャーな賞を獲得するだろうと
このブログに書いたのは3年か4年前。
しかしその後、2016年の「慈雨」、
2017年の「豪率的にあり得ない」、「盤上の向日葵」と、
私にとっては、何か噛み応えがない作品が続いたが、
この「凶犬の眼」は、冒頭から終盤まで密度と緊張感があった。
私の求めていた柚月ワールドが帰ってきた。

準主役のヤクザの「仁義のある戦い」ぶりと、
主役である警察官の妙な真面目さが、いい味を出している。
警察官の、山村に暮らす人たちとの付き合いの面倒くささも
いいスパイスになっている。
ヤクザものは無理、という方は、まじに無理な内容だと思う。

■近藤史恵「インフルエンス」(2017年)
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大阪郊外の巨大団地に住む小学生の女の子3人。
家庭内暴力、変質者による暴行未遂、いじめなど、
様々な秘密を共有した3人。
それが疑いになり、不安になり、脅迫になり、
心に闇を抱えたまま3人は大人になっていく。

世間ではあまり評価されていない作品だが非常に面白かった。
秘密を共有したがゆえに、あえて音信不通にしたり、
しかし、どこかでつながってしまったり、
そして別の事件へと発展したり、
話の運びが絶妙で、読むのをやめられなくなる。

3人が40代になるまで描かれているのだが、
終盤、筆者にミスリードをさせられていたことを知る。
それが劇的で、読書の醍醐味を味わえた。

              ◆

10月になってから、必ず観ているテレビドラマは、
「まんぷく」と「今日から俺は」の2本のみ。

「まんぷく」。
安藤サクラの女優能力の高さを再認識。
橋本マナミ、女優としての成長が見られる。
今後、別作品でも存在感を示すことができそう。
役柄のせいもあるが、松坂慶子・・・。

「今日から俺は」。
橋本環奈は80年代ヤンキールックがよく似合う。
80年代ヤンキールックはずっと抵抗感があったが、
橋本環奈のヤンキー風情は行き過ぎていなくて良い。
特にドラマの冒頭の「男の勲章」のバックダンスは魅力的だ。
日曜の夜こそ魅力的なテレビ番組があればずっと思っていた。
日曜の夜がちょっと楽しみになっている。
 


お盆は8月13日からだが、曜日の関係で
8月11日土曜日に帰省をした人も多かっただろう。

この時期に見かける好きな光景がある。
駅の近くやバス通りなどで
キャリーバッグを引っ張りながら
おそらくや実家へと向かって歩いている若者を見かけると、
「おお帰ったきたか、お疲れさん」と、
私の地元でもないのに、ちょっと嬉しくなる。

自動車で帰ってきたのではなく、
JRの駅まで家族が迎えに来たのではなく、
タクシーでもなく、
公共の交通機関と徒歩により実家へ向かっていることが
懐かしいような愛おしいような気持ちになるのだ。
まあ方法以前に、勤務先の土地で色々とありつつも、
毎年お盆に帰ってくることに好感を持っている。

実家に帰ったら帰ったで、不自由だし、それでいて暇だろう。
しかし無駄じゃない。
帰ってきたこと自体に大きな意味があるのだから。

思えば、「寝正月」はよく聞くが、「寝盆」は聞いたことがない。
私の場合、昼寝は冬より夏の方が気持ちいいが。

                        ◆

今回はブックレヴュー。

■呉勝浩「白い衝動」(2016年)
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主人公は小中高一貫校のスクールカウンセラーの女性。
「人を殺してみたい」と相談に来た男子高校生、
女子高生を監禁、強姦の罪で服役した男、
どこかしっくりいってない夫、
そうした人々の動向とともに物語は進んでいく。

思春期、殺人衝動、服役後の受刑者の心理などを、
学術的な視点からかみ砕いて描いている、
説明や解説っぽくなっている箇所もあったが、
内容的にはなかなか面白かった。

ずっと不穏な雰囲気があり、かつ、どこにも着地しない。
モヤモヤ感とともに読み進め、読み終わることになる。
ドラマチックではないし、共感もしないが、
読み物としては十分に楽しめた。

■中島恵以子「婚活食堂」(2018年)
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東京で小さなおでん屋を営む50代の女性。
若い頃は占い師としてテレビや雑誌でも活躍。
その後、直感でおでん屋に転身し成功。
また、今もその人の将来がぼんやり見える特殊な能力を持つ。

おでん屋の常連は、結婚したい女性や子供を結婚させたい親など。
そうした常連が会社の同僚や仕事で知り合った人などを連れてきて、
カップルが誕生するなど、合コン居酒屋のテイスト。

おかみの言葉遣いが妙に上品なこと、
常連はほとんど女性なのに最低でも週に一度は来店すること、
おかみのバックには謎のセレブ男がいることなど
不思議な設定、違和感、疑問も色々とあるが、
それも含めて面白く、文章が滑らかで実に読みやすい。
展開や情景は深夜のテレビドラマになったらヒットしそうな内容。

■真山仁「ハゲタカ/上・下」(2004年)
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バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代初めの
不良債権処理や企業再生の物語。
過去にテレビドラマにも映画にもなり、
現在も綾野剛主演でテレビドラマとして放送されている。
ちなみに現クールのドラマで毎週観ているのは、
「ハゲタカ」と「dele(ディーリー)」の2本だ。

小説の「ハゲタカ」は、テレビ、映画よりも
クールでスタイリッシュで華やかな感じがする。
お酒、女性、ピアノの場面が映像に比べて多い。

駆け引き、水面下の交渉、裏工作など、
傾いた企業を奪っていく様は壮絶ながら、
読み手をぐいぐい引き込んでいく。
ただ、下巻の中盤あたりから、
人物の絡み方や企業争奪の動きが複雑になり、
大長編ということもあるが、読み疲れをした。

現在放送されているテレビドラマの綾野剛の演技がすごい。
激しい形相で声を張り上げる場面が多く、
その大きな演技は勧善懲悪の時代劇を見ているようだ。
それはそれで面白いし楽しめる。

■内館牧子「終わった人」(2015年)
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大手企業の要職についていたが、
定年が近づいた頃に子会社に出向させられ、
そのまま定年退職をした男。
退職後は旅行でもと考えていたが、
妻には相手にされず、再就職もできず、主夫も務まらず、
スポーツジムに通って、暇つぶしのような毎日を過ごす。

