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寒い日が続いている。
これほど寒い4月は近年の記憶にない。
通勤時はまだ手袋とマフラーと手放せない。
職場も寒く、コロナ感染以前に風邪をひいてしまうのでは
ないかとの不安も大きい。
4月30日から急激に暖かくなるとの予報に期待する。

コロナ対策として札幌市の図書館が閉館されていることも
影響して、この2か月で小説やエッセイ、雑誌などを
十数冊購入した。
まだ読んでいない作品があるし、
物語に入っていけず読了を断念し、
既にBOOK-OFFしたものもある。

そんな中、面白く読めた3冊を紹介。

■川上美映子「おめかしの引力」(2016年)
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朝日新聞に6年間にわたって掲載された、
ファッションにまつわるエッセイをまとめたもの。
川上さんは文章が上手だなと改めて思う。
無駄がなく、リズム感がすごくいい。

外見で人は判断できない、それよりも内面の美しさが重要、が
主流と思われる世の中で、
「目に見えるものの美しさが、内面にどれほど作用されるのか
ということを思い知らされる」との言葉は、
驚きつつも、なるほどな、と思った。
いわば、ハッとしてGOODな名言だなと。

確かに、どんなに高価なものを着て、
入念にメイクをしても、
内面が透けて見えて、どこか安っぽかったり、
しまりがなかったり。
逆に高価ではないのに、清潔だったり、キマっている人はいる。
内面が外面に表れるのか。納得だ。

また、すごくいいものを試着してしまうと、
それ以外はもう見えなくなる魔法があるとし、
一生着ることを考え、日割り計算をして、
これなら逆に安いんじゃないの、となる話に笑った。

試乗によって魔法にかかり、
予定よりも半年も早く新車を購入した私も、
長く乗るんだからと年割計算に走り、
前のめり気味になったのも同じ心理によるものだ。

■嶋津 輝(しまづ・てる)「スナック墓場」(2019年)
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タイトルに魅かれ購入。
著者のことは存じあげなかったが、
「スナック」と「墓場」という、
まるで異なる性質のものを組み合わせているのに、
語感が妙にしっくりときて、興味をかき立てられ購入。

「スナック墓場」をはじめ、7つの短編が収められている。
連作ではない。
「スナック墓場」は7つの短編のひとつに過ぎなかった。
それは期待とは違う構成だったが、
他の短編も含め、期待を裏切る面白さがあった。

どこにでもありそうな日常を切り取ったような作品が並ぶ。
はっきり言えば、ぱっとしない人の日々の営みのような内容。
誰が悪者で、とか、誰が正しくて、というのがなく、
客観的な視点でフラットに描いている。

地味で、驚くような展開も、オチさえない作品があるし、
ページをめくったら空白で、「これで終わりなの?」と、
拍子抜けした作品もあったが、
そうした素っ気なさが逆に余韻を残す作用があったり、
なぜか和んだ気分になったり、小説とは不思議なものだ。

色々あったのに、結局何も変わらず、以前と同じに戻ったり、
伏線かと思いきや、そのまま淡々と流れたりと、
良くも悪くも裏切っていく。
それは物足りなくもあり、迫力に乏しいとも感じるが、
妙に引き込む柔らかな力のある作品だった。

■穂高 明(ほだか・あきら)「青と白と」(2016年)
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東京で暮らす駆け出しの女性作家。30代独身。
小説家としての収入は少なく、
週5日のバイトで食いつないでいる。
出身は宮城県名取市。仙台市の隣町で、仙台空港がある。

東日本大震災が発生する。
仙台の家族とは連絡がとれないまま翌日もバイトへ。
バイト先では、「なんかワクワクしてきた」、
「津波できれいになくなっちゃって逆に良かったんじゃないの」
など、耳を疑うような会話が聞こえてくる。
震災の映像は娯楽番組なのだ。

震災から1か月して遺体で発見された叔母の火葬、
仙台で買ってきた菓子を口にしたバイト先の人が、
「これって放射能、大丈夫だよね」と笑いながら言う場面、
「被災した人たちに元気になってもらいたい」とギターを
もって歌う知り合いの歌声に異物感をおぼえ、
無理にささくれを引き抜かれたような乱暴さを感じたことなど、
メディアがきちんと取り上げない現実と、
痛み、無慈悲、虚しさ、怒り、そうした様々な感情を
整然かつ丁寧に描いている。

作者本人は仙台市出身。
実体験を描いた場面も少なくないだろうし、
自分の思いを投影している描写も随所に感じられる。
この作品が単行本で発行されたのが2016年。
震災の5年後である。
向き合い、整理し、言葉にするまで、
これだけの時間が必要だったのかもしれない。
淡々とした筆致によって、作者の真剣さがより伝わってくる。

                     ◆

「おめかしの引力」のレビューで、
筆者が日割り計算をして購入を決めてしまうことに触れたが、
私はちょっと高価なものの購入を検討する際、
必ず「回数割り」は考える。
何回使う?何回着る?と自分に問う。

購入したら、どんどん使うし、がんがん着る。
なので特別な日のための「勝負なんとか」はない。
全く勝負してないか、毎日勝負しているのかわからないが、
使わないと元を取れないマインドであり、
がんがん着ないと着られなくなっちゃうよ、と、
自分で自分にプレッシャーがかかっている感覚だ。

そもそも何にしても一生モノなどないと思っている。
時間とともにトレンドが変わり、
定番と言われたものも形やサイズ感は変わるし、
自分自身の外見も内面も変わる。

コレクターやオーナーであることに価値を感じる人は多いだろうし、
それが趣味や生きがいになっていたりもするので
もちろん尊重するし、素敵なコレクションに感動することもある。
私は、年数よりも回数路線で、ヘビーユーザーとして使い倒したい。
 

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このブログでブックレビューを定期的にやってきた。
ところが昨年2月を最後に途絶えてしまった。

読書自体はさほど停滞せずに続けていた。
2019年も例年と同じくらいの読書量だった。
紹介したい作品はいくつもあった。
なのにやらなかったのは怠けたからだ。
ブックレビューに要するエネルギーを別のことに使った、
あるいは、エネルギーの総量自体が減り、
ブックレビューに配分できなくなったということだ。

それでも毎年恒例のブック・オブ・ザ・イヤーはやりたい。
そこに注ぐエネルギーは確保しておいた。
というわけで、2019年中に読んだ本の中で、
特に印象に残った6冊を紹介する。

■井上荒野「静子の日常」(2009年)
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 静子は75歳。
 大らかでユーモアのある面白い老人だ。
 老人グループに群れることなく、若者とも自然体で接し、
 頑張り過ぎずに、生き生きとしている。

 夫は既に他界。息子夫婦と孫と同居している。
 健康で、家族に問題はなく、金銭的な不安もない。
 だからこその余裕があり、ファンタジーの域に入りそうな、
 でき過ぎ感もある。

 とはいえ、夫が亡くなってから解放的になったこと、
 スポーツクラブでの老人の在り様、息子の不始末など、
 リアルに、絶妙にポイントをついており、
 筆者の視点と物語の運びの巧さにため息が出る。

■村田沙耶香「コンビニ人間」(2016年)
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 大学一年生から36歳の現在まで
 コンビニでのバイトを続けている女性の話。

