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夕方から降り出した岩見沢の雪は、
今シーズン初の積雪を記録するだろう。
スニーカーで外を歩けない季節がやってきた。

慣れてしまえば、そういうものだと気にならなくなるが、
毎年のことながら慣れるまでが面倒くさい。
今週末は雨と雪で荒れるらしい。
それでもライブは楽しみたい。

■日時 2017年11月18日(土)19時
■場所 とまと畑(札幌市中央区南4東3 ピープルⅢ1F)
■料金 お店でオーダーした分の料金
■出演(出演順・敬称略) 
 もりのきらわれもの/ゆうこり/Ryo&Ryoko
 激しい雨/MAI/プレレファ/Gold.Tree


札幌に出かけてゴキゲンなロックをして、
その後は暖かい部屋でゴキゲンなアルコールを味わいたい。
よろしくお願いします。

                   ◆

さて今回はブックレヴュー。
紹介する4冊、どれも楽しめた。

■垣谷美雨「嫁をやめる日」(2017年)
     嫁をやめる日
 タイトルに惹かれて読んでみた。
 夫が病気で急死。子供はいない。一人残された女性は46歳。
 しかし、夫とは心が通わず、同居していながら
 別居しているような状態だった。
 亡くなっても悲しさはなく、むしろ自由になれた気がした。

 ところが、夫が亡くなってから、
 夫の親がやけに干渉してくるようになる。
 生前の夫が中学の同級生だった女性に
 毎月お金を振り込んでいたことも判明。
 自由になれたと思いきや、むしろ不自由になっていく毎日。

 夫婦であったがゆえの様々なしがらみによって、
 死別してから逆に窮屈になっていく過程が、
 丁寧ながらすっきりと描かれており非常に面白く読めた。
 垣谷さんの作品は初めてだったがアタリだった。

■桐野夏生「夜の谷を行く」(2017年)
    
夜の谷
 連合赤軍のメンバーだった、現在は60代の女性。
 連合赤軍から逃亡したものの、逃亡中に逮捕され5年余り服役。
 その後は静かに暮らしていたが、
 連合赤軍指導者だった永田洋子の獄中での病死を契機にして、
 元メンバーとの再会を始める。

 フィクションではあるが、連合赤軍メンバーが
 実名で語られており、リンチ殺人の描写もある。
 主人公はそれを一歩離れたポジションで見ていた、
 という設定だが、死体の運搬に関わっていた。
 
 連合赤軍の一連の事件の報道について、
 私は原体験での記憶が全くない。
 それだけに、この作品を読んで連合赤軍のあり様に衝撃を受けた。
 主人公の女性は、クールでありつつも、
 のほほんとした雰囲気で描かれており、
 桐野さんらしいキャラづくりが冴えている。
 ああいう結末になるとは思わなかった。

■柚月裕子「合理的にあり得ない」(2017年)
     合理的に
 柚月さんらしからぬ非常にライトでポップな作品だ。
 美貌ながら、ちょっとコミカルな女性探偵が、
 思いもかけぬ方法で次々と依頼をこなしていく短編。
 
 テレビドラマを文章化したようなテイストであり、
 すいすいと都合よく展開しがちではあるが、
 ストーリの中にしっかり引き込んでくれる。
 
 助手の男性もかなりユニークで、
 主人公の女性探偵とともに、相応しい役者を起用して
 映像化したら、結構な人気ドラマになるのでは。
 しかもシリーズ化の可能性も合理的にあり得るだろう。

■佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」(2016年)
     明るい夜に
 大学を休学し、コンビニエンスストアでアルバイトをしながら
 一人暮らしを始めた男の一年間の物語。
 ストーリーの軸になっているのは、
 アルコ&ピースのオールナイトニッポン。
 主人公はその番組のハガキ職人である。

 ラジオの深夜放送好きには、たまらない内容だ。
 私もその一人であり、ノンフィクションのように読めた。
 ハガキ職人は趣味の域ではなく、
 その番組を軸に、色々なことを犠牲にしながら、
 日々の生活を送っていることを再認識した。

 雑な言い方をすれば、ラジオヲタクの話であるが、
 閉ざしていた心を開いていく青春小説とも言える。
 読者を選ぶ作品かもしれないが、
 ラジオ好きな冴えない男をクローズアップしたことが嬉しいし、
 筆者の着眼点の良さに敬意を抱く。

                      ◆

もし私が音楽活動で有名になり、
2年おきか3年おきのペースでアルバムをリリースし、
毎年全国ツアーをやり、
年に2回くらいテレビの地上波放送に、
年に4回くらいテレビのBS放送に出演するとともに、
週に一回、HBCラジオで1時間番組を担当し。
週に一回ブログを更新しているとする。

そういう状況で、街角で不意に私のことを知っている、
私が知らない方から声をかけられたとする。
その時言われて最も嬉しいのは、
「ファンです」、
「2年前に出したアルバム持ってます」、
「この前、SONGSに出てたの見ました」、
「浅野忠信さんとの対談読みました」、などではない。

「ラジオ聴いてます」が一番うれしいような気がする。
ラジオの結びつきは強い。



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岩見沢市の日の出は午前5時過ぎとなり、
日の入りは午後6時前になった。
秋には秋の良さがある。
空知での初めての秋を楽しみたい。

さて今回はブックレヴュー。

■井上荒野「夜をぶっとばせ」(2012年)
    
20170905_夜をぶっとばせ
なぜこの夫と結婚してしまったのかという疑問とあきらめ。
息子は学校でイジメを受けており、娘は過度の偏食。
無気力で怠惰な生活をしている35歳の妻は、
次第に出会い系サイトにはまり、家庭崩壊へと向かう。

やがて二人は離婚。
夫は元妻の友人女性と再婚。
散歩中にたまたま寄った公園で、
元妻は和太鼓に合わせて踊っていた。

このように設定がぶっ飛んでいる。
何を伝えたかったのかよくわからないまま読み終える。
しかし、それは全く問題ではない。
ストーリー構成と心理描写がとにかく上手い。

淡々としているのに強くエネルギーを感じ、
最後は「この物語はなんだったんだろう?」と思う。
なのに面白い。
馬鹿馬鹿しいような、核心を突かれてドキッとするような、
ゆらゆらしているのに不思議と読み応えがある。
なお、タイトルとは裏腹にストーンズにまつわる場面はなかった。

■高野和明「ジェノサイド」(2011年)
20170905_ジェノサイド上 20170905_ジェノサイド下

アフリカ大陸のコンゴ民主共和国で発見された「アキリ」という
新種の生き物を巡り、
アメリカ政府、民間の雇われ兵、人類学者、
新薬開発に苦闘する大学院生などが複雑に交差する。