日中のスポーツジムはリタイアした老人だらけで
その仲間入りをしたことにショックを受けるが、
俺はこんなところでくすぶっている人間ではないと
プライドだけは高く、しかしそれが仇となって、
現実と折り合っていけない。

主人公の尊大ぶりに辟易するが、
それにも増して妻の横柄さや自己中心ぶりがひどい。
離婚をしないどころか、離婚を考えることすらしない夫が
大いに疑問というか、バカなのかとさえ思えた。
家庭のことを一切してこなかった退職夫のなれの果てだ。

後半は、主人公が反省し改心していくモードになるが、
妻は相変わらずひどい。
こういう妻のキャラをつくった著者の内館さんの執念のような
ものさえ感じた。
言葉遣いが適切で非常に読みやすく、
さくさくと展開するので、短時間で読み終えた。

結婚って何だったのか、何のために働いてきたのか。
そんなことを考えさせられる人も少ないだろう作品。
自分のためだったと思えれば何も問題のない話だが。

                        ◆

今日の夕方、岩見沢市内のスーパーの駐車場でのこと。

私の背後で、男性同士のこのような会話が聞こえてきた。
「おお、どうも」
「あれ?メガネ変えたのかい?」
「ああ、そうだ」
「ずいぶん、いいのしてるね」
「ハズキルーペだ」
「ハズキルーペかい」

こんな会話を聞いてしまったら見ないわけにはいかない。
60歳くらいの方だった。
ハズキルーペをしているだけでオーラが発生していた。
世の中の文字は小さすぎて見えな~い!!など
完全にぶちぎれた末に購入したのだろうか。

メガネだけでこれだけパワーがあるのは、
1985年頃の吉川晃司の
スキーゴーグルから
レンズだけをはずしたようなサングラス以来だ。

ところで、ハズキルーペは小さな文字を読んだり、
パソコン向けではなく、タウンユースでもいけるのか。
よくわからないが、渡辺謙さんばりに言ってみたい。
「すごいぜ」
 


7月8日にTHE HEART OF STONEの11枚目となる
オリジナルアルバム「crossover」をリリースした。

そして今週末は帯広でライブだ。
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ずっと実現させたいと思っていた帯広でのライブ。
昨年は一度も実現しなかった。
やっと行ける。
ほんとうに嬉しい。

出演順は3番目
出演予定時刻は19時30分からです。
よろしくお願いします。
              
今回はブックレヴュー。

■辻村深月「青空と逃げる」(2018年)

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小学生が川で海老をとっているシーンから始まる。
やがてその母親が登場する。
親子と自然という組み合わせは物語に入っていきにくい。
長閑でモヤモヤするような描写にハズレだったかと思いつつも、
せめて30ページくらいまではと読み進めていくと、
辻村さんの文章力のなせる技なのか、
次第に物語の中へと誘導され、
やがてはページをめくる手を止められなくなった。

劇団員の夫が交通事故で入院。
その車には有名女優が同乗していた。
女優はしばらくして自殺。
入院していた夫は病院から逃亡。
マスコミや女優の事務所関係者が家に押し寄せ、
妻と子供は逃げるように高知県や大分県などに移動しながら
地域の人たちに支えられる物語。

逃亡先では子供を小学校に通わせず、
母親は仕事を見つけるも、住まいは質素でお金もない。
やっとその地域になじんだ頃に追手が近づいてきて移動。
常に薄曇りの息苦しさを漂わせながらも、
どうなるの、どうしてなの、の疑問を絶妙な加減をキープし、
読み甲斐のある作品に仕上がっている。

羽田圭介「成功者K」(2017年)
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売れない作家だったKが芥川賞を受賞。
それによって状況は一変する。
テレビ出演が増え、それを上手くこなし、
やがてバラエティ番組を中心にオファーが殺到する。

小説を書くより簡単にお金を稼げる。
知名度があがり小説の売れ行きもアップ。
さらには複数のファンの女性と交際し、
小説も書かずに成功者生活を満喫する。

一方で成功者慣れしていない面も面白く描いている。
テレビの楽屋で出される弁当はいつも二人前を食べたり、
新幹線のグリーン車に乗ったら、
レッグレストを使わなければもったいないと思ったり。

しかしそういう生活は破綻するものだ。
マンネリ感、恋愛のもつれ、喪失感、無力感、
そうした様々なダメージがKを蝕んでいく。
あげく、芥川賞を受賞し成功者となり、
奔放に振る舞う自分をモデルに小説を書き始める。
ブレーキなしに突っ走っていく展開。
女性問題に辟易しつつも、面白く読めた。

五十嵐貴久「リカ」(2002年)
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妻子のあるサラリーマン。
家庭に特に不満やトラブルがあったわけではないが、
同僚から「楽しいから」と勧められ出会い系サイトへ。
知らない女性と言葉のやりとりを楽しむ程度の関わり方だったが、
おかしな女性に付きまとわれるはめに。

会ってほしいとしつこくメールを送られ、
やがて待ち伏せされ、職場や家族にも忍び寄ってくる。
サラリーマンの生活は崩れていき、
最終的には命の危険にさらされる。

出版されたのが2002年。
ということは執筆したのはそれより前であり、
その頃、出会い系サイトはそれほどメジャーでは
なかったようにも思うわけで、
当時は先進的だったかもしれない。

つきまとう女性の気色の悪さの描写が圧倒的。
ただ、この女性はなぜこんな人物になってしまったのか、
どうやって生計を立てているのかなど背景が見えないため、
もやもやするところはあるが、
結末を知りたい気持ちは高温キープでエンディングまで運ぶ。

小玉ユキ「坂道のアポロン」(2007年-2012年)
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単行本では9巻で完結の漫画作品。
1966年、東京から九州の高校に転校した男子生徒。
学業成績は極めて優秀、かつ品のある身なり、
ところが家族関係に問題を抱え、
殻に閉じこもりがちな性格と人づきあいが苦手なせいで、
学校では孤立していた。

そんな中、やさしく接してくれる律子と、破天荒な千太郎という
二人のクラスメイトの存在、そしてジャズとの出会いによって、
次第に心を開いていく。
瑞々しい友情と恋愛とジャズの物語だ。

