ADMIN TITLE LIST
Selected category
All entries of this category were displayed below.

北海道の人は皆、冬になると居間の温度を高くして、
Tシャツで過ごしたり、アイスを食べる、
という話をメディアで耳にすることがあるが、
そんな人に会ったことがない。

というか、私が寒がりなせいもあるが、
冬に「ちょっと暑すぎないか」という場所にいた記憶がない。
特に冬の飲食店はどこも寒いし、常に寒い。
飲食店では、コートやダウンジャケットの腕の部分を腰に巻き、
エプロンのような状態で過ごすことも珍しくない。

これに似た状況として、
北海道の人は皆、シメパフェを食べる、というのがある。
私が一緒に飲む相手の業界や年齢が限られているせいもあるが、
シメパフェに行く、あるいは行ったことがある、
という人に会ったことがない。

事実、パフェの店は増えているらしい。
自然発生的ではなく、作為的な匂いがするムーブメント
ではあるが、これによって飲食業界が活性化するならば、
それはそれで結構なことだ。

ただ考えてしまうのは、シメパフェ愛好者は純増したのか、
それとも、別のもので締めていた人がパフェに移行したのかだ。
つまり、ごく一部の人達によるシメパフェの盛り上がりによって、
客足が減ったジャンルがあるのではないかということだ。
それは気になる。

しかし、もっと気になるのは、
「北海道の人は皆、シメパフェを食べる」という、
ケンミンショー的な情報操作により大括りにされた道民の中に、
私も含まれていることだ。
納得できるはずがない。
言いたかったことはそれだけだ。

今回はブックレヴュー。

                     ◆


■原田マハ「本日は、お日柄もよく」(2010年)
  
20180119_02.png
 幼なじみの結婚披露宴で聞いたスピーチに感動したことを
 きっかけに、スピーチライターという職業を知り、
 やがてスピーチライターに転職した女性の話。
 最終的には衆議院議員選挙に立候補した人の選挙演説まで
 書き上げてしまう。

 スピーチ原稿を作る苦労や、報酬や仕事依頼の継続など、
 職業としてやっていくことの大変さがあまり書かれておらず、
 順調に進みすぎている印象はあるものの、
 ちょっとしたスピーチのコツが書かれている点は面白かった。

 例えば、司会者がスピーチをする人を紹介した直後に、
 「ただ今ご紹介にあずかりました〇〇です」で話し始めるだけで
 テンションが下がる、というくだり。
 感謝とお願いを繰り返してばかりの挨拶はダメ、という指摘。
 全くそのとおりだぜ、と素直に同感できた。

 なお、この作品の宣伝文句として、
 「言葉の持つ力に感動!」、「スピーチの度に泣けました」等、
 読者の賞賛の声が数多あるが、その点では私に響かなかった。
 ちょっとくどいスピーチが多かったかなと。
 ただ、読み物としては十分に楽しめる。

■横田増生「ユニクロ潜入一年」(2017年)
  20180119_01.jpg
 ユニクロの労働実態を暴くべく、
 都内のユニクロ3店にアルバイト勤務をしたライターの潜入記。
 
 人件費抑制のため、お客さんが少ない日は
 予定の勤務時間より早く帰させられること。
 一方、忙しい日だと当日に残業を求められるが、
 その際に、「今日のびれる?」や「ストレッチできる?」との
 ユニクロ用語で聞かれること。
 トップダウン色が濃すぎて、
 悪い意味で宗教的な雰囲気があること等々、
 潜入しなければ知り得ない面白い情報が随所にある。

 ブラック企業ぶりはあまり感じなかった。
 世の中的にサービス残業は別に珍しくないし、
 突然の残業だって当たり前にある。
 下の意見が全く取り入れられないことや、
 理不尽さや閉塞感も、どんな業界にだって大なり小なりある。
 むしろユニクロは、飲み会がほとんどないことや、
 企業としての社外行事が全くないなんて
 めちゃくちゃいいじゃないかとさえ感じた。
 
 そして何より、50歳過ぎの筆者が
 アルバイトにトライしたことに感心する。 
 ブラックぶりを暴こうと潜入したが、
 商品を段ボールから取り出す作業から始まって、
 陳列、レジうちなど、少しずつ仕事を覚えていくのが
 楽しかった、と書かれている場面は、
 なぜか私も嬉しくなったから不思議。

 これを読んだら、レイアウト、陳列状態、店員の階級、
 店員の意識はどこに向かっているかなどが気になり、
 なんとなくユニクロに行きたくなると思う。

■今村夏子「星の子」(2017年)
  20180119_03.jpg
 新興宗教にのめり込んだ両親を持つ少女の、
 小学生から中学生にかけての物語。

 両親の奇行を恥ずかしく思いながらも否定はしない彼女。
 一方、クラスメイトからは距離を置かれ、
 教師も悪い意味で特別な目で見ている。
 親戚も宗教から引き離そうと説得する。
 彼女の心にも多少の波は立つ。
 しかし、そういうものだと思って平然と過ごしている。

 全体的に心理描写がぽわーんとしており、
 肯定なのか否定なのかぼんやりしているところが多いが、
 それが逆に等身大テイストを醸し出し、現実感があった。

 宗教にのめり込んでいる親を持つ子も、そうでない子も、
 思春期を迎え、恋をしたり、友達との付き合いに
 苦しんだりする。
 宗教という壁がありながらも、そうした姿を
 ある種平等に描いているのは清々しくもあった。

 後半、教師からのイジメともとれる対応に関して、
 彼女と距離を置いていたクラスメイト達が、
 彼女を励ますような場面がある。
 さらっと通り過ぎるように描いているが、
 最も心に残った場面だ。

■滝口悠生「高架線」(2017年)
  20180119_04.jpg
 西武池袋線の東長崎駅から徒歩5分の距離にある
 家賃3万円の古い4戸建てアパート。
 その一室に住んだ人達を巡る16年間の物語。

 その部屋は、次に住む者を退去する者が決めるというルール、
 風呂はないが、シャワーと和式トイレが同じスペースにあること、
 家賃滞納のまま行方不明になった者の家賃を
 行方不明者の親ではなく同級生が払っていること、等々
 エキセントリックな設定や展開が多い。
 
 それでいて実にひょうひょうと語られている。
 ドラマチックさを意図的に消すような淡々とした筆致だ。
 なので、何を描きたいの?と感じるところはある。
 ただ、市井の何気ない等身大の日常をうまく切り取っている。 

 例えば、夕食がてら軽くお酒でも飲もうかと駅前に行ったが、
 なんとなくスーパーでお総菜とビールを買い、
 アパートに戻ってそれを食べて飲む場面がある。
 それがちょっと寂しそうで、でも幸せそうで、温かみを感じた。