 彼女は、人との関わりが極端に苦手で、
 社会ともうまく折り合っていけない。
 恋もせず、趣味もなく、コンビニのバイトが全てである。

 求められたり、褒められたりがないまま大人になった彼女は、
 マニュアルどおりに一応働けていることで
 「世界の部品」になれたと嬉しくなる。


 「彼氏はいないの?」、「結婚しないの?」と、
 バカにしたようにしつこい問い詰める同僚や友人の声を
 シャットアウトするため、
 恋愛感情のない男性と同居を始める。


 このように、痛いし、イライラするし、あきれるし、
 哀しいし、切なくもある。
 それでいて、コミカルに描いているため
 不思議と中和され、引っ掛かりなく、
 ぐいぐい引き込まれた。
 2010年代を代表する作品として後年にも評価されるだろう。

■石田衣良「池袋ウエストゲートパーク」(1998年)
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 池袋の果物店(実家)で働く若者が主人公。
 彼が仲間とともに、池袋の若者たちの間で起こるトラブルを
 解決していくバイオレンス・タッチな物語。

 彼らは、いわば「ワル」にカテゴライズされるキャラながら、
 争いごとの解決屋のような存在となり、
 何かと相談が持ち込まれる。
 躍動感をもってスピーディーに展開し、
 ドタバタしながらも落としどころが明確なので、
 読後感がすっきりしている。

 2000年にテレビドラマにもなった作品。
 全く見ていない。
 当時は俳優陣の顔ぶれのせいで、興味のかけらもなく、
 小説も敬遠していた。
 
 小説はシリーズ化され、これまで15作が刊行されており、
 1作目である本作が面白かったので、4作目まで読んだが、
 1作目が一番面白かなと。

■姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」(2018年)
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 2016年に起こった東京大学の男子学生5人による
 強制わいせつ事件をベースにした作品。
 東大生のプライドの高さと、
 他者を見下す心理が克明に描かれ、
 いわゆる普通の女子大学生が弄ばれる。

 彼女は東大生に好かれようと一生懸命になり、
 東大生は都合のいい女として扱う。
 彼女は疑いを持ちながらも、前向きに捉えるという、
 とんでもない勘違いに気づかず、転落の一途をたどる。

 東大生は彼女に対する暴行で逮捕されるが、
 SNSでは「彼女も悪い」を非難と批判を受ける。
 東大生もそんなに悪いことなのかと開き直る。
 不愉快ながら実に読みえがある壮絶な作品。

■伊岡瞬「悪寒」(2017年)
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 会社の不祥事の責任をなすりつけられ、
 山形県の関連会社に出向させられた中堅社員。
 もうすぐ本社へ戻れるかと考えている頃、
 東京に残した妻から、人を殺したとのメールが届く。

 妻は夫の上司と不倫関係にあったとか、
 夫が単身赴任をしたら、妻も中学生の娘も
 絶好状態と言えるほど
 電話やメールの反応がほぼ途絶えたことや、
 会社の不祥事の詳細、出向先の社員の態度など、
 不可解な点がきちんと回収されなかったのは消化不良。

 しかし、殺人事件の真相に迫っていく展開は、
 無駄がなく、熱をもったまま、どんどん切り込んでいくため、
 読書スピードを加速する引力があった。
 妻と娘の態度の悪さの理由が未だに気になるが。
 
■佐藤誠二朗「ストリート・トラッド」(2018年)
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 1930年代から現在に至るまでの
 ストリートファッションの変遷を、
 音楽や映画を中心に、政治や社会情勢などを
 絡めながら解説している。
 
 近所のTSUTAYAで、他の雑誌類に紛れて
 遠慮がちに一冊だけあったこの本。
 表紙の絵がドクターマーチン1460で、
 帯に書かれた文言が、
 「モッズ、パンクス、ヒッピー、スケーター・・・
 街の不良やギャングたちが生み育てたストリートカルチャー」。

 これらに惹かれて、手にとり、パラパラとめくる。
 
なかなか面白そうだと思ったが、
 USハードコアパンクス、ゴス、B-BOY、スケーターなど、
 興味がないし、知りたいとも思わないページも多く、
 購入しなかった。
 
 ところが、三日後も、一週間後も、
 読んでみたい欲求にかられるとともに、
 一年前に出版されたマイナーと思われる本であり、
 私でなければ誰が購入するのだろう、という責任感が生まれ、
 売れ残ることが不憫に思い、私のものにした。

 わかりやすく丁寧なストリートファッション文献ではあるが、
 例えば、グラム・ファッションは、
 ヒッピーに飽き飽きしていた若者たちの空気の変化を
 いち早く察し、体現したのがマークボランだった。
 マークボランは元々、純正なモッズだった。
 ザ・フーは、やらされたモッズで、売れて発言力を得ると、
 簡単にモッズのイメージを払拭したなど、
 ディープなロック史としても面白い。

 また、B-BOYなど興味のなかった分野も、
 どのようにして生まれてきたのかなど、楽しく読めた。
 一度読んだら終わりではなく、
 今もしょっちゅう手にしており、辞書のような存在だ。

札幌の図書館は、帯広、岩見沢に比べて、
蔵書の種類も冊数も多いが、それ以上に利用者が多いため、
借りずに買うことが増えた。
ラジオを聴き、本を買う。
自覚して世の中の傾向に逆行しているのは気分がいい。
音楽をカセットテープで聴くようになれば、
さらに生活は充実するだろう。



「3年A組」なる番組の視聴率が好調らしい。
私も数回は見た。
最初の2回は非常に面白かった。
しかし、犯人があぶり出されたのに、
そうさせたのはこの人物で、
それを裏で糸を引いていたのはこの人物で、というふうに、
いつまでも決着せず、混乱も甚だしく、
当初は犯人だった人物が
いつのまにか「いい人」になり始めたりして、
なんだかアホらしくなって観るのをやめた。

回を追うごとに盛り上がっているらしいが、
全く観る気がしない。
未だに迷走感をおぼえることが少なくない私だが、
この番組から身を引いて
困ったり寂しくなったりは全くない。
実にオールライトだ。

今回はブックレヴュー。
3作ともオールライトだ。

■木皿泉「さざなみの夜」(2018年)
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43歳の女性がガンで亡くなるところから物語は始まる。
以降、彼女の夫や姉妹、中学の同級生や
会社の元同僚などが語り手となり、
彼女とのエピソードが綴られている。

彼女の周りの人達が、
若くして亡くなろうとしている彼女への接し方がわからず、
しかし、わからないなりに精一杯やってくれることを、
「みんなで協力して芝居をしているよう」と感じた場面に
象徴されるように、
クールでありつつ、ユーモラスで、
ほのぼのとしていて、明るくもある内容だった。

それは決して奇をてらったものではなく、
実にナチュラルである。
死は辛くて苦しくて悲しいものではあるが、
写真にも言葉にも残っていない、
しかしその人との忘れられない日々や瞬間を
丁寧に切り取ったような作品だ。

亡くなった彼女は、
「なんとかなるよ。とにかくやってみようよ」と言いそうな、
さばさばとした奔放なキャラクターで、
映像化するなら安藤サクラさんだなと感じてしまい、
そこから最後までそのイメージから離れられなくなった。

■桜井鈴茂「できそこないの世界でおれたちは」(2018年)
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当別町出身の作家ということで、
かねて読んでみたいと思っていた作家だ。