特に律子がいじらしくて、かわいい。
彼女のお気に入りのジャズ・ナンバーが
SOMEDAY MY PRINCE WILL COME/いつか王子様が」である
という設定がぴったりで、
この作品を読み、改めてこの曲を聴いてみたら、
素晴らしく良い曲に思えた。

終盤の8巻、9巻は展開が早くなり、
やや強引にエンディングを迎えたのは残念だったが、
序盤から7巻あたりまでは、
過程や心理描写を丁寧かつ濃密に描き、
特に5巻、6巻あたりの、高校2年生の文化祭のシーンは感涙。
キュンとなって、じーんとする場面の多い素敵な作品だ。

                     ◆


瑞々しく、清々しい気持ちを呼び起こす作品はいいなと思う。
それは私自身が瑞々しさや清々しさを失ったから思うのだろう。
だからといって若い頃に戻りたいとは思わない。
今が一番だと、毎年思う。

若いうちはやりたいことが何でもできると
中学生の時に西城さんからメッセージをいただいたが、
行動範囲が狭く、お金もなく、知識に乏しく、
若いうちはやりたいことがあまりできなかった。

しかし不自由さゆえに頑張れたことや出会ったことも少なくない。
なので今もあえて不自由状態を作ってみることもある。
どういう環境を作れば、あるいは、どういうアプローチをしたら
満足した気持ちになるのか、ずっと実験しているような感じだ。
そんな日々は幸せといえる。
選択肢があるのだから。

この先も初めて経験する年齢ばかりであり、
心も身体も変化していくし、社会も変化していくので、
変わらない毎日などあり得ない。
どうやって年をとって変わっていくのか楽しみでもある。

年をとりたくないと思ったら、その人は確実に年をとってるし、
つまらない大人になりたくないという大人は
大体つまらない大人になっている。
そしてそのことに気づいていない。
 


まずは、私のソロ活動「激しい雨」のライブのお知らせを。
■月日 2018年6月16日(金)19時30分
■場所 とまと畑(札幌市中央区南4東3)
■料金 1,500円(ワンドリンク付き)
■出演(出演順)
       1930 須藤トモエ
       2000 ジュン
       2030 激しい雨
       2100 Spanish.Glow
       2130 円軌道の幅

よろしくお願いします。

今回はブックレヴューと「趣味」について。

■山白朝子「私の頭が正常であったなら」(2018年)
山白
インパクトのあるタイトルに興味を持ち読んでみた。
8作の短編が収められている。
いずれもソフトにホラーでSFチックで、
ひんやりとした恐ろしさがじわじわと迫ってきつつも、
つかみどころがないフワフワ感が醸し出されている。
エンディングは「ふ~ん、そうなんだ」と
妙に平常心に戻らせる不思議な空気感がある。

各作品に共通しているのは「喪失」。
死であったり、別れであったり、喪失の形は様々だが、
その悲しみや苦しみを乗り越えられず、
負の連鎖をしていくさまがページをめくらせる。
内容は強烈だが、味付けがあっさりしているせいか、
いい意味で後味が薄い。

■伊坂幸太郎「残り全部バケーション」(2012年)
残り全部
主人公は何らかの悪事をはたらいている人物を対象に、
故意に交通事故を起こさせる「当たり屋」などの裏稼業に
身を置いている。
つまりは主人公も犯罪者であり感情移入はできないが、
真っ当に人助けをしたりする。
登場人物はほとんどが風変わりで、いわばハチャメチャ。
ところがまとまりのあるストーリーに仕上げてしまう
伊坂メソッドを楽しめると思う。

読みたい本がなくなると、伊坂さんの未読作品を読むことが多い。
私の読書は、概ね4冊に1冊はつまらなくて途中で読むのをやめ、
完読した残りの3冊のうち1冊は、
なんだかなぁという感じでブログの記事にはしない。
そういう点で伊坂さんの作品にハズレはない。

相変わらずスタイリッシュな文体で、独特の気高さがある。
2000年代の作品に比べると、
シャープさや強引さが控え目になった感もあるが、
オール・ユー・ニード・イズ・ラブな佳作だと思う。

■朝倉かすみ「たそがれどきに見つけたもの」(2016年)
たそがれどきに
40代、50代の男女の日常生活の中にある
ほんのちょっとした特別なことを題材とした6つの短編で構成。
一日の時間帯で例えると、たそがれどきを迎えた年代ならではの
ほろ苦さ、切なさ、楽しみ、勘違いなどを
微笑ましく、やさしい目線で描いている。

人生のたそがれどきは、朝の希望や昼間の躍動が恋しくなったり、
寒くて暗い夜への不安があったりで惑わされるばかり。
そんな心情をちょうどいい丁寧さで表現しており、
その年代にある私にとっては、「わかるわ~」という箇所も多く、
落ち着きがありつつ芯のある文章と相まって非常に楽しめた。

■小山宙哉「宇宙兄弟」(2008年~)〈漫画〉
宇宙兄弟
宇宙飛行士の弟と、宇宙飛行士を目指す兄の話。
現在も「モーニング」にて連載継続中。
大ヒット作であり、映画化もされ、
なぜこのタイミングで、とは思いつつも、
第1巻から第20巻まで読んでみた。
想像とはまるで違う実直さとファンキーぶりに
どんどん引き込まれた。

宇宙飛行士になることの大変さを知った。
自分からあまりに遠い世界のことなので考えたことがなかった。
狭い空間、しかも無重力状態での長期間の共同生活。
国籍や性別や年齢が異なるメンバー。
学力、体力、精神力、人間的な強さと奥行き。
世界で選ばれた人しか宇宙飛行士にはなれないことに
今更ながら気づかされた。

意外にもしっかりと伏線が張られている展開。
面白さを引き出す巧みな前フリ。
予期せず発せられる名言の数々。
困難に立ち向かいつつも、コミカルな場面を絡めていく展開。
登場人物のキャラクターも魅力的に棲み分けられ、
間や表情の変化など、漫画ならではの面白さにあふれた
素晴らしい作品だ。