 後半、映画「蒲田行進曲」を引き合いにしての展開は、
 ちょっと引っ張りすぎて間延びし、
 純度が下がったのが非常に残念。
 
 しかし、序盤の文通の話は最高に面白かったし、
 終盤のアパートを取り壊すシーンでの関係者の佇まいも、
 変に感情の盛り上がりをせき立てず、あっさりとしており、
 逆に親しみと切なさを覚えた。

                      ◆

やっと週末になった。
歳をとるにつれ、好みが変わるし、求めるものも変わっていく。
しかし40年以上、ずっと変わらぬ思い。
それは週末にたどり着くことをモチベーションに
平日を過ごしていることだ。

やりたいことができる自由だけではない。
やらなくていい自由を手にできることは大きい。
むしろ後者の方が休日ディザイアのメインかもしれない。

いっそ完全にフリーになれたら、とも思うが、
フリーになった方が不安が増大するのも目に見えている。
つながれていなければ生きていけないのか。
そうかもしれない。
それは悲しいことじゃない。
 

スポンサーサイト

今回は毎年恒例の
私が選ぶ「2017・ブック・オブ・ザ・イヤー」。
私が2017年中に読んだ小説等の中から、
特に心に残った5作品をピックアップしたものである。

では、早速どうぞ。

■東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」(2017年)

    2017_僕が殺した人

1984年の台湾。
混沌の中で日々を駆け抜ける13歳の少年4人。
ともに遊び、ケンカし、助け合い、やがて歯車が狂っていく様を、
温度感が伝わるほど活き活きと描いている。

彼らは2015年に再会する。
風貌も、考え方も、立場もまるで変わっていた。
会わなかった30年間に何があったのか、
それはミステリアスでもあり、切なくもあり、
読み手の想像を広げる世界観がある。

筆者の文章にはロック的な疾走感がある。
ぶっ飛び、壊れていつつも、まとまりがあり、
まるで音楽を楽しむように読める感覚がある。
映像は浮かぶが、映像にしたってつまらないと思う。
文章だからこそ、このグルーヴが生まれるのだろう。
2017年で一冊だけ選べと言われたらこの作品だ。

■中山七里「追憶の夜想曲」(2013年)

    2017_追憶の夜想曲

検事と弁護士との法廷対決もの。
この弁護士は、高額の報酬を請求しつつも無類の強さを誇り、
まるで社交性がなく無愛想な嫌われ者的な存在。

そんな彼がこの作品において担当するのは、
地味な主婦が起こした夫殺害事件。
依頼を受けたのではなく、自ら弁護をさせてほしいと申し出た。
金銭的なメリットも宣伝効果もない事案にもかかわらず、
なぜ申し出たのか。

重厚感のある文章に引っ張られていく。
言葉のチョイスが的確で、たたみかけるように重ねていく。
読書してる感をじっくりと味わえる。
ストーリー的にも最後まで楽しませてくれる。

■桐野夏生「夜の谷を行く」(2017年)

    2017_夜の谷

1971年から1972年にかけて起こった
連合赤軍の仲間同士によるリンチ殺人。
それに補助的な立場で関わった女性の現在を描いたフィクション。

彼女は、あさま山荘事件の前に脱走し、逮捕され、5年間服役。
それから約40年間、独り身で静かに暮らしてきたが、
連合赤軍最高幹部だった永田洋子死刑囚の獄中死を
きっかけとして、かつての同士などから連絡が来るようになり
心は穏やかではなくなっていく。

主人公のあっけらかんとしたキャラや、
昔の同士との再会におけるぎくしゃく感の描写がとにかく巧い。
連合赤軍内部の軋轢や壮絶さとともに、
その中枢から少しはずれたポジションにいたメンバーの有り様を
克明に描いている。引き込まれた。

■新堂冬樹「血」(2017年)

    2017_血

15歳の女子高生が、両親をはじめ、悪事をはたらく親戚を
次から次へと殺害していくストーリー。
ただ世間的には、事件や事故で死んだことになっている。
なのでインターネットの世界では、彼女に対する同情や心配の
コメントが多く寄せられる。
しかしやがて「怪しい」とのコメントも増えてくる。

ノンストップ感覚でページをめくらされた。
2017年に出会った作品の中で最も早く読み終えた。
文章表現において特に何かを感じたわけではない。
展開上、都合が良すぎるところもある。
しかしそんなことはどうでもよく、
何がゴールで、どこか着地するのかを知りたくて、
ただただ読まされた。

■遠田潤子「雪の鉄樹」(2014年)

    2017_雪の鉄樹

とにかく主人公(30過ぎの独身男・庭師)の壊れ方がすごい。
真面目な性格で、仕事も丁寧だが、
関係している人にトラブルが起こると、
自分のせいだと思い込むなど加害者意識が異常だったり、
食べ終わった食器をそのまま灰皿として使用することが
なぜ悪いことなのかと苦悩したりと、かなりぶっ飛んでいる。

主人公は、償いだと言って、10年以上
ある家族の面倒をみている。
その家族からは、いいように利用されていると知りつつ
ひたすら尽くす。

次第に
償い続ける理由が明らかになっていくのだが、
やりきれないくらい気の毒で、と同時に、
どんだけお人好しなの?、と思う。
しかし、話の運びが巧みで、迫力があり、すっかり引き込まれた。

筆者の遠田さんの作品は2017年まで読んだことがなかった。
3冊読んだが、どれも読み応えがあり、
いずれも主人公が愚かなほどに悲惨だ。
近いうちにメジャーな賞が巡ってくるのではないかと思う。

                    ◆

ちなみに、上記の5作品には入らなかったが、
最後まで悩んだのは、
垣谷美雨「嫁をやめる日」と早見和真「イノセントデイズ」だ。

以前からある傾向だが、映像化を想定して、
あるいは映像化してほしくて書かれている小説が少なくない。
私としては、映像化したってつまらない、文章だからこそ面白い、
というような作品を欲しているのだが。

映像作品を先に見てからだと、
映像や役者のイメージがつきすぎて、
純粋に読書を楽しむことができない。
本の表紙や帯に、映像化された際の役者の写真があるのも同様だ。
その方が売れるんだろう。
けれど、げんなりする。
映像ありきだと想像力が奪われる。
想像力を奪うのはほんとに大きな罪だ。
世の中の楽しみのほとんどは想像力で造られているのだから。


今日ラジオから流れたニュースの中で、
あるNPO法人が調査したところによると、
シングルマザーの3人に1人が、
「クリスマスなんてなければいい」と考えたことがあるという
調査結果を明らかにしたという。

シングルマザーじゃなくても、
3人に1人くらいは考えたことがあるのではないか。
というか、3人に2人はそう思ったことがないことに驚く。
お金と手間ばかりかかる面倒なイベントだと感じる人は
少なくないのでは、と思うのだが。

決してクリスマスのキラキラ、ワクワクは否定しないし、
クリスマス・ソングも抵抗なく、というか心地よく聴けるが、
クリスマスに特に何かをするわけではなく、
全く通常ベースで自然体で過ごす私は、
惑わされることも、もめることもなく、
それはそれで幸せなのかもしれない。