主人公は40代半ばの男。
コピーライターの下請けで生計を立てている。
20代の頃はロックバンドに夢中になり、
今もアナログレコードの収集を楽しんでいる。

登場するのは、若い頃からの知り合いが多く、
バンドでメジャーになった者、スナック経営者、
外国人と結婚した女友達などとの、
なんともフリーランスで、不安定で、
大人になりきれない反面、中年の現実に直面し、
ナーバスに落ち込んでしまったり。

知り合いの女性の息子(中学生)の誕生日に、
ポータブルレコードプレイヤーと
中古LPレコード(ザ・スミスだっただろうか)を
プレゼントする場面や、
夜更けにタバコを吸いたくなり、
パジャマに革ジャンをはおってベランダに出るシーンなど、
さりげなく面白さを交えてロックテイストを絡ませてくる
場面が随所にあり、クスっと笑えた。

それにしても、主人公の男。
働きぶりのわりには、結構飲みに出かけるし、
プレゼントもはずむし、タクシーもあっさりと使ったりと、
生活が苦しいと言いながら、
結構積極的に支出している点が気になった。
ただ、先が見えず、地に足がつかない感じの中年男の日々が
なぜかちょっとうらやましくなった。

■遠田潤子「ドライブインまほろば」(2018年)
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遠田さんの作品は、
不運で不幸な人がメインキャストになり、
その周辺の人物も重たい過去や薄暗い現実を抱えた
負のオーラが強い者が多く、
読んでいて辛いし、不快感もあるが、
読まされてしまうのが典型的なパターン。
この作品もそうだった。

小学6年生の息子が父親を殺害する場面から始まり、
妹を連れて逃走し、駆け込んだのが、
山中にある古いドライブイン「まほろば」。
その店を一人で切り盛りする中年女性との交流を通じ、
息子の心が開いていくような内容。

この中年女性を取り巻く環境も悲惨だ。
娘を交通事故で亡くし、その後離婚。
娘の法事における元夫側の家族からの仕打ちともいえる対応。
新道ができたせいで、めっきり車の数が減り、
ドライブインも経営難で、どんよりした日々を過ごしている。
マイナス感が凄まじい。
ただ、マイナスイオンが豊富にありそうな峠で暮らしている。

とにかく展開が巧い。
現在の生活と過去の出来事を行き来しつつも、
物語はどんどん前に進んでいくため、
空き時間ができたら、すぐに読書をしたくなるような
引き込みが強い。
遠田さんはここ数年で屈指のストリートテラーだ。

                   ◆

「3年A組」の展開のだらだら感には見切りをつけたが、
エンディングで流れるザ・クロマニヨンズの曲は素晴らしい。

ザ・クラッシュの「セーフ・ヨーロピアン・ホーム」を
彷彿とさせるイントロに続き、
胸が熱くなるようなサウンドと、実にすわりのいいメロディ。

「探しものがあるのではなく 出会うものすべてを待っていた」
ちょっと泣けちゃうような素敵な歌詞だ。


仕事の関係で落ち着かなかった約一週間、
そのほとんどの日が大雪で、
肉体的にも精神的にも狭いエリアで過ごしているなと
窮屈さを感じていたら、ライブが間近になっていた。

■日時 2019年1月26日(土)19:30~
■場所 とまと畑(札幌市中央区南4東3)
■料金 1,500円(ワンドリンク付き)
■出演(出演順・敬称略)
     Taro(19:30)、中野リョータ(20:00)
     The.ABB(20:30)、激しい雨(21:00)
     円軌道の幅(21:30)


演奏する曲はまだ未定。
地味目な路線でいこうかと。
思えば、2019年最初のライブであり、
激しい雨のファーストアルバムをリリース後初のライブだ。
だからこそ、あえて地味目な路線でいこうかと。
よろしくお願いします。

今回はブックレヴュー。
紹介する3冊はいずれもなかなか凄い作品だった。

■村田紗耶香「コンビニ人間」(2016年)
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2016年に芥川賞を受賞した作品。
大学一年生の時に始めたコンビニでのバイトを、
36歳の現在も続けている女性の話。
就職はせず、恋もせず、趣味もなく、
コンビニのバイトが生活の全てのような日々を過ごしている。

元旦に放送していたNHKのラジオ番組で、
作家の高橋源一郎氏と平野啓一郎氏が対談をしていた。
その中で「コンビニ生活」を21世紀に入ってからの
代表的な文学作品であると評価していた。
大御所の二人の絶賛に、急速に興味が高まり読んでみた。

主人公の女性は、非常に真面目な性格なのだが、
コミュニケーションが苦手で、社会への適合性が弱い。
子供の頃からそうだった。
ずっと疎外感と違和感をおぼえながら生きてきた。
そんな彼女が、コンビニのバイトを始め、
先輩バイト店員の真似をして「いらっしゃいませ!」と
声を張り、「ありがとうございました」と客を送る。
そうした振る舞いを店長から褒められた。
彼女は「世界の部品」になることができたと嬉しくなった。

しかし、地元に住む家族や高校の同級生、コンビニの同僚からは
おかしな人、変わった人だと思われ、
特に「恋をしたら」、「結婚しないの?」としつこく言われる。
それに嫌気がさした彼女は、
そうした声をシャットアウトするため、
恋愛感情のない男性と同居を始める。

彼女の感覚は、ちょっと普通ではないのだが、
ならば普通とは何なのか、とも思うし、
いずれにしても、彼女のマイノリティ性が直接的、間接的に、
表で、裏で否定されまくる物語だ。
痛く、哀しく、切ないが、コミカルに描いており、
短時間で集中して読み切ってしまう濃い作品だった。

■若竹七海「錆びた滑車」(2018年)
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古書店のバイト店員でありつつ
探偵業もしている40代女性、葉村(はむら)が、
請け負った探偵仕事から殺人事件に巻き込まれ、
真相を解明していく話。

葉村シリーズは1998年に始まって以来、
この作品が6作目になるのだろうか。
いずれの作品もミステリ界では人気も評価も高かったが、
これまで読んだことがなかった。

いきなり6作目ではあったが、特に支障はなく、
すんなりと物語の中に入っていけた。
とはいえ、登場人物が多いし、場面の入れ替わりも多く、
謎解きも二転三転するし、複雑ではある。
縦にも横にも伏線らしきものが多いが、
最終的にはきちんと整理されていたと腑に落ちる。
特に登場人物のキャラクターづくりが見事だ。

また、悲惨な事故や殺人事件、嫉妬、裏切りなど、
ダークでブラックな内容ではあるが、
文章表現が豊かで深みがあり、それでいて軽やか。
ミステリとしてだけではなく、
読み物として非常に楽しめる作品だ。

■姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」(2018年)
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2016年に起こった東京大学の男子学生5人による
強制わいせつ事件をベースにした作品。
他の大学の女子学生と交流する(遊ぶ)ことを
主たる目的としたサークルのメンバーで起こった事件である。

前半は、事件に関与した東大生と、被害にあった女子学生の
それぞれの高校生あたりから日常。
やがて大学生になっていくのだが、
最初から東大生達のプライドの高さや優位性と
いったらいいのか、マウンティング感がひどい。
他者を見下す心理が克明に描かれている