                         ◆


誰かに「趣味は何か」と聞かれたり、
職場関係の書類など何かに趣味を記入しなければならないとき、
「読書」にする。無難だからだ。
書いても(言っても)大丈夫というときは
「音楽活動」もプラスする。
「AMラジオ」、「遠足」、「無人駅」、「坂道めぐり」
などは触れない。
他者に伝える私の趣味などどうだっていい。
趣味は純粋でありたいし、
そのためには一定程度密やかにしておきたい。

私の趣味ラインナップはいずれも、
それをやること自体が目的であり、
それをやるとこういういいことがあるとか、
何かの役に立つというものはない。
そう考え始めたら趣味が不純になり、つまらなくなる。
理解してほしいとか、何かのために、
と思ってやっていることは私の物差しでは趣味じゃない。
だから趣味を大切にしたい。



まずはライブのお知らせから。
20180519ライブチラシ
よろしくお願いします。

                       ◆
今回はブックレヴューです。

砂田麻美「一瞬の雲の切れ間に」(2016年)
一瞬の    

小学生の男子児童が亡くなった交通事故。
児童の母親、事故を起こした主婦、その主婦の夫、
夫の不倫相手など、交通事故に関係した様々な人々が、
交通事故を境にして生活がどう変わったか、
心はどう動いたのかを、抑制の効いた文章で丁寧に描いている。

ざっくり言えば、登場人物は皆、変化についていけていない。
なので、全体的にもやもやしていたり、重苦しかったりで、
雲の中にいるような心情で過ごしている。
しかしながら、ちょっとした光も差してくるような展開もある。
それで「一瞬の雲の切れ間に」とのタイトルにしたのだろうか。

ドラマチックさはなく、静かに展開していくのだが、
ふと強烈に切なくさせるセリフがあったり、
上手な表現をするなあと感心させられたり、
小説だからこその醍醐味を味わえる。

ただ、交通事故を起こした主婦の夫の不倫相手の話から始まるのは
構成上どうなのかと。
しばらく感情移入ができず、作品に入っていく過程における
不必要なハードルに思えた。

遠田潤子「オブリヴィオン」(2017年)

オブリヴィ

遠田さんの作品は、辛い境遇に縛られ、自己嫌悪が激しく、
ネガディヴ思考がしみついている主人公であるバターンが多い。
本作もまさにそれだ。

妻殺害で服役していた男が出所。
仕事に就くが、刑務所帰りであることで嫌がらせを受け、
兄からは裏稼業を手伝えとしつこくつきまとわれ、
亡くなった妻との間の娘からは軽蔑されるなど、
出口の見えない陰鬱な日々を過ごす。

そんな中、妻殺害のきっかけにもなった娘の出生の謎が
明らかになっていく。
希望を持つことを怖がり、
あきらめ癖がまとわりついている主人公が
再生に向けて根性を見せる。
予知能力が軸になって展開したり、
人間関係があり得ないほど無茶苦茶なところはあるが、
とにかくページをめくらせる作品だ。

西野亮廣「革命のファンファーレ」(2017年)

革命の

筆者はお笑いコンビ「キングコング」のメンバーであり、
絵本作家など様々な仕事や活動を精力的に行っている。
今年の初め、晴れ着業者の逃亡事件により、晴れ着を
着られなかった人を対象に成人式を開催したりもしていた。

本作は、クラウドファンディングにより1億円を集めて
制作した絵本が大ヒットをしたことを軸に、
ざっくり言えば、ビジネス本のような内容である。
語り口調に近く、文字数も多くないので、さらっと読めてしまう。

成功した人だからこその理論だよね、と思える箇所が
多かったものの、下手に隠すより、思いきりネタバレさせた方が
それを見た人は行動に移すとか、
広告、宣伝は商品を買った人にさせる仕組みや、
分業の効果的な活用など、なるほど、と感じる点も多々あった。

不倫をしても、ゲスの極み乙女の男性は音楽活動ができたが、
ベッキー氏は活動できなくなった。
なぜならベッキー氏は人気ではなく認知度が高かったからであり、
好感度と信用は別物であると語っているのも面白かった。

それにしても、筆者はいつのまに
たくさんのフォロワーを増やしたのか。
SNSによるところが大きいらしいが、
SNSをほとんど活用していない私は
世の中の進化に乗り遅れているのだろう。
しかしそのことで悩んではいない。

乃南アサ「しゃぼん玉」(2004年)

しゃぼん

窃盗などの犯罪を繰り返し、逃亡生活を送る若者。
彼はヒッチハイクをしたトラックの運転手と揉め、
宮崎県の人里離れた山中で夜中に降ろされてしまう。

どこにいるのかもわからないまま歩いていると、
バイク事故で動けなくなっている老婆を発見。
荷台に老婆を乗せ、老婆の自宅まで送る。
行き場のない彼は、老婆の「ゆっくりしていけ」の言葉のまま、
老婆の家に居候するはめに。

老婆の家は、宮崎県に現存する椎葉村(しいばむら)
にあるという設定。
市街地から遠く、住んでいるのはお年寄りばかりという環境。
しかし、誰ともかかわらず、自暴自棄な生活を送っていた
彼にとって、手作りの田舎料理は新鮮で、
何かと声をかけ、世話をしてくれる地域住民も
最初はうざったく思ったが、次第に心を開いていく。

ただ、犯罪を繰り返して逃げ回っている身であり、
その村を出て行こうと考えるが、
地域に溶け込んでいくにつれて、出て行きにくくなる。

老婆のやさしさ、地域住民の温かさ、
それに触れて変わっていく若者。
文章から山の匂いがしてくるような描写も相まって、
非常に清々しいストーリーだ。
2017年には映画化もされたようで、
DVDでもぜひ見てみたい。

しゃぼん玉のように消えてなくなり、
そこにしゃぼん玉があったことも忘れられるような、
そんな人生の終わり方はある意味理想でもある。
変なものや厄介なものを残して死んでしまうのだけは
避けたいと。
それならむしろ、まるごと消えてしまえたらいいだろうなと。
しかし、それが一番難しい。



まずは次のライブのお知らせを。

■日時 2018年3月17日(土)20時
■場所 LEGENDS(札幌市白石区)
■料金 1,500円(1ドリンク付き)
■出演(出演順・敬称略)
    mitsumi20:00)/激しい雨(20:40)/
    GOODSUN21:20)/MAKISHOJI22:20