むしろクリスマスの後の大晦日までの、
26日から29日が好きだ。
ちょっと静まり、宙に浮いたような感じがいい。
逆に何かできるような期待感を抱く。
しかし現実は、職場の飲み会などのせいで何もできない。
クリスマスの後は完全フリーになりたいっすね。

                    ◆


今回はブックレヴュー。
読んでいて嫌な気分になるものの、
読み切らずにはいられなかった4作品を。

■雫井脩介「望み」(2016年)
  望み
高校一年生の息子が無断で家を出て、そのまま戻っこない。
携帯電話に連絡するも応答しない。
そんな矢先、息子の遊び仲間の一人が殺害され、
他の仲間は行方不明だというニュースが飛び込む。

行方不明になっている者も生きているのかどうかわからない。
息子は加害者なのか、被害者なのか。
母は被害者であってほしくないと願い、
父は加害者であってほしくないと願う。

どっちに転んでも喪失が待っている状況で揺れ動く
親の心情を丁寧に描いている。
ただ、内容的に常に息苦しい。
結末を曖昧にせず、しっかり書き切ったところは好感。

■小林由香「ジャッジメント」(2016年)
  ジャッジメント
20××年、「復讐法」なる新しい法律が生まれた。
凶悪犯罪の場合、通常の裁判を経ての判決によるか、
加害者から受けた被害内容と同じことを
被害者遺族が加害者に対して執行するかを
選択できるようになった。

この公的な復讐に立ち会う応報監察官(公務員)なる女性の
目線を軸に、5つの執行が短編連作の形で構成されている。
被害者側、つまり復讐する側の苦悩、葛藤、恐怖、絶望・・・。
読んでいて憂鬱になる。しかし早く読み終えてしまう。

「復讐」は誰しも考えてしまうことでありつつも、
いわばタブーの位置づけだろう。
にもかかわらず、そこに踏み込んだことに興味を持ち読んだが、
結末に行き着くまでの転がりがあっさりしているというか、
ちょっと薄いかなと。
ただ、先へ先へと読ませます。

■伊岡瞬「代償」(2014年)
  代償
小学生の時、家族を火事で亡くし、遠縁の家族と暮らすことに。
その家族がひどかった。
親はろくに働かず、息子は相当のワルで、かつ主人公と同級生。
食べ物も満足に与えらず、疎外され、恩に着せられ、
嫌みを言われ続ける。

大人になった主人公は弁護士になる。
かつて一緒に暮らした同級生は犯罪を犯す。
そして弁護人として主人公に依頼する。
恨みしかない相手の弁護を引き受け主人公は何をするのか。

とにかく主人公に対する虐待ぶりが惨く、えげつない。
その悪態ぶりに気分が悪くなるし、
やられっ放しで反抗も逃亡もしない主人公にイライラする。
一言でいえば、すごく嫌な話。
でも読み切ってしまう。
読後感はモヤモヤだったが、読まされてしまうというか。

■中山七里「追憶の夜想曲(ノクターン)」(2013年)
  追憶の夜想曲
依頼人に高額な報酬を要求することで有名な一匹狼の弁護士。
彼は、夫殺しの罪で裁判にかけられた女性の弁護を担当する。
高額の報酬を支払えるとは到底思えないにもかかわらず、
自らの申し出によって弁護する。

検察側との法廷での戦い、事件の真相、弁護を申し出た理由、
どれも迫力をもって、濃密に描いている。
言葉の使い方に厚みがあり、積み重ねが着実かつスマートで、
展開にも淀みがなく、読み応え十分。

弁護士界のブラックジャックっぽい雰囲気があり、
ピノコをモデルにしたような女の子も登場するが、
コミカルさは一切なく、ドロドロの内容をクールに語っている。
読書の面白さを存分に味わえる。

                    ◆

先日、小樽市の定食屋「おちゃわん」にて飲んだ
麦焼酎「青鹿毛(あおかげ)」を手に入れたく、
札幌市内の酒店を数店まわったが、どこにも売っていなかった。
売っていなければ何も買わずに帰るつもりだったが、
売っていなかった寂しさに屈し、
久しぶりに見かけた「中々」を買って帰った。
これから飲んでしまうだろう。
最初はロックで、やがてお湯割りで。
メリークリスマス。



岩見沢、2017年11月30日。
一日中、雪が降っていた。
20171130_01.jpg

帯広なら1シーズンに3回くらいしかない大雪。
岩見沢は月に5、6回くらいあるらしい。

それがどうした。
どうもしない。
ひたすら雪が降る夜は、
自宅で静かにだらだらと飲酒をするか、
中途半端に酔ってだらだらと読書するのがいい。

というわけで、今回はブックレヴュー。
 
                         ◆

■垣谷美雨「ニュータウンは黄昏れて」(2015年)
  ニュータウン
バブル期に交通の便が悪い郊外にマンションを購入。
当時はマンション価格が異常に高騰し、ここしか購入できなかった
今では建物は老朽化し、マンション住民も高齢化。
未だに残る多額のローン、夫は窓際に追いやられ、妻はパートに忙しい。

妻は当番制によりマンションの理事会のメンバーになる。
理事会はマンションの建て替え問題で毎回もめる。
さらに、高齢者揃い、かつクセの強いメンバーにストレス倍増。
一方、娘は資産家の息子と知り合い、結婚へと向かうが、
こちらも問題発生。

劇的な展開があるわけではなく、
常に「行き詰まり感」と「もやっと感」が漂うが、
すっきりとした筆致で、話の転がし方が上手く読み飽きない。
ちょっとミステリなところも面白くさせている。
そしてマンションを買う気が失せます。

■本城雅人「ミッドナイトジャーナル」(2016年)
  
ミッドナイトジャーナ
児童連続誘拐事件を取材する新聞記者の話。
新聞記者モノの小説を読むたびに思うのが、
新聞の何面のどの場所に掲載するのかで、
内部的な戦いが恐ろしく激しいこと。
私は全く気にしないのだが。

1面に載った「ふ~ん」とか、「そうなんだ」という記事より、
4面に載った「まじか!」、「そうなの?」という記事に注目する。
また、何面か、よりも、見出しの大きさに反応するし、
小さくもピリッとしたのを探したりもする。

新聞記者に限ったことではないが、
職場内部の面子と外部の受け止めは相当の差がある。
それをわかって上で、内部の者同士で競うのか。
それが社会なのか。

小説してはなかなか面白い。
登場人物の棲み分けが上手で、展開に停滞がない。
主人公をあまり正義の存在として描いていないところも良い。
緊張感を保ったまま、エンディングまでぐいぐい引っ張っていく。

■伊岡瞬「明日の雨は。」(2010年)
  明日の雨は。
小学校で臨時の音楽教諭として働く23歳の男。
音大での専門はピアノだったがロックが好きで、
物語の中でも随所にロックミュージックを聴く場面がある。