「アキリ」は人間をはるかに超える知能を持つ人間の形状した生き物。
アキリが成長し、子孫を増やしたとき、
人間はアキリに支配されるとの恐怖から、
アメリカ政府はアキリ抹殺を図る。
アキリを捕まえようとする者と救おうとする者の
追いつ追われつの展開がスピーディに繰り広げられる。

薬開発の専門的なことやコンピュータの仕組み、
アフリカのジャングルにおける移動状況など、
なんだかよくわからず、読み飛ばすしかない箇所も少なくはないが、
緊張感が途切れない、実にスペクタクルな世界に引きつけられる。

■柚月裕子「慈雨」(2016年)
    
20170905_慈雨
定年退職をした元警察官が、
妻とともに四国八十八箇所のお遍路の旅に出た。
旅の途中、定年前の勤務地で幼女殺害事件が発生する。
それは16年前に自らが関わった事件と酷似するものだった。
元警察官はお遍路まわりをしながら、元部下から捜査の状況を
連絡してもらい、16年前の後悔と向き合っていく。

落ち着きのある、しっかりとした筆致で、きちんと読ませる。
ただ、事件の真相が少しずつ明らかになっていく状況で、
唐突に現在四国のどのあたりにいるのかが挿入される。
それがちょっと不自然で、流れを止める感じがしたし、
私には四国の景色や雰囲気があまり見えてこなかった。
四国に詳しい人ならば楽しめるかもしれない。

また、元警察官は妻にも元部下に対してもちょっと横柄だ。
にもかかわらず献身的で明るい妻と誠実な部下。
贖罪と再生をベースにした重厚な作品だが、
元警察官の偉そうな態度がやけに鼻についた。
これといった盛り上がりもなかったかなと。
この作品は心にしみる人間ドラマとして一般的な評価も高い。
私にとってハズレ作品のない作家でもある。
だが、この作品はちょっと合わなかった。

■馳星周「不夜城」(1996年)、「鎮魂歌」(1997年)
20170905_不夜城 20170905_鎮魂歌
いずれも新宿歌舞伎町における中国人ヤクザの闘争を描いた作品。
90年代の日本を代表する小説だ。
なのに、これまでなんとなく読んでみる気にならなかった。
その最大の理由は、登場するのはほとんどが中国人で、
人名の読み方が頭に入らず、自分の中でストーリーの土台を
しっかりと築くことができないと危惧したからだ。

古い本の整理をしていた2017年7月。
だいぶ前に買ったものの、読まないまま保管していた「不夜城」を発見。
他に読みたい作品もなかったので、
中国人名の読み方アレルギーを抱えつつもトライしてみた。
読み始めてすぐにアレルギーが発症したが、
自分で独自の呼び名を設定しなんとか読み進めた。
しばらくは忍耐を要したが、30ページほどで気にしないことにした。

実に面白かった。
クールでシャープな文体、中国的な義理と人情、
日本における中国人ヤクザのあり方、同性愛等々、
淀みなくスピーディに緊張感をもって展開する。

すっかり引き込まれ、「不夜城」を読み終えたら、
その続編である「鎮魂歌」もすぐに読みたくなり、
読み終えたその日にブックオフ岩見沢店へ。
まずブックオフに行ってしまうところがしょぼい。

ブックオフ岩見沢店には売っていなかった。
ならば新品をと、ゲオとツタヤに行くも置いていなかった。
結局、後日、岩見沢市図書館で単行本を借りた。
古い本であり、相当貸し出されたのだろう、
かなり汚れていたし、表紙と本体が分離気味だった。
本屋には売っていないが、図書館に行くとある。
地方の書籍事情あるあるだ。

「鎮魂歌」も読み応えがあった。
「不夜城」の主人公が脇役になり、というか裏で糸を引く役柄で、
格段にワルになっていた。
グロテスクな場面も少なくない濃密な筆致だ。
面白かった。

                                            ◆

地方の町に出かけると、特にクロスバイクで訪れたり、
無人駅巡りをしている際に気づくのだが、
本屋をほとんど見かけない。
回転の早い雑誌類はコンビニで売っているし、
人口減少やネット購入の普及からすると当然といえば当然だ。

一方、小さな集落であっても理美容室はある。
シャッターが多い町並みの中で、
理美容室が結構あるように感じたことがないだろうか。
100人くらいしか住んでいないような集落でも
しっかり存在していたりする。

また、意外なのが、営業している商店がわずかな小規模市町村でも、
なぜか精肉店がきちんと存在しているのを目にする。
自転車屋も地味に残っている町は多い。
アナログ対応でなければならないものは根強い。
アナログ対応ができる音楽活動も重要だ。
最後に残るのはアナログかもしれない。


まずはライブのお知らせを。

日 時 2017年8月5日(土)19時
場 所 G-HIP(札幌市豊平区平岸3条9丁目)
■料 金 2,500円飲み放題又は1,500円飲み物別
■出演者 THE HEART OF STONE ほか

ライブ2日前の今日、やっとライブの基本情報について連絡があった。
ザ・ハート・オブ・ストーンの出演は19時予定。
今日言われても、という感じだが、お知らせしておきます。
楽しんできます。
IMG_1456.jpg
さて今回はブックレヴュー。
読み応えのある本が揃いました。

■早見和真「イノセント・デイズ」(2014年)
   
イノセントデイズ
放火殺人犯として死刑囚となった女性。
幼少の頃に虐待を受け、中学生で窃盗をして、ストーカーになった等々、
テレビ、新聞、週刊誌は、彼女の人生を面白おかしく誇大に取り上げた。

しかし、事実は違った。
かばい、助け、身代わりになるなど、自ら不幸を請け負うような生き方。
そして、彼女見殺しにした親族や同級生。
苦しく辛い物語だ。
と同時に、何ら反論せず、悪い意味で状況を受け入れてしまう彼女が
歯がゆくなる。

登場人物それぞれのキャラクターが立っている。
特に彼女に罪をかぶせておきながら、
後悔や恐怖に苦しみ、彼女との関わりを消したがる面々の心理描写は
読み応えがある。
変に後腐れのない淡々としたエンディングも良い、ちょっと切ないが。

■青島武「追憶」(2017年)
   
追憶
小樽市銭函で偶然知り合った少年3人。
彼らは楽しく夏休みを過ごすが、とある事件が発生。
3人は秘密を共有する関係になりつつ、事件後に離ればなれになる。

それから30年。
3人は、刑事、被害者、容疑者という立場で再会する。
彼らは30年前の事件に縛られ、とらわれ、大人になっていた。

舞台が銭函のほか、札幌、江別、石狩なので親近感をもって読めた。
ただ、北海道弁がよろしくない。
頻繁にある話だが、「その言葉、そういう言い回ししないから」の連発。
特に、「~っしょ」と「ゆるくない」の使い方は完全にずれていた。