女子学生は家族仲が良く、
本人も周りに気を使い、一歩引いて謙虚に振る舞うタイプ。
いわば地味なタイプである。
そんな彼女が、加害者の東大生の一人と、
ひょんなきっかけで親密になっていく。

しかし、彼は東大生として彼女を見下し、
都合のいい女としか扱わない。
一方、女は彼が純粋に好きだった。
なので、彼に好かれたく、言いなりになっていく。
このあたりの転落の過程が読んでいて苦しくなる。
「気づけよ、もうやめろよ」と。

そして彼を含む5人の東大生が彼女を屈辱ならしめる。
彼女は服もきちんと着ないまま外へ逃げる。
東大生5人は逮捕される。
ところがSNSでは、「そういう場所へ行く女性も悪い」とか、
「東大生だからこれだけバッシングを受ける」など、
女性を非難する、あるいは東大生を擁護するような
コメントが寄せられる。
東大生もそんなに悪いことなのかと開き直るし、
女性に対する贖罪の気持ちがまるでない。

後半は読んでいて辛い。
というか、ちょっと気持ち悪くなる。
筆者の姫野さんはよく書き切ったなと。
誰の心にもありそうな汚さや嫌らしさと向き合う作品でもある。

「コンビニ人間」も「彼女は頭が悪いから」も、
2018年に読んでいたら、
私の選ぶブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれていた。
いずれも衝撃力の強い作品だった。

                    ◆

私のNHK朝のドラマ歴は極めて浅く、
最近の4作程度しか知らないし、
しかも途中でつまらなくなり、最後まで見た作品はない。
現在放送中の「まんぷく」はまだ見ている。
初の完走をできそうな気がする。

安藤サクラ氏を筆頭にキャストがいいし、
キャスト間で変にこすれて、なじまない感じがない。
つまりキャスト同士のバランスが良い。
展開に淀みがないのも飽きない要因だ。

そんな中、長谷川博己氏の演技はどうなのかと。
この方のこれまでの出演作に詳しくないし、
評価される方も多いと思われるので、
あまり言えるものではないが、
セリフがこなれていないというか、堅苦しいというか。
その点では、ちょっと大杉漣さんと似ている。

頑固なキャラクターという設定なのかもしれないが、
ちょっと偉そうで、ユーモアもなく、いつもつまらなそう。
こういう人を周りが応援、支援をするだろうかと
違和感をおぼえながらウォッチングしている。

それと、目立たないが、
長谷川氏と安藤氏夫婦の娘役の女の子(小学生)は
なかなかいい演技をしている。
最高なのは、全く昭和30年代の雰囲気がないにもかかわらず
いい味を出している要潤氏だ。



どこもかしこも、あれもこれも、
「平成最後の」がくっついてくる。
ちょっと異常だ。
使われ過ぎていて、いちいち目や耳に入るので疲れる。

予告をしての改元だからこうなるのだろうが、
あれが昭和最後の〇〇だったのか、と思い出すことは
何ひとつないし、現在の生活に全く影響していない。

昭和64年グッズも、マニアの方しか
大事にしていないだろうし、
昭和64年が語られることも全くない。
ただ、横山秀夫氏の小説「64(ロクヨン)」は、
平成時代の代表的な作品だったことは多くの読書好きが
認めるところだろう。

ということで、今回は「2018ブック・オブ・ザ・イア」。
私が2018年中に読んだブックの中で、
特に印象深かった作品を紹介するものだ。

今回のチョイスのポイントは、
読み終わってしばらく経った今でも
すぐにあらすじを思い出せた、
他のことを後回しにしても読みたくなった、
淀みなくさくさくと読めた、そういうシンプルなものだ。

では、早速。

■近藤史恵「インフルエンス」(2017年)
2018book_1.jpg
2018年の読書において最も一気読み感があった作品。
大阪の小学生の女の子3人が40代になるまでの話なのだが、
小学生の時に共有したブラックな秘密を抱え、
それが別のブラックへと波及し、
離ればなれになっても常に縛られた感覚の中で大人になる。

女性同士の友情と嫉妬と階級感が
ごちゃごちゃになっているさまを上手く整理し、
それでいてスピード感をもって展開させる運びが絶妙だった。

どろどろしていて嫌なんだけれど読まずにいられない。
終盤は、筆者にひねられた。
ストーリーはブラックなまま終わるが、
読み応えに関しては非常に満足した。
面白かった。

■浅倉かすみ「たそがれどきに見つけたもの」(2016年)
2018book_02.jpg
40代、50代になった男女の日常生活における
ちょっとした出来事を題材にした6つの短編で構成されている。


独身女性が姪っ子に毎年お年玉をあげる心情、
コンビニでバイトを始めた40代の女性が、
親しみを持って接してくる若いバイトの男性に喜びを感じる話、
人気ラジオ・パーソナリティとの温泉ツアーに
夢中になる主婦の話など、
ちょっとイタいシチュエーションを取り上げているが、

ユーモアと加減の良い節度を上手く散りばめ、
ほろ苦くも、目線がやさしく、読後感の良い作品に
仕上がっている。
映像ではなく、文章ならではの良さがある。

■神田茜「母のあしおと」(2018年)
2018book_03.jpg
昭和18年生まれと思われる「道子」という女性の一生を
描いている。
物語は、道子が亡くなってから3年後の場面から始まり、
どんどん時間を逆戻りし、最後は道子が小学生の時の話である。
そして道子自身ではなく、夫や息子、親戚、道の母親などの
視点で語られている。

道子の人生は特別なものではなく、劇的な出来事もない。
しかも、道子はちょっとしたクセがある女性で、
決して「いい人」に描いていない。
だからこそ、なのか、心地よいリアリティがあった。

また、幼少時の食糧難から高度経済成長、
バブル景気と崩壊という、
昭和18年生まれの人を巡った社会情勢や、
舞台である北海道の様子をさりげなく感じさせる筆致であり、
ちょっと切ないような、癒されるような心持ちになった。

■東村アキコ「かくかくしかじか」(2012年)
2018book_04.jpg
作者自身の高校時代から現在までを描いた
5巻完結のノンフィクション的マンガ作品。

宮崎県での高校時代、絵画教室に通い始める。

そこの講師のスパルタぶりにうんざりするが、
結局、大学生になっても、ニートになっても、
漫画家になっても通い続けた。

彼女は、真剣に絵に取り組まず、
気分に任せてだらだらと過ごす。

それでいて、若気の至りのうぬぼれがあり、
わがままで、薄情で、いい加減。
そんなダメな自分をしっかりと描いていることに
非常に好感がもてた。

スパルタ講師は、とにかく描け、描けと繰り返し、
絵を描くことが使命であると言う。
最も大切なのはやり続けること。
やってる人にはかなわない。
胸が熱くなる作品だった。


                           ◆

正月らしさがなくなっている。
社会がそうなったのか、
正月らしさのニーズがなくなったのか。
人の意識がそうなってきたのか。

私にしても、年始に当たり今年はこれをやろう、
みたいな慣習がない。
ただ、今年は何をやめられるか、何を捨てられるか、
何ができなくなるか、何に興味がなくなるか、
には興味がある。