彼は学校内で起こる様々な問題に巻き込まれつつ、
一部の教諭から疎ましがられ、しかし応援する教諭もいて、
児童には人気があり、まさにテレビドラマのような設定だ。

なので新鮮味は薄く、文章的な妙味もあまり感じなかったが、
同僚の若手女性教諭をいい具合に愛らしく描いているし、
エンディングの卒業生からの手紙は微笑ましく、いじらしく、
甘酸っぱく、いい気持ちになれた。

■角田光代「坂の途中の家」(2016年)
  
坂の途中
乳幼児虐待事件の裁判員裁判の補充裁判官となった主婦の話。
被告の女性を自分に照らし合わせ、感情移入していくストーリー。

しかし私が読み進む上で軸になったのは、
夫の「補充裁判官なのにそんなに真剣にならなくても」という
小馬鹿にしたような言動や、姑の見下したような態度。
なんで言われっぱなしなの?とイライラしながら読んだが、
裁判の進捗よりも、夫や姑とのやりとりの方が読み応えがあった。

裁判の方は、同じような状況を繰り返しているような場面が多く、
間延び感があったが、
角田さんの文章は地に足がついていて、非常に安定感がある。
変な隙間や窮屈感がなく、文章が上手な人の文章だと感心する。
なので読書的満足感はある。
ただ、ストーリー的にはもやもやな結末で、
読み終えたとき、ごちそうさまでした、という気持ちにならなかった。

歌野晶午「ディレクターズ・カット」(2017年)
  
ディレクターズ
テレビ局の下請けの番組制作会社のディレクター。
彼は担当するワイドショー番組の視聴率アップのため、
知り合いの若者にお金を払い、やらせで事件を起こさせ、
いち早く報道。そのシリーズが人気になっていく。

そんな仕込み事件を繰り返しているうち、
やらせを請け負っていた若者がほんとの傷害事件に巻き込まれた。
ディレクターはそれをも演出しようと、どんどん暴走していく。

まともな人間が一人も登場しない。
話し言葉、行動、考え方、そうしたすべてに嫌悪感をおぼえる。
ところが、
どういうオチが準備されているのかと気になって、
どんどん読まされてしまう。
終盤のどんでん返しはやや強引ではあるが、
悪の路線で押し切ったことで、輪郭のあるエンディングとなっている。

                         ◆
今年もあと1か月。
早く年末が来ないかと、そして休みたいと思っている方は
少なくないだろう。
わかる。よくわかる。

ただ、年が明けたら全てがリセットされるわけではない、
年末までの嫌なことは年明けも継続する。

それならやめてしまえばいいのだが、
それだと生活ができなくなる。
やりたくないことをやっているのに、
やりたくないことをやめていいと言われるのを恐れている。
貴乃花親方のマフラーを見ながら、そんなことを思う。


夕方から降り出した岩見沢の雪は、
今シーズン初の積雪を記録するだろう。
スニーカーで外を歩けない季節がやってきた。

慣れてしまえば、そういうものだと気にならなくなるが、
毎年のことながら慣れるまでが面倒くさい。
今週末は雨と雪で荒れるらしい。
それでもライブは楽しみたい。

■日時 2017年11月18日(土)19時
■場所 とまと畑(札幌市中央区南4東3 ピープルⅢ1F)
■料金 お店でオーダーした分の料金
■出演(出演順・敬称略) 
 もりのきらわれもの/ゆうこり/Ryo&Ryoko
 激しい雨/MAI/プレレファ/Gold.Tree


札幌に出かけてゴキゲンなロックをして、
その後は暖かい部屋でゴキゲンなアルコールを味わいたい。
よろしくお願いします。

                   ◆

さて今回はブックレヴュー。
紹介する4冊、どれも楽しめた。

■垣谷美雨「嫁をやめる日」(2017年)
     嫁をやめる日
 タイトルに惹かれて読んでみた。
 夫が病気で急死。子供はいない。一人残された女性は46歳。
 しかし、夫とは心が通わず、同居していながら
 別居しているような状態だった。
 亡くなっても悲しさはなく、むしろ自由になれた気がした。

 ところが、夫が亡くなってから、
 夫の親がやけに干渉してくるようになる。
 生前の夫が中学の同級生だった女性に
 毎月お金を振り込んでいたことも判明。
 自由になれたと思いきや、むしろ不自由になっていく毎日。

 夫婦であったがゆえの様々なしがらみによって、
 死別してから逆に窮屈になっていく過程が、
 丁寧ながらすっきりと描かれており非常に面白く読めた。
 垣谷さんの作品は初めてだったがアタリだった。

■桐野夏生「夜の谷を行く」(2017年)
    
夜の谷
 連合赤軍のメンバーだった、現在は60代の女性。
 連合赤軍から逃亡したものの、逃亡中に逮捕され5年余り服役。
 その後は静かに暮らしていたが、
 連合赤軍指導者だった永田洋子の獄中での病死を契機にして、
 元メンバーとの再会を始める。

 フィクションではあるが、連合赤軍メンバーが
 実名で語られており、リンチ殺人の描写もある。
 主人公はそれを一歩離れたポジションで見ていた、
 という設定だが、死体の運搬に関わっていた。
 
 連合赤軍の一連の事件の報道について、
 私は原体験での記憶が全くない。
 それだけに、この作品を読んで連合赤軍のあり様に衝撃を受けた。
 主人公の女性は、クールでありつつも、
 のほほんとした雰囲気で描かれており、
 桐野さんらしいキャラづくりが冴えている。
 ああいう結末になるとは思わなかった。

■柚月裕子「合理的にあり得ない」(2017年)
     合理的に
 柚月さんらしからぬ非常にライトでポップな作品だ。
 美貌ながら、ちょっとコミカルな女性探偵が、
 思いもかけぬ方法で次々と依頼をこなしていく短編。
 
 テレビドラマを文章化したようなテイストであり、
 すいすいと都合よく展開しがちではあるが、
 ストーリの中にしっかり引き込んでくれる。
 
 助手の男性もかなりユニークで、
 主人公の女性探偵とともに、相応しい役者を起用して
 映像化したら、結構な人気ドラマになるのでは。
 しかもシリーズ化の可能性も合理的にあり得るだろう。

■佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」(2016年)
     明るい夜に
 大学を休学し、コンビニエンスストアでアルバイトをしながら
 一人暮らしを始めた男の一年間の物語。
 ストーリーの軸になっているのは、
 アルコ&ピースのオールナイトニッポン。
 主人公はその番組のハガキ職人である。

 ラジオの深夜放送好きには、たまらない内容だ。
 私もその一人であり、ノンフィクションのように読めた。
 ハガキ職人は趣味の域ではなく、
 その番組を軸に、色々なことを犠牲にしながら、
 日々の生活を送っていることを再認識した。