よろしくお願いします。
           
さて今回はブックレヴュー。
立て続けにハズレの小説にあたったため、
先月後半から久しぶりに漫画を読んでみた。
良い作品に出会えた。

まずは小説から。

柚木麻子「BUTTER」(2017年)
 201803_02.jpg   

交際している男性が連続して不審な死に方をしたことで逮捕され、
収監されている女性と、その事件を追う週刊誌の女性記者。
収監女性は、魅力に乏しい容姿ながら、
品のある言動と料理によって、複数の男性を手玉にとった。

女性記者は、事件の真実と収監女性の実像をあぶり出すため、
刑務所で面会した際、オススメの店を聞き出しては訪ねるなど、
収監女性の嗜好に沿った生活を試みる。

痛い女の具体例や登場人物の心情の考察などは巧く描いているが、
いかんせん女性記者のキャラクターが捉えにくい。
女性記者の高校(大学)の親友を
頻繁に登場させているのも必然性に乏しく、
ストーリーの幅を無駄に広げ、焦点がぼやけた印象。
結果、文字を不必要に増やしてしまい、
読む勢いが削がれた気がした。

柚木さんの作品は、さくっとしていて読みやすく、

ストーリーをうまく転がし、きちんといいところに落とす。
すぐにでも、よく知られた賞をゲットするだろうと思っていたが、
最近の作品は、タイトルに寄せるための場面を
やや強引に盛り込ませているようなところがあり、
淀みができて、流れを悪くしているような。
この作品も、もっとサクっと、コロっと展開させれば、
と感じた。
ただ、前半から中盤にかけて、逮捕女性の嗜好をなぞることで、
心も身体も次第に変わっていく記者の様子は面白い。

野田サトル「ゴールデンカムイ」〈漫画〉

 201803_03.jpg

私のバンドのドラマーであるオダ氏がおススメしていた作品。
TSUTAYAで第10巻までレンタルして読んだ。
ちなみに第12巻まで発行されており、
現在も週刊ヤングジャンプで連載中。

明治時代末期の北海道を舞台に、アイヌが遺した金塊を探して、
日露戦争帰りの元軍人、刑務所帰りの元囚人、アイヌ民族などが、
戦い、協力し、旅をする物語。

第1巻から第3巻くらいまでは、
金塊争奪を目的とした硬派な描写や緊張感のある展開が多いが、
巻が進むに連れて、コミカルな描写を差し込む場面が増えたり、
登場人物それぞれのエキセントリックな個性を前に出してくる。

敵も味方も、善人も悪党も、
相当クセの強いキャラクターに作り上げている。
ただ、どこか可愛げがあり、
ひどいことをしているのに嫌悪感がない。
それぞれに魅力的かつ印象的で、物語をさらに面白くしている。

アイヌの文化や生活のガイドブック的な色合いもある。
それをストーリーの中にうまく溶け込ませることによって、
奥行きが出て、コクが深まっている。
特に狩猟も含めたアイヌの食生活は驚きと感動がある。
この作品を読むことで、アイヌへの興味や関心が高まる人は
少なくないだろう。
また、漫画だからこそ、強く、そして明確に伝わる良さがある。
バイオレンスでコミカルなのに、不思議な感動がある。

東村アキコ「かくかくしかじか」〈漫画〉
 201803_04.jpg

毎週聴いているSTVラジオの番組「しゃかりき!ようへい商店」。
パーソナリティのようへい氏は、毎週おススメの本を紹介する。
その中で私の琴線に触れたのがこの作品。
岩見沢市立図書館のホームページで検索すると、
全5巻が蔵書されているではないか。

作者自身の高校時代から現在までを描いた
ノンフィクション的作品。
高校時代に町外れの小さな絵画教室に通い始める。
そこの講師のスパルタぶりにうんざりするが、
結局、大学生になっても、ニートになっても、
漫画家になっても通い続けた。

作者は宮崎県屈指の進学校を卒業後、
難関校である金沢美術工芸大学に進学。
大学時代は有り余るほど時間があったのに、
真剣に絵に取り組まず、気分に任せてだらだらと過ごす。

卒業後は、就職するでもなく、大学院に進むでもなく、
地元宮崎に帰り、電話オペレーターのバイトを経て、
漫画家になる。

多くの人が思い当たるふしがあるような若き日のうぬぼれや、
あの頃なぜああいうことができなかったのか、という後悔。
わがままで、薄情で、いい加減だった自分。
大人になった今だからわかることを、
丁寧に、コミカルに、せつなく描いている。

スパルタ講師の言葉を思い出し、
絵を描くことが使命であると締めくくるエンディングには
素直に感動。
胸が熱くなった。

              


成功するための努力や、成し遂げた根性などは、
素晴らしいことだし敬意もある。
一方
、成し遂げられなかった悔しさや、
どうしてあんなことをしてしまったのかという後悔もまた、
時間が経てば、美しく、あるいは愛おしく思える。
そう感じられる年齢になったのか。

時間が解決してくれる、とまでは言わないが、
時間が解放してくれることはたくさんある。
もう少し辛抱をしたら、楽になれるかも。


やや冬バテ状態にある。
毎年経験しているのに、寒さと雪への対応に疲れている。
なのに仕事をしなければならないし、
健康のために無理しなければならないこともある。

冬を毎年経験しているとはいえ、
住んでいる場所や、取り巻く人間が変われば、
その環境における初めての冬ということになるし、
何より、年をとっていく。
45歳で経験する冬と、50歳で経験する冬は感じ方が異なる。
そういう意味では、毎日毎日が初めての経験になる。
いずれにしても、冬疲れ、はじめました。

今週末には、初めてニセコ町でライブをする。
〇日 時 2018年2月24日(土)時刻未定(18時頃から)
〇場 所 JRニセコ駅前「ニセコ中央倉庫群」
〇料 金 千円
              (又は千円相当の飲食物を持参し会場にいる人に提供)

〇出演者 不明

ニセコ中央倉庫群では、ほぼ毎月定期的にライブイベントを
開催しており、一度参加してみたいと思っていた。
岩見沢からニセコまでは車で3時間以上かかるし、
演奏するのは3曲のみだが、
新しい経験と刺激を得られるのではないかと期待している。