無駄なモノやコトが減ると、
やりたいことがやりやすくなるし、
明らかに行動が早くなるからだ。

年齢を重ねると、見方も考え方も変わってくる。
なので試してみたいことが色々とある。
自分を実験材料にして、
自分の経年変化を楽しめればと思う。



インターネットのニュース記事は即時性がある。
あれはどうなったのか、と確認するため
アクセスすることも少なくない。
そんな時に、「タレントの誰々が第一子妊娠」という見出しを
目にすると、これ必要か?と思う。
妊娠、出産の情報は、そんなに需要があるのだろうか。
新聞でも、訃報欄は1面まるごとあるのに出産欄はない。
妊娠欄もない。
ネットニュースと新聞記事が似通る必要は全くなく、
むしろ独自性を出すべきだとは思うが、なにか釈然としない。
「イクメン」という言葉もなんとかならないものか。

今回はブックレヴュー。

■森見登美彦「夜行」(2017年)
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大学生時代の仲間5人が10年ぶりに再会し鍋を囲んだ。
10年前は6人だった。
不在の1名は女性で、10年前6人でお祭りに出かけた際に失踪。
そのまま音信不通となり、現在は生きているのかどうかも不明。

集まった5人のうち1人が、
「岸田道生」という画家の「夜行」という作品の話をした。
すると他の4人も、この10年間に「岸田道生」の「夜行」に
まつわる奇妙なエピソードがあった。
それは10年前に失踪した女性が見え隠れするような
出来事だった。

妻が何も告げずに旅に出た。
いつまでも帰ってこないので、思い当たる場所へ行き、
やっと見つけたと思ったら、
外見は妻なのに、内面は別人になっていたとか、

小学生の時に全焼した家が、
焼けていない状態で津軽にあったとか、
もやっとした謎がいくつも散りばめられて物語は進む。

すっきりとした展開はない。
謎は何ひとつ解明されない。
想像の限界を感じ、わけがわからない場面も少なくない。
しかし、不気味な薄暗い世界に
心地良く引き寄せられる感覚はあった。
ただ、読みか終えたときの率直な感想は、
「なんだったんだろうね」だ。

■本谷有希子「静かに、ねえ、静かに」(2018年)
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3作の短編が収められている。
1作目の「本当の旅」が特に面白い。
クアラルンプールへ向かう飛行場で男2人、女1人の
3人組が待ち合わせ。
すぐ近くに3人はいるのにSNSで会話。
頻繁に写真を撮っては、すぐにアップして、
「最高」、「感動」、「やばい」など、お互いを誉め合う。
そうした自己肯定ぶりがひどい。

情報を小出しにして、
3人の現状や関係を明らかにしていく展開が良い。
物語が進むにつれ、
彼らはフリーターのような生活をしていることや、
40歳くらいであることがわかってくる。
現実逃避をしている痛さが文面から伝わってくる。

後半は恐怖の場面になるが、
それでも無理して楽観ぶりを装う3人。
そうしたキャラクターに最後まで徹した筆致がすごい。

2作目も痛快だった。
SNSで知り合った2組の夫婦が
キャンピングカーで出かけて道の駅に宿泊する話なのだが、
キャンピングカーを嫌がる妻の心境や、
片方の夫婦の生活上のおかしなクセなどを上手に拾っていて、
イライラするのに読まされてしまう。

どの作品も経緯や背景がわからなかったり、
その先を知りたい、というところで終わった感はあるが、
読者の想像力を活動させてくれるような
小説ならでは面白さが満載の作品だ。

■小野寺史宜「ひと」(2018年)
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高校生の時に父を交通事故で亡くし、
大学2年生になって母を病気で亡くした。
両親が残した財産はわずかで、やむなく大学を中退。
しかし、地元である鳥取には戻らず、
大学のある東京に住み続ける。

大学はやめたものの職には就かず悶々としていたが、
当然のことながらお金がなくなっていく。
そんな中、偶然の出会いから
コロッケ店でアルバイトを始めることに。
そこで出会った人達とのあれこれを描いた
青春グラフティ的な作品だ。

主人公は、謙虚で優しくお人好し。
バイト仲間からもお客さんからも好感をもたれる。
ただ、見方を変えれば、危機管理意識が低く、流されがちで、
そんな性格を利用する知り合いもいる。

それでも彼は少しずつ成長していく。
会話場面がちょっと多いかなとは思うが、
若者風情が漂いつつも嫌みのない文体で、
清々しく応援する気持ちで読める方は多いだろう。
彼のその後を知りたくなる内容でもあった。
タイトルの「ひと」はいまひとつピンとこなかったが。

                       ◆

本谷さんの作品でも、小野寺さんの作品でも、
変にお気楽で、気取って、
図に乗った感じのキャラクターが登場し、
ちょっとしたことで「尊敬する」を多用する。

「尊敬する」が軽薄感を伴って悪用されている実態や、
「尊敬する」のハードルが下がっている現状を、
相応しいキャラクターを使って表現したことが印象的だった。

私も、それほど親しくない若者から、
「まじ尊敬します」などと言われたら、
安く見られたものだと思ってしまうだろう。
それとも真に受けて機嫌が良くなってしまうのだろうか。

「こういう大人になりたい」、「こんな年のとり方をしたい」の
ハードルは下がり続けているし、
「イケメン」のハードルは、下がったというより、
単に「若い男性」を示す言葉に変節したのではないかと。
つまり「イケメン」の定義が変わったのではないかと。

しかし、「イケメン」と聞くと、
それだけでワクワクするというか、
アゲアゲ(死語)になる中年女性が少なくないのも事実。
いいんじゃないすか。
いつまでも若々しくて、まじ尊敬っす。
 


仕事が落ち着いてきた。
繁忙期の反動か、やけにお酒が飲みたくなる日が増えた。
しかし飲んだら飲んだで翌日が辛く、
別の疲れがのしかかる。
人間は疲れを求めるようにできているのだろうか。

年齢のせいなのか、
お酒を飲んでいる当日は、
まだ飲めるけどここらでやめておくかとコントロールできるのに、
翌日に予想を超えたダメージがあり、それにも増して、
ダメージ解消までに要する時間が長くなった。

ビールとワインはすぐに飽きるようになった。
というか、ワインは年に1回飲むかどうかだし、
家ではほとんどビールを飲まない。
外で飲むときも、最初はビールにしないと変に目立つので
そうしているだけだ。
日本酒、バーボン、麦焼酎は、年々美味しく感じてきている。
この先、どうなっていくのだろう。

今回はブックレヴュー。

■伊坂幸太郎「AX」(2017年)
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主人公は文具メーカーに勤務しながら、
殺人という仕事を請け負っている。
そうなった経緯は描かれていない。

殺人をあっせんしているのは医師で、
主人公は医師に逆らえない関係にある。
なぜそういう関係なのかは描かれていない。

主人公には妻と高校生の息子がいる。
妻に対しては異常なまでに気を遣う。
特に会話中の妻の発言に対しては、
どういう返しをするのがいいのか慎重になり、
入念に自問自答する。

こう言ったら、こう思われるのではないか、
こう言ったら、自然な感じになるだろう、など、
常に妻のご機嫌をうかがい、平和的に過ごそうとする。
なぜそういう関係になったのかは描かれていない。

殺しがどうのより、
妻にびくびくしながら日々を過ごす夫の心情を描いた作品
というのが率直な感想。
実際、裏をかいたような妻の反応が最もよく描けているような。

伊坂さんの作品なので、最後まで面白く読めたのだが、
いきさつや背景がわからない点が多かったのが残念。

■朱野帰子「わたし、定時で帰ります。」(2018年)
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ウェブデザイン会社で働く20代女性。
業務改善に熱心で、効率的に仕事をこなしつつ、
常に定時帰りをしている。
それを見習う同僚もいるが、否定的な社員が多い。