 雑な言い方をすれば、ラジオヲタクの話であるが、
 閉ざしていた心を開いていく青春小説とも言える。
 読者を選ぶ作品かもしれないが、
 ラジオ好きな冴えない男をクローズアップしたことが嬉しいし、
 筆者の着眼点の良さに敬意を抱く。

                      ◆

もし私が音楽活動で有名になり、
2年おきか3年おきのペースでアルバムをリリースし、
毎年全国ツアーをやり、
年に2回くらいテレビの地上波放送に、
年に4回くらいテレビのBS放送に出演するとともに、
週に一回、HBCラジオで1時間番組を担当し。
週に一回ブログを更新しているとする。

そういう状況で、街角で不意に私のことを知っている、
私が知らない方から声をかけられたとする。
その時言われて最も嬉しいのは、
「ファンです」、
「2年前に出したアルバム持ってます」、
「この前、SONGSに出てたの見ました」、
「浅野忠信さんとの対談読みました」、などではない。

「ラジオ聴いてます」が一番うれしいような気がする。
ラジオの結びつきは強い。




岩見沢市の日の出は午前5時過ぎとなり、
日の入りは午後6時前になった。
秋には秋の良さがある。
空知での初めての秋を楽しみたい。

さて今回はブックレヴュー。

■井上荒野「夜をぶっとばせ」(2012年)
    
20170905_夜をぶっとばせ
なぜこの夫と結婚してしまったのかという疑問とあきらめ。
息子は学校でイジメを受けており、娘は過度の偏食。
無気力で怠惰な生活をしている35歳の妻は、
次第に出会い系サイトにはまり、家庭崩壊へと向かう。

やがて二人は離婚。
夫は元妻の友人女性と再婚。
散歩中にたまたま寄った公園で、
元妻は和太鼓に合わせて踊っていた。

このように設定がぶっ飛んでいる。
何を伝えたかったのかよくわからないまま読み終える。
しかし、それは全く問題ではない。
ストーリー構成と心理描写がとにかく上手い。

淡々としているのに強くエネルギーを感じ、
最後は「この物語はなんだったんだろう?」と思う。
なのに面白い。
馬鹿馬鹿しいような、核心を突かれてドキッとするような、
ゆらゆらしているのに不思議と読み応えがある。
なお、タイトルとは裏腹にストーンズにまつわる場面はなかった。

■高野和明「ジェノサイド」(2011年)
20170905_ジェノサイド上 20170905_ジェノサイド下

アフリカ大陸のコンゴ民主共和国で発見された「アキリ」という
新種の生き物を巡り、
アメリカ政府、民間の雇われ兵、人類学者、
新薬開発に苦闘する大学院生などが複雑に交差する。

「アキリ」は人間をはるかに超える知能を持つ人間の形状した生き物。
アキリが成長し、子孫を増やしたとき、
人間はアキリに支配されるとの恐怖から、
アメリカ政府はアキリ抹殺を図る。
アキリを捕まえようとする者と救おうとする者の
追いつ追われつの展開がスピーディに繰り広げられる。

薬開発の専門的なことやコンピュータの仕組み、
アフリカのジャングルにおける移動状況など、
なんだかよくわからず、読み飛ばすしかない箇所も少なくはないが、
緊張感が途切れない、実にスペクタクルな世界に引きつけられる。

■柚月裕子「慈雨」(2016年)
    
20170905_慈雨
定年退職をした元警察官が、
妻とともに四国八十八箇所のお遍路の旅に出た。
旅の途中、定年前の勤務地で幼女殺害事件が発生する。
それは16年前に自らが関わった事件と酷似するものだった。
元警察官はお遍路まわりをしながら、元部下から捜査の状況を
連絡してもらい、16年前の後悔と向き合っていく。

落ち着きのある、しっかりとした筆致で、きちんと読ませる。
ただ、事件の真相が少しずつ明らかになっていく状況で、
唐突に現在四国のどのあたりにいるのかが挿入される。
それがちょっと不自然で、流れを止める感じがしたし、
私には四国の景色や雰囲気があまり見えてこなかった。
四国に詳しい人ならば楽しめるかもしれない。

また、元警察官は妻にも元部下に対してもちょっと横柄だ。
にもかかわらず献身的で明るい妻と誠実な部下。
贖罪と再生をベースにした重厚な作品だが、
元警察官の偉そうな態度がやけに鼻についた。
これといった盛り上がりもなかったかなと。
この作品は心にしみる人間ドラマとして一般的な評価も高い。
私にとってハズレ作品のない作家でもある。
だが、この作品はちょっと合わなかった。

■馳星周「不夜城」(1996年)、「鎮魂歌」(1997年)
20170905_不夜城 20170905_鎮魂歌
いずれも新宿歌舞伎町における中国人ヤクザの闘争を描いた作品。
90年代の日本を代表する小説だ。
なのに、これまでなんとなく読んでみる気にならなかった。
その最大の理由は、登場するのはほとんどが中国人で、
人名の読み方が頭に入らず、自分の中でストーリーの土台を
しっかりと築くことができないと危惧したからだ。

古い本の整理をしていた2017年7月。
だいぶ前に買ったものの、読まないまま保管していた「不夜城」を発見。
他に読みたい作品もなかったので、
中国人名の読み方アレルギーを抱えつつもトライしてみた。
読み始めてすぐにアレルギーが発症したが、
自分で独自の呼び名を設定しなんとか読み進めた。
しばらくは忍耐を要したが、30ページほどで気にしないことにした。

実に面白かった。
クールでシャープな文体、中国的な義理と人情、
日本における中国人ヤクザのあり方、同性愛等々、
淀みなくスピーディに緊張感をもって展開する。

すっかり引き込まれ、「不夜城」を読み終えたら、
その続編である「鎮魂歌」もすぐに読みたくなり、
読み終えたその日にブックオフ岩見沢店へ。
まずブックオフに行ってしまうところがしょぼい。

ブックオフ岩見沢店には売っていなかった。
ならば新品をと、ゲオとツタヤに行くも置いていなかった。
結局、後日、岩見沢市図書館で単行本を借りた。
古い本であり、相当貸し出されたのだろう、
かなり汚れていたし、表紙と本体が分離気味だった。
本屋には売っていないが、図書館に行くとある。
地方の書籍事情あるあるだ。

「鎮魂歌」も読み応えがあった。
「不夜城」の主人公が脇役になり、というか裏で糸を引く役柄で、
格段にワルになっていた。
グロテスクな場面も少なくない濃密な筆致だ。
面白かった。

                                            ◆

地方の町に出かけると、特にクロスバイクで訪れたり、
無人駅巡りをしている際に気づくのだが、
本屋をほとんど見かけない。
回転の早い雑誌類はコンビニで売っているし、
人口減少やネット購入の普及からすると当然といえば当然だ。

一方、小さな集落であっても理美容室はある。
シャッターが多い町並みの中で、
理美容室が結構あるように感じたことがないだろうか。
100人くらいしか住んでいないような集落でも
しっかり存在していたりする。