さて今回はブックレヴュー。
やや辛口寄りのコメントになっているが、
面白いか、面白くないかと聞かれれば、
迷いなく面白いと言える

■上原善弘「路地の子」(2017年)
 20180221_01.jpg
 タイトルにある「路地」は被差別部落のこと。

 大阪府松原市にある路地で食肉解体・卸売業に従事した
 上原龍造氏を描いたフィクション。
 筆者はその息子。

 上原龍造は昭和24年生まれ。
 貧困と部落差別の環境で、手に負えないワルになり、
 小学校へは途中から行かなくなる。

 やがて、食肉解体業に身を投じる。
 ヤクザからの入会オファーは幾度となくありつつも、
 群れることを好まず、クスリを嫌悪。
 右翼、部落解放団体、政治団体などと対峙し、
 ときに苦杯をなめながらも、高度経済成長の中、
 部落の利権を得て経営者に成り上がっていく。


 
読んでいて最も強く感じたことは、
 昭和40年代、50年代は実に激しい時代であり、
 部落という環境のせいもあろうが、
 覚醒剤、ヤクザ、ナイフ、金、暴力、愛人、独占、偽装など、
 現代であればコンプライアンスの面で大問題になることや、
 まともに犯罪であろう暴力事件も、
 警察沙汰にはせずに個々の問題として淡々と流されていくこと。

 
部落差別があったことは随所に書かれているが、
 具体にどういう差別を受けたのかはほとんど書かれていない。
 ただ、路地から脱出したい欲望にあふれた人が多い反面、
 結局は路地に戻ってくるなど、路地への愛着が強い人も多い。
 ちょっと別世界の興味深い内容だった。

■遠田潤子「アンチェルの蝶」(2011年)
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主人公は大阪の片隅で居酒屋を営む中年男。
限られた常連客しか来ないうらぶれた居酒屋だ。
ある夜、中学時代の親友で今は弁護士となった男が
小学生の女の子を連れて店に来た。
この子をしばらく預かってほしいと言って、
500万円を置いて立ち去る。
この女の子は誰なのか。
男はなぜ消えたのか。

その日から、中年男と女の子の不器用な毎日が始まる。
いきなりの他人との、しかも娘のような年代の小学生の共同生活に、
戸惑い、ぶつかり、すれ違う。
とにかく中年男のぶっきらぼうぶりと負け犬意識がひどい。
ストーリー以前に、こういう男が20年間も、
料理を作り、客商売をしていること自体がファンタジーだ。

冒頭で現在の状況を示し、次第に過去を明らかにして、
真相に迫っていく展開が功を奏している。
登場するのは、ひとくせ、ふたくせあるバックストリートな人物
ばかりで、薄暗く、埃っぽい映像ばかりが浮かび、
なにひとつ愉快になれないが、読みモノとしては十分に楽しめる。
もっと読まれていい作家だと思う。

■今村昌弘「屍人荘の殺人」(2017年)
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夏休みに山荘へ出かけた大学生約10人。
山荘の近くではロック・フェスが開かれていた。
その会場で細菌注射をうたれた観客がゾンビ化し、
瞬く間に感染は拡大。
一部のゾンビは山荘に押し寄せる。
大学生達は山荘に立てこもり、ゾンビの襲来から身を守るが、
外部から遮断された山荘内で、なぜか殺人事件が起こる。

前半、一気にたくさんの登場人物が勢揃いするため、
しばらくは、誰が誰だかわからないまま読み進める。
途中で改めて、登場人物をおさらいする場面があり、
そこで輪郭がはっきりする。この演出は助かった。

ゾンビという外部の敵と、山荘内に殺人者がいるのでは
という内部の敵とに挟まれる形で展開するのだが、
大学生の恐怖感や緊迫感が薄く、
また、山荘の構造が文章だけではなかなか見えず、
全体的にふわっとしたまま読み終えた。
もう一歩踏み込んで、腑に落としてほしいのだが、
喉元で停滞するような感じが続いた印象。

2017年のミステリ界で大きな評価を得た作品だが、
思いの外、ライトなテイストだった。
ただ、ライトだから良いとも言えるし、
ゾンビの絡ませ方も面白かった。
主人公にもう少し魅力があればなと。

■増田俊也「北海タイムス物語」(2017年)
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 北海タイムスは1998年に休刊となった北海道の新聞。
 1960年代から、朝日、読売などの全国紙が道内に進出した
 ことなどにより次第に部数が低下し、
 111年の歴史に幕を閉じた。


 特に90年代に入ってからのタイムスはページ数が少なく、

 ずいぶんと薄くなってしまったなと思った記憶がある。
 新聞紙の色は、北海道新聞より白っぽかったことを覚えている。

 本作は、経営が破綻しそうな時期に入社した大学新卒の男性の
 約1年間の仕事ぶりを中心に描いている。
 筆者は実際90年代にタイムスで働いた経験があることから、
 ほぼノンフィクションなのかと思いきや、
 何かとハチャメチャで、これが現実ならば、
 会社が破綻する前に、経済的にも身体的にも精神的にも
 社員が破綻するだろう内容だった。
 なんとなく漫画を文章化したような雰囲気だった。

 幹部社員も若手社員も年収200万円。
 長時間労働が当たり前で、それでいて、毎日のように
 夜中の2時過ぎから飲みにいく。
 金銭的にあり得ない話だ。
 職場は完全に体育会系のノリで、
 今でいうパワハラも当たり前に横行している。
 何度もどんよりした気持ちになった。

 ただ、タイムスへの郷愁はある。
 地下鉄西11丁目駅の近くにビルがあった。
 どこまでノンフィクションなのかは不明だが、
 晩年のタイムスは壮絶だったことが想像できるし、
 90年代のイケイケ感も効果的に盛り込ませている。
 それに比べれば、今は随分とクールで整然としていると思う。
 90年代ワンス・アゲイン志向の中年は多いかもしれないが、
 私は今の方が生きやすい。




北海道の人は皆、冬になると居間の温度を高くして、
Tシャツで過ごしたり、アイスを食べる、
という話をメディアで耳にすることがあるが、
そんな人に会ったことがない。

というか、私が寒がりなせいもあるが、
冬に「ちょっと暑すぎないか」という場所にいた記憶がない。
特に冬の飲食店はどこも寒いし、常に寒い。
飲食店では、コートやダウンジャケットの腕の部分を腰に巻き、
エプロンのような状態で過ごすことも珍しくない。