そこに新たな仕事が舞い込み、
そのプロジェクトのチーフに抜擢される。
メンバーの統率がとれず、業務ははかどらない。
定時帰りは続けられるのか、みたいな内容。

登場する社員の人物描写が上手だし、
ノー残業をめぐる攻防も面白く読める。
しかし、主人公と以前に交際していた男が、
この会社に中途採用になり、
元カレのポジションを活かして変にちょっかいを出したり、
主人公は主人公で婚約中の男性がいながら
いまひとつ本気でなかったり、
定時に帰るとか、プロジェクトの進展状況とかよりも、
終わった恋愛のひきずりぶりと現在の恋愛の空疎感ばかりが
表面を覆い、イライラしっぱなしで、
逆に結末を知りたくて読めてしまった。

■長岡弘樹「道具箱はささやく」(2018年)
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18編もの短篇で構成されている。
仕事上のライバルの争い、認知症、恋愛もの、子供もの、
事故や事件ものなど、
非常に幅広い設定で、様々な人物が登場する。

1話は20ページにも満たない。
でありながら、どの物語も起承転結があり、
きちんと成立、完結している。
ミスリードをされ、最後に鮮やかにひっくり返された作品や、
伏線のひきかたが見事な作品もあった。

極めて短編なので展開が早く、
なぜそうなったのか、経過をもう少し堀り下げて
書いてもらいたかった作品もあり、
物足りなさを感じたりもしたが、
無駄に書きすぎて間延び作品よりは断然良い。

■神田茜「母のあしおと」(2018年)
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筆者は帯広市出身で私と同世代ということで、
彼女の作品を読んでみたいと思っていた。

この物語は、おそらく昭和18年生まれと思われる
「道子」という女性の一生を描いているのだが、
時系列としては逆に話は進んでいく。

始まりは、道子が亡くなってから3年後であり、
以降、道子の葬儀、長男が婚約者を家に連れてきた時、
道子の息子が小さいとき、道子が結婚する前夜、
道子が小学生の時、というふうにさかのぼっていく。

そして道子のことを語っているのは、夫であったり、
息子であったり、親戚であったり、道の母親だったりで、
語り手としての道子は登場しない。

道子の人生は特別なものではなく、どこにでもありそうなもの。
しかも、それぞれの語り手は、
道子を「いい人」のように描写しているわけではない。

道子はちょっとしたクセがある女性で、
語り手たちの心にしっかりと刻まれていることがわかるし、
あの時、こういうことを言ったのは、
昔こういうことがあったからなのかと、時代をさかのぼることで
さりげなく伏線が回収されるような構成にもなっていた。

この時代の女性の、いわば普通の人生であり、
ちょっとした人生のイベントや節目、エピソードなどを
ピックアップして描いているだけなのだが、
構成の妙か、書き手の技術か、
ぐっと心にせまるような、癒されるような良質な作品だった。
舞台も釧路を中心とした道東だったのも
気持ちが入り込めた要因のひとつ。

                       ◆


外でお酒を飲むのは気を遣う。
都市部では、外でしか飲まない、という人は多いようだが、
外だと、純粋に飲みたい酒を頼めない、
自分のペースで飲めない、
常に何か話していなければならない、
その人は好き好んで私の隣や向かい側に座っているわけではない、
など、様々な心の起伏と折り合いをつけなければならない。

飲みミュニケーションというものは否定しないが、
私は仕事に関するあれこれは全部職場で、
しかも正規の勤務時間中に言うように徹底している。
そのためにはコミュニケーションが不可欠であり、
職場の人とは職場で完結できる(させたい)と思っている。
職場の外まで引きずりたくも、引きずられたくもない。

なので、飲まなきゃコミュニケーションをとれない、
飲んでこそコミュニケーション、という考えはない。
その気があれば、いつだってコミュニケーションはとれると。
飲みミュニケーションというものは否定しないが。

飲んで、若手のプライベートなことを聞き出し、
情報を持っているのが良いというような風潮もあるが、
飲まなくても、普段そういう話ができるし、
そもそも若手は中高年の近くには座りたくないのです。
私としてもゲームの話にがんばって付き合う気はない。

というか、職場の飲み会は100%付き合いだろう。
付き合いは重要なことだ。
それも仕事のうちだ。
その仕事には残業代が発生しないし、代休もないが。



まずはライブのお知らせを。

■日時 2018年10月27日(土)19時
■場所 (旧)岡川薬局(小樽市若松1丁目)
■料金 2,000円(ワンドリンク付き)
■出演(出演順・敬称略)
      ひろみとたつや/激しい雨/mitsumi/市沢光英


思いの外、忙しさがおさまらない毎日。
しかし、やっと巡ってきた(旧)岡川薬局のライブだけに、
残り少ない時間で、なんとか整えてライブに臨みます。
よろしくお願いします。

             ◆

今回はブックレヴュー。
否定的な感想も一部述べているが、
読みごたえのある作品ばかり。

■森絵都「みかづき」(2016年)
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昭和36年に千葉県で小さな学習塾を立ち上げた女性。
次第に勢力を拡大していくものの、
講師間の教育論の違いや家族の確執など波乱万丈で紆余曲折。
子供、孫へと引き継がれていく平成20年代までの学習塾物語。

読書好きの間では非常に評価が高い作品。
ただ長い。必要以上に長い。
そのわりに、経過が見えないまま、突然状況が変わっていたりと
展開上の盛り上がりがなく、肝心なところが薄味な印象。

政府の動きや中教審(中央教育審議会)の答申など
小説ではなく解説になっていて読みにくいところ多し。
内容的には面白いのに、文章が硬く、力みが目立ち、
それを力作と感じるか、ちょっと面倒と感じるかだ。

■辻村深月「かがみの孤城」(2017年)
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部屋の鏡を通り抜けると、そこは城だった。
その城には、自分と同じく登校拒否中の中学生が6人いた。
しかし、どこに住んでいるのかもわからない初対面同士。
そこに城の管理人が現れ、
その城で、あるものを見つけたら、ひとつ願いが叶うと伝える。
ただし、その城に行ける時間は平日の午前9時から午後5時まで。
しかも翌年の3月までの1年限りという設定。

本屋大賞1位をはじめ、数々のタイトルを獲得した作品だが、
中学生の話、しかも相当ファンタジー。
最後まで読めるかなと疑問だったが、
辻村さんの文章はやはり優れている。
文章のなめらかさと展開の巧さで読めてしまう。
そして、どうなっていくのかという興味を途切れさせない。

登校拒否になったそれぞれの事情。
城に招かれた中学生の不思議な関係。
次第に心を通わせていく7人の中学生。
願いを叶えるための「あるもの」を誰も探そうともしない。
常に何か違和感があるのだが、それが逆にミステリアス。
終盤はちょっと「なんでもあり感」をおぼえたが、
素晴らしい物語を描ける方だと、筆者の才能に改めて敬意。