物語としてはおもしろい。入り込んで読めた。
心情の掘り下げや表現の妙味などには乏しい。
また、陰の部分が多く、背景の重さがついて回る内容である。
しかし、軸がぶれずシンプルにどんどん展開させていくので、
ほぼ一気読みだった。

■伊坂幸太郎「サブマリン」(2016年)
   サブマリン
家庭裁判所調査官と調査対象である少年達を取り巻く話。
家庭裁判所調査官は、離婚などの事案や少年犯罪事案などの原因や
背景を調査する国家公務員。

書きぶりは軽妙で洒脱でコミカル。
大っぴらにはできないが心の中に潜在的に存在している正義や悪意、
解決しようのない世の中の矛盾など、
そのあたりの際どいところを気高くクールに描いている。
まさに筆者の世界観を楽しめる作品だ。

主人公の調査官は、自分勝手で面倒な存在にもかかわらず、
協力者がたくさんいて、問題をスマートに収束させていく。
簡単に言えばかっこいい。
私としては出来過ぎというか、整い過ぎな印象ではあるが、
彼の言動を楽しめる人は多いだろう。

■わたなべぽん「やめてみた。」(2016年)
   
やめてみた
漫画の単行本である。
漫画家であり妻である筆者の実話。
炊飯器、テレビ、掃除機、ゴミ箱、メイク、コンビニ、夜更かしなど
日常生活を取り巻く様々なことをやめてみたら、
結構良かったという話だ。

最も共感したのは「夜更かし」の章。
何もなかった一日が物足りなくて、なんとなく夜遅くまで起きている。
起きていたら、何か楽しいことが起こったり、面白いものに出会ったり
するのではないかと漠然と思いながら、だらだらと過ごす。
それをやめてみた、ということが描かれている。

私もこうした経験がある。
根拠も準備もなく夜に期待してもだめだ。
あきらめて、というか割り切って寝ること。
体調が良くなるし、朝の時間が効果的に使えるようになる。
ところが問題なのは、
早く寝ようとするとなかなか眠れず、
別のストレスやリスクが発生することだ。

やめたことによる隙間をどう埋めるかだ。
埋めずに済めば、それも有りだが、うまくコントロールでききるのか。
そう考えると、やめられるかどうかは精神的な部分が
大きく影響するのかもしれない。

やめる、ということは、始めることでもある。
やめる、ということを始めることなのだ。
わからなくなってきた。
早く切り上げて寝よう。
と思うとなかなか眠れない。
眠るのをやめてみるか。


7月29日土曜日に帯広へライブに行く。
ゴールデンウイーク以来になるが、その時は日帰りだったため、
ゆっくりとできなかったが、今回は一泊する予定だ。
それなりにお酒を飲み、それなりの時間まで、
夜と朝の帯広を楽しんでこようと思っている。
20170727.jpg
ところが宿泊予約ができずにいる。
ホテルが空いてない。
というか、空いているホテルはあるが、べらぼうに高額だ。
土曜日の帯広はホテルを確保できないのがスタンダードになったのか。

こうなりゃ直前キャンセルが発生することを想定して、
前日あるいは当日予約でトライするしかない。
確保できなければ車中泊だ。
車中泊では翌日へのダメージが大きい。
せっかくの十勝サンデーを不満足な体調で過ごすのはもったいない。
なんとかホテルを確保したいが。

できることなら、OCTVが見られるホテルがいい。
「とかち青空放送局」と「十勝しんや倶楽部」を観たい。
これらの番組をだらっとした体勢で、なんとなく見ていた頃が恋しい。
十勝は、そこに普通にあるものが決定的に素晴らしい。

                      ◆


さて、今回はブックレヴュー。
この2か月ほどは、心を落ち着け、生活を安定させるために、
おとなしく読書をした時間が多くあった。
そんな読書の季節の中で満足度の高かった4冊を。

■雫井脩介「検察側の罪人」(2013年)
   検察側の罪人
彼は過去に幼女殺しの疑いがかかるも、
決定的な証拠がなく、逮捕に至らなかった中年の男。
その事件は既に時効となっている。
しかし、未だに彼が犯人だと思っているベテラン検事がいた。

老夫婦の刺殺事件が起こる。
老夫婦の関係者を洗い出すと、その中に例の中年男の名があった。
ベテラン検事は中年男を犯人に仕立てるかのような強引な言動が
目立ち始める。
それに疑問を感じ、独自に動き出す部下の検事。

部下検事の容疑者に対する追及は不快な気持ちになり、
ベテラン検事の暴走ぶりに苛立ってくる。
なのに読めてしまうし、読みたくなる。
嫌悪感はあるのに拒否できない文章の強さがある。
最終的に真相がうやむやなところはあるが、
それもまたミステリアスで、ありかなと。

■佐藤正午「月の満ち欠け」(2017年)
   月の満ち欠け

瑠璃(るり)という名前を持つ複数の女性を巡る物語。
序盤は登場人物の関係が見えず、
雲をつかむような気持ちで読んでいくしかないが、
ひとり一人の生い立ちを語る章に入ると、
登場人物を結ぶ線の色が次第に濃くなっていき、
すっかり引き込まれた。

そうした「つながり」が物語の核ではあるが、
それぞれの瑠璃の数奇な人生が、ときに異様に、ときに切なく語られ、
それだけでも成り立つような面白さがあった。

筆致が滑らかだ。
流れるように読める。
現実的ではない設定、展開ではあるが、
そこに疑問は感じないし、非現実的だから良くないということもない。
不可思議で奇怪だが、どこかロマンチックなストーリーだ。

■新堂冬樹「血」(2017年)
   
新堂冬樹/血
強烈だ。
高校一年の女子生徒を取り巻く、両親をはじめとした親族。
誰もが邪悪で愚かだ。
彼女は、自分に流れているのと同じ血を断つという目的のために、
親族を次々に殺害していく。
それだけの物語だ。

親族の品のなさ、卑しさ、小賢しさ、しつこさなどを
徹底的に書き切っている。
コメディ感さえある。
そして、ひたすら殺害を進めていく。
その勢いが凄まじい。

思想や哲学やメッセージ性みたいなものが一切ないのが良い。
圧倒的な展開に引きずられ、嫌なのに読まされてしまい、
最後は何も残らない。
ある意味鮮やかでもある。
それだけに、エンディングの失速感というか、
彼女の強烈なキャラクターが、最後によれたのがやや残念。

■東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」(2017年)
   