これに似た状況として、
北海道の人は皆、シメパフェを食べる、というのがある。
私が一緒に飲む相手の業界や年齢が限られているせいもあるが、
シメパフェに行く、あるいは行ったことがある、
という人に会ったことがない。

事実、パフェの店は増えているらしい。
自然発生的ではなく、作為的な匂いがするムーブメント
ではあるが、これによって飲食業界が活性化するならば、
それはそれで結構なことだ。

ただ考えてしまうのは、シメパフェ愛好者は純増したのか、
それとも、別のもので締めていた人がパフェに移行したのかだ。
つまり、ごく一部の人達によるシメパフェの盛り上がりによって、
客足が減ったジャンルがあるのではないかということだ。
それは気になる。

しかし、もっと気になるのは、
「北海道の人は皆、シメパフェを食べる」という、
ケンミンショー的な情報操作により大括りにされた道民の中に、
私も含まれていることだ。
納得できるはずがない。
言いたかったことはそれだけだ。

今回はブックレヴュー。

                     ◆


■原田マハ「本日は、お日柄もよく」(2010年)
  
20180119_02.png
 幼なじみの結婚披露宴で聞いたスピーチに感動したことを
 きっかけに、スピーチライターという職業を知り、
 やがてスピーチライターに転職した女性の話。
 最終的には衆議院議員選挙に立候補した人の選挙演説まで
 書き上げてしまう。

 スピーチ原稿を作る苦労や、報酬や仕事依頼の継続など、
 職業としてやっていくことの大変さがあまり書かれておらず、
 順調に進みすぎている印象はあるものの、
 ちょっとしたスピーチのコツが書かれている点は面白かった。

 例えば、司会者がスピーチをする人を紹介した直後に、
 「ただ今ご紹介にあずかりました〇〇です」で話し始めるだけで
 テンションが下がる、というくだり。
 感謝とお願いを繰り返してばかりの挨拶はダメ、という指摘。
 全くそのとおりだぜ、と素直に同感できた。

 なお、この作品の宣伝文句として、
 「言葉の持つ力に感動!」、「スピーチの度に泣けました」等、
 読者の賞賛の声が数多あるが、その点では私に響かなかった。
 ちょっとくどいスピーチが多かったかなと。
 ただ、読み物としては十分に楽しめる。

■横田増生「ユニクロ潜入一年」(2017年)
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 ユニクロの労働実態を暴くべく、
 都内のユニクロ3店にアルバイト勤務をしたライターの潜入記。
 
 人件費抑制のため、お客さんが少ない日は
 予定の勤務時間より早く帰させられること。
 一方、忙しい日だと当日に残業を求められるが、
 その際に、「今日のびれる?」や「ストレッチできる?」との
 ユニクロ用語で聞かれること。
 トップダウン色が濃すぎて、
 悪い意味で宗教的な雰囲気があること等々、
 潜入しなければ知り得ない面白い情報が随所にある。

 ブラック企業ぶりはあまり感じなかった。
 世の中的にサービス残業は別に珍しくないし、
 突然の残業だって当たり前にある。
 下の意見が全く取り入れられないことや、
 理不尽さや閉塞感も、どんな業界にだって大なり小なりある。
 むしろユニクロは、飲み会がほとんどないことや、
 企業としての社外行事が全くないなんて
 めちゃくちゃいいじゃないかとさえ感じた。
 
 そして何より、50歳過ぎの筆者が
 アルバイトにトライしたことに感心する。 
 ブラックぶりを暴こうと潜入したが、
 商品を段ボールから取り出す作業から始まって、
 陳列、レジうちなど、少しずつ仕事を覚えていくのが
 楽しかった、と書かれている場面は、
 なぜか私も嬉しくなったから不思議。

 これを読んだら、レイアウト、陳列状態、店員の階級、
 店員の意識はどこに向かっているかなどが気になり、
 なんとなくユニクロに行きたくなると思う。

■今村夏子「星の子」(2017年)
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 新興宗教にのめり込んだ両親を持つ少女の、
 小学生から中学生にかけての物語。

 両親の奇行を恥ずかしく思いながらも否定はしない彼女。
 一方、クラスメイトからは距離を置かれ、
 教師も悪い意味で特別な目で見ている。
 親戚も宗教から引き離そうと説得する。
 彼女の心にも多少の波は立つ。
 しかし、そういうものだと思って平然と過ごしている。

 全体的に心理描写がぽわーんとしており、
 肯定なのか否定なのかぼんやりしているところが多いが、
 それが逆に等身大テイストを醸し出し、現実感があった。

 宗教にのめり込んでいる親を持つ子も、そうでない子も、
 思春期を迎え、恋をしたり、友達との付き合いに
 苦しんだりする。
 宗教という壁がありながらも、そうした姿を
 ある種平等に描いているのは清々しくもあった。

 後半、教師からのイジメともとれる対応に関して、
 彼女と距離を置いていたクラスメイト達が、
 彼女を励ますような場面がある。
 さらっと通り過ぎるように描いているが、
 最も心に残った場面だ。

■滝口悠生「高架線」(2017年)
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 西武池袋線の東長崎駅から徒歩5分の距離にある
 家賃3万円の古い4戸建てアパート。
 その一室に住んだ人達を巡る16年間の物語。

 その部屋は、次に住む者を退去する者が決めるというルール、
 風呂はないが、シャワーと和式トイレが同じスペースにあること、
 家賃滞納のまま行方不明になった者の家賃を
 行方不明者の親ではなく同級生が払っていること、等々
 エキセントリックな設定や展開が多い。
 
 それでいて実にひょうひょうと語られている。
 ドラマチックさを意図的に消すような淡々とした筆致だ。
 なので、何を描きたいの?と感じるところはある。
 ただ、市井の何気ない等身大の日常をうまく切り取っている。 

 例えば、夕食がてら軽くお酒でも飲もうかと駅前に行ったが、
 なんとなくスーパーでお総菜とビールを買い、
 アパートに戻ってそれを食べて飲む場面がある。
 それがちょっと寂しそうで、でも幸せそうで、温かみを感じた。