■柚月裕子「凶犬の眼」(2018年)
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広島の田舎の交番警察官と広島ヤクザの物語。
時代は平成2年頃という設定。
とはいえ、これほど正面からヤクザの有り様を描き、
さらに、交番警察官とヤクザが親密になるという設定。
嫌悪感を抱く人も多い内容だと考えられるが、
私はフィクションとして面白く読めた。

柚月さんは近いうちにメジャーな賞を獲得するだろうと
このブログに書いたのは3年か4年前。
しかしその後、2016年の「慈雨」、
2017年の「豪率的にあり得ない」、「盤上の向日葵」と、
私にとっては、何か噛み応えがない作品が続いたが、
この「凶犬の眼」は、冒頭から終盤まで密度と緊張感があった。
私の求めていた柚月ワールドが帰ってきた。

準主役のヤクザの「仁義のある戦い」ぶりと、
主役である警察官の妙な真面目さが、いい味を出している。
警察官の、山村に暮らす人たちとの付き合いの面倒くささも
いいスパイスになっている。
ヤクザものは無理、という方は、まじに無理な内容だと思う。

■近藤史恵「インフルエンス」(2017年)
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大阪郊外の巨大団地に住む小学生の女の子3人。
家庭内暴力、変質者による暴行未遂、いじめなど、
様々な秘密を共有した3人。
それが疑いになり、不安になり、脅迫になり、
心に闇を抱えたまま3人は大人になっていく。

世間ではあまり評価されていない作品だが非常に面白かった。
秘密を共有したがゆえに、あえて音信不通にしたり、
しかし、どこかでつながってしまったり、
そして別の事件へと発展したり、
話の運びが絶妙で、読むのをやめられなくなる。

3人が40代になるまで描かれているのだが、
終盤、筆者にミスリードをさせられていたことを知る。
それが劇的で、読書の醍醐味を味わえた。

              ◆

10月になってから、必ず観ているテレビドラマは、
「まんぷく」と「今日から俺は」の2本のみ。

「まんぷく」。
安藤サクラの女優能力の高さを再認識。
橋本マナミ、女優としての成長が見られる。
今後、別作品でも存在感を示すことができそう。
役柄のせいもあるが、松坂慶子・・・。

「今日から俺は」。
橋本環奈は80年代ヤンキールックがよく似合う。
80年代ヤンキールックはずっと抵抗感があったが、
橋本環奈のヤンキー風情は行き過ぎていなくて良い。
特にドラマの冒頭の「男の勲章」のバックダンスは魅力的だ。
日曜の夜こそ魅力的なテレビ番組があればずっと思っていた。
日曜の夜がちょっと楽しみになっている。
 


お盆は8月13日からだが、曜日の関係で
8月11日土曜日に帰省をした人も多かっただろう。

この時期に見かける好きな光景がある。
駅の近くやバス通りなどで
キャリーバッグを引っ張りながら
おそらくや実家へと向かって歩いている若者を見かけると、
「おお帰ったきたか、お疲れさん」と、
私の地元でもないのに、ちょっと嬉しくなる。

自動車で帰ってきたのではなく、
JRの駅まで家族が迎えに来たのではなく、
タクシーでもなく、
公共の交通機関と徒歩により実家へ向かっていることが
懐かしいような愛おしいような気持ちになるのだ。
まあ方法以前に、勤務先の土地で色々とありつつも、
毎年お盆に帰ってくることに好感を持っている。

実家に帰ったら帰ったで、不自由だし、それでいて暇だろう。
しかし無駄じゃない。
帰ってきたこと自体に大きな意味があるのだから。

思えば、「寝正月」はよく聞くが、「寝盆」は聞いたことがない。
私の場合、昼寝は冬より夏の方が気持ちいいが。

                        ◆

今回はブックレヴュー。

■呉勝浩「白い衝動」(2016年)
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主人公は小中高一貫校のスクールカウンセラーの女性。
「人を殺してみたい」と相談に来た男子高校生、
女子高生を監禁、強姦の罪で服役した男、
どこかしっくりいってない夫、
そうした人々の動向とともに物語は進んでいく。

思春期、殺人衝動、服役後の受刑者の心理などを、
学術的な視点からかみ砕いて描いている、
説明や解説っぽくなっている箇所もあったが、
内容的にはなかなか面白かった。

ずっと不穏な雰囲気があり、かつ、どこにも着地しない。
モヤモヤ感とともに読み進め、読み終わることになる。
ドラマチックではないし、共感もしないが、
読み物としては十分に楽しめた。

■中島恵以子「婚活食堂」(2018年)
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東京で小さなおでん屋を営む50代の女性。
若い頃は占い師としてテレビや雑誌でも活躍。
その後、直感でおでん屋に転身し成功。
また、今もその人の将来がぼんやり見える特殊な能力を持つ。

おでん屋の常連は、結婚したい女性や子供を結婚させたい親など。
そうした常連が会社の同僚や仕事で知り合った人などを連れてきて、
カップルが誕生するなど、合コン居酒屋のテイスト。

おかみの言葉遣いが妙に上品なこと、
常連はほとんど女性なのに最低でも週に一度は来店すること、
おかみのバックには謎のセレブ男がいることなど
不思議な設定、違和感、疑問も色々とあるが、
それも含めて面白く、文章が滑らかで実に読みやすい。
展開や情景は深夜のテレビドラマになったらヒットしそうな内容。

■真山仁「ハゲタカ/上・下」(2004年)
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バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代初めの
不良債権処理や企業再生の物語。
過去にテレビドラマにも映画にもなり、
現在も綾野剛主演でテレビドラマとして放送されている。
ちなみに現クールのドラマで毎週観ているのは、
「ハゲタカ」と「dele(ディーリー)」の2本だ。

小説の「ハゲタカ」は、テレビ、映画よりも
クールでスタイリッシュで華やかな感じがする。
お酒、女性、ピアノの場面が映像に比べて多い。

駆け引き、水面下の交渉、裏工作など、
傾いた企業を奪っていく様は壮絶ながら、
読み手をぐいぐい引き込んでいく。
ただ、下巻の中盤あたりから、
人物の絡み方や企業争奪の動きが複雑になり、
大長編ということもあるが、読み疲れをした。

現在放送されているテレビドラマの綾野剛の演技がすごい。
激しい形相で声を張り上げる場面が多く、
その大きな演技は勧善懲悪の時代劇を見ているようだ。
それはそれで面白いし楽しめる。

■内館牧子「終わった人」(2015年)
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大手企業の要職についていたが、
定年が近づいた頃に子会社に出向させられ、
そのまま定年退職をした男。
退職後は旅行でもと考えていたが、
妻には相手にされず、再就職もできず、主夫も務まらず、
スポーツジムに通って、暇つぶしのような毎日を過ごす。

日中のスポーツジムはリタイアした老人だらけで
その仲間入りをしたことにショックを受けるが、
俺はこんなところでくすぶっている人間ではないと
プライドだけは高く、しかしそれが仇となって、
現実と折り合っていけない。

主人公の尊大ぶりに辟易するが、
それにも増して妻の横柄さや自己中心ぶりがひどい。
離婚をしないどころか、離婚を考えることすらしない夫が
大いに疑問というか、バカなのかとさえ思えた。
家庭のことを一切してこなかった退職夫のなれの果てだ。

後半は、主人公が反省し改心していくモードになるが、
妻は相変わらずひどい。
こういう妻のキャラをつくった著者の内館さんの執念のような
ものさえ感じた。
言葉遣いが適切で非常に読みやすく、
さくさくと展開するので、短時間で読み終えた。