僕が殺した人
1980年代の台湾と2015年のアメリカが舞台。
1980年代の台湾で、ケンカや遊びに明け暮れる悪ガキ4人。
複雑な家庭環境、海外からの文化の流入、混沌とした台湾社会で、
悪ガキ4人は成長していく。
しかし、その成長は歯車を狂わせてもいく。
そして2015年。
彼らは全く異なる環境で、全く異なる立場にいた。

泥臭いのにクールな東山ワールドを楽しめる筆致。
愚かで、馬鹿馬鹿しく、ハチャメチャではあるが、
ちょっと詩的で疾走感のあるスタイリッシュな文体。
こういう文章を読んでいるとワクワクする。

とりわけ台湾編の出来事は非常に克明に描かれている。
エピソードのひとつひとつの掘り下げ方がすごい。
アメリカ編の後半、「そっちだったのか」と意表を突かれた。
ミステリアスな要素もあるし、深みもある。
読み終えて1か月も経っていないが、再読したいと思っている。

                      ◆

不調打開のためには、何かを始めることより、
まず、何かを変えるか、何かをやめるかだろう。
先日、実家に帰ったら、過去になんやかんやのお返しでもらった
未使用のバスタオルがとんでもなくたくさんあったので、
数枚持って帰ってきた。
そして、我が家のバスタオルを総入れ替えした。
増やしてはダメだ。
バスタオルのアップデイトでまずは様子を見よう。


4月に岩見沢に移り住んでから、
一度もブックレヴューをしていなかった。
かといって、読書をしていなかったわけではない。
月に3、4冊のペースで何がしかの作品は読んでいた。

岩見沢市の図書館にも何度か足を運んだ。
私レベルの読者にとっては不満のない程度に蔵書があり、
大変重宝している。

面白い作品に出会うと、自宅での生活が落ち着く。
就寝前、静かに集中して読書を楽しめる時間があると、
健全な夜と安定した朝を迎えられる。
或る意味、読書は私にとって、いい薬なのかもしれない。

それでは岩見沢に住んでから、楽しめた5作品を。

■米澤穂信「真実の10メートル手前」(2015年)
   
真実の10メートル
若手女性フリージャーナリストの取材物語。
彼女の毅然とした取材ぶりを、
淡々と、それでいて深みのある筆致で描いており、
締まりがあって、ぐいぐいと引き寄せられていく

彼女の推理が的確すぎて、そんなにうまくいくか、
と思うところはあるが、
事件の裏に隠された人間模様を丁寧に描いており、
落ち着いて、ゆっくりと咀嚼するように読めた。

映像化されそうなキレの良さとキャッチ―さのある作品だが、
映像化されると、なんとなく安っぽくなるし、
俳優のイメージがついてしまい、想像を破壊する。
映像化されず、小説でシリーズ化していただとことを願う。

■住野よる「よるのばけもの」(2016年)
   
よるのばけもの
夜になると全身を黒い粒で覆われた巨大な化け物に
変身してしまう男子中学生の話。
その姿がイメージしにくく、また、化け物になる理由も触れられず、
序盤は雲をつかむような気持ちで読み進めることになる。

ある夜、化け物の姿で通っている中学校へ行くと、
普段いじめを受けている同級生の女子に会う。
そこから始まる二人の交流と、中学生ならではの嫌な派閥関係は、
苦しく切ない内容だが読ませてくれる。

■木皿泉「昨夜のカレー、明日のパン」(2013年)
   
昨夜のカレー
7年前に夫は25歳で亡くなった。
残された妻は、その後もずっと夫の父親と暮らしている。
妻には現在恋人がいる。義父にも紹介している。
なのに義父との距離感に居心地の良さを感じ、
それを失いたくないと思い、再婚には前向きではない。

妻と義父と亡くなった夫。
その三人のエピソードのほか、三人にまつわる人々も多く登場する。
「それでいいんだよ」的な、肩の力が抜けたほんわかした内容。
現実はこうはいかないよなぁ、と思いつつも、
丁寧な心理描写と流れるような筆致で、
温かみのある作品に仕上げている。

■薬丸岳「ガーディアン」(2017年)
   
ガーディアン
その中学校にはスマートフォンでつながった生徒達による
「ガーディアン」という組織がある。教師も親も知らない。
「ガーディアン」は、学校の平和をおびやかす生徒を
あらゆる方法で制裁、排除し、学校の規律を保っていく。

しかし、あまりに平和なことに逆に違和感をおぼえた新任教師が
がーディアンの存在を知り、実態を解明していく。
前半は登場人物が多すぎてわけがわからないが、
中学生の闇の部分にどんどん引き込まれていく。
先が知りたくて、夜の読書タイムが待ち遠しくなった。

■柳美里「人生にはやらなくていいことがある」(2016年)
   
人生にはやらなくても
タイトルどおりの内容というよりは、
著者の自叙伝的なテイストで、性格や人生観が色濃く出ている。

在日韓国人であること、貧乏生活、高校を1年で中退し、
東京キッドブラザーズに入団、その後劇作家に転身、
東日本大震災後に鎌倉から南相馬市に転居等々、
激動の人生が綴られているわけだが、とにかくぶっ飛んでいる。
非凡な方だなと。勇気の塊だなと。

平凡な私などは、こんな考えはできないし、
こんな覚悟はできないなと感じるところが多かったが、
人は他者を取り込んで成長する、という話は大変共感した。
他者との関わりの中で、影響を受けたり、真似をしたり、
あるいは受け入れなかったりして自分は作られていく。

出会えるのか、出会えないのか。
出会ったとして、それを活かせるのか、活かせないのか。
自分だけの小さな世界に閉じこもっていては、
鈍化するし、退化していくのかもしれない。
自分は他者でできている。
そういうことなんだな。


三連休だった。
ほとんど家の中で過ごした。
三連休のうちの一日は大人の遠足をする予定だったが、
ウイークデーの疲れと、「引越すんのか~」という面倒な気持ちと
落ち着かなさに浸食され、遠足機運が高まらなかった。

かといって、引越の準備を大してするわけでもなく、
食べて、本を読んで、眠る、を繰り返して過ごした。
正月休みのようだ。

三連休三日目にして、CDと本のみ段ボールにつめた。
今、段ボールにつめられるのは、
今後2週間の間に使わないものに限られるし、
積極的に色々と詰め込んだら、
家の中が段ボールで窮屈になってしまう。
なので、CDと本のみで段ボール詰めをやめた。

そんな作業の中、売りに出す単行本や文庫本をセレクトし、
帯広のブック・オフへ。
20冊くらい売ったが、1,500円くらいにしかならなかった。
300円超えが4冊で、あとは全部30円以下だった。
これなら30円以下の本は、帯広市図書館に寄付すればよかった。
と思ったのは、ブックオフからの帰り道だった。

そういうわけで、今回はブックレヴュー。

■住野よる「また、同じ夢を見ていた」(2016年)