また、意外なのが、営業している商店がわずかな小規模市町村でも、
なぜか精肉店がきちんと存在しているのを目にする。
自転車屋も地味に残っている町は多い。
アナログ対応でなければならないものは根強い。
アナログ対応ができる音楽活動も重要だ。
最後に残るのはアナログかもしれない。


まずはライブのお知らせを。

日 時 2017年8月5日(土)19時
場 所 G-HIP(札幌市豊平区平岸3条9丁目)
■料 金 2,500円飲み放題又は1,500円飲み物別
■出演者 THE HEART OF STONE ほか

ライブ2日前の今日、やっとライブの基本情報について連絡があった。
ザ・ハート・オブ・ストーンの出演は19時予定。
今日言われても、という感じだが、お知らせしておきます。
楽しんできます。
IMG_1456.jpg
さて今回はブックレヴュー。
読み応えのある本が揃いました。

■早見和真「イノセント・デイズ」(2014年)
   
イノセントデイズ
放火殺人犯として死刑囚となった女性。
幼少の頃に虐待を受け、中学生で窃盗をして、ストーカーになった等々、
テレビ、新聞、週刊誌は、彼女の人生を面白おかしく誇大に取り上げた。

しかし、事実は違った。
かばい、助け、身代わりになるなど、自ら不幸を請け負うような生き方。
そして、彼女見殺しにした親族や同級生。
苦しく辛い物語だ。
と同時に、何ら反論せず、悪い意味で状況を受け入れてしまう彼女が
歯がゆくなる。

登場人物それぞれのキャラクターが立っている。
特に彼女に罪をかぶせておきながら、
後悔や恐怖に苦しみ、彼女との関わりを消したがる面々の心理描写は
読み応えがある。
変に後腐れのない淡々としたエンディングも良い、ちょっと切ないが。

■青島武「追憶」(2017年)
   
追憶
小樽市銭函で偶然知り合った少年3人。
彼らは楽しく夏休みを過ごすが、とある事件が発生。
3人は秘密を共有する関係になりつつ、事件後に離ればなれになる。

それから30年。
3人は、刑事、被害者、容疑者という立場で再会する。
彼らは30年前の事件に縛られ、とらわれ、大人になっていた。

舞台が銭函のほか、札幌、江別、石狩なので親近感をもって読めた。
ただ、北海道弁がよろしくない。
頻繁にある話だが、「その言葉、そういう言い回ししないから」の連発。
特に、「~っしょ」と「ゆるくない」の使い方は完全にずれていた。

物語としてはおもしろい。入り込んで読めた。
心情の掘り下げや表現の妙味などには乏しい。
また、陰の部分が多く、背景の重さがついて回る内容である。
しかし、軸がぶれずシンプルにどんどん展開させていくので、
ほぼ一気読みだった。

■伊坂幸太郎「サブマリン」(2016年)
   サブマリン
家庭裁判所調査官と調査対象である少年達を取り巻く話。
家庭裁判所調査官は、離婚などの事案や少年犯罪事案などの原因や
背景を調査する国家公務員。

書きぶりは軽妙で洒脱でコミカル。
大っぴらにはできないが心の中に潜在的に存在している正義や悪意、
解決しようのない世の中の矛盾など、
そのあたりの際どいところを気高くクールに描いている。
まさに筆者の世界観を楽しめる作品だ。

主人公の調査官は、自分勝手で面倒な存在にもかかわらず、
協力者がたくさんいて、問題をスマートに収束させていく。
簡単に言えばかっこいい。
私としては出来過ぎというか、整い過ぎな印象ではあるが、
彼の言動を楽しめる人は多いだろう。

■わたなべぽん「やめてみた。」(2016年)
   
やめてみた
漫画の単行本である。
漫画家であり妻である筆者の実話。
炊飯器、テレビ、掃除機、ゴミ箱、メイク、コンビニ、夜更かしなど
日常生活を取り巻く様々なことをやめてみたら、
結構良かったという話だ。

最も共感したのは「夜更かし」の章。
何もなかった一日が物足りなくて、なんとなく夜遅くまで起きている。
起きていたら、何か楽しいことが起こったり、面白いものに出会ったり
するのではないかと漠然と思いながら、だらだらと過ごす。
それをやめてみた、ということが描かれている。

私もこうした経験がある。
根拠も準備もなく夜に期待してもだめだ。
あきらめて、というか割り切って寝ること。
体調が良くなるし、朝の時間が効果的に使えるようになる。
ところが問題なのは、
早く寝ようとするとなかなか眠れず、
別のストレスやリスクが発生することだ。

やめたことによる隙間をどう埋めるかだ。
埋めずに済めば、それも有りだが、うまくコントロールでききるのか。
そう考えると、やめられるかどうかは精神的な部分が
大きく影響するのかもしれない。

やめる、ということは、始めることでもある。
やめる、ということを始めることなのだ。
わからなくなってきた。
早く切り上げて寝よう。
と思うとなかなか眠れない。
眠るのをやめてみるか。


7月29日土曜日に帯広へライブに行く。
ゴールデンウイーク以来になるが、その時は日帰りだったため、
ゆっくりとできなかったが、今回は一泊する予定だ。
それなりにお酒を飲み、それなりの時間まで、
夜と朝の帯広を楽しんでこようと思っている。
20170727.jpg
ところが宿泊予約ができずにいる。
ホテルが空いてない。
というか、空いているホテルはあるが、べらぼうに高額だ。
土曜日の帯広はホテルを確保できないのがスタンダードになったのか。

こうなりゃ直前キャンセルが発生することを想定して、
前日あるいは当日予約でトライするしかない。
確保できなければ車中泊だ。
車中泊では翌日へのダメージが大きい。
せっかくの十勝サンデーを不満足な体調で過ごすのはもったいない。
なんとかホテルを確保したいが。

できることなら、OCTVが見られるホテルがいい。
「とかち青空放送局」と「十勝しんや倶楽部」を観たい。
これらの番組をだらっとした体勢で、なんとなく見ていた頃が恋しい。
十勝は、そこに普通にあるものが決定的に素晴らしい。

                      ◆


さて、今回はブックレヴュー。
この2か月ほどは、心を落ち着け、生活を安定させるために、
おとなしく読書をした時間が多くあった。
そんな読書の季節の中で満足度の高かった4冊を。

■雫井脩介「検察側の罪人」(2013年)
   検察側の罪人
彼は過去に幼女殺しの疑いがかかるも、
決定的な証拠がなく、逮捕に至らなかった中年の男。
その事件は既に時効となっている。
しかし、未だに彼が犯人だと思っているベテラン検事がいた。

老夫婦の刺殺事件が起こる。
老夫婦の関係者を洗い出すと、その中に例の中年男の名があった。
ベテラン検事は中年男を犯人に仕立てるかのような強引な言動が
目立ち始める。
それに疑問を感じ、独自に動き出す部下の検事。