 後半、映画「蒲田行進曲」を引き合いにしての展開は、
 ちょっと引っ張りすぎて間延びし、
 純度が下がったのが非常に残念。
 
 しかし、序盤の文通の話は最高に面白かったし、
 終盤のアパートを取り壊すシーンでの関係者の佇まいも、
 変に感情の盛り上がりをせき立てず、あっさりとしており、
 逆に親しみと切なさを覚えた。

                      ◆

やっと週末になった。
歳をとるにつれ、好みが変わるし、求めるものも変わっていく。
しかし40年以上、ずっと変わらぬ思い。
それは週末にたどり着くことをモチベーションに
平日を過ごしていることだ。

やりたいことができる自由だけではない。
やらなくていい自由を手にできることは大きい。
むしろ後者の方が休日ディザイアのメインかもしれない。

いっそ完全にフリーになれたら、とも思うが、
フリーになった方が不安が増大するのも目に見えている。
つながれていなければ生きていけないのか。
そうかもしれない。
それは悲しいことじゃない。
 


今回は毎年恒例の
私が選ぶ「2017・ブック・オブ・ザ・イヤー」。
私が2017年中に読んだ小説等の中から、
特に心に残った5作品をピックアップしたものである。

では、早速どうぞ。

■東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」(2017年)

    2017_僕が殺した人

1984年の台湾。
混沌の中で日々を駆け抜ける13歳の少年4人。
ともに遊び、ケンカし、助け合い、やがて歯車が狂っていく様を、
温度感が伝わるほど活き活きと描いている。

彼らは2015年に再会する。
風貌も、考え方も、立場もまるで変わっていた。
会わなかった30年間に何があったのか、
それはミステリアスでもあり、切なくもあり、
読み手の想像を広げる世界観がある。

筆者の文章にはロック的な疾走感がある。
ぶっ飛び、壊れていつつも、まとまりがあり、
まるで音楽を楽しむように読める感覚がある。
映像は浮かぶが、映像にしたってつまらないと思う。
文章だからこそ、このグルーヴが生まれるのだろう。
2017年で一冊だけ選べと言われたらこの作品だ。

■中山七里「追憶の夜想曲」(2013年)

    2017_追憶の夜想曲

検事と弁護士との法廷対決もの。
この弁護士は、高額の報酬を請求しつつも無類の強さを誇り、
まるで社交性がなく無愛想な嫌われ者的な存在。

そんな彼がこの作品において担当するのは、
地味な主婦が起こした夫殺害事件。
依頼を受けたのではなく、自ら弁護をさせてほしいと申し出た。
金銭的なメリットも宣伝効果もない事案にもかかわらず、
なぜ申し出たのか。

重厚感のある文章に引っ張られていく。
言葉のチョイスが的確で、たたみかけるように重ねていく。
読書してる感をじっくりと味わえる。
ストーリー的にも最後まで楽しませてくれる。

■桐野夏生「夜の谷を行く」(2017年)

    2017_夜の谷

1971年から1972年にかけて起こった
連合赤軍の仲間同士によるリンチ殺人。
それに補助的な立場で関わった女性の現在を描いたフィクション。

彼女は、あさま山荘事件の前に脱走し、逮捕され、5年間服役。
それから約40年間、独り身で静かに暮らしてきたが、
連合赤軍最高幹部だった永田洋子死刑囚の獄中死を
きっかけとして、かつての同士などから連絡が来るようになり
心は穏やかではなくなっていく。

主人公のあっけらかんとしたキャラや、
昔の同士との再会におけるぎくしゃく感の描写がとにかく巧い。
連合赤軍内部の軋轢や壮絶さとともに、
その中枢から少しはずれたポジションにいたメンバーの有り様を
克明に描いている。引き込まれた。

■新堂冬樹「血」(2017年)

    2017_血

15歳の女子高生が、両親をはじめ、悪事をはたらく親戚を
次から次へと殺害していくストーリー。
ただ世間的には、事件や事故で死んだことになっている。
なのでインターネットの世界では、彼女に対する同情や心配の
コメントが多く寄せられる。
しかしやがて「怪しい」とのコメントも増えてくる。

ノンストップ感覚でページをめくらされた。
2017年に出会った作品の中で最も早く読み終えた。
文章表現において特に何かを感じたわけではない。
展開上、都合が良すぎるところもある。
しかしそんなことはどうでもよく、
何がゴールで、どこか着地するのかを知りたくて、
ただただ読まされた。

■遠田潤子「雪の鉄樹」(2014年)

    2017_雪の鉄樹

とにかく主人公(30過ぎの独身男・庭師)の壊れ方がすごい。
真面目な性格で、仕事も丁寧だが、
関係している人にトラブルが起こると、
自分のせいだと思い込むなど加害者意識が異常だったり、
食べ終わった食器をそのまま灰皿として使用することが
なぜ悪いことなのかと苦悩したりと、かなりぶっ飛んでいる。

主人公は、償いだと言って、10年以上
ある家族の面倒をみている。
その家族からは、いいように利用されていると知りつつ
ひたすら尽くす。

次第に
償い続ける理由が明らかになっていくのだが、
やりきれないくらい気の毒で、と同時に、
どんだけお人好しなの?、と思う。
しかし、話の運びが巧みで、迫力があり、すっかり引き込まれた。

筆者の遠田さんの作品は2017年まで読んだことがなかった。
3冊読んだが、どれも読み応えがあり、
いずれも主人公が愚かなほどに悲惨だ。
近いうちにメジャーな賞が巡ってくるのではないかと思う。

                    ◆

ちなみに、上記の5作品には入らなかったが、
最後まで悩んだのは、
垣谷美雨「嫁をやめる日」と早見和真「イノセントデイズ」だ。

以前からある傾向だが、映像化を想定して、
あるいは映像化してほしくて書かれている小説が少なくない。
私としては、映像化したってつまらない、文章だからこそ面白い、
というような作品を欲しているのだが。

映像作品を先に見てからだと、
映像や役者のイメージがつきすぎて、
純粋に読書を楽しむことができない。
本の表紙や帯に、映像化された際の役者の写真があるのも同様だ。
その方が売れるんだろう。
けれど、げんなりする。
映像ありきだと想像力が奪われる。
想像力を奪うのはほんとに大きな罪だ。
世の中の楽しみのほとんどは想像力で造られているのだから。



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