   また同じ夢を
小学生の女の子の話。
学校では孤立しながらも、いつも毅然としている。
嫌われることを恐れない。とにかく潔く、それが微笑ましくもある。

ファンタジー・テイストの設定で、ふわふわしていて、
何かしっくりこないところはあるものの、
彼女のキャラクターに引っ張られて面白く読めた。

いじめられっ子の同級生を支える場面は涙を誘う。
「幸せとは何か」が軸にある展開で、
大人にはリフレッシュ効果があるかも。
筆者のほかの作品も読んでみたくなった。

■住野よる「君の膵臓を食べたい」(2015年)
   
君の膵臓
というわけで、筆者のデビュー作をブックオフで買ってきた。
本屋大賞やダヴィンチなどで上位に入賞した作品でもある。

すい臓ガンを患った女子校生と同じクラスのさえない男子生徒の話。
彼女はわずかな余命を思い切り楽しもうと積極的に活発に過ごす。
それに付き合わされる男子生徒。

ガンを患っているにしてはやけに元気なこと、なぜ彼女はこの男子
生徒と過ごそうとするのかなど、違和感を覚えるところはあるものの、
途中からは彼女に死んでほしくないと思いながら読んだ。

文章密度は薄目で、上滑り感があるし、都合もいいが、
先を知りたくてすいすい読める。
小説や文学を敬遠気味の方も入りやすい内容だと思う。

■辻村深月「島はぼくらと」(2013年)
   
島はぼくらと
瀬戸内海にある小さな島に住む高校生4人を通じて、
島での生活、しきたり、いざこざ、本土との関係などを描いた作品。
辻村さんらしい丁寧さ、広がり、安定感、読みやすさがキープ
されており、小説として立派な作品。

残念だったのは、気になるような土台が様々設定されたのに、、
その上に何も構築されない感じがしたこと。
伏線だと思ったところが、その後触れられず流されたような。

高校を卒業した彼らの物語も描いてほしい。
その先を知りたくなるような魅力的な話だったのは間違いない。
ただ、小説のジャケットはいただけない。
登場人物を視覚でイメージさせるのに私は反対だ。
映画化されて、そのキャストの写真が文庫の帯に載っていると、
自分の想像を制限されたようでいい気持ちはしない。
実際、映像化を視野に書いている小説もあるだろうが。
などと言いつつ、この作品は映像向きのように思う。

■太田紫織「あしたはれたら死のう」(2016年)
   
あしたはれたら
十勝大橋から十勝川に飛び降り自殺を図った高校生の男女。
男子は亡くなり、女子は助かった。
ところが、ここ半年の記憶が無くなり、自殺の理由もわからない。
彼女は少しずつ記憶を取り戻していき、自殺に至った経緯を知る。

彼女の住まいは音更町、高校は帯広市。
つまり十勝が舞台の作品であり、
その理由だけで長崎屋4階の喜久屋書店で購入。
柏林台や緑が丘公園、それに長崎屋が長野屋とアレンジして
登場するが、全体的にあまり十勝の空気や風土を感じなかったのは残念。
とはいえ、十勝を舞台にしてくれたことが嬉しい。

不愛想でありつつも決然とした主人公のキャラは面白く、
自殺未遂後、敵視してくるクラスメートや教師、そして家族と
戦いのような日々を送る様子は、なかなか読ませてくれる。
筆者は音更に住んでいる、あるいは住んでいたと聞いたことがある。
また十勝作品を書いていただきたいと願う。

                     

今回の4作品の表紙はいずれもアニメ絵だった。
近年はこのパターンが増えているような気がする。
アニメ的なライトなイメージを与えるためなのだろうか。

最近、アニメというか、漫画チックだなと思ったのが
サンシャイン池崎氏のパフォーマンスだ。
お笑い番組やバラエティ番組はあまり見ないので、
サンシャイン池崎という人が売れてきているのは、
なんとなく感じるだけで、パフォーマンスをきちんと
見たことがなかった。

たまたまYoutubeで見かけた。
自己紹介だけで一ネタにしてしまうことがなんとなく面白く、
様々なネタを見ているうちに、
ですます体で、わかりやすく話すことや、
動きのキレとその裏側にある体調管理、
それと、いい意味でのくださらなさに妙な好感を持った。
特にトランプの手品ネタは馬鹿馬鹿しさのポイントが素晴らしい。

彼のパフォーマンスは漫画やアニメを実演しているようだ。
単純に面白い。
あんなに全力で「イェーイ」をすることに感動さえおぼえた。
ちょっと憂鬱で、落ち着かない気持ちが、
彼の芸によって緩和された。
レスキューしてくれるものは色々とある。
前を見なくちゃいけない。


まずはライブのお知らせを。

日時 2017年2月4日(土)17時30分スタート
場所 studio REST(帯広市大通南8丁目さいかわビルB1)
料金 前売1,000円、当日1,500円
出演(敬称略)
       池田正樹、さざなみしおん、ナホ、野久、越田達也、
       やままさ、箱崎恵、志不人、激しい雨

私、「激しい雨」は一人バージョンでの出演だ。
新曲を3曲放り込む予定で、とても楽しみだ。
新しいことにトライするのはワクワクする。
これまでよりホットかつ開放的にプレイするような気がしている。
よろしくお願いします。

                  ◆

さて今回は、2016・ブック・オブ・ザ・イヤー。
私が2016年中に読んだ小説の中から、
特に印象に残ったり、心が動いたような作品を紹介させていただく。

■柚木麻子「本屋さんのダイアナ」(2014年)
   2016_柚木
2016年は柚木さんの著書を5作品読んだ。
著者別では2016年トップの作品数だ。
なかでも一番心に残ったのが「本屋さんのダイアナ」。

小学三年生の時出会った二人の女の子。
一人はお嬢様で、一人は母子家庭で母はキャバクラ勤め。
そんな対照的な二人ながら親友になった。

ところが、中学、高校、成人と少女から大人になっていく中で、
ある誤解が生じ、二人は音信不通の絶好状態に。
後半は苦い場面も少ないが、主人公ダイアナの健気さというか、
瑞々しい心に胸をうたれました。

■近藤史恵「はぶらし」(2012年)
   2016_近藤
脚本家の女性(36歳独身)のところへ、ある夜突然、
それほど親しくもなかった高校の同級生(女性)から電話が。
一週間、居候させてほしい、仕事が見つかったら出ていく、と
しつこくせがまれる。