結婚って何だったのか、何のために働いてきたのか。
そんなことを考えさせられる人も少ないだろう作品。
自分のためだったと思えれば何も問題のない話だが。

                        ◆

今日の夕方、岩見沢市内のスーパーの駐車場でのこと。

私の背後で、男性同士のこのような会話が聞こえてきた。
「おお、どうも」
「あれ?メガネ変えたのかい?」
「ああ、そうだ」
「ずいぶん、いいのしてるね」
「ハズキルーペだ」
「ハズキルーペかい」

こんな会話を聞いてしまったら見ないわけにはいかない。
60歳くらいの方だった。
ハズキルーペをしているだけでオーラが発生していた。
世の中の文字は小さすぎて見えな~い!!など
完全にぶちぎれた末に購入したのだろうか。

メガネだけでこれだけパワーがあるのは、
1985年頃の吉川晃司の
スキーゴーグルから
レンズだけをはずしたようなサングラス以来だ。

ところで、ハズキルーペは小さな文字を読んだり、
パソコン向けではなく、タウンユースでもいけるのか。
よくわからないが、渡辺謙さんばりに言ってみたい。
「すごいぜ」
 


7月8日にTHE HEART OF STONEの11枚目となる
オリジナルアルバム「crossover」をリリースした。

そして今週末は帯広でライブだ。
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ずっと実現させたいと思っていた帯広でのライブ。
昨年は一度も実現しなかった。
やっと行ける。
ほんとうに嬉しい。

出演順は3番目
出演予定時刻は19時30分からです。
よろしくお願いします。
              
今回はブックレヴュー。

■辻村深月「青空と逃げる」(2018年)

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小学生が川で海老をとっているシーンから始まる。
やがてその母親が登場する。
親子と自然という組み合わせは物語に入っていきにくい。
長閑でモヤモヤするような描写にハズレだったかと思いつつも、
せめて30ページくらいまではと読み進めていくと、
辻村さんの文章力のなせる技なのか、
次第に物語の中へと誘導され、
やがてはページをめくる手を止められなくなった。

劇団員の夫が交通事故で入院。
その車には有名女優が同乗していた。
女優はしばらくして自殺。
入院していた夫は病院から逃亡。
マスコミや女優の事務所関係者が家に押し寄せ、
妻と子供は逃げるように高知県や大分県などに移動しながら
地域の人たちに支えられる物語。

逃亡先では子供を小学校に通わせず、
母親は仕事を見つけるも、住まいは質素でお金もない。
やっとその地域になじんだ頃に追手が近づいてきて移動。
常に薄曇りの息苦しさを漂わせながらも、
どうなるの、どうしてなの、の疑問を絶妙な加減をキープし、
読み甲斐のある作品に仕上がっている。

羽田圭介「成功者K」(2017年)
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売れない作家だったKが芥川賞を受賞。
それによって状況は一変する。
テレビ出演が増え、それを上手くこなし、
やがてバラエティ番組を中心にオファーが殺到する。

小説を書くより簡単にお金を稼げる。
知名度があがり小説の売れ行きもアップ。
さらには複数のファンの女性と交際し、
小説も書かずに成功者生活を満喫する。

一方で成功者慣れしていない面も面白く描いている。
テレビの楽屋で出される弁当はいつも二人前を食べたり、
新幹線のグリーン車に乗ったら、
レッグレストを使わなければもったいないと思ったり。

しかしそういう生活は破綻するものだ。
マンネリ感、恋愛のもつれ、喪失感、無力感、
そうした様々なダメージがKを蝕んでいく。
あげく、芥川賞を受賞し成功者となり、
奔放に振る舞う自分をモデルに小説を書き始める。
ブレーキなしに突っ走っていく展開。
女性問題に辟易しつつも、面白く読めた。

五十嵐貴久「リカ」(2002年)
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妻子のあるサラリーマン。
家庭に特に不満やトラブルがあったわけではないが、
同僚から「楽しいから」と勧められ出会い系サイトへ。
知らない女性と言葉のやりとりを楽しむ程度の関わり方だったが、
おかしな女性に付きまとわれるはめに。

会ってほしいとしつこくメールを送られ、
やがて待ち伏せされ、職場や家族にも忍び寄ってくる。
サラリーマンの生活は崩れていき、
最終的には命の危険にさらされる。

出版されたのが2002年。
ということは執筆したのはそれより前であり、
その頃、出会い系サイトはそれほどメジャーでは
なかったようにも思うわけで、
当時は先進的だったかもしれない。

つきまとう女性の気色の悪さの描写が圧倒的。
ただ、この女性はなぜこんな人物になってしまったのか、
どうやって生計を立てているのかなど背景が見えないため、
もやもやするところはあるが、
結末を知りたい気持ちは高温キープでエンディングまで運ぶ。

小玉ユキ「坂道のアポロン」(2007年-2012年)
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単行本では9巻で完結の漫画作品。
1966年、東京から九州の高校に転校した男子生徒。
学業成績は極めて優秀、かつ品のある身なり、
ところが家族関係に問題を抱え、
殻に閉じこもりがちな性格と人づきあいが苦手なせいで、
学校では孤立していた。

そんな中、やさしく接してくれる律子と、破天荒な千太郎という
二人のクラスメイトの存在、そしてジャズとの出会いによって、
次第に心を開いていく。
瑞々しい友情と恋愛とジャズの物語だ。

特に律子がいじらしくて、かわいい。
彼女のお気に入りのジャズ・ナンバーが
SOMEDAY MY PRINCE WILL COME/いつか王子様が」である
という設定がぴったりで、
この作品を読み、改めてこの曲を聴いてみたら、
素晴らしく良い曲に思えた。

終盤の8巻、9巻は展開が早くなり、
やや強引にエンディングを迎えたのは残念だったが、
序盤から7巻あたりまでは、
過程や心理描写を丁寧かつ濃密に描き、
特に5巻、6巻あたりの、高校2年生の文化祭のシーンは感涙。
キュンとなって、じーんとする場面の多い素敵な作品だ。

                     ◆


瑞々しく、清々しい気持ちを呼び起こす作品はいいなと思う。
それは私自身が瑞々しさや清々しさを失ったから思うのだろう。
だからといって若い頃に戻りたいとは思わない。
今が一番だと、毎年思う。

若いうちはやりたいことが何でもできると
中学生の時に西城さんからメッセージをいただいたが、
行動範囲が狭く、お金もなく、知識に乏しく、
若いうちはやりたいことがあまりできなかった。

しかし不自由さゆえに頑張れたことや出会ったことも少なくない。
なので今もあえて不自由状態を作ってみることもある。
どういう環境を作れば、あるいは、どういうアプローチをしたら
満足した気持ちになるのか、ずっと実験しているような感じだ。
そんな日々は幸せといえる。
選択肢があるのだから。

この先も初めて経験する年齢ばかりであり、
心も身体も変化していくし、社会も変化していくので、
変わらない毎日などあり得ない。
どうやって年をとって変わっていくのか楽しみでもある。

年をとりたくないと思ったら、その人は確実に年をとってるし、
つまらない大人になりたくないという大人は
大体つまらない大人になっている。
そしてそのことに気づいていない。
 



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