部下検事の容疑者に対する追及は不快な気持ちになり、
ベテラン検事の暴走ぶりに苛立ってくる。
なのに読めてしまうし、読みたくなる。
嫌悪感はあるのに拒否できない文章の強さがある。
最終的に真相がうやむやなところはあるが、
それもまたミステリアスで、ありかなと。

■佐藤正午「月の満ち欠け」(2017年)
   月の満ち欠け

瑠璃(るり)という名前を持つ複数の女性を巡る物語。
序盤は登場人物の関係が見えず、
雲をつかむような気持ちで読んでいくしかないが、
ひとり一人の生い立ちを語る章に入ると、
登場人物を結ぶ線の色が次第に濃くなっていき、
すっかり引き込まれた。

そうした「つながり」が物語の核ではあるが、
それぞれの瑠璃の数奇な人生が、ときに異様に、ときに切なく語られ、
それだけでも成り立つような面白さがあった。

筆致が滑らかだ。
流れるように読める。
現実的ではない設定、展開ではあるが、
そこに疑問は感じないし、非現実的だから良くないということもない。
不可思議で奇怪だが、どこかロマンチックなストーリーだ。

■新堂冬樹「血」(2017年)
   
新堂冬樹/血
強烈だ。
高校一年の女子生徒を取り巻く、両親をはじめとした親族。
誰もが邪悪で愚かだ。
彼女は、自分に流れているのと同じ血を断つという目的のために、
親族を次々に殺害していく。
それだけの物語だ。

親族の品のなさ、卑しさ、小賢しさ、しつこさなどを
徹底的に書き切っている。
コメディ感さえある。
そして、ひたすら殺害を進めていく。
その勢いが凄まじい。

思想や哲学やメッセージ性みたいなものが一切ないのが良い。
圧倒的な展開に引きずられ、嫌なのに読まされてしまい、
最後は何も残らない。
ある意味鮮やかでもある。
それだけに、エンディングの失速感というか、
彼女の強烈なキャラクターが、最後によれたのがやや残念。

■東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」(2017年)
   
僕が殺した人
1980年代の台湾と2015年のアメリカが舞台。
1980年代の台湾で、ケンカや遊びに明け暮れる悪ガキ4人。
複雑な家庭環境、海外からの文化の流入、混沌とした台湾社会で、
悪ガキ4人は成長していく。
しかし、その成長は歯車を狂わせてもいく。
そして2015年。
彼らは全く異なる環境で、全く異なる立場にいた。

泥臭いのにクールな東山ワールドを楽しめる筆致。
愚かで、馬鹿馬鹿しく、ハチャメチャではあるが、
ちょっと詩的で疾走感のあるスタイリッシュな文体。
こういう文章を読んでいるとワクワクする。

とりわけ台湾編の出来事は非常に克明に描かれている。
エピソードのひとつひとつの掘り下げ方がすごい。
アメリカ編の後半、「そっちだったのか」と意表を突かれた。
ミステリアスな要素もあるし、深みもある。
読み終えて1か月も経っていないが、再読したいと思っている。

                      ◆

不調打開のためには、何かを始めることより、
まず、何かを変えるか、何かをやめるかだろう。
先日、実家に帰ったら、過去になんやかんやのお返しでもらった
未使用のバスタオルがとんでもなくたくさんあったので、
数枚持って帰ってきた。
そして、我が家のバスタオルを総入れ替えした。
増やしてはダメだ。
バスタオルのアップデイトでまずは様子を見よう。


4月に岩見沢に移り住んでから、
一度もブックレヴューをしていなかった。
かといって、読書をしていなかったわけではない。
月に3、4冊のペースで何がしかの作品は読んでいた。

岩見沢市の図書館にも何度か足を運んだ。
私レベルの読者にとっては不満のない程度に蔵書があり、
大変重宝している。

面白い作品に出会うと、自宅での生活が落ち着く。
就寝前、静かに集中して読書を楽しめる時間があると、
健全な夜と安定した朝を迎えられる。
或る意味、読書は私にとって、いい薬なのかもしれない。

それでは岩見沢に住んでから、楽しめた5作品を。

■米澤穂信「真実の10メートル手前」(2015年)
   
真実の10メートル
若手女性フリージャーナリストの取材物語。
彼女の毅然とした取材ぶりを、
淡々と、それでいて深みのある筆致で描いており、
締まりがあって、ぐいぐいと引き寄せられていく

彼女の推理が的確すぎて、そんなにうまくいくか、
と思うところはあるが、
事件の裏に隠された人間模様を丁寧に描いており、
落ち着いて、ゆっくりと咀嚼するように読めた。

映像化されそうなキレの良さとキャッチ―さのある作品だが、
映像化されると、なんとなく安っぽくなるし、
俳優のイメージがついてしまい、想像を破壊する。
映像化されず、小説でシリーズ化していただとことを願う。

■住野よる「よるのばけもの」(2016年)
   
よるのばけもの
夜になると全身を黒い粒で覆われた巨大な化け物に
変身してしまう男子中学生の話。
その姿がイメージしにくく、また、化け物になる理由も触れられず、
序盤は雲をつかむような気持ちで読み進めることになる。

ある夜、化け物の姿で通っている中学校へ行くと、
普段いじめを受けている同級生の女子に会う。
そこから始まる二人の交流と、中学生ならではの嫌な派閥関係は、
苦しく切ない内容だが読ませてくれる。

■木皿泉「昨夜のカレー、明日のパン」(2013年)
   
昨夜のカレー
7年前に夫は25歳で亡くなった。
残された妻は、その後もずっと夫の父親と暮らしている。
妻には現在恋人がいる。義父にも紹介している。
なのに義父との距離感に居心地の良さを感じ、
それを失いたくないと思い、再婚には前向きではない。

妻と義父と亡くなった夫。
その三人のエピソードのほか、三人にまつわる人々も多く登場する。
「それでいいんだよ」的な、肩の力が抜けたほんわかした内容。
現実はこうはいかないよなぁ、と思いつつも、
丁寧な心理描写と流れるような筆致で、
温かみのある作品に仕上げている。

■薬丸岳「ガーディアン」(2017年)
   
ガーディアン
その中学校にはスマートフォンでつながった生徒達による
「ガーディアン」という組織がある。教師も親も知らない。
「ガーディアン」は、学校の平和をおびやかす生徒を
あらゆる方法で制裁、排除し、学校の規律を保っていく。

しかし、あまりに平和なことに逆に違和感をおぼえた新任教師が
がーディアンの存在を知り、実態を解明していく。
前半は登場人物が多すぎてわけがわからないが、
中学生の闇の部分にどんどん引き込まれていく。
先が知りたくて、夜の読書タイムが待ち遠しくなった。

■柳美里「人生にはやらなくていいことがある」(2016年)
   