この同級生の図々しさと脚本家の葛藤にイライラするし、
どんどん悪い方向へ向かう展開にも嫌気がさすが、
脚本家の心理描写が面白い。

泊まりに来た初日、同級生は歯ブラシを持っていなかったので、
買い置きしておいた未使用のものを渡し、同級生は歯を磨いた。
翌日、同級生は歯ブラシを買ってきた。
それを脚本家にあげるのかと思いきや、
昨日使用した歯ブラシを返してきた。
そんな女性の話です。

■桜木紫乃「霧(ウラル)」(2015年)
   2016_桜木
昭和30年代から40年代にかけての根室における
政財界及びヤクザ業界と、それにまつわる女三姉妹のお話。

まず、この時代の根室は華やかであり、血気盛んであったことを
思わせる描写が多く、大変興味深かった。
「写真で振り返る昭和の根室」みたいな本が
図書館にあったら借りたい(その程度の興味か)。

共感や感情移入ができる内容ではないし、
男たちの抗争や女たち確執も、根本的な原因がよくわからないが、
北の最果ての地で昭和中期を生きた人々の混沌感だけで
十分に楽しんで読めた。

■東山彰良「イッツ・オンリー・ロックンロール」(2007年)
   
2016_東山
ロックバンドもの小説は描写が難しい。
言葉にすると薄っぺらになってしまう傾向がある。
この作品は地に足がついていた。
行間から音が聞こえてくるかのようだった。
筆者は心からロック・ミュージックが好きなのだろう。

博多に住む30半ばのバンドマンが、
事件に巻き込まれたり、ひょんなことから売れてしまったり、
また売れなくなったり、それでいて音楽はやめられず。
行きつ戻りつ、ロックにとりつかれた男の
ドタバタ&悲喜こもごもを描いている。

主人公が敬愛しているのが、スティービー・レイヴォーン。
この作品を読んだ影響で、結果的にレイヴォーンのCDの
BOXセットを購入するまで至った。

■井上荒野「ママがやった」(2016年)
   
2016_井上
井上さんの文体、表現、展開、場面の切り取り具合と省略加減。
実に素晴らしい。
私の感覚にぴたっとくるし、その巧さにため息が出る。

この作品は、72歳の夫を殺した80歳の妻と、その子供達の話。
乱暴な言い方をすると、特徴的なエピソードを盛り込んだ家族紹介の
ような内容で、ストーリーの軸になると思われた「夫殺害」が
完全にぼやけてしまっている。
しかし、そんなことはどうでもよくなる文章的な面白さがある。

あっけらかんとした家族である。
家族に対して無関心で、けろっとしている。
しかし実は全部知っている、というような毒々しさも垣間見られ、
うまいこと描くものだと、また感心してしまうのです。


7月も半ばになったのに、まだ掛け布団で眠っている。
ぎらつくような、あるいはムシムシとした暑さを迎える準備は
できているのに、音沙汰がない。

私が寒がりなせいでもあるが、夏場は乗り物や店内の冷房に苦しむ。
いや、夏だけではない。
乗り物と店内は年中寒い。
夏場は冷房を抑えてくれと思い、冬場は暖房を強くしてくれと思う。

チェーン店のレストランや居酒屋は特に冷房がきつい。
店員の方は半袖、こちらは半袖+長袖2枚。
もう少しお客さん寄りの温度設定に考慮していただきたいが。

ライブスペースも季節に関係なくどこも寒い。
ステージ上のプレイヤーが、「いやぁ暑いですね」と言う場面が時々あるが、
私はいつも心の中で、
「あなたは暑いでしょうが私は全然暑くないっす。同意を求められても…」
とつぶやいている。

さて、今回はブック・レヴュー。
よろしくどうぞ。

吉田修一「橋を渡る」(2016年)
     
20160714_橋を渡る
2015年の東京。
ビール会社の営業課長には不倫相手がいて、
家庭では高校生の甥っ子を下宿させている。
都議会議員の夫は賄賂をもらったのではないかと疑念をいだいている妻は
週刊誌の政治ネタか大好きで、ボランティア活動を趣味にしている。
大学教授の先進的な研究を熱心に取材するTVテレビディレクター。
その婚約者は不倫をしている。

特別じゃない、どこにもいる、いわゆる普通の大人達の日常に生じた
ズレや違和感や痛み。事態は次第に悪くなっていく。
そんな彼らは70年後(2085年)に結びつく。
70年後なので、彼らは既に他界しており、
その子孫などを登場させて、2015年とのつながりが語られる。

あの出来事が70年後にこういう作用をもたらしたのかと
面白く読めるのだが、
登場人物が多く、展開の幅が大きく唐突なため、
場面が変わると、その状況を理解するのに時間がかかり、
さくさくと読み進められなかったのが残念。

■米澤穂信「王とサーカス」(2015年)
      20160714_王とサーカス
フリーライターの20代の女性。
取材のために訪れたネパールの首都カトマンズで、
王族の大量殺害事件が勃発。
その真相を探るべく情報を集めていると、
現地で知り合った軍人の死体を発見する。

貧富の差が激しく、雑然として、ぎらぎらしていて、息苦しい。
そんなカトマンズの情勢や風俗が温度感をもって伝わってくる。
スクープを狙い、苦悩し、葛藤し、
ジャーナリストとして成長していく女性の心情もよく拾っており、
全体として丁寧で、よく整理されている。
読書を楽しめる良質な作品。

反面、濃密ではないためドキドキ感は薄い印象。
文章の滑らかさで楽しめるものの、
もう少しエンターテイメント性が欲しいかなと。

阿部和重・伊坂幸太郎「キャプテンサンダーボルト」(2014年)
     
20160714_キャプテンサンダーボルト
山形県と宮城県の県境にある「五色沼」の水にまつわる秘密をめぐり、
仙台在住、二十代後半のパッとしない男二人が、
なんだかよくわからないうちに厄介ごとに巻き込まれ、
怪しい外国人組織から追われる話。

小学校時代に好きだった特撮ヒーロー、憧れた車、高校時代の後悔。
そうした過去の夢と希望と挫折が、現在の行き詰まった生活と絡み合い、
危険を承知で一攫千金を狙う、壊れかけた男二人の
起死回生の物語でもある。

伊坂氏らしい切れ味のあるスタイリッシュな文体で、
テンポ良く展開する箇所は楽しめるのだが、
全体的に私の想像の範囲よりも少し上のところで話が進んでいくため、
自分の手の中になかなかストーリーを収められなかった。

井上荒野「つやのよる」(2010年)
     
20160714_つやのよる
「艶(つや)」という女性に関わった男達と、
その男達の周辺の者をめぐる物語。
彼女は男好きで気分屋で無愛想。
感情のままに好き勝手に生きてきた。
現在は病に伏し、余命はいくばくか。

艶の現在の夫は、彼女の男性遍歴を把握しており、
彼女が過去に関係した男達に、艶が余命わずかであることを伝える。
連絡をもらった男やその家族は疑心暗鬼になる。
水の底に沈んだはずの過去が浮上してきて波が立つ。
そうした心の揺れやざわめきを、ちょっとした仕草やセリフで
見事に表現している。うまいなあ、と素直に感心する。

内容云々ではなく、筆致の巧みさを楽しめる。
的確な言葉を引き出し、自在に操っている感じが気持ち良い。
「手練れ」の意味を教えてくれるような作品だ。
数年ぶりに手にした井上荒野さんの作品は当たりだった。

                                         

自宅でウイスキーをちびちび飲みながら読書をするのが楽しい。
飲酒読書だ。
なぜか集中力が増し、文字をつかむように追える感覚になり、
ページもアルコールも進む。

そして気づいたときには眠っている。
楽しいことをしていて知らぬ間に眠っている。
至福のときだ。
最高の展開だ。

目を覚ますと、テーブルの上のグラスには、
氷が溶けて薄くなったウイスキーが、なみなみに入っている。
もう飲めないのに、まだ飲めると思い込んで景気よくグラスに注ぎ、
そのままスリープしたのだ。
ちょっぴり後悔、けれども、ほんのり贅沢。
幸せ加減はこんな感じが丁度いいのかもしれない。


「リベンジ」という言葉がある。
和訳すると「復讐」だ。
ところが、2007年に松坂大輔氏が大リーグに進出し、
試合に敗れた際のインタビューで用いた「リベンジ」。
その時から、リベンジの意味が変節した。
「再挑戦」の意味で用いられるようになってしまった。

今は十勝のミニバレー大会で敗れた女性や、
馬券をはずした中年男が、何の迷いもなく「リベンジ」を使う。
もう「リベンジ」は和製英語だ。
カレーライスは和食であり、現代の母の味であるのと同じだ。

「リベンジ=再挑戦」はやはり違和感がある。
本来は「復讐」と訳されるように、「仕返し」的な意味の
ケンカ・テイストが漂う言葉に思えるからだ。
その意味では「リベンジポルノ」という使われ方は正しく感じる。

「違和感」といえば、「違和感を感じる」という言葉の使い方が
一般化しているように思うが、大変違和感をおぼえる。
達成感を感じる、絶望感を感じる、とは言わないだろう。

前置きが長くなった。
今回はブックレヴュー。
まずは、中学生による復讐の話。

■櫛木理宇「世界が赫に染まる日に」(2016年)
   世界が赫に
従兄弟がイジメによる暴行を受け意識不明になった。
そのショックから野球部を退部し、鬱屈した日々を送る男子中学生。
一方、クラスからも母親からも除け者扱いにされ、
15歳の誕生日に自殺をする計画を立てている男子中学生。
この二人が夜の公演で偶然出会い、
従兄弟に暴行を加えた中学生に復讐をする計画を立てる。

復讐をミスなく完遂させるため、
彼らは闇サイトなどに掲載されている別のイジメの加害者を
ターゲットにして予行練習をする。
それを繰り返すうちに、二人は次第に心境が変化し、溝が生まれていく。

今にも倒れそうな不安定感と、走り出したら止められない暴走ぶり。
暴力制裁の内容は酷いし、描写も生々しく、
壊れながらも突き進んでしまうさまは痛々しい。
ざらざらした気持ちでページをめくり、後味も悪い。
それでも最後まできっちりと読ませてしまう筆者の技術力の高さ。

イジメの凄惨さ、加害者優遇、少年法のあり方、
そんな様々な視点がありつつも、そこにこだわっていない感じで
ひたすら書き倒していく筆致。
エンディングも収まるところに収まっていない。
なんとも壮絶な作品だ。

■東山彰良「流」(2015年)
   東山・流 
台湾に住む17歳の男子高校生が大人に成長していく物語。
中学までは優秀だったが、高校でドロップアウト。
軍隊に入れられるも逃げだし、交際女性からは別れを告げられ、
悪友に振り回されながら、激動の台湾70S~80Sを生きていく。

たたみかけるように話は進む。
エネルギーをぶつけているような筆致で圧倒感がある。
ただ、油断をしていると置いていかれる。
この早い流れにのれれば、かなり面白い作品に感じるだろう。

苦慮したのは、主人公の「葉秋生」をはじめとして、
漢字三文字の似たような名前の人物が多数登場すること。
まず読めない。テキトーに読んでもそれが正しい読みなのかは不明。
人物の区別がつかなくなる。
それがストレスになり、前半は読んでいて中退したい気持ちにもなった。

主人公はピュアでストレートで常に混沌としている。
それを「疾走感」と捉えるか、「落ち着かない」と捉えるかは、
好みが分かれそう。
台湾・国民党と中国・共産党の関係、第二次世界大戦の出来事。
そうした歴史と猥雑な日常が絡み合い、混じり合いながら、
成長に向かう濃密な70s台湾が見えてくる。

■窪美澄「さよなら、ニルヴァーナ」(2015年)
   サヨナラニルヴァーナ
1997年に起こった神戸児童連続殺傷事件と
1990年代のオウム真理教の活動をモチーフに、
中学生の時に幼児を殺害し現在は29歳になっている男と、
それを取り巻く人々を描いた物語。

その男にはファンサイトがあり、彼が事件を起こした場所などを訪問する者
がいたり、現在はどこで働いているのかなど情報交換が行われている。
そんなファンの一人が、男に娘を殺害された母親と偶然に出会い、
不思議と心を通わせていく。
その距離が縮まっていく過程と双方が抱く葛藤の描写は引き込まれる。

ただ、筆者が第三者的な視点で描いているのは感じられるものの、
殺人者のファンの心理や行動はやはり不謹慎であり、
読んでいて気分が良くなることはない。
辛くなるし、やりきれなくなる。
ところが、その後の展開が気になり、ページをめくる手を止められない。

なお、タイトルからして、
グランジ・ロックな内容もちりばめられているのかと思いきや、
ニルヴァーナに関する表記は数行だった。

■柚木麻子「ランチのアッコちゃん」(2013年)
   ランチのアッコ
アッコちゃんは45歳独身。身長は173cmで髪型はおかっぱ。
小学生用教材を専門とする出版社の営業部長。
その会社に派遣社員として勤務する三智子。
三智子は毎日手作り弁当を持参。
アッコちゃんは毎日外食。しかも曜日によって行く店が決まっており、
毎週それを繰り返している。

そんな二人の昼食を一週間交換しないかと、アッコちゃんは三智子に提案する。
つまり一週間、アッコちゃんは三智子の手作り弁当を食べ、
三智子は曜日によってローテーションがあるアッコちゃん行きつけの店に行く。
それによって三智子は様々な体験と発見をし、
アッコちゃんの人柄を知り、また自分自身も前向きに変化していく。