人生にはやらなくても
タイトルどおりの内容というよりは、
著者の自叙伝的なテイストで、性格や人生観が色濃く出ている。

在日韓国人であること、貧乏生活、高校を1年で中退し、
東京キッドブラザーズに入団、その後劇作家に転身、
東日本大震災後に鎌倉から南相馬市に転居等々、
激動の人生が綴られているわけだが、とにかくぶっ飛んでいる。
非凡な方だなと。勇気の塊だなと。

平凡な私などは、こんな考えはできないし、
こんな覚悟はできないなと感じるところが多かったが、
人は他者を取り込んで成長する、という話は大変共感した。
他者との関わりの中で、影響を受けたり、真似をしたり、
あるいは受け入れなかったりして自分は作られていく。

出会えるのか、出会えないのか。
出会ったとして、それを活かせるのか、活かせないのか。
自分だけの小さな世界に閉じこもっていては、
鈍化するし、退化していくのかもしれない。
自分は他者でできている。
そういうことなんだな。


三連休だった。
ほとんど家の中で過ごした。
三連休のうちの一日は大人の遠足をする予定だったが、
ウイークデーの疲れと、「引越すんのか~」という面倒な気持ちと
落ち着かなさに浸食され、遠足機運が高まらなかった。

かといって、引越の準備を大してするわけでもなく、
食べて、本を読んで、眠る、を繰り返して過ごした。
正月休みのようだ。

三連休三日目にして、CDと本のみ段ボールにつめた。
今、段ボールにつめられるのは、
今後2週間の間に使わないものに限られるし、
積極的に色々と詰め込んだら、
家の中が段ボールで窮屈になってしまう。
なので、CDと本のみで段ボール詰めをやめた。

そんな作業の中、売りに出す単行本や文庫本をセレクトし、
帯広のブック・オフへ。
20冊くらい売ったが、1,500円くらいにしかならなかった。
300円超えが4冊で、あとは全部30円以下だった。
これなら30円以下の本は、帯広市図書館に寄付すればよかった。
と思ったのは、ブックオフからの帰り道だった。

そういうわけで、今回はブックレヴュー。

■住野よる「また、同じ夢を見ていた」(2016年)

   また同じ夢を
小学生の女の子の話。
学校では孤立しながらも、いつも毅然としている。
嫌われることを恐れない。とにかく潔く、それが微笑ましくもある。

ファンタジー・テイストの設定で、ふわふわしていて、
何かしっくりこないところはあるものの、
彼女のキャラクターに引っ張られて面白く読めた。

いじめられっ子の同級生を支える場面は涙を誘う。
「幸せとは何か」が軸にある展開で、
大人にはリフレッシュ効果があるかも。
筆者のほかの作品も読んでみたくなった。

■住野よる「君の膵臓を食べたい」(2015年)
   
君の膵臓
というわけで、筆者のデビュー作をブックオフで買ってきた。
本屋大賞やダヴィンチなどで上位に入賞した作品でもある。

すい臓ガンを患った女子校生と同じクラスのさえない男子生徒の話。
彼女はわずかな余命を思い切り楽しもうと積極的に活発に過ごす。
それに付き合わされる男子生徒。

ガンを患っているにしてはやけに元気なこと、なぜ彼女はこの男子
生徒と過ごそうとするのかなど、違和感を覚えるところはあるものの、
途中からは彼女に死んでほしくないと思いながら読んだ。

文章密度は薄目で、上滑り感があるし、都合もいいが、
先を知りたくてすいすい読める。
小説や文学を敬遠気味の方も入りやすい内容だと思う。

■辻村深月「島はぼくらと」(2013年)
   
島はぼくらと
瀬戸内海にある小さな島に住む高校生4人を通じて、
島での生活、しきたり、いざこざ、本土との関係などを描いた作品。
辻村さんらしい丁寧さ、広がり、安定感、読みやすさがキープ
されており、小説として立派な作品。

残念だったのは、気になるような土台が様々設定されたのに、、
その上に何も構築されない感じがしたこと。
伏線だと思ったところが、その後触れられず流されたような。

高校を卒業した彼らの物語も描いてほしい。
その先を知りたくなるような魅力的な話だったのは間違いない。
ただ、小説のジャケットはいただけない。
登場人物を視覚でイメージさせるのに私は反対だ。
映画化されて、そのキャストの写真が文庫の帯に載っていると、
自分の想像を制限されたようでいい気持ちはしない。
実際、映像化を視野に書いている小説もあるだろうが。
などと言いつつ、この作品は映像向きのように思う。

■太田紫織「あしたはれたら死のう」(2016年)
   
あしたはれたら
十勝大橋から十勝川に飛び降り自殺を図った高校生の男女。
男子は亡くなり、女子は助かった。
ところが、ここ半年の記憶が無くなり、自殺の理由もわからない。
彼女は少しずつ記憶を取り戻していき、自殺に至った経緯を知る。

彼女の住まいは音更町、高校は帯広市。
つまり十勝が舞台の作品であり、
その理由だけで長崎屋4階の喜久屋書店で購入。
柏林台や緑が丘公園、それに長崎屋が長野屋とアレンジして
登場するが、全体的にあまり十勝の空気や風土を感じなかったのは残念。
とはいえ、十勝を舞台にしてくれたことが嬉しい。

不愛想でありつつも決然とした主人公のキャラは面白く、
自殺未遂後、敵視してくるクラスメートや教師、そして家族と
戦いのような日々を送る様子は、なかなか読ませてくれる。
筆者は音更に住んでいる、あるいは住んでいたと聞いたことがある。
また十勝作品を書いていただきたいと願う。

                     

今回の4作品の表紙はいずれもアニメ絵だった。
近年はこのパターンが増えているような気がする。
アニメ的なライトなイメージを与えるためなのだろうか。

最近、アニメというか、漫画チックだなと思ったのが
サンシャイン池崎氏のパフォーマンスだ。
お笑い番組やバラエティ番組はあまり見ないので、
サンシャイン池崎という人が売れてきているのは、
なんとなく感じるだけで、パフォーマンスをきちんと
見たことがなかった。

たまたまYoutubeで見かけた。
自己紹介だけで一ネタにしてしまうことがなんとなく面白く、
様々なネタを見ているうちに、
ですます体で、わかりやすく話すことや、
動きのキレとその裏側にある体調管理、
それと、いい意味でのくださらなさに妙な好感を持った。
特にトランプの手品ネタは馬鹿馬鹿しさのポイントが素晴らしい。

彼のパフォーマンスは漫画やアニメを実演しているようだ。
単純に面白い。
あんなに全力で「イェーイ」をすることに感動さえおぼえた。
ちょっと憂鬱で、落ち着かない気持ちが、
彼の芸によって緩和された。
レスキューしてくれるものは色々とある。
前を見なくちゃいけない。



| HOME | Next

Design by mi104c.
Copyright © 2018 トゥナイト今夜もRock Me Baby, All rights reserved.