4作の短編が収められている。
どの作品も都合良くハッピーなエンドをする傾向はあるものの、
滑らかな文章で、話の運びが上手いので、
大変読みやすく、読み速度も上がり、ぱっと読み終えてしまう。

短編ながらしっかりと起承転結がある。
上がったり下がったり、曲がったり折れたりしながら、
相応しい場所に行き着いていく。
さらっとしつつも、生き生きとした爽やかな作品だ。

                 ◆

忙しかったりしてなかなか本を読めないとストレスを感じる。
そういう人はそんなに多くはないだろう。
事実、年に一冊も小説を読まない人は少なくない。
つまり本は、なくても困らないものだ。

趣味とはそういうものだ。
自分にとっては欠かせないものだが、
他の人にとってはなくても差し支えはない。

家の中にあるものをじっくりと見てみる。
あっても困らないが、なくても差し支えないものが多くある。
人生も同じようなものだ。
あるからキープしているが、実はなくても差し支えないもので
人生はできているのかもしれない。



まずはライブのお知らせを。

■日時 2016年5月1日(日)16時
場所 帯広市民文化ホール小ホール
■料金 無料
出演(出演順・敬称略)
  バサラ/COLD CASEKISS THE ROD/おとといおいで/
  クサカアツシ/ペナルティ/THE HEART OF STONE
  TETSU スペシャルバンド/いとたい/FLAG

出演者は10組。THE HEART OF STONEの出番は7番目。
スケジュールどおりに進めば、18時30分からの出演となる。
帯広に住んで2年。
市民文化ホールで演奏できるとは嬉しい限りだ。

入場無料。
皆様、待っています。

さて今回はブックレヴュー。
最後に紹介する「本屋さんのダイアナ」。
ほんとに良い作品です。

■東山彰良「路傍」(2008年)
   路傍
千葉県の船橋市に住む28歳のワルな男の話。
面倒になったら、とりあえず飲みに行ったり風俗店に行ったり。
夜の酒場の裏通りでは、泥酔して道端に転がっているサラリーマンから
財布を抜き取るなど悪事を繰り返す。
一方、珍獣の運搬や脱北者の手引きなど怪しい仕事を引き受け、
危険な目にも遭いながらも、生き生きと過ごしている。

そうしたやりたい放題ぶりが不愉快にもなるが、
スピーディな展開や、ぶっ飛んだ設定が面白いし、
くすぶりやほろ苦さも、きっちりと、それでいて軽やかに描いている。

また、好き勝手で直情的なキャラクターなのに、
随所に哲学的なことを語る場面がある。
人格の整合性の面で多少の違和感はあるものの、
猥雑ながらスタイリッシュで、これはこれでありかと。

例えば、風俗店勤務のお気に入りの女性が入信している新興宗教に
はまっていくワル仲間に対して(この設定が既に面白い)、
「メルセデス・ベンツがステイタスを売るように、神は救いを売る。
 神の方がベンツよりずっと安い」と皮肉る。
イカれているような、真理を突いているような、
混沌とした気持ちのまま疾走するような魅力的な作品だった。

■薬丸岳「Aではない君と」(2015年)
   Aではない君と
中学生の息子が同級生を殺害した容疑で逮捕された。
息子は刑事にも弁護士にも事件に関する供述を一切しない。
面会に行った父親にも何も語ろうとしない。
真相を探ろうと父親は動き出す。
やがて息子は、父親と二人きりにしてもらえれば話をすると言ってきた。

中学生同士のイジメが発端だった。
虐める側はこれほど凄惨なことを強いるものかと不愉快になるし、
虐められる側はそこまでされても誰にも言えないものかと
苛立たしい気持ちになり、読んでいてストレスも感じる。

父親の主観的な目線をベースに展開していくせいか、
母親の存在が希薄でストーリーに生かされていない気が。
また、父親が勤務する会社の社員も随所に登場するわりには
機能していないような。

とはいえ、劇的な展開や過剰な表現をしていないことで、
逆にすいすいと読ませる。
どういう理由で、どういう経過があったにせよ、
人を殺めた者はずっと背負っていかなければならない何かが
文章から滲み出てくる。

■梁石日「闇の子供たち」(2002年)
   闇の子供たち
タイで行われている幼児売買春や臓器移植を目的とした幼児売買の話。
貧困のため子供が売られ、大人の性の道具となる。
あるいは生きたまま臓器提供者となり、生ゴミと一緒に捨てられる。
フィクションではあるが、事実も結構含まれているようだ。

こうした子供たちを救おうとするNGO団体に勤務する日本人女性や
日本人新聞記者の活動がもうひとつの軸。
裏の組織からの様々な妨害行為があり、闇討ちにも遭い、
命の危険にもさらされる。

救いのない出来事の連続に、重苦しい気持ちがキープされ、
また、描写が露骨で気持ち悪くなる。
少なくとも食事をしながらは読めない。
食欲どころか、読書欲自体を減退させるほどのグロテスクさだ。

それでも読了できたのは、筆致がクールで切れ味があったから。
それとこの暗澹たる物語をどう帰結させるのか確かめたかったからだ。
知っておくべきことなのか、知らなくてもよかったことなのか、
それは読了後の今もわからないが、タイ人恐怖症になりそうだ。

■柚木麻子「本屋さんのダイアナ」(2014年)
   本屋さんのダイアナ
小学生の女の子2人が20代になるまでの15年間の物語。
ひとりは「大穴」と書いて「ダイアナ」と読ませる名前の女の子。
その名前のせいでクラスでは奇異な目で見られ、いつも孤立している。
そんなダイアナと親しくなったのが、
クラスの中でみんなの憧れの存在であるお嬢様な子。
二人は読書を通じて仲を深めていく。

ダイアナは母親と二人暮らし。
父親に関して詳しいことは母親から情報公開されていない。
父親はどんな人なのか、どこにいるのか、それを知りたくて、
母親の持ち物を物色して手がかりを探したり、
絶縁状態にあった母親の実家を尋ねたりもする。

これ以上のあらすじには触れないでおこう。
ありがちな言い方をすれば、少女から大人への成長小説であるが、
思いがけない展開が何度かあり、この先どうなるのかという興味が
離れることなく最後まで面白く読めた。

登場人物の距離感の設定が良く、知識の引き出しの使い方も的確で、
ひっかかりがなく、すいすいと読めた。
と同時に、少女二人の気持ちを丁寧に紡いでおり、
ドキドキしたり、胸がざわついたり、
甘酸っぱいような痛みを感じたり、愛おしくなったり。
女子の青春物語であっても、優れた作品は、
感受性が鈍ってきた中年男の心もしっかりとつかむものだ